建築物に備えられている建築設備に関する知識や技術を持っている、建築設備士になるための試験について取り上げさせて頂きました。
建築士に対して助言ができることを示す国家資格です。
建築設備士が設計を行うことはなく、建築士に助言を行います。
Contents
適用する仕事
建築設備士の仕事の内容は、建築士に対して建築設備の設計の助言をしたり、工事監理の助言、工事に対する助言をすることです。
建築士が建築設備士に助言を受けたときは、建築確認申請書等の書類にそのことを明示しなければならない決まりもあります。
建築確認申請書とは、新築や増改築のときにその建築物が建築基準法や条例等に適合しているかのチェックを受けることが目的の、建築主が役所などに提出する書類のことです。
この書類の記載欄は、平成19年に少し変更がありました。
確認申請書の建築設備士の記載欄が充実してきています。
建築設備の設計や工事監理のときに、建築士が意見を聞いた建築設備士は、その責任や意見を述べた立場を明確にするため、氏名や勤務先、その所在地、電話番号、登録番号、意見を聞いた設計図書の記載ができるようになりました。
建築設備士の一般的な勤務先には、民間の建築会社や設計事務所、設備機器メーカー、不動産会社、ビル管理会社、保全公社などがあります。
ここで保全公社とは、公共・公益施設の維持保全に関する調査研究をして、成果を一般に普及するとともに、公共・公益施設の適正な維持管理体制の整備や維持保全業務等を行なって、公共・公益施設の安全性や利便性を高めて市民福祉の増進に寄与することを目的としています。
おおよその年収とキャリアパス
建築設備士の平均年収は、おおまかですが500万円から800万円くらいです。
年収に幅があるのは、たいていは企業の規模です。
大手企業だと年収は高いことが多いですが、中小企業では年収は大手企業よりは低いことが多いです。
働く環境についてですが、まずは資格試験を受ける条件として、実務経験が必要です。
学校を出たばかりの人は、まずは建設会社や設計事務所、設備工事会社、ビルメンテナンス会社などに就職して経験を積みながら、建築設備士の試験を受ける場合が多いでしょう。
そして、建築設備士の資格取得後も同じ会社で研鑽を積む例もありますが、建築業界内の別の企業に転職される方もいます。
大手の建築系の会社では、社内に設備部門や設備設計部門を置くところが多いです。
そういった会社では、建築設備士を資格を持つ人が必要です。
大規模な建築物や特殊な建築物などを手掛けている企業では、特に建築設備士の需要が大きく、大手の建築業者でも建築設備士を求めています。
認可団体
国土交通省認定の国家資格です。建築の分野の資格になります。
受験条件
必要な受験資格は次のいずれかが必要です。
- 学歴を有する者(大学、短期大学、高校、専修学校等の正規の建築、機械又は電気に関する課程を修めて卒業した者)
- 1級建築士、1級電気工事施工管理技士、1級管工事施工管理技士などの実務経験2年以上の資格所得者
- 建築設備に関する実務経験を有する者
それぞれに応じて建築設備に関する実務経験年数が必要です。
学歴ごとの必要な実務経験は以下の通りです。
- 4年生大学の建築、機械、電気卒業の場合:実務経験2年以上
- 短大、高専、旧専門学校の建築、機械、電気卒業の場合:実務経験4年以上
- 高校、旧中学校の建築、機械、電気卒業の場合:実務経験6年以上
- その他:実務経験2年から6年以上(学校や専攻により異なります)
ただし、次の資格を保有していると実務経験は2年以上で済みます。
- 一級建築士
- 一級電気工事施工管理技士
- 一級管工事施工管理技士
- 電気主任技術者(第一種、第二種又は第三種)
- 空気調和・衛生工学会設備士
そして、実務経験のみの場合だと9年以上の実務経験が必要になります。
合格率
第一次試験の学科と、第二次試験の製図の合格率は以下の通りです。
学科
令和3年 | 32.8% |
令和2年 | 25.7% |
令和1年 | 26.8% |
平成30年 | 31.2% |
平成29年 | 28.9% |
製図
令和3年 | 52.3% |
令和2年 | 41.4% |
令和1年 | 54.3% |
平成30年 | 52.0% |
平成29年 | 52.2% |
1年当たりの試験実施回数
一次試験、二次試験どちらも年に1回ずつ実施されています。
例年、一次試験が6月の第3日曜日、二次試験が8月の第3日曜日となっています。
試験科目
第一次試験と第二次試験の内容をご説明します。
第一次試験[学科]
四肢択一問題です。試験の形式はマークシートになります。
試験科目 | 合格基準 |
建築一般知識 27問 | 13問以上正答 |
建築法規 18問 | 9問以上正答 |
建築設備 60問 | 30問以上正答 |
合計 105問 | 70問以上正答 |
試験時間は建築一般知識と建築法規の合計が2時間30分で、建築設備の試験時間が3時間30分です。
第二次試験[設計製図]
建築設備基本計画及び建築設備基本設計製図
採点方式と合格基準
全て選択問題で出題されているので、採点方式は正誤判定と思われます。
合格基準点は3年分記載しておきます。
令和3年
建築一般知識(27問) | 13点 |
建築法規(18問) | 9点 |
建築設備(60問) | 30点 |
総得点(105問) | 70点 |
令和2年
建築一般知識(27問) | 13点 |
建築法規(18問) | 9点 |
建築設備(60問) | 30点 |
総得点(105問) | 67点 |
令和元年
建築一般知識(30問) | 12点 |
建築法規(20問) | 10点 |
建築設備(50問) | 22点 |
総得点(100問) | 60点 |
取得に必要な勉強などの費用
繰り返しますように、建築設備士試験は、第一次試験(学科)と第二次試験(製図)があります。
学科は参考書を買って自分で勉強するだけでも、しっかり勉強すれば合格することができます。
合格率を上げたいのであれば、資格学校に通うのも良いと思います。
参考書の価格を何点か挙げさせて頂きます。
建築設備士 学科問題解説集 令和4年度版
- 出版社名:建築資料研究社
- 書籍名:建築設備士 学科問題解説集 令和4年度版
- 価格:¥4,180(税込)
令和3年から平成29年までの過去5年間の問題を全設問枝解説しています。
令和3年から平成29年の過去5年分の本試験問題を収録しています。
科目別に分類して、各設問毎に詳細な解説が付いています。
令和4年度版 建築設備士 学科試験 問題解説
- 出版社名:総合資格学院
- 書籍名:令和4年度版 建築設備士 学科試験 問題解説
- 価格:¥3,630(税込)
令和2年から平成28年までの過去5年分の本試験が収録されています。
コンパクトで持ち運びしやすいA5サイズです。
応募者全員に最新「令和3年度学科試験」の問題・解説冊子をプレゼントしています。
合格対策 建築設備士試験[第3版]学科[建築一般知識・建築法規]
- 出版社名:地人書館
- 書籍名:合格対策 建築設備士試験[第3版]学科[建築一般知識・建築法規]
- 価格:¥5,720(税込)
令和1年から平成25年の建築一般知識及び建築法規の全問題が収録されています。
能率的な学習ができるように、各章末に学習ポイントを記載して技術的な知識を簡潔にまとめました。
知識の確認のために、正誤を問う形式の例題を記載しました。
第五版 建築設備士120講
- 出版社名:学芸出版社
- 書籍名:第五版 建築設備士120講
- 価格:¥3,300(税込)
試験創設時から過去問を知り尽くす筆者によるオリジナルベスト演習問題がついています。
最新法規及び近年の出題傾向を徹底的に分析して改定を実施しています。
二次試験(製図)は、独学だけでは難しいと思います。講習会に参加するのが良いと思います。
それから、個人差はありますが、建築設備士の資格を取るために必要な勉強時間の目安を以下に示します。
建築系の他の資格を持っていない場合、120時間から150時間。
出題に共通分野がある資格を持っている場合、70時間から90時間。
共通分野のある資格とは、一級建築士、二級建築士、1級管工事施工管理などです。
受験料
受験手数料は36,300円です。
この他に、ネット受付事務手数料が必要です。
受験申込方法
令和3年試験から、受験の申し込みは原則としてインターネットによる受付だけになっています。
ただし、インターネットによる受験申込が行えない理由がある場合(身体に障がいがあってインターネットの利用ができない等)には、別途受付方法が案内されます。
その場合は、受付期間に間に合うように、決められた日までに公益財団法人建築技術教育普及センター本部までお問い合わせが必要です。
また、受験の申し込みに必要な書類等は「受験区分」「受験資格区分」によって違います。
確認して、受験期間に間に合うように準備して申し込みが必要です。
まとめ
国家資格である建築設備士試験について、取り上げさせて頂きました。
この資格を持つ人は、建築士に対して設計の助言をしたり、工事監理の助言、工事に対する助言をします。
受験するために実務経験が必要なのも、この試験の特徴の一つです。
学校を出てから、建設会社や設計事務所などで経験を積みながら、資格試験を受ける場合が多いと思います。
この資格を持つ人の働く場所ですが、実務経験のために働いていた会社から他へ移らずに、そのまま研鑽を積む例もありますが、取得した資格を活かして転職する例も見受けられます。
大手の建築系の会社には、社内に設備部門や設備設計部門を置くところ多いので、そういった会社へ移るのも1つの手でしょう。
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