DTP(デスクトップパブリッシング)エキスパート試験について

DTP(デスクトップパブリッシング)エキスパート試験について

DTPエキスパートとは、デザイン・編集・製版・印刷・加工などといったDTPに関連する知識を理解し、活躍できる人物育成を目的とした検定試験です。
実際に出版・印刷業界で働いてる人の受験も多い資格試験となっています。

適用する仕事

DTPとは「Desktop(デスクトップ)publishing(パブリッシング)」の略でパソコンを用いて印刷物をデザインし、制作することを意味します。
この印刷物というのはチラシや冊子、書籍や新聞などさまざまあります。

以前は印刷物を作成するにあたっては、企画やデザイン、版下(はんした・印刷の元となる原稿のこと)の作成や製版、印刷などの各工程を別々に専門家が行なっていました。

これがDTPを用いることで、デザインから版下の作成や製版まで一連の流れがパソコン上で完結することができます。
これにより製作時間の大幅な短縮につながっています。

この資格を取得するにあたり、印刷全般に関わる知識を得られます。

  • 印刷会社
  • 出版会社
  • 広告代理店
  • デザイン事務所
  • 編集プロダクション

このような業界や会社での需要があります。

考えられる適職
  • デザイナー
  • オペレーター(印刷物のレイアウトを行う)
  • 編集者
  • 営業
  • 企画

おおよその年収とキャリアパス

DTPエキスパートの資格を取ることで(もちろん職種や企業によって変動はあるものの)時給でいうとおよそ1,800円前後、月給で18万円、年収では400万~700万円ほどの収入が見込めると言われています。

しかし、残念ながら近年、情報のデジタル化が進む中、紙媒体をメインとするDTPは今後廃れていくことが懸念されます。

つまり、これはDTP職種の需要も減っていくと予想されていますが、DTPと合わせてWEBページ制作WEBデザインのスキルも合わせて取得すれば、将来性があります。
DTPエキスパートの資格も有効に働くと思われます。

DTPエキスパートの応用範囲は多岐にわたります。

環境変化への対応
  • ユニバーサルデザイン
  • エコ対応
印刷を深堀(幅広い表現)
  • 用紙知識
  • 特殊印刷
  • 特殊加工
多能工化
  • DTP
  • Web
  • 電子書籍(EPUB)
役割の変化
  • ディレクターへプロジェクト管理
  • コミュニケーションスキル
より効果的なメディア制作
  • デザイン
  • クリエイティブ
  • マーケティング

さらには、色に関する知識や文字コード、画像レタッチなど知識や技術を蓄積し、ノウハウを豊富に兼ね備えたDTPエキスパートは、このような知識を印刷周辺に広げることにより、その品質を支えるスーパーバイザーとして機能します。

※しかし、一方で就職や転職に有利かというと、残念ながら取得してもそうでもないと思ってください。
求人を調べても有資格者の需要が少ないためです。

例えばハローワークのインターネットサービスで、免許・資格コード欄に、DTPエキスパートのコードNoを入力しても全国の求人の検索でほとんど見つからないのです。

だから、資格を持っているからといって絶対有利というわけではありません。

認可団体

公益社団法人日本印刷技術協会のロゴマークDTPエキスパートを主催している協会は「公益社団法人日本印刷技術協会・略称JAGAT(ジャガット)」です。
正式名称:Japan Association of Graphic Arts Technology

この団体は印刷および関連作業の発展や貢献を目的として1967年に創立された内閣府認定の経済産業省所管の公益法人で、印刷会社、メーカー、メディア関連企業などが会員企業となっています。

JAGATは印刷産業の研究機関として、印刷ならびに周辺分野の技術、メディア動向、そしてビジネス、経営戦略まで調査や研究、提言活動を行なっています。

また、教育機関として人材育成の機会提供、DTPエキスパートなど資格制度の運営を行なっています。

受験条件

受験資格として、年齢・学歴などに制限はなくどなたでも受験できます。
また、経験は問いません。

合格率

■学科試験

実施年 受験者数 合格者数 合格率
2019年 350人  186人  53.1%
2018年 451人 226人 50.1%
2017年 620人  266人  42.9%
2016年 702人  317人  45.2%
2015年 752人  294人 39.1%

1年当たりの試験実施回数

試験実施は
年2回(3月・8月)に行われています。

試験科目

はてなを書いている緑・赤・青の鉛筆DTPエキスパートとは何を目指す試験なのか、冒頭でお伝えしました。
と同様に資格には、もう一つ「DTPエキスパート・マイスター」という資格があります。

試験は改定へ

2020年3月からDTPエキスパート認証試験は、2段階制に改定されました。
「DTPエキスパート」「DTPエキスパート・マイスター」の2段階制です。

従来の試験では
・DTPおよび印刷に関する学科試験
・与えられた期間内に課題を提出する実技試験

この二本柱で構成されていました。

しかし、実技課題に取り組むにはDTPソフトウェアをダウンロードし、操作を習得する必要がありました。
これは制作部門従事者以外には高いハードルでありました。

そんな現状に営業担当社員の育成を目的として受験を促そうと試みた企業からは、学科試験のみの受験制度を要望するようになり、このような結果となりました。

新たな制度では

  • 学科試験だけの試験を実施し、合格すれば「DTPエキスパート」と認証すること
  • 従来と同様の学科試験と実技試験の合格者は「DTPエキスパート・マイスター」になること

そして、2020年以降にDTPエキスパートに合格した方は「アップグレード試験」として、将来、実技試験だけを受験することができます。

この試験に合格すると「DTPエキスパート・マイスター」として認証されるのです。

試験概要

種別 試験科目
DTPエキスパート・マイスター 学科・実技
DTPエキスパート 学科

なお

  • DTPエキスパートはDTP・印刷に関する幅広い知識を備えているエキスパート
  • DTPエキスパート・マイスターはDTP・印刷に関する幅広い知識と制作や管理の実務能力を備えているエキスパート

と見なします。

DTPエキスパート・マイスターへのアップグレード
種別 対象者 試験科目
アップグレード試験 DTPエキスパート(2020年以降)  

実技

 

⇒合格後はエキスパート・マイスターが認証されます。

 

試験内容

試験会場になっている会議室どんなことが問われるかというのは、以下の通りです。

DTP

この項目はDTPの制作に関わる企画→デザイン→制作の一連の基本的な流れについて問われるジャンルです。
だけど、DTPの仕事をしている人であれば、ほとんどが実務で使う知識ばかりです。

「光」と「色」の項目です。
特にトーンカーブなどの画像を選択する問題が出てきます。

印刷技術

印刷技術の歴史的変遷が問われる項目です。
よって「印刷方式」の違いについて、確実に理解しておく必要があります。
この項目では「網点」について高確率で出題されています。

情報システム

データについての項目なので、全て押さえておくのが良いでしょう。
また、ソフトウェアの「画像処理」についても、正確に理解していないと解くことが困難なので、必ず理解するまで勉強しましょう。

コミュニケーション

「情報デザイン」と「マーケティング」について問われます。
「情報デザイン」では“思考法”について押さえておけば、他は常識の範囲でカバーできるでしょう。

「マーケティング」については、新傾向の項目です。
新しい問題が出る可能性が高いです。
日頃から業界の研究を怠らないようにしておきましょう。

採点方式と合格基準

まず、合格基準としては

【学科試験】
第1部試験・第2部試験各120分で
ランダムに配置される5つのカテゴリー(「DTP」「色」「印刷技術」「情報システム」「コミュニケーション」)のすべてにおいて正解率80%以上

【実技試験】
提出物を総合的に評価

実技試験採点のポイント
  • デザイン性:政策背景の理解力や制作目的の具現化にあたってのデザイン訴求力、エディトリアルデザイン(読み手の視線や意図を考えて効果的な紙面を編集しデザインすること)の常識に沿った紙面設計力
  • 印刷用データ制作力:制作条件にある印刷入稿用データを作成する実制作力

取得に必要な勉強などの費用

DTPエキスパートの学習方法として、もっとも手軽で安価なのは参考書や関連書籍です。
書籍なら気軽に取り掛かれるし、時間さえあればいつでもどこでも学習できますね。

DTPエキスパート認証試験スーパーカリキュラム 第13版準拠

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価格:¥4,500+税

DTP資格の最高峰ともいわれるJAGAT!
そこからの「DTPエキスパート認証試験」の合格のための必携書です。
丁寧なカリキュラム解説+過去問題、さらに公式模試で確実に合格できる力がしっかり身に付きます。

カラー図解DTP&印刷スーパーしくみ事典 2021

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価格:¥4,000+税

こちらはDTPや印刷業務に携わるすべての人に役立つ図解事典です。
印刷のしくみといった基本的な事柄をはじめ、ハードウェア、デザインなどのクリエイティブな要素、電子出版、デジタル印刷、製本・後加工などのDTP&印刷に関する多くの知識を豊富な図解を使って解説しています。

受験料

受験料は
【DTPエキスパート・マイスター】21,000円
【DTPエキスパート】15,000円
【DTPエキスパートからDTPエキスパート・マイスターへのアップグレード】9,000円
(各税込)

受験申込方法

申請方法は次の3種類があります。

・団体受験申請(企業単位での申請)
・指定講座受験申請(JAGAT提携講座受講による指定講座会場受験申請)
・個人受験申請(個人での申請)

※「団体受験申請」は情報不足で詳細を載せていません。

指定講座受験申請

大まかな手順を見てみると以下の通りです。

  1. 指定講座受験申請者情報の登録【各受験者】
  2. 指定講座受験者登録受付番号のお取りまとめ【各受験者⇒指定講座ご担当者】
  3. 受験料の振込み【指定講座担当者】
  4. 指定講座受験としての申請【指定講座ご担当者】

個人受験申請

こちらも大まかな手順を記しておきます。

  1. 受験料を振り込む
  2. 申請する
  3. 受験票を確認する

写真は一般証明サイズ(縦4cm×横3cm)
正面・上半身・脱帽で最近3ヶ月以内に撮影したもの(白黒、もしくはカラー)

まとめ

以上DTPエキスパート試験の情報でした。
DTPエキスパートはパソコンを使って、印刷や製本をするエキスパートといっても良いでしょう。

近年、試験方式は大きく変わりました。
どうか改定された受験方式で勉強していただき、コツコツ資格を取得していってくださいね。