今回ご紹介する『プラダを着た悪魔』は、2003年に出版されたローレン・ワイズバーガーの小説『The Devil Wears Prada』を原作に制作され、2006年に公開されたアメリカ映画です。
監督は『ワン・チャンス』や『素晴らしきかな、人生』を務めたデヴィッド・フランケル。
主人公アンディが、人気ファッション誌「ランウェイ」のカリスマ編集長の無理難題に奮闘し、仕事にも恋にも思い悩む姿は同世代の女性から絶大な共感を呼び、大ヒット映画となりました。
ファッションの世界を描いている物語である『プラダを着た悪魔』。
衣装は『セックス・アンド・ザ・シティ』の衣装も担当したパトリシア・フィールドが手掛けました。
服や靴、バッグにいたるまでがハイブランドでコーディネートされており、映画そのものがファッションショーのようで、まさに女性の憧れの世界。本作の衣装にかかった費用は1億円にもなるそうです。
今回は『プラダを着た悪魔』のあらすじ、見どころなどをご紹介します。
Contents
あらすじ(ネタバレあり)
ノースウエスタン大学法科大学院を卒業した若い女性アンドレア・サックス、通称:アンディは、ジャーナリストになりたくて、オハイオ州から大都会・ニューヨークへやってきました。
面接を受けに行った大手出版社で、アンディはファッション誌「ランウェイ」に配属されることになりました。
アンディはファッション業界で絶大な影響力を持つ編集長ミランダのアシスタントとして働き始めます。
しかし、ハイブランドの服に身を包んだ女性たちは、野暮ったいアンドレアの姿を見て「信じられない」といった顔をします。
何百万人もの女性が憧れるポジションと言われていますが、ファッションに疎いアンディにはなんとも奇妙な世界でした。
ミランダは周りから恐れられるバリバリのキャリアウーマン。雑誌の編集長である以上に、ファッションの世界に絶大な影響を与えている存在でもあります。彼女が「ダメ」と思ったならば、デザイナーがコレクションを改めるほどです。
どんなに頑張っても、決して認めてもらえないと愚痴をこぼすアンディに、ミランダの直属部下の男性ナイジェルは「辞めろ。君は努力していない。ただ愚痴を並べているだけだ」と言います。
「ここはただの雑誌ではなく、日々身にまとうものを扱っているのに、君は無関心。甘ったれるな」
ナイジェルのその言葉が正しいと思ったアンディは、彼にファッションセンスの教えを乞います。
ナイジェルの助言を得て、アンディはスタイリッシュに変身していきます。また、その甲斐あってか、徐々に有能な働きぶりをみせ始めます。
そんな彼女をミランダも少しずつ認めていきます。そしてとうとう、パリで行われるコレクションへ同行するアシスタントとして指名します。
しかし、仕事に明け暮れていたアンディは恋人のネイトとうまくいかなくなってしまい、ついに一旦距離を置くことになってしまいます。
パリに着いたアンディは、華々しいショーやパーティなどの裏でミランダのアシスタントとしてそつなく仕事をこなします。
しかしそんな時、ミランダが夫と離婚寸前であること、そして「ランウェイ」の編集長を辞めさせられかけているのを知ってしまいます。
なんとかその事実をミランダに伝えようとするアンドレアですが、ミランダは聞く耳を持ちません。
それもそのはずで、実はミランダは全て知っており、すでに手を打っていたのでした。
ナイジェルが着任する予定だったデザイナーのパートナーの座に、フランス版ランウェイの編集長を推薦し、自分の地位を守ったのでした。
プライベートを犠牲にしても、第一線で働き続けるミランダ。ミランダはアンディに「あなたは私によく似ている」と告げます。
そして、「この仕事のためには他の何を犠牲にしてもいい。それほど誰もが憧れる仕事なのだ」言います。
ミランダのその言葉で、自分にとって何が大事だったのか気づいたアンディは、ミランダから離れ、恋人の元へ帰るのでした。
キャスト
アンドレア・サックス(アン・ハサウェイ)
スタンフォード大学法科大学院への入学を断り、ノースウェスタン大学でジャーナリズムを専攻しました。
卒業後ジャーナリストとして働くためにニューヨークで就職活動を行いますが、何故かファッション誌『ランウェイ』の編集長・ミランダのアシスタントとして採用されます。
それまでファッションとは無縁だったアンドレアは、未知のファッション業界と「悪魔」のようなミランダに翻弄されながらも、ファッションの魅力に気付き成長していきます。
一方、仕事に対する高いプライドから時にプライベートにおいても厳しい決断を下していくミランダと過ごす中で、アンディは本来の自分や、当初のジャーナリストになるという夢と向き合うようになります。
演:アン・ハサウェイ
映画デビュー作となった2001年の「プリティ・プリンセス」でヒロインの座を射止め、一気にブレイクします。
また、ジブリ作品「猫の恩返し」のアメリカ版では、主役ハルの吹替えを担当。「ブロークバック・マウンテン」(05)ではアイドル的な印象を覆す役柄に挑んでいます。
「プラダを着た悪魔」で再注目され、家族や薬の問題を抱える主人公を熱演した08年の「レイチェルの結婚」でアカデミー賞主演女優賞に初ノミネート。
以降も「ダークナイト ライジング」などの好演で着実にステップアップし、持ち前の歌唱力でインパクトを残した「レ・ミゼラブル」(12)でついにアカデミー助演女優賞に輝きました。
ミランダ・プリーストリー(メリル・ストリープ)
人気ファッション誌『ランウェイ』の編集長。ファッション業界では伝説的な存在で、彼女のアシスタントの仕事は「一年働けば、何処でも働くことができる」と言われるほど誰もが憧れる職業です。
しかし、「悪魔」と呼ばれるほど横暴な性格で、仕事からプレイベートまで全ての管理を任せ、数週間の間に2人もアシスタントが退職をするほど。
『ランウェイ』の編集長は自分にしか務まらない」とプライドを持って仕事をする一方、夫と離婚をするなどプライベートでもマスコミを騒がせます。そうしたミランダの仕事に懸ける姿は、アンディに大きな影響を与えます。
演:メリル・ストリープ1977年の「ジュリア」で映画デビュー。翌年の「ディア・ハンター」でオスカー助演女優賞に初ノミネートを果たします。
そして79年の「クレイマー、クレイマー」でアカデミー助演女優賞を受賞。82年には「ソフィーの選択」で主演女優賞を獲得します。
以降、「シルクウッド」「恋におちて」「マディソン郡の橋」「プラダを着た悪魔」など数多くの作品に出演し、その確かな演技で観客を魅了し続けています。
これまでアカデミー賞ノミネートされること17回と最多を誇り、まさにアメリカを代表する大女優です。
エミリー・チャールトン(エミリー・ブラント)
ミランダの第一アシスタント。ミランダのパリ出張に同行するために、過酷なダイエットをするほど努力をしていますが、パリ出張の直前に風邪を引いたことで大本来の仕事ができません。
さらに交通事故にも遭い、パリ出張のメンバーから外されてしまいます。
演:エミリー・ブラント
01年にジュディ・デンチと共演した『The Royal Family』で舞台デビューし、イヴニング・スタンダード賞新人賞を受賞。
「ウォリアークイーン」(03)で映画デビュー。「マイ・サマー・オブ・ラブ」(04)ではイヴニング・スタンダード英国映画賞新人賞に輝きます。
「Irresistible」(06)ではスーザン・サランドンと共演し、「プラダを着た悪魔」ではメリル・ストリープ扮する鬼編集長のアシスタント役を好演しています。
ナイジェル(スタンリー・トゥッチ)
『ランウェイ』編集部の男性社員。ミランダとともに長年ファッション業界で仕事をしてきた戦友のような存在です。
ミランダから評価をされないと落ち込むアンドレアに対し、誰もが憧れる素晴らしい職場で仕事ができているにも関わらず、努力を怠り甘えていると指摘します。
演:スタンリー・トゥッチ
1985年「女と男の名誉」で映画デビュー。「ビリー・バスゲイト」などに出演したのち、監督・主演も務めた「シェフとギャルソン、リストランテの夜」(96)でインディペンデント・スピリット賞新人脚本賞やサンダンス映画祭など数々の賞に輝きます。
以降、「地球は女で回っている」、「ロード・トゥ・パーディション」、「ターミナル」に出演、テレビでも活躍し、「ザ・ジャーナリスト」と「謀議」でゴールデン・グローブ賞を獲得しています。
ネイト(エイドリアン・グレニアー)
アンディの恋人。レストランの厨房で働いています。ジャーナリストを目指しファッションに無頓着な本来のアンドレアのことを愛しており、ファッション業界に染まっていくアンドレアにとまどいを感じています。
アンドレアがパリ出張に行くことを知ったことがきっかけで、2人の関係は悪化します。
演:エイドリアン・グレニアー
1997年「Arresting Gena」で映画デビュー。「ニコルに夢中」(99)では冴えない高校生を好演。その他、主な出演作は「セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ」、「ジャスティス」、「プラダを着た悪魔」など。
また、米ケーブル局HBOの人気TVシリーズ「Entourage」で映画スターに扮し、好評を博しています。
基本情報
受賞歴
最優秀主演女優賞(コメディ/ミュージカル) メリル・ストリープ
「プラダを着た悪魔」の見どころ
アンディの生き方
ジャーナリストを目指すためにニューヨークへやってきた田舎者のアンディが、最高のファッション雑誌『ランウェイ』編集長であり厳しく横暴な上司ミランダの元で奔走します。
最初はファッション業界をバカにし、服装にも気を遣っていなかったアンディですが、次第に仕事に対する責任と自覚を身につけていきます。
また、同時にファッション的にも洗練されていきます。洋服を着替え、メイクを変えたアンディは誰もが振り向くほどの美しい女性に変身します。
今までとは別人のようにバリバリ仕事をこなし、次第に認められていくアンディですが、最後には「ランウェイ」を退社する決断をします。
彼女の夢は最初から最後まで変わらず、ジャーナリストになること。
アンディは、人生においてどこに重きを置き、何を大切にするか、自分の信念に基づいて行動しています。
ハイブランド揃いの衣装と登場人物のスタイリング
映画の最大の見どころでもあるハイブランドの洋服の数々。プラダはもちろん、シャネル、ヴェルサーチ、ケイトスペードと、名だたるブランドが「これでもか!」というほど登場します。
華やかなファッション業界。 ブランド物の洋服を着こなせてこそ、“デキる女”の証しとばかりにブランド物を着まくる登場人物に目を奪われがちでますが、ストーリーはきらびやかなファッション業界誌の舞台裏をユーモラスに描いています。
また、冴えない主人公アンディが、一流ファッション誌の編集アシスタントとして奮闘しながら、どんどんおしゃれに変身していく姿は、この作品の大きな見どころのひとつです。
「ハイブランドとは?」
ハイブランドとは。ブランドの名前を聞いたら誰もが知っているのはもちろん、伝統や品質に非常にこだわりがある最上級のブランドをいいます。
シーズンごとのコレクションで大きく取り上げられるようにファッション界から絶大的な信頼があります。
ハイブランドが特集された雑誌や、ハイブランドの商品が多く登場するテレビドラマなどをおしゃれの参考にしている女子でも、実際、ハイブランドアイテムの値段は高いですよね?
これは、ブランド名が付いているから高くなっているわけではなく、素材選びや職人が一つ一つ手作業で作るなどこだわって製作されているから。
セレブや芸能人が身に着けているハイブランドアイテムは、ブームになることも度々あります。
『プラダを着た悪魔』名言集
『この仕事をできるのは私だけ』(ミランダ)
ミランダが編集長の座を奪われそうになった時のセリフ。このくらい自信を持って仕事をこなせるからこそ、彼女は今まで”RUNWAY”の編集長を立派に務め、ファッション界を代表する人物になることができました。仕事だけでなく、自分の好きなことや頑張っていることは自信を持って取り組むことが大切ですね。
『決めるのはアナタ』(ミランダ)
第一アシスタントのエミリーではなく、アンディをパリコレクションに連れていくと言う、ミランダですが、最後は自分で決めなさいと決断を迫ります。何かを捨て、何かを得る。作品の中でも印象強いセリフのひとつです。
『“ガッバーナ”のスペルを教えてもらえます?』(アンディ)
流行の最先端をいくファッション誌『RUNWAY』の電話対応にて飛び出た迷言です。記者志望ながらも疎いファッション業界で奮闘するアンディ。彼女が繰り出す、実直な会話劇にハマった人も多いのでは?
『“仕方なかった” 自分の決断じゃないわけか』(ネイト)
いつも「仕方なかったのよ」で済ますアンドレアに対する恋人ネイトの一言。このことがきっかけでアンドレアとネイトは別れてしまうことなります。あなたもつい「仕方なかった」で物事を済ませてしまうことはありませんか?しかし、「仕方なかった=自分の決断ではない、自分のせいではない」と聞こえます。大切な人との信頼関係を保つためにも、この言葉はできるだけ避けた方が良いかもしれませんね。
『努力してない 君は愚痴を並べているだけだよ』(ナイジェル)
上司のミランダに悩み、ナイジェルに泣きついたアンディに放った一言です。この後、ナイジェルが「ランウェイ」で働くことの意味について語ります。そして、彼が提案するコーディネートによって一気に輝いていくアンディに注目です。
「プラダを着た悪魔」トリビア
鬼編集長が参考にしたのはあの巨匠
メリル・ストリープが、悪魔と呼ばれた鬼編集長ミランダを演じるにあたって参考にしたと話したのは、なんと巨匠クリント・イーストウッドだそうです。
御歳84歳でいまだ現役、ハリウッドの重鎮クリント・イーストウッド監督ですが、彼の声を荒げない話し方を参考にしたと言うメリル。
大きな声で話さないことで、周りをその声に聞き入らせ、力のある人物であることを表現できるからだそうです。
また、劇中ほぼずっとヒールを履いて撮影に臨んだメリルですが、エミリー・チャールトン役を演じたエミリー・ブラントによると、「実は彼女はハイヒールが苦手」だったのだそうです。
アンディ役を勝ち取るためにとった行動とは?
『プラダを着た悪魔』といえば、アン・ハサウェイの出世作というイメージですが、当初のアンディ役には女優レイチェル・マクアダムスがキャスティングの最有力候補でした。
子役としても活動していたアン・ハサウェイですが、当時は今ほど大きな仕事は少なかったと言います。
そんな彼女はどうしても『プラダを着た悪魔』のアンディ役を射止めたくて、なんとFOX2000のオフィスにある庭の砂の上に「私を雇って」と書いたそうです。
結果、この役を演じたことで人生が変わるほどの人気が出た彼女。やり方はともかくとして、やる気をアピールすることは大事ということなのでしょう。
エミリー夫は『プラダを着た悪魔』を72回みた?
エミリー・ブラントは、夫ジョン・クラシンスキーとイギリスのTV番組に出演。本作の大ファンだというジョン・クラシンスキーは「72回くらいはみたね」とのコメントを残しています。
愛妻家が伝わってくるエピソードですが、エミリーは、「ある日帰宅したら、アンディの着まわしシーンをみていたの。そして、“オレのお気に入りの服はコレ!”と言ったのよ」
バラされてしまいます。
主演のアン・ハサウェイとエミリーは、おしゃれな衣装を着こなすため、激しいダイエットに取り組んだそうです。
2人は撮影中、常に空腹状態だったとか。そんな苦難を共に乗り越えた2人は、今も仲のいい友達だそうです
まとめ
今回は「プラダを着た悪魔」のご紹介でした。
きらびやかなハイファッションの世界と、ファッションを仕事にして戦う対照的な生き方の女性2人を描き、話題を読んだ作品です。
“キャリア”と“プライベート”は、どちらも人が現代社会で生きていく上で大切ありながら、なかなか両立することが難しいことですよね。
どちらが大切かというのは人それぞれで、答えなどないこの問題にあなたもいつか悩む時がくるでしょう。
今回の『プラダを着た悪魔』は、そんな時、悩みから抜け出すヒントをくれる映画になるかもしれません。
そして、この映画が今も多くの女性に支持されるもうひとつの理由は、映画を彩る華やかなハイブランドのファッションにあることは間違いないようです。
監督 デヴィッド・フランケル
脚本 アライン・ブロッシュ・マッケンナ
原作 ローレン・ワイズバーガー
製作 ウェンディ・フィネルマン
製作総指揮 カレン・ローゼンフェルト ジョー・カラッシオロ・ジュニア
出演者 メリル・ストリープ アン・ハサウェイ スタンリー・トゥッチ 他
音楽 セオドア・シャピロ
撮影 フロリアン・バルハウス
編集 マーク・リヴォルシー
製作会社 フォックス2000ピクチャーズ 他
配給 20世紀フォックス
公開 〔アメリカ〕 2006年6月30日 〔日本〕 2006年11月18日
上映時間 110分
製作国 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $35,000,000
興行収入 $326,551,094