海技士とは大型船舶に船舶職員として乗務するのに必要な資格で、航行する区域や船の大きさなどによって航海・機関・通信・電子通信という4種類の免許区分に分かれます。
今回は海技士の中で通信と電子通信の分野を取り上げます。
ともに無線部で活躍する海技士の資格です。
その特徴と資格の取得方法をお伝えしていきましょう。
Contents
適用する仕事
海技士(通信・電子通信)の資格を取得したら、船員、海上保安庁、水産庁の行政職員、水産高校教員などで働くのが適職です。
海技士の通信や電子通信の分野は通信士としての活躍が期待できます。
厳密にいうと、無線によって船舶の安全運航のための必要な情報の収集を行う「通信」と、インマルサット無線設備を通して他の船舶や陸地との連絡をスムーズに行なって安全運航のための情報を集める「電子通信」とに分けられています。
海上無線の通信士は衛星通信設備・電話無線設備・衛星EPIRBを用いて、モールス電信を使用せずに陸上や他の船舶と通信を行います。
この資格を保有していると次のようなことに役立ちます。
- 通信技術を駆使して船舶の安全な運航をサポートし、海難事故を防ぎ乗組員の命を守る
- 無線を通じて他の船舶と交信するなど、安全運航に必要な情報を収集できる
冒頭でも述べたように海技士には通信と電子通信の他に、航海と機関の分野があります。
これら4つをまとめて海技士だったり、航海士の仕事として紹介されています。
航海士の仕事は客船や貨物船に乗り、船舶の運航の全責任を一身に負って船長を助けて船を操縦することです。
日本は食糧やエネルギーなどを輸入に頼っていますので、タンカーや貨物船などの海上輸送はまさにライフラインです。
よって、航海士は大変貴重な存在の職業でしょう。
航海士には船や気象・海に関する専門知識が求められます。
船の上では状況に応じて最適な行動がとれるよう判断力も必要です。
言うまでもなく、船員として働くには健康で体力があって、体調管理ができる人が望まれます。
船の上では体調が悪くなっても受けられる医療が限られるからです。
おおよその年収とキャリアパス
厚労省の賃金構造基本統計調査によると、航海士の平均年収は約478万円です。
しかし、1等航海士から3等航海士の資格や役職によって大きく異なります。
船長クラスだと年収1,000万円の方もいます。
それに外国船だと年収は高いです。
外国船の大型客船の場合、航海士の平均年収は800~900万円にもなります。
外国船とは国際航路の船のことで、乗船期間が長く、その分危険性も増すため給与が高くなっているのです。
海技士(航海士)の仕事は危険を伴う仕事なのです。
その海技士のキャリアパスですが、就職先によってキャリア形成は異なります。
海上保安官職員の場合
就職先が海上保安官職員の場合、海上保安大学校を卒業した後に巡視船主任(初級幹部)として勤務します。
陸上勤務と海上勤務を交互に経験しながら、小型巡視船の船長、大型巡視船の首席、そして大型巡視船の科長とキャリアアップをしていきます。
民間企業の場合
民間企業というと、具体的には客船、貨物船、タンカー、フェリーなどの海運会社です。
そうした職場では、まずは航海士または甲板部員として就職し、船に関する経験を積んでいきながらキャリアアップを図ります。
将来的には船長や管理職に就くことも可能です。
また、航海士や船長の経験を活かして、水先案内人になることも可能です。
水先案内人とは、さまざまな船舶によって混雑している航路や自然条件を把握し、知識や技術を駆使して入港をサポートする職業です。
港や水域の事情に精通しているプロフェッショナルともいえるでしょう。
ただし、水先案内人になるにはこれはこれで免許が必要になります。
認可団体
海技士(通信・電子通信)の資格は「国土交通省」が運営管理しています。
国土交通省海事局海技・振興課が束ねています。
関東では関東運輸局が運営管理しています。
神奈川県横浜市中区北仲通5-57 横浜第2合同庁舎
電話:045-211-7232
その他の地域は各地方運輸局および内閣府沖縄総合事務局があります。
受験条件
海技士(通信・電子通信)はさまざまな受験条件があります。
年齢制限
1級~3級海技士(通信)および1級~4級海技士(電子通信)は、試験開始期日の前の日までに17歳9ヶ月以上でなければなりません。
免許が交付される年齢は18歳以上です。
乗船履歴
- 試験開始期日の前日から15年以内、かつ5年以内の乗船履歴があること(ただし15歳に達するまでの履歴は含まれない)
- 3級海技士(通信)および4級海技士(電子通信)を除いて、船舶の運航、機関の運転または船舶無線通信の業務に従事した経歴があること
さらに、海技士の通信や電子通信は無線従事者の資格を取得していなければなりません。
海技士(通信)の無線従事者
- 1級受験者 第一級総合無線通信士
- 2級受験者 第一級総合無線通信士または第二級総合無線通信士
- 3級受験者 第一級総合無線通信士、第二級総合無線通信士または第三級総合無線通信士
海技士(電子通信)の無線従事者
- 1級受験者 第一級総合無線通信士または第一級海上無線通信士
- 2級受験者 第一級総合無線通信士、第一級海上無線通信士または第二級海上無線通信士
- 3級受験者 第一級総合無線通信士、第一級海上無線通信士、第二級海上無線通信士または第三級海上無線通信士
- 4級受験者 第一級総合無線通信士、第二級総合無線通信士、第一級海上無線通信士、第二級海上無線通信士、第三級海上無線通信士または第一級海上特殊無線技士
合格率
一般的に通信の1級が60%以上で、電子通信の1~3級が90%以上です。
参考までに2020年の合格率を紹介します。
― | 筆記試験 | 身体検査・口述試験 |
一級海技士(通信) | 100% | 100% |
二級海技士(通信) | 0% | 0% |
三級海技士(通信) | 0% | 0% |
一級海技士(電子通信) | 100% | 100% |
二級海技士(電子通信) | 100% | 100% |
三級海技士(電子通信) | 80% | 100% |
四級海技士(電子通信) | 100% | 100% |
※0%の部分は受験者がいなかったので0になっています。
1年当たりの試験実施回数
4月、7月、10月、翌年2月の4回です。
試験科目
筆記試験と口述試験があります。
筆記試験
- 1級 航海一般 7問
- 2級 航海一般 5問
- 1~3級 航海一般 7問
- 4級 航海一般 5問
口述試験
筆記試験合格者のみ実施
身体検査
試験は筆記試験、口述試験の他に身体検査もあります。
身体検査は口述試験の開始時間前に実施されます。
- 視力(矯正視力で0.6以上)
- 弁色力(色を正しく認識する力)
- 聴力
- 眼疾患の有無
- 疾病および身体機能の障害の有無
採点方式と合格基準
筆記試験の合格基準は以下の3つのうちのどれかです。
- 全科目を受験した場合
各試験科目について、それぞれ配点総計の50%に達し、かつ全科目の得点総計が65%に達したものを合格とする - 科目免除により、一部の科目について受験した場合
受験した各試験科目について、それぞれが65%に達した科目を合格とし、1科目でも65%に達しないものがあれば不合格とする - 科目合格
上記1および2で不合格となった場合でも、得点が65%に達した科目は科目合格とする
口述試験の合格基準は、得点の総計が配点総計の65%に達したものを合格とします。
取得に必要な勉強などの費用
調べると1級海技士~3級海技士(通信)は5級海技士(航海)と同じレベルだそうです。
ですので、5級海技士(航海)の参考書および問題集を選べば良いでしょう。
五級海技士(航海)筆記試験問題と回答
- 出版社名:成山堂書店
- 商品名:五級海技士(航海)筆記試験問題と回答
- 価格:¥3,300(税込)
2021年に出版された過去問です。
2017年2月~2020年10月までの間に行われた定期試験の問題とその模範解答を免許状にまとめています。
海技士4・5N(航海)合格テキスト
- 出版社名:海文堂出版
- 商品名:海技士4・5N(航海)合格テキスト
- 価格:¥3,300(税込)
海技士(航海)の4級・5級の知識が詰まった合格テキストです。
四級・五級海技士(航海)口述試験の突破
- 出版社名:成山堂書店
- 商品名:四級・五級海技士(航海)口述試験の突破【8訂版】
- 価格:¥3,960(税込)
こちらは四級海技士(航海)および五級海技士(航海)の免許を受けようとしている人たちに向けてまとめた口述試験のための参考書です。
今回の8訂版では、問題の中身を改めてチェックし、最近の傾向などを勘案しながら内容を最新のものにしてあります。
受験料
通信と電子通信、また各級ごとに違います。
海技士(通信)
いずれも筆記
1級 5,000円
2級 3,400円
3級 2,700円
海技士(電子通信)
いずれも筆記
1~3級 5,000円
4級 2,700円
なお、身体検査手数料は870円です。
受験申込方法
まず、受験したい運輸局に尋ねるのが早いです。
海技士国家試験申請、海技免許申請、海技免状更新申請、海技免状訂正等申請などの各申請書用紙については、地方運輸局等の窓口で受け取れます。
なお、国土交通省の「海技士国家試験などの申請書について」のページにアクセスすると書類のリンクが載っていますので、そこから印刷しても良いでしょう。
そして、申請するにはさまざまな書類が必要です。
必要書類 | |
1.受験票 | |
2.試験申請書 | 2種 |
3.手数料納付書 | |
4.住民票または戸籍抄本 | 本籍記載 |
5.海技士身体検査証明書 | 筆記のみ・口述のみは必要ない |
6.科目免除証明書 | 筆記試験を受ける人は該当 |
7.筆記合格証明書 | 筆記試験を受けない人に該当 |
8.身体検査合格証明書 | 口述のみを受ける人該当 |
9.卒業証明書、養成施設修了証明書および単位証明書 | 筆記試験を受けない人に該当 |
10.訓練記録簿 | 筆記試験を受けない人に該当 |
11.乗船履歴の証明書 | 筆記のみの方には該当しない |
12.海技免状(お持ちの方) | 筆記のみの方には該当しない |
13.無線従事者免許証および船舶局無線従事者証明書 | |
14.返信用封筒 | 郵送申請者に限る |
まとめ
今回は海技士の資格の中で通信・電子通信の2つに絞って見てきました。
海技士は航海士とも呼ばれますが、その中でもいろいろ分かれています。
今回は無線に関する業務の資格です。
受験条件では無線従事者の資格の保有が求められています。
海技士の資格を目指す前にそちらの資格を取得してから臨みましょう。
海技士は海が大好きな人にとっては憧れの職業でしょう。
ぜひ、海技士の資格を取って仕事に役立ててくださいね。
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