「えんとつ町のプペル」異端者・西野亮廣が投げかける現代社会への課題とは?

「えんとつ町のプペル」異端者・西野亮廣が投げかける現代社会への課題とは?

今回ご紹介する作品は、ベストセラー絵本「えんとつ町のプペル」をアニメ映画化したものです。

絵本「えんとつの町プペル」は、お笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣のプロデュースにより、イラスト、着色、デザインなど総勢33人のクリエイターによる分業体制、クラウドファンディングを使い資金を募って制作されました。

煙突だらけの「えんとつ町」。そこかしこから煙が上がるその町は黒い煙に覆われ、住人たちは青い空や星が輝く夜空を知らずに生活していました。

ハロウィンの夜、この町に生きる親を亡くした少年ルビッチの前にゴミ人間プペルが現れます。

原作の西野が脚本、製作総指揮を務め、監督は伊藤計劃原作の「ハーモニー」で演出を務めた廣田裕介です。

アニメーション制作は「海獣の子供」「鉄コン筋クリート」などで高い評価を受けるSTUDIO4℃。が担当しています。

今回は「えんとつ町のプペル」のあらすじや、見どころなどをご紹介していきます。

あらすじ(ネタバレあり)

舞台は4000mの崖にかこまれた、えんとつだらけの町、朝から晩までけむりがもっくもく、空はいつもけむりに覆われていました。

町の住人は煙の向こうに何があるのかを知りません。しかし、えんとつ掃除屋のルビッチだけは星の存在を信じていました。

ルピッチ

そんなある日の夜、空から赤い塊がゴミ山に落ち、そこからゴミ人間が生まれます。ハロウィンの日にルビッチはゴミ人間に出会い、「ハロウィン・プペル」と名付け友達になります。

この町の統率者レター一族と参謀トシアキはプペルを危険人物とみなします。

彼らに追われながらも、心を通じ合わせたルビッチはプペルに対し、煙の向こうには星があると信じていることを、誰にも話さないという約束で打ち明けます。

ルビッチの父親は紙芝居で星の存在を語り続けたルビッチの父でしたが、街の人からは嘘つき扱いされ最後には星を見ようとして海に落ちたと言われていました。

ルビッチはこの話をプペルに内緒にしてくれと頼み、プペルは了承します。しかし、ある時プペルを庇おうとしていじめっ子のアントニオにうっかり話してしまいます。

ショックを受けたルビッチはプペルに会いにいき、どうしてアントニオに秘密を話してしまったのか、プペルのせいでダンさんが襲われてしまった、毎日洗ってあげているのにプペルはすぐに臭くなると罵り、絶交宣言をします。

しかし、しばらくしてプペルが会いにきて、ルビッチの父親の形見のブレスレットを見つけたと言いました。

ブレスレットを見つけ出してくれたプペルに、ルビッチは謝り改めて友情を確認し合いました。

雨の降るある夜、渡したい物があるとプペルはルビッチの自宅を訪れます。 やりとりの最中、ある事がきっかけでプペルの心臓が大きく動き出します。

そして、心臓に引き寄せられるように海からボロボロになった巨大な船が現れます。

町の人たちは、怪物が海から打ち上げられたとパニックに陥る中、ルビッチとアントニオだけは気づきました。 ルビッチの今は亡き父親ブルーノが作った紙芝居「えんとつ町のプペル」に描かれていた船の絵とよく似ていることに。

ルビッチとプペルは、鉱山泥棒スコップの元を訪れます。スコップは、2人に「中央銀行」の秘密を打ち明け、大量の無煙爆弾をくれました。

ルビッチとプペルは風船に大量の無煙爆弾を括り付け、巨大な気球に改造した船に積み込みました。

異端審問官たちが駆け付けてきまいたが、ルビッチを応援する住民やえんとつ掃除屋の仲間たちがくい止めます。

ビッチとプペルは上空へと浮上していきます。煙の中は暴風が吹き荒れていましたが、2人は暴風に無煙爆弾を括り付けた風船を放って爆発させ、煙を蹴散らす作戦に打って出ました。

風船は狙い通りに大爆発を起こし、爆風で上空の黒い煙は跡形もなく吹き飛ばされていきました。

上空には眩い光を放ち輝き続ける無数の星空がどこまでも広がっていました。ルビッチは父の果たせなかった夢を叶えたのです。

キャスト

プペル(声:窪田正孝)

主人公。配達屋がゴミ山に落とした心臓によって生まれたゴミ人間です。外見も言葉も面白く、憎めない性格の持ち主です。ひょんな事から出会ったルビッチにハロウィン・プペルと命名され彼の友だちになります。

窪田正孝
2006年4月、フジテレビ系深夜ドラマ『チェケラッチョ!! in TOKYO』で初主演を務め俳優デビュー。

2008年、『ケータイ捜査官7』で再び主演に選ばれます。シリーズ監督をつとめた三池崇史を初め、金子修介、湯山邦彦、押井守などが監督陣として名を連ね、放送が1年間続く隠れた人気ドラマとなります。

2012年6月、『平清盛』に平重盛役でNHK大河ドラマに初出演。2014年上半期放送のNHK連続テレビ小説『花子とアン』の出演で知名度が上がります。
ORICON STYLEの「2015ブレイク俳優」では、首位を獲得。年末に発表された「Yahoo!検索大賞」でもパーソンカテゴリーの俳優部門を受賞しました。

2020年前期のNHK連続テレビ小説『エール』では作曲家の古関裕而をモデルにした主人公を務めます。
この年の活躍が認められ、将来有望な若手俳優に送られるエランドール賞新人賞を受賞。

ルビッチ(声:芦田愛菜)

10歳の少年。左右に見える葉がとても愛らしい男の子です。
お母さんと2人暮らしで、えんとつそうじ屋で家計を助け、亡くなったお父さんの『煙のうえにはホシがある』を信じています。プペルと出会って彼の友だちになります。

プペル

芦田愛菜
2009年『ABC 家族レッスン ショートムービー2“だいぼーけんまま”』で子役デビュー。

2010年テレビドラマ『Mother』に出演し、実母からネグレクトを受ける少女を熱演。「第65回ザテレビジョンドラマアカデミー賞」など、新人賞を多数受賞します。

2011年4月にテレビドラマ『マルモのおきて』で連続ドラマ初主演、ゴールデン帯の連続ドラマ史上最年少での主演となります。

2012年1月に前年に出演した映画『うさぎドロップ』と映画『阪急電車 片道15分の奇跡』で「第54回 ブルーリボン賞 新人賞」を史上最年少で受賞。

2014年(平成26年)1月期ドラマ『明日、ママがいない』にて、連続ドラマ初の単独主演、また、同年6月公開の映画『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』で映画初の単独主演を務めます。

2018年(平成30年)、NHK連続テレビ小説『まんぷく』にて史上最年少で朝ドラのナレーションを務めています。

ブルーノ(声:立川志の輔)

ルビッチの父親。町でただひとりの漁師。冬の波に飲まれて亡くなりました。好奇心旺盛かつ照れ屋で、嬉しいことがあると人差し指で鼻の下をこする癖があります。
生前ルビッチに「信じぬくんだ。たとえ一人になっても」という言葉を残しています。

ローラ(声:小池栄子)

ルビッチのお母さんで、明るく優しい性格をしています。ローラは体が弱く、車いす生活を送っています。

スコップ(声:藤森 慎吾)

スコップは、25歳の炭坑夫でおしゃべりな鉱山泥棒です。スコップはルビッチと同じく星の存在を信じています。

アントニオ(声:伊藤沙莉)

ハロウィンパーティーに参加していた大柄な体格の少年です。ジャック・オー・ランタンに仮装しました。デニスが風邪をひいてしまったことで、プペルと一緒に遊んでいたルビッチの事を責めていました。

レベッカ(声:諸星すみれ)

アントニオの仲間の少女。魔女に仮装していました。

配達屋さん

夜空を駆ける配達屋。煙を吸って咳き込んで、配達中の心臓を落としてしまいます。

基本情報

基本情報

監督         廣田裕介
脚本         西野亮廣
原作         西野亮廣

製作         北橋悠佑 福山亮一 田中栄子
製作総指揮      西野亮廣

出演者        窪田正孝 芦田愛菜 立川志の輔 小池栄子 藤森慎吾 野間口徹 伊藤沙莉

音楽         小島裕規 坂東祐大
主題歌         HYDE『HALLOWEEN PARTY -プペル Ver.-』 ロザリーナ『えんとつ町のプペル』

編集          廣瀬清志
制作会社         STUDIO 4℃ 吉本興業
配給           東宝 吉本興業

公開             〔日本〕 2020年12月25日
上映時間          101分
製作国               日本
言語                                    日本語
興行収入                            27.0億円

受賞歴

受賞歴
第44回日本アカデミー賞
優秀アニメーション作品賞

「えんとつ町のプペル」の原作

映画『えんとつ町のプペル』は、西野亮廣さんが手掛けた絵本が原作となっています。

原作絵本の『えんとつ町のプペル』は2016年に発売され、発行部数は50万部を突破し、大人も泣ける絵本として大ヒットしました。

『えんとつ町のプペル』は全10章で構成されており、3章から5章が絵本として最初に出版されています。

絵本の原作者・西野亮廣さんは、もともと映画の構想を先に考え、絵本は映画の一部をまとめたものとして製作しました。

映画『えんとつ町のプペル』は、絵本に登場しないキャラクターやえんとつ町の成り立ちなど全10章の全てが描かれています。

この絵本は、チームで得意分野を持ち寄る『分業』によって制作され、絵本業界の常識を覆しました。また、絵本人気の火付け役ともなりました。

西野亮廣さんは、この物語を『夢を語れば笑われて、行動すれば叩かれる、現代社会の風刺』と言っています。

集団生活で同調することは大切なことですが、それが全てではないことを教えてくれます。

日本語と英語の2か国語で描かれているのも特徴的な絵本です。

「絵本作家」西野亮廣

西野亮廣の略歴

1999年、梶原雄太とキングコング結成。吉本総合芸能学院 (NSC) に22期生として入った時は、別の相方と「グリーングリーン」というコンビを組みボケを担当していました。

2001年、『はねるのトびら』のレギュラーに選ばれます。番組内ではツッコミ役であり、各コーナーで進行役を務めています。

タモリからのアドバイスをきっかけに絵本作家を志し、独学で絵を学びます。

初の作品となる絵本『Dr.インクの星空キネマ』を2009年1月26日に発売。にしの あきひろ名義で絵本作家としてデビューします。

2015年12月5日から20日まで、東京・銀座のREIJINSHA GALLERYにおいて個展「ニシノアキヒロ展」を開催。

2016年1月頃、オンラインサロン「おとぎ町商工会(現・西野亮廣エンタメ研究所)」を開設。

2020年12月25日、映画「えんとつ町のプペル」が全国上映されます。

西野亮廣エンタメ研究所

西野亮廣はオンラインサロンを運営しています。西野が考えるエンタメの未来や、取り掛かっているプロジェクトを紹介する会員制のコミュニケーションサロンです。

サロンメンバーは、西野亮廣が試行錯誤しているプロジェクトを、一般の人より前に知ることができます。

月額980円(税別)と比較的安価に参加できます。会員数は約7万人で、年商8億円を超えると言われています。

西野亮廣にアンチが多いのは?

マルチに活躍している西野さんですが、「アンチ」が多いことでも有名です。
人当たりも良さそうですし、性格が悪そうにもみえませんが、なぜか嫌われてしまうことが被いようです。

その理由として、まず西野さんのオンラインサロンが「宗教のようだ」と言われていることです。

確かに、オンラインサロンに対し、「お金を払って働かされている」「マインドを洗脳されている」というイメージを持たれている方が一定数いるのも事実です。

船

西野さんのオンラインサロンでは、西野さんの持つ思考やビジョンを間近で感じ、学んでいくことができるコミュニティです。

オンラインサロンのメンバーになる方は、何らかの上昇志向を持っていたり、自身の成長を望んでいる人が多いです。

ですが、内容がわからない人からみたら、それが「洗脳を受けている」ように見えるのかもしれません。

また、西野さんには隙がなさすぎると言われています。
西野さんの言動は、やっていること、やろうとしていること、考え方に筋が通っていて、隙がありません。
口だけでなく、しっかり有言実行もしています。絵本制作、YouTube活動、芝居の脚本書きや個展開催など、さまざまな活動をされています。

成功したり、人気が出ると、嫉妬や妬みの感情から少なからず「アンチ」が出てくるのも仕方がないのかもしれません。

「えんとつ町のプペル」の見どころ

『映画えんとつ町のプペル』は、基本はファンタジーな要素、画像の美しさなど見どころは多いです。

真実が覆い隠されていてルビッチとプペル以外、誰もがそれに疑問を持っていないといったところは、風刺めいているといえます。

西野亮廣さんが映画版でも製作総指揮と脚本を担当していますから、原作に忠実な作品になってはいますが、映画版は少し変更されているところもあるようです。

絵本を読んだ方は、どこが変更されているのかも見どころといえるかもしれません。

色々な立場のキャラクター

見る人によって感情移入できるキャラクターが変わり、自分の生き方やこれまでの人生に照らし合わせて見ることができ、勇気をもらえたり、これからの生き方を考えさせられます。家族愛や、友情、今の世界に向けたメッセージが込められた作品です。

作りこまれた設定やストーリー

「えんとつ町」がどのようにうまれたのかや細かいキャラクター設定も描かれていて、他のアニメ映画にありがちな「時間が足りなくて駆け足になったり、カットされてストーリーがよく分からなくなる感じ」がなく、キッチリと作りこまれた内容です。

キャラクターの動きや背景

映画館で観た人の感想を入れておきます。3Dアニメーションとは思えない、まるで実写のような滑らかな動きで、2次元と3次元の間の2.5次元の動きが魅力とのこと。

また、背景の建物や景色が綺麗で、実際に「えんとつ町」の中にいるような感覚になれるという意見もありました。

映画ならではの見どころ

映画は、原作より設定や演出が豊富になっています。
そのため、映画ならではの見どころがあります。映画ならではの見どころは、

  • 冒頭のダンスシーン
  • キャラクターのフォルムや、綺麗なアニメーション
  • 豪華なオープニング主題歌と、エンディング主題歌

絵本では描かれなかったストーリーが描かれていて、子供だけでなく、大人も泣ける映画になっています。

キャラクターのフォルムや綺麗なアニメーションは、ディズニー、ピクサーの映画や、ジブリ映画を彷彿とさせます。

「えんとつ町のプペル」が投げかける現代への課題

この作品には、現代社会への風刺がいくつも表現されています。

まず、目立たないように過ごしていくのが良いとされ、「空気を読んで、言われたことだけやる日本人」を意識された表現が出てきます

2つ目は、異端を許さないという日本人の国民性です。日本には昔から「村八分」という言葉があるように、他人と違うと避難される国民性があります。

ラスト

最後に、「中央銀行」の存在です。これは現在の経済システムの問題点を指摘しています。
お金は価値が下がらないと思われているので(実際は下がるのですが)国民は貯金ばかりしてしまい、結果経済が回らないようになっています。

作品では、5秒ほどのシーンですが、通貨も野菜などのように、価値が下がってしまうという描写が描かれています。

つまり「損をしないためにお金を使うという、経済の仕組み」を提唱しています。

「えんとつ町のプペル」海外の評価は?

「えんとつ町のプペル」は、海外の映画祭でも注目を浴び、好評価を受けています。

「ロッテルダム国際映画祭50周年記念祭」

この映画祭はオランダで開催された映画祭で、カンヌ・ベルリン・ヴェネツィア国際映画祭と同じく大規模で開かれる映画祭で、新しい才能の発掘の場として注目されています。

この映画祭でえんとつ町のプペルはクロージング作品として大トリを飾り、その注目度・評価の高さがうかがえました。

「アヌシー国際アニメーション映画祭 2021」

『アヌシー国際アニメーション映画祭 2021』が開催されたのはフランスです。毎年世界中から200作ものアニメーション映画が集まり上映される映画祭として注目されています。

2021年のこの映画祭への応募数は2800件以上あり、その中で11作品のみノミネートされる『長編映画コンペティション部門」のうちの一つに、えんとつ町のプペルが選ばれました。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
『えんとつ町のプペル』をご紹介しました。

この作品が前述のように、現在の社会の風刺要素を1つのテーマにしていますが「そんな時代だから、夢をもつ人を応援したい」がメッセージです。

作中ではゴミ人間が「異端」であるとして、指名手配にされてしまいます。

政府は「異端者」を封じ込めることで、国民を守っているつもりですが、その結果、煙突の煙によって、喘息が増えて「国が病んでいる状態」を指摘されています。

主人公のルビッチは周りから「星なんかあるわけない」とバカにされて孤立していますが、プペルと2人で星を見る方法を探ります。

夢を追いかける主人公が夢を諦めず実現する。そして、夢なんか叶うはずがないと反対する勢力の心を動かしてしまうという観る人に勇気を与える物語です。

しかし、「えんとつ町のプペル」は、作品の美術館を設立するためのクラウドファンティングや、チケットの販売方法で炎上してしまい、ネガティブなイメージがついてしいました。

映画の内容に関する評価も大きく割れていますが、共感できる部分の多い良いお話しだと私は感じました。

純粋に作品を評価するなら「全く面白くない」、なんてことにはならないと思います。

西野亮廣アンチか信者のほぼ二択で、普通に観た人のナチュラルな感想がかき消されているように見受けられます。

多くの人は西野亮廣という人物に入れ込んでいるワケでも批判的なワケでもなく、話題の「映画えんとつ町のプペル」自体が面白いのかどうかを知りたいだけだと思います。

そういった意味合いでは、You Tubeとかまとめサイトの意見というのは鵜呑みにできない部分もあります。

「えんとつ町のプペル」は、夢を持っている、他人と違う事を考えている人に対する「異端者」西野亮廣からのエールだと思います。