今回ご紹介するのは、2019年に制作されたアメリカ映画「ミッドウェイ」です。
「インデペンデンス・デイ」「ホワイトハウス・ダウン」など、次々と大ヒット作を送り出してきたローランド・エメリッヒ監督が、第2次世界大戦のターニングポイントとなったミッドウェイ海戦を描いた戦争ドラマです。
1941年12月7日、日本軍は戦争の早期終結を狙う連合艦隊司令官・山本五十六の命により、真珠湾のアメリカ艦隊に攻撃を仕掛けます。
大打撃を受けたアメリカ海軍は、兵士の士気高揚に長けたチェスター・ニミッツを新たな太平洋艦隊司令長官に任命。
日米の攻防が激化する中、本土攻撃の脅威に焦る日本軍は、大戦力を投入した次なる戦いを計画します。
真珠湾の反省から情報戦に注力するアメリカ軍は、その目的地をハワイ諸島北西のミッドウェイ島と分析し、全戦力を集中した逆襲に勝負をかけます。
そしてついに、空中・海上・海中のすべてが戦場となる壮絶な戦いが幕を開けます。
キャストは、エド・スクレイン、ウッディ・ハレルソン、デニス・クエイド、豊川悦司、浅野忠信、國村隼などです。
今回は映画「ミッドウェイ」のあらすじやキャスト、見どころなどをご紹介します。
Contents
あらすじ(ネタバレあり)
アメリカ海軍駐日武官として東京に駐在していたエドウィン・レイトンは山本五十六から「日本を追い詰めるな」と警告を受けていました。
その数年後の1941年12月、日本海軍の機動部隊が真珠湾を空襲し、太平洋戦争が開戦します。
ハルゼー中将率いる空母エンタープライズが爆撃を受け、パイロットたちが日本艦隊を追うもすでにその姿はありませんでした。
カリスマパイロットのディック・ベストらは真珠湾の惨状を目の当たりにして愕然しました。
これにより太平洋艦隊司令長官キンメル大将は辞任。兵力とプライドに大打撃を追い、士気を喪失しかけていたアメリカ軍を再び奮い立たせるために、新たにニミッツ大将が任命されました。
同じく情報将校に任命されたレイトン少佐に山本の考えを読み、日本軍の動きを知らせるよう命じました。
1942年2月1日
アメリカ軍はマーシャル諸島の日本軍基地を爆撃。ディックの活躍で基地を破壊することに成功しました。
さらに4月18日にはドゥーリトル陸軍中佐が指揮する爆撃隊が日本を空襲し、日本に多大なダメージを負わせました。焦燥感を抱く山本五十六はさらに空母を珊瑚海へと進めました。
5月8日、日本軍はついにアメリカ空母レキシントンの撃沈に成功しました。
このころ、山本と南雲が中心となり、“AF”と暗号されたミッドウェイのアメリカ軍基地への計画を実行に移す準備に取りかかりました。
しかし、レイトン少佐が統括する戦闘情報班では、日本の通信を傍受して暗号を解読し“AF”は「南太平洋」を指していることを突き止め、ニミッツに報告します。
しかし、ニミッツは“AF”は「ミッドウェイ諸島」を指していると言い返します。ニミッツはあえて暗号化せずに“ミッドウェイで水が足りない”という電信を送りました。
そして、それを傍受した日本軍の無線から“AF”はミッドウェイをさしていることが判明しました。
一方、日本軍は空母4隻、航空機250機以上、後方には山本が乗る世界最大の戦艦大和も控えていました。
対するアメリカ軍は、ミッドウェイの北東に空母3隻を配備、潜水艦でも前哨戦を設けて、戦闘機や爆撃機を配備し守りを固めていました。
そして運命の6月5日。
アメリカ軍は日本艦隊を迎え撃ち、大きな犠牲を払いながら空母赤城・加賀・蒼龍を撃破します。
飛龍からの反撃でヨークタウンが大破しますが、ベストたち生き残りのパイロットによる最後の攻撃で飛龍も炎上し雷撃処分されます。
山本は「ミッドウェイ島を艦砲射撃すべき」という進言を却下し撤退します。
ハワイの米太平洋艦隊司令部は日本側の無線を傍受して、初めて自分たちが勝ったことを知ことになります。
アメリカ軍キャスト
ディック・ベスト大尉(エド・スクライン)
親友を真珠湾攻撃で亡くし、仇討ちに燃える空母エンタープライズの第6爆撃中隊長。
演:エド・スクライン
ラッパーとして活躍していたエド・スクラインは2012年に『PIGGY』というスリラー映画で俳優デビューを飾ります。
彼が知名度を上げたのは、アメリカで人気だったテレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』に出演してからです。
2011年から2015年にかけて8シーズン、全73話が放送され、エド・スクラインはシーズン3で傭兵部隊の司令官、ダーリオ・ナハーリスを演じました。
また、映画『トランスポーター イグニッション』(15)で初主演を務めました。
その後、マーベルコミック原作の『デッドプール』(16)で、フランシス・フリーマンを演じ、デッドプール役のライアン・レイノルズと共にMTVムービー・アワード 2016のベストファイト賞を受賞しました。
エドウィン・レイトン少佐(パトリック・ウィルソン)
日本軍の作戦を分析する太平洋艦隊情報主任参謀。
演:パトリック・ウィルソン
ブロードウェイ・ミュージカル『The Full Monty』と『Oklahoma』でトニー賞ミュージカル部門主演男優賞ノミネートを果たしています。
01年の「My Sister’s Wedding」で映画デビュー。「オペラ座の怪人」のヒットでその名が広く知られることとなります。
マイク・ニコルズ監督、アル・パチーノ、メリル・ストリープほか豪華競演によるTVミニシリーズ「エンジェルス・イン・アメリカ」ではエミー賞とゴールデン・グローブ賞で助演男優賞にノミネートされます。
その後も「ハード キャンディ」などの小品から大作の「ウォッチメン」と様々なジャンルの作品に出演し、実力派俳優として評価されています。
チェスター・ニミッツ大将(ウディ・ハレルソン)
太平洋艦隊司令長官。
演:ウディ・ハレルソン
85年「ワイルドキャッツ」で映画デビュー。この年、TVシリーズ“Cheers”にも参加し、エミー賞のコメディ部門の助演とコメディ賞を受賞。
「ハード・プレイ」(92)ではプロ級であるバスケの腕前を披露。翌年、「幸福の条件」で注目を受け、93年の衝撃作「ナチュラル・ボーン・キラーズ」で一躍有名になります。
「ラリー・フリント」では、実在の“ハスラー”誌創刊者を演じてアカデミー主演賞にノミネートされています。
ウェイド・マクラスキー少佐(ルーク・エヴァンス)
空母エンタープライズ航空群司令。
演:ルーク・エヴァンズ
2010年、『タイタンの戦い』でアポロンを演じ、以来アメリカのメジャー映画に出演するようになります。
『インモータルズ -神々の戦い-』ではゼウスを、『ホビット』三部作では弓の達人バルド(英語版)を演じています。
2012年に北村龍平監督のホラー映画『NO ONE LIVES ノー・ワン・リヴズ』に初主演。
2014年には『ドラキュラZERO』にヴラド・ツェペシュ役として主演しています。
2017年には『美女と野獣』の悪役ガストン役で出演しています。
ジミー・ドゥーリトル中佐(アーロン・エッカート)
陸軍航空軍。日本本土空爆を指揮。
演:アーロン・エッカート
ニール・ラビュートのデビュー作「In the Company of Men」(1997・日本未公開)でインディペンデント・スピリット賞新人俳優賞を受賞。
以降、「僕らのセックス、隣の愛人」、「ベティ・サイズモア」、「抱擁」などラビュート作品にはほぼ出演しています。
その名が広まることになったのは、ジュリア・ロバーツの恋人役ジョージを演じた「エリン・ブロコビッチ」からです。
その後も「ザ・コア」、「ペイチェック 消された記憶」、「サスペクト・ゼロ」など映画を中心に活躍しています。
日本軍キャスト
山本五十六海軍大将(豊川悦司)
連合艦隊司令長官。戦艦ヤマトに座乗。
演:豊川悦司
1989年に渡邊孝好監督の映画『君は僕をスキになる』のオーディションに受かり、加藤雅也の同僚役で映画初出演。以後、多数の映画・テレビドラマに出演します。
映画『きらきらひかる』(92)で岸田睦月役を務め、日本アカデミー賞、ヨコハマ映画祭などの新人賞を多数受賞し、エランドール賞新人賞も受賞。ブレイクを果たします。
1995年の『Love Letter』(岩井俊二監督作品)では秋葉茂役を務め、第19回日本アカデミー賞にて優秀助演男優賞と話題賞を受賞。
同年に『愛していると言ってくれ』にて耳が不自由な青年画家役として、障害を乗り越えながら愛を深めていく姿を演じ、最高視聴率28.1%を記録しました。。
山口多聞少将(浅野忠信)
第二航空戦隊司令官。空母飛龍に座場。
演:浅野忠信
1990年(平成2年)、『バタアシ金魚』で脇役として映画デビューを果たします。
1996年(平成8年)には、『Helpless』で映画初主演。活動の場は国内にとどまらず、『wkw/tk/1996@/7’55”hk.net(英語版)』(96)、『孔雀 KUJAKU』(99)などでも主演を務め、国際的にも注目を高めていきました。
2008年『モンゴル』が第80回アカデミー賞外国語作品部門にノミネート。2011年には『マイティ・ソー』で、初のハリウッド映画に出演。新境地を開きます。
主演作「岸辺の旅」(15)、『淵に立つ』(16)が第69回カンヌ国際映画祭・「ある視点」部門で審査員賞を受賞。2年連続で主演作が同部門で受賞しています。
南雲忠一中将(國村隼)
第一航空艦隊司令長官。空母赤城に座場。
演:國村隼
1981年、『ガキ帝国』(井筒和幸監督)で映画デビュー。その後、数々の映画、ドラマに出演します。
1989年『ブラック・レイン』にヤクザ役で出演、リドリー・スコット監督と松田優作から映画俳優としての表現について影響を受けます。
1997年、河瀨直美監督が第50回カンヌ国際映画祭で日本人初のカメラ・ドールを受賞した『萌の朱雀』では田原孝三役で映画初主演。
長らく映画中心の活動をしており、阪本順治や崔洋一の作品には常連出演しています。
基本情報
ミッドウェイ海戦とは?
ミッドウェイ海戦とは?
ミッドウェイ海戦(Battle of Midway)は、第二次世界大戦(太平洋戦争)中の1942年(昭和17年)6月5日から7日(6月3日から5日とする見解もある)にかけて、中部太平洋上のアメリカ合衆国領ミッドウェイ島付近で行われた海戦のことです。
同島攻略をめざす日本海軍をアメリカ軍が迎え撃つ形で発生。日本海軍空母機動部隊とアメリカ海軍空母機動部隊および同島基地航空部隊との航空戦の結果、日本海軍は投入した空母4隻とその艦載機約290機の全てを喪失します。
これ以降、第二次世界大戦の主導権はアメリカに奪われたことから、ターニングポイントの戦いともいわれています。
その後の日本とアメリカ
空母4隻とその搭載機を一気に失ったことは日本軍にとって大きな痛手で、その後しばらくは主力空母2隻となり、守勢に転じてしまいます。
また、後継者の育成が順調に進まなかったため、次第にベテランパイロットも失われていきます。
大敗北を喫した司令部の責任は問われず、その後も指揮を取り続けます。合わせて、戦果の水増しが行われ、国民には真相が語られないまま戦争が続いていくことになります。
アメリカ軍も損害を受けましたが、真珠湾攻撃に参加した空母を撃沈することでその報復を果たしました。
そして、開戦より半年、快進撃を続ける日本軍を止めることができました。それにより、戦前より建造を進めていた大型空母を配備するまでの時間を稼ぐことができました。
大戦後期には空母の集中運用が可能になり、マリアナ沖海戦やレイテ沖海戦では大機動部隊により日本軍を圧倒しました。
エメリッヒ版「ミッドウェイ」の見どころ
1976年版「ミッドウェイ」
1976年の『ミッドウェイ』は、アメリカ建国200周年記念を冠に製作された作品です。
そのためチャールトン・ヘストンやヘンリー・フォンダ、ロバート・ミッチャム、そして三船敏郎ら往年の大スターが多数登場するという豪華なキャスティングになっています。
しかし、 肝心の戦闘シーンに関しては、新規に撮影された映像はほとんどなく、戦争中の記録映像や既存映画からのフィルム映像の一場面を再構成しています。
当時のアメリカはベトナム戦争の莫大な戦費その他により経済的に疲弊していて、大がかりなセットや実機・実艦を駆使しての戦闘シーン撮影は予算的に無理だったのかもしれません。
エメリッヒ版「ミッドウェイ」
エメリッヒ監督といえば『インデペンデンス・デイ』シリーズ(96、16)や『GODZILLA』(98)、『デイ・アフター・トゥモロー』(04)に『ホワイトハウス・ダウン』(13)などなど、とにかくド派手なアクション映画ばかり手がけてきた“破壊の匠”です。
今回の「ミッドウェイ」は、日米開戦前の緊張感あふれる空気を描き、そのまま真珠湾攻撃のシーンにつなげています。
また、あからさまに偏見や憎悪を煽るような描写もないところは、ドイツ出身のエメリッヒならではの客観性が奏功していると言えます。
76年版『ミッドウェイ』は、キャストの豪華さの割に資料映像の切り貼りで製作された残念な映画として語られることが多いですが、さすがCGの多用を得意とするエメリッヒ版の映像はすさまじい迫力です。
巨大空母からの発進と着陸。空中でのダイナミックな飛行など、戦闘機のアクションがとにかく圧巻。戦艦の間をハイスピードですり抜け、ピンポイントで爆撃するシーンは、まるでパイロットになったような感覚です。
巨大なセットのおかげで違和感のあるシーンはなく、是非とも大スクリーンで観たい作品です。
ローランド・エメリッヒ監督 インタビュー
──20年前に「ミッドウェイ」の映画化を思いついたそうですが、きっかけを教えてください。
「20年以上前、ミッドウェイに関するドキュメンタリーを観たこと。そして僕の叔父がドイツ軍の戦闘機パイロットだったことで、映画化を構想し始めた。
さらに、子供時代から第二次世界大戦の空中戦には興味があった。でもマイケル・ベイの『パール・ハーバー』が始動したりして、何度か企画は中断した。ようやく5年ほど前に、父親がネイビーという脚本家に出会って、製作が動き出したのさ」
──日本人キャストの起用と演出は、あなたにとっても新鮮だったのでは?
「(豊川)悦司は最初、山本五十六がアメリカ映画でどう描かれるのかナーバスになっていた。だから僕は日米のバランスをとって演出すると説得した。
僕にとっての五十六のイメージは、知的な戦略家でエレガントな人物。そのエレガントの面で悦司以外に考えられなかった。日本人俳優との仕事は、セリフを理解できなくても、どのテイクが最高なのかはわかったので、僕にとって新たな発見だったね」
「ミッドウェイ」の評価
この作品は批評家からの賛否両論がありました。
映画批評集積サイトのRotten Tomatoesには141件のレビューがあり、支持率48%、平均点は10点満点で5.23点となっています。
サイト側による批評家の見解の要約は「『ミッドウェイ』は現代の特殊効果によりバランスのとれた視点で有名な物語を再訪するが、その脚本は褒められたものではない。」となっています。
Metacriticには28件のレビューがあり、加重平均値は47/100となっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は「ミッドウェイ」をご紹介しました。
映画は、時代背景など説明等なく急に始まります。
冒頭の奇襲が真珠湾攻撃。ミッドウェイ海戦はその1年後のお話です。
詳しい時代背景など一切語られることなく話が進められていくので、観る前にある程度の時代背景は理解しておく必要があるかもしれません。
これまでアメリカとの戦いは、資源と軍備に勝るアメリカの一方的な争いという認識でいましたが、作品ではパール・ハーバー直後のアメリカの動揺も描かれており、大国アメリカをしても、当時の日本軍に少なからぬ脅威を感じていたことがとても新鮮でした。
太平洋戦争の映画が描かれるとき、日本軍はほとんどが悪として表現されますが、この映画は日本軍にも正義があって戦ったという監督の思いが伝わります。
しかし、確かに両軍のドラマが描かれていますが、米軍側は、若いパイロット、技術兵らの友情、身を案じる家族との愛など、我々目線の人物のドラマがあるのに対し、日本側の描写は「軍上層部」だけです。
この展開で、どちらにドラマ性を感じるか、より感情移入できるかは、大きく違うと思いました。日米双方といってはいますが、結局はアメリカ映画だなと感じました。
「ストーリーが薄い」、「時代考証が甘い」、「中国資本のせいで内容が歪められている」などなど、辛口のレビューも多い作品ですが、ハリウッドの破壊王エメリッヒ監督が手がける戦闘シーンは必見です。
緻密で大胆に大画面を余すところ無く使い、それでいてCGと現実の映像の見分けがつかない。特に急降下爆撃のシーンは圧巻。映画史に残るシーンと言えるでしょう、それだけでも十分観る価値のある作品だと思います。
監督 ローランド・エメリッヒ
脚本 ウェズ・トゥック
製作 ローランド・エメリッヒ ハラルド・クローサー
製作総指揮 マーク・ゴードン マルコ・シェパード ウェズ・トゥック 他
出演者 エド・スクライン パトリック・ウィルソン 豊川悦司 浅野忠信 國村隼
音楽 トーマス・ワンダー ハラルド・クローサー
撮影 ロビー・バウムガートナー
編集 アダム・ウルフ
製作会社 サミット・エンターテインメント セントロポリス・エンターテインメント
配給 〔アメリカ〕 ライオンズゲート 〔日本〕 キノフィルムズ
公開 〔アメリカ〕 2019年11月8日 〔日本〕 2020年9月11日
上映時間 138分
製作国 アメリカ合衆国
言語 英語 日本語
製作費 $59,500,000
興行収入 〔アメリカ〕 $56,846,802 〔日本〕 4億円〔世界〕 $127,420,861