これが本当に90年代の映画?映画界に映像革命を起こしたSFアクション「マトリックス」

これが本当に90年代の映画?映画界に映像革命を起こしたSFアクション「マトリックス」

今回ご紹介するのは、映画界に1つの革命を起こした作品として今でも高い人気を誇る「マトリックス」です。

1999年に公開され、大ヒットを収めた「マトリックス」
現実と仮想現実を行ったり来たりし、救世主ネオが世界を救うヴァーチャルでデジタルなSFアクション作品です。

従来のCGにはない、ワイヤーアクションやバレットタイムなどのVFXを融合した斬新な映像表現は映像革命として話題となりました。

今でも数々のネタが他の作品でリスペクトされていると同時に、現在見ても全く遜色がないと高い評価を受けている作品です。

今回は、その「マトリックス」をご紹介していきます。

あらすじ(ネタバレあり)

ソフト作成会社のプログラマーである主人公ネオは、一流のハッカーという裏の顔も持っています。ある日、ネオの元に届いたメールにより、ネオはナイトクラブに赴くことになります。

そこでネオはトリニティーと出会い、さらにモーフィアスとも出会います。そして、ネオは携帯電話でモーフィアスとともに、クラブから逃げ去ることを指示されます。

ネオにはエージェント・スミスという謎の人物による危機が迫っていたのです。ネオはエージェント・スミスに捕獲され、モーフィアスを逮捕することに協力するよう要請されます。

ネオはそれを拒絶します。エージェント・スミスらはネオに機械の虫を埋め込もうとしますが、これはネオの夢でした。
ネオはとモーフィアスから衝撃的な事実を教えられます。今ネオがいる世界は現実のものではなく、コンピュータが作り出した仮想世界であるということです。

人類はコンピュータとの戦いに敗れ、その結果、動力源として使われており、ネオ自身も仮想現実世界の中で動力源とされているというのです。

ネオはモーフィアスからこのまま仮想の世界で生きるか、現実の世界で目覚めるかの選択を迫られます。

ネオは現実世界で目覚める事を選びました。現実で目を覚ますとそこは船の中でモーフィアスが船の船長を務めていました。ネオは船の仲間として迎え入れられます。

そしてモーフィアスはネオにネオを迎えた理由を聞かせます。現実世界では人類は滅亡の危機に貧しておりモーフィアスは人類を救う救世主を探しています。

そして、ネオこそがその救世主であるというのでした。話の後、モーフィアスはネオに仮想世界の中での戦闘術を教え込みます。

しかし、その裏ではモーフィアスの船の一員であるサイファーが暗躍を図っていました。

サイファーの裏切りを知らないネオらは預言者オラクルを訪れたのち、エージェント・スミスらの待ち伏せにあいます。また、モーフィアスも拉致されます。

さらに、仲間を裏切ったサイファーによって、次々と仲間が消されていきます。結果、トリニティーとネオだけが命からがら現実世界に戻る事に成功します。

マトリックス2人

ネオはトリニティーと共に、モーフィアスを助けるべく再びマトリックスに潜り込みました。敵勢力をなんとかかいくぐり、2人はモーフィアスを助け出すことができました。

しかし、ネオの前にエージェント・スミスが立ち塞がります。激しい死闘を繰り広げますが、その実力差は大きく敗北を喫してしまいます。

しかしそんな時、トーマスに眠っていた真の力が覚醒しました。仮想世界の救世主であるトーマスは、凄まじい強さを発揮しエージェント・スミスを撃退しました。

一方、現実世界でも彼等に危険が迫っていました。マトリックスに入っている間無防備となってしまう体が狙われていたのです。

スミスを倒したトーマスとトリニティーは急いで現実世界へ戻り、戦艦内で何とかその敵を退けます。そしてネオは、仮想世界で圧倒的な力を手にしたのでした。

キャスト

ネオ/トーマス・A・アンダーソン(キアヌ・リーブス)

本編の主人公。マトリックスの世界では、トーマス・A・アンダーソンとしてコンピューター・ソフト会社に勤めています。

一方で、犯罪者に不法なプログラムを提供するハッカーとしても活動しており、ハッカーの時はネオを名乗っています。

演:キアヌ・リーブス
86年の「ドリーム・トゥ・ビリーヴ」で映画デビュー。以後、「危険な関係」、「ドラキュラ」、「リトル・ブッダ」などの大作にも順調に出演を続けます。

「スピード」の大ヒットと共に人気も急上昇。その決定打になったのが99年の「マトリックス」です。
以後の映像分野に多大な影響を与えたこの作品は、カルト的な人気を呼び世界中で大ヒット。人類の救世主ネオを演じたキアヌも一気にトップ・スターの仲間入りを果たします。

03年にはその続編となる「リローデッド」、「レボリューションズ」が立て続けに公開され、世界中で再び旋風を巻き起こします。

自らのバンド「ドッグスター」のベーシストとしても活躍。95、96年(この年に初アルバムを発表)と来日公演を果たしています。

弾よけ

モーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)

現実世界でAI(人工知能)と戦っている地球人のリーダーの1人。ホバークラフト「ネブカドネザル号」を拠点として活動しています。

預言者のオラクルから「救世主を見つける」と言われ、長年に渡って救世主を探し求めてきた。ネオを救世主と心の底から信じています。

演:ローレンス・フィッシュバーン
79年「地獄の黙示録」の少年兵士役で注目され、「ランブルフィッシュ」、「コットンクラブ」、そして「カラーパープル」と着実に実力をつけていきます。

91年の「ボーイズ’ン・ザ・フッド」で高い評価を得て翌年には舞台でトニー賞の助演賞を受賞。

「ティナ」ではアカデミー主演賞候補にもなりました。この作品から“ローレンス・フィッシュバーン”を名乗るようになり実力派性格俳優としての地位を確立。95年の「オセロ」で熱演し話題となりました。

99年には大ヒット作「マトリックス」で自身の個性を活かしたモーフィアス役を怪演しています。

トリニティー(キャリー=アン・モス)

モーフィアスたちとともにAI(人工知能)と戦う女性。黒髪のショートカットがトレードマークです。

国税局のコンピュータに潜入した過去があります。預言者のオラクルからは、自分が愛した人物が救世主であると言われていました。マトリックスの世界では、高い身体能力を見せます。

演:キャリー=アン・モス
20歳の頃に活動の拠点をヨーロッパに移しモデルとして活躍。90年代はじめから様々なTVドラマにゲスト出演し、その美貌で注目されます。

TVシリーズ“DARK JUSTICE”のレギュラーを獲得。その後もTV・映画両ジャンルでフィルモグラフィを重ねていきます。

99年、世界的メガヒット作「マトリックス」のヒロインに抜擢されたことで一気に脚光を浴び、出演オファーが殺到する人気スターとなりました。

2000年の『メメント』でインディペンデント・スピリット賞助演女優賞を、2006年公開の『スノーケーキを君に』でジェミニ賞助演女優賞を受賞しています。

サイファー(ジョー・パントリアーノ)

ネブカドネザル号の船員です。ネオより先にモーフィアスによって現実世界に連れ出されました。

苦しい現実世界の生活に不満を抱き、エージェントに「ザイオン」へのアクセスコードを知るモーフィアスを売り、自分はマトリックスに戻るという契約を結びました。

演:ジョー・パントリアーノ
アメリカニュージャージー州出身。1970年代後半からテレビに出演しはじめ、1983年の『卒業白書』あたりから映画にも多く出演するようになります。

テレビドラマ 『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』 にも出演し、2003年にはエミー賞を受賞しています。
逃亡者(93)、アンノウン(06)、ハッピー・アニバーサリー(18)など、これまで50本以上の映画に出演しています。舞台経験も豊富な名脇役です。

エージェント・スミス(ヒューゴ・ウィーヴィング)

エージェント3人のリーダー的存在。他のエージェントたちと違い、マトリックスやそこに住む人間達を明確に嫌悪しています。

マトリックスのサーバーと接続するイヤホンを自ら外した上で、マトリックスでの仕事からの解放を求める発言もしています。

演:ヒューゴ・ウォレス・ウィーヴィング
1984年にテレビドラマ『Bodyline』に主演し若手俳優として注目され、1983年『逆光の中の青春』で映画デビューします。

1991年『Proof』に盲目の写真家役で、1998年『The Interview』に犯罪被疑者役で出演し、オーストラリア映画協会賞主演男優賞を受賞。

『プリシラ』 、『マトリックス』三部作、『ロード・オブ・ザ・リング』三部作で国際的な知名度を得ますが、オーストラリア映画を愛し、現在もシドニーで舞台にも立っています。

オラクル(グロリア・フォスター)

老女の容姿を持ちます。モーフィアスら人間を導きます。「選択」を司り、人間の行動を理解・予測するために創られた直感プログラムです。

アーキテクトとは正反対の位置に立つ役割から、エグザイルという生き方を選択しています。

演:グロリア・フォスター
何もない男 (1964)で、主人公の(ダフ・アンダーソン)の父親と一緒に暮らすリーという女性を演じています。
また、『アイ・スパイ』『法と秩序』や『コスビー・ショー』(1987年)の2話に出演するなどテレビにも出演。

1995年にはメアリー・アリス(後に彼女の死後マトリックス映画で彼女を置き換えるために)と一緒に演じ、103歳のサディ・デラニーとしてブース劇場のブロードウェイで出演し、絶賛を受けます。

マトリックス(99)とマトリックスリローデッド(03)で予言者オラクルを演じています。

基本情報

基本情報

監督       ウォシャウスキー兄弟
脚本       ラリー・ウォシャウスキー アンディ・ウォシャウスキー
製作       ジョエル・シルバー

製作総指揮    バリー・M・オズボーン アンドリュー・メイソン ラリー・ウォシャウスキー 他

出演者       キアヌ・リーブス ローレンス・フィッシュバーン

音楽        ドン・デイヴィス ロブ・ドーガン ジャック・デンジャーズ 他
撮影        ビル・ポープ
編集        ザック・ステンバーグ

製作会社      ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ シルバー・ピクチャーズ
配給        ワーナー・ブラザース
公開        〔アメリカ〕1999年3月31日 〔イギリス〕1999年6月11日 〔日本〕 1999年9月11日
上映時間        136分
製作国           アメリカ合衆国
言語             英語
製作費            63,000,000ドル
興行収入               〔アメリカ・カナダ〕171,479,930ドル 〔世界〕463,517,383ドル 〔日本〕85億円

受賞歴

受賞歴
第72回 アカデミー賞
編集賞 ザック・ステンバーグ
視覚効果賞
音響賞
音響効果編集賞

「マトリックス」とは?

「マトリックス」とは?

本来は「子宮」を意味するラテン語(< Mater母+ix)に由来するMatrixの音写で(英語では「メイトリクス」)、そこから何かを生み出すものを意味します。

この「生み出す機能」に着目して命名されることが多く、子宮状の形状・状態に着目して命名される場合もあります。

日本語に翻訳する場合は「基盤」「基質」「発生源」「母体」などの訳語が当てられていますが、原語の「子宮」「母体」から強く感じられる「ものを生み出す機能」のニュアンスが伝わりにくく、結局、カタカナで「マトリックス」と表記されることがほどんどです。

世界中が驚愕した世界観

21世紀初頭に完成したAIの自立した知性にとてつもない恐怖を感じた人類は、あろうことか機械のエネルギー源である太陽光を遮るために地球の生態系ごと壊してしまいます。

しかし、それにより滅んだのは、機械ではなく人類の方でした。生き残った機械は自己増殖を続け、巨大な機械文明を造り上げていきます。

太陽が無くなった後、代わりのエネルギー源として機械が注目したのが「人間」です。機械は人間を栽培することで、エネルギーを得るシステムを構築します。

そのために造られたプログラムが、仮想現実「マトリックス」です。

「私たちが生きているこのリアルな現実こそが、実は仮想現実にすぎない」
「そこで人間は、システムの奴隷として生きている。奴隷であることに気づかぬまま・・・」

映画のこの世界観に、世界中が驚愕しました。

「目覚める者」だけが味わう孤独

仮想現実「マトリックス」内で暮らす人々は、脳が受信する電気信号によって認識されるセカイを、現実だと思い込んでいます。

それはいかにも人間らしい暮らしですが、すべては作り物にすぎないのです。

ほとんどの人間はそこに違和感を感じませんが、ごくまれにこのマトリックス空間に強烈な違和感を抱く人間たちが存在してきます。

彼らは、周囲の人間たちが生み出す予定調和に”逆行”するように、ひとつの疑問を突き詰めていくという点で共通しています。

「どうやらこの世界はほんとうの現実ではない」

「ならば、この目の前にある”現実”と呼ばれるものはなだ・・・?」

「真実が知りたい」

その違和感を持ち続けた者だけが、目には見えないマトリックスの虚構を見破り、「ほんとうの現実」に目覚める引き金を引く権利を得るのです。

「バレットタイム」と「ワイヤーアクション」

「バレットタイム」

『マトリックス』では今までにない撮影方法が採用されています。その撮影方法はバレットタイムと呼ばれ、もっとも有名なスローモーションの撮影方法です。

被写体の周囲にカメラをたくさん並べて、アングルを動かしたい方向にそれぞれのカメラを順番に連続撮影していきます。

被写体の動きはスローモーションで見えますが、カメラワークは高速で移動する映像を撮影する技術です。タイムスライス、マシンガン撮影 ともいいます。

このバレットタイムが使われたシーンはどれも躍動感があふれ、興奮必至のシーンとなっています。

ただ、この「バレットタイム」の欠点として準備作業にとても多くの労力を要し、現場での柔軟な変更というものが難しいことが挙げられます。

「ワイヤーアクション」

「ワイヤーアクション」とは、俳優やスタントマンがワイヤーロープに吊られた状態で演技をする映画や舞台ドラマの特殊撮影の一種です。

その手法は、まず俳優やスタントマンの身体にハーネスを装着し、カラビナなどでロープを取り付けます。

そして、そのロープをスタッフが人力で(もしくは圧縮空気を利用した機械を使って)引くことで、空中に飛び、回転するといったアクションシーンの撮影が可能になります。

これは長らく香港など中華圏の専門技術でしたが、デジタル合成の発展もあり『マトリックス』で香港のアクション監督ユエン・ウーピンが成功したことによって注目を集め、ハリウッドや世界各国で盛んに使われるようになりました。

撃ち合い

映画の中では、このワイヤーアクションによってネオやトリニティーをはじめとする仲間、エージェントたちが常人離れした存在であるということが際立たせていきます。

映画『マトリックス』は、これらの「バレットタイム」と「ワイヤーアクション」によって今までにない映像を創り上げることに成功しました。

「マトリックス」名言集

名言集

●「その疑問があなたをここに導いた。疑問は分かっているわね。私が分かっていたように」
(トリニティー)

モニターに現れた「白ウサギを追え」というメッセージの通り、白ウサギのタトゥーをした女性について行ったネオ。その先のクラブで、トリニティーという女性から話しかけられる。「マトリックス」とは何かはこのあとに判明します。

●「君は選ばれし者なのだ、ネオ。君は数年前から私を探してきたかもしれないが、私は生涯をかけて君を探してきた」(モーフィアス)

黒服のエージェントに捕まり、取り調べ中にヘソから虫のような機械を入れられたネオ。次の瞬間ベッドで目覚めたため、悪夢だったと安心します。その時、ネオの部屋の電話が鳴ります。相手は謎の人物モーフィアスでした。

●「残念だが、マトリックスが何かということを誰も説明できない。自分自身で見るしかない」(モーフィアス)

「マトリックスとは何か?」という疑問を抱いていたネオに、モーフィアスが言葉で説明しますが、言葉だけでは到底理解できないことがモーフィアスには分かっています。この後、モーフィアスはネオに真実を見る決意があるかを問います。

●「あなたは死なない。なぜなら、私はあなたを愛しているから。聞こえてる?愛しているわ」(トリニティー)

マトリックスから現実世界に戻る電話のあるアパートの一室にやって来たネオは、待ち受けていたスミスによって腹を撃たれます。

呼吸を止めたネオに語りかけるトリニティーの言葉。よみがえったネオは、これまでに以上に強力なパワーを発揮するようになります。

●「この世界の人々に、君たちが見せたくないものを見せる。君たちの存在しない世界だ。ルールも支配も、境界線もない」(ネオ)

「マトリックス」の最後の言葉です。ネオがマトリックスの世界の公衆電話から、AI(人工知能)に宣戦布告します。

電話を切ったネオが空を飛ぶシーンで、「マトリックス」は終わります。今やネオの能力は空を飛べるまでになっていました。

まとめ

いかがでしたか?
今回ご紹介した作品は「マトリックス」です。

「マトリックス」を観たことない方のためにも強調しておきたいのは、この作品を“1990年代のクラシック映画”として扱うにはあまりにも早すぎるということです。

むしろ、高度なテクノロジー社会とその因果応報によって訪れた終末世界&コンピュータの人類支配といった物語は、まさに現代社会の少し先の姿を映し出しているように感じられます。

今見返すと「マトリックス」は、当時はファンタジーとして映っていたはずの描写や設定も、格段にリアリティを増しています。

「マトリックス」の世界は、インターネットもAIも実地レベルでは普及していなかった公開当時の社会にとって
“まだ見ぬ遠い未来”だったと思われます。

しかし、今では、追いついたとは到底言えないものの、実世界は確実に「マトリックス」へと近づきつつあります。

「マトリックス」で登場する画期的なテクノロジーのわかりやすい例が、モーフィアスらザイオンの抵抗軍が活用する仮想空間のシミュレーションプログラムです。

劇中では、ネブカデネザル号に備え付けられたマシンを通して、精神のみを仮想空間に転送し、そこでの体験を記憶として体に刷り込ませる技術が使われていましたが、これは実世界でいうところのVR(バーチャル・リアリティ)に置き換えることができるでしょう。

現代では、SNSや仮想通貨といった不可視的(=マトリックス的)なテクノロジーが欠かせなくなりました。

その一方で、数えきれないほどの社会問題が生じていることも事実です。つまり『マトリックス』は、社会への警鐘を20年後の今も鳴らし続けているともいえます。

ネオが体を思い切り反らせて銃弾を回避するポーズが、あまりにもインパクトが大きかったため、アクションシーンに注目が集まりがちですが、ストーリーもとても面白く、十分見応えのある映画です。

まだ観ていない方は必見です。