電子機器の説明書に描かれている機械本体のイラストが人の手で描かれていることはご存じですか?
ああいったイラストはテクニカルイラストレーションと呼ばれています。
今回は国家資格である「テクニカルイラストレーション技能士」についてお伝えします。
Contents
適用する仕事
まず、テクニカルイラストレーションとは何かから、見ていきましょう。
テクニカルイラストレーションとは
テクニカルイラストレーションとは、家電などの取扱説明書に描かれている機械本体のイラストのことです。
スイッチの位置や付属部品の使い方、構造などをイラストによって示すことでユーザーにとってより分かりやすい説明書となります。
また、組み立て式の本棚やラックなどの説明書にもテクニカルイラストレーションが採用されています。
製品本体がバラバラに分解された図や、組み立ての過程が順番に記載されている説明書を目にしたことのある方も多いでしょう。
それから業務用の仕様書にもしばしば用いられます。専門の作業員向けに業務用機器を分解した様子などが描かれていて、作業効率の向上などを目的としています。
テクニカルイラストレーションはこうした取扱説明書のほかに、設備解説書、パーツカタログ、特許図面などにも採用されます。
テクニカルイラストレーションの作り方
テクニカルイラストレーションを作るとき、大きく分けて2つの方法があります。
1つ目は投影法です。
これはアイソメトリックとも呼ばれ、平面図だけでは伝えきれない奥行や高さなどを表現するために用いられます。工業製品のほかにも、建築物などを描く際にも使われる手法です。
2つ目はトレースです。クライアントから受け取った写真や現物などを参考に写し描きする方法です。
おおよその年収とキャリアパス
おおよその年収の参考として、簡単な求人例を以下に挙げます。専門性の高い仕事なので、正社員の求人が目立ちます。
キャリアパス
マニュアル制作を専門とする会社などで経験を積むのが一般的です。大手企業は自社にマニュアル制作部門を持っている場合もあります。
こうした企業への就職に際しては4年制大学の理工学部の課程修了、工業デザインが学べる高校やテクニカルイラストレーションの専門学校の卒業が強みになります。
また、新卒での就職の場合は在籍している学校から求人を斡旋してもらえる場合もありますので、確認してみましょう。
簡単なイラストを描くところから経験を積み、徐々に複雑なイラストを任されるようになるのが一般的な流れです。
実績を積み、フリーランスのテクニカルイラストレーターとして活躍する人もいます。
認可団体
中央職業能力開発協会(JAVADA)です。
受験条件
テクニカルイラストレーション試験は3つの級に分かれています。
3級
3級を受験するにあたっては、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 高等学校、短期大学、高等専門学校、大学においてこの職種に関する学科に在籍または卒業
(例:機械科、電気科、建築科) - この職種に関する職業訓練課程に在籍または修了
- 半年以上の実務経験
2級
2級を受験するにあたっては、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 2年以上の実務経験
- 3級に合格していること
1級
1級を受験するにあたっては、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 7年以上の実務経験
- 2級合格後、2年以上の実務経験
- 3級合格後、4年以上の実務経験
合格率
令和元年度の3級の合格率はおよそ54%です。
一年当たりの試験実施回数
原則として年1回です。例年9月上旬に公示されます。試験は翌年1月下旬から2月上旬に行われます。
試験科目
3級
学科試験:真偽法のみ全30問、試験時間1時間
実技試験:試験時間2時間
学科試験の内容は、製図・立体図・CADについての知識、立体図作成法です。
実技は、第三角法で描かれたものをもとに等角投影図という手法を用いて、完成品となる姿図を作成する課題が出題されます。
2級
学科試験:真偽法と四肢択一式の全50問、試験時間1時間40分
実技試験:試験時間3時間30分
学科は3級の内容のほか、新たに関連基礎知識という科目が追加されています。
実技は、3級同様第三角法から等角投影図を起こす課題のほか、組立図と部品図の課題が追加されています。
1級
学科試験:真偽法と四肢択一式の全50問、試験時間1時間40分
実技試験:試験時間4時間30分
学科は2級と同じ内容です。
実技は、第三角法と組立図を手がかりに、難易度の高い断面図を作成する課題が出題されます。
採点方式と合格基準
具体的な採点方式までは公表されていません。
合格基準は以下のとおりです。
学科試験:100点満点中65点
実技試験:100点満点中60点以上
取得に必要な勉強などの費用
テクニカルイラストレーション技能士試験におすすめとされるテキストを紹介します。
改訂テクニカルイラストレーション
発行元:職業訓練教材研究会
商品名:改訂テクニカルイラストレーション
価格:¥1,430(税込)
厚生労働省認定の普通職業訓練に用いられる教科書で、さまざまな図法や作図法をわかりやすく系統的に学習できるようになっています。
ゼロから始めるテクニカルイラストレーション
発行元:日本ビジュアルコミュニケーション協会
商品名:ゼロから始めるテクニカルイラストレーション
価格:¥4,500(税込)
初歩的な内容を盛り込んだ1冊です。日本ビジュアルコミュニケーション協会の公式サイトから申し込むことで購入できます。
Adobe Illustratorを用いたテクニカルイラストレーションの手法などを学ぶことができます。おもに3級対策向けのテキストですが、2級につながる内容にも触れています。
テクニカルイラストレーション練習問題集
発行元:日本ビジュアルコミュニケーション協会
商品名:テクニカルイラストレーション練習問題集
価格:¥1,800(税込)
70問の練習問題が記載されています。日本ビジュアルコミュニケーション協会の公式サイトから申し込むことで購入できます。
基礎固めがある程度終わり、試験本番までに出題形式に慣れておきたい人におすすめです。
受験料
実技試験:15,700円(税込)
学科試験: 3,100円(税込)
在校生には減額措置があります。在学中にこの資格を取ろうと考えている場合、最寄りの職業能力開発協会に確認してください。
受験申込方法
各都道府県の職業能力開発協会から受験申請書類を取り寄せて、記入必須事項を確認してください。
申し込み方法は郵送あるいは持参のみで、インターネットによる受付はありません。
まとめ
以上がテクニカルイラストレーション技能士についてでした。
工業製品に関心のある人、アニメや漫画以外のイラストレーターの道を考えている人にぜひチャレンジしてほしい資格です。
ご自身が住んでいる都道府県の職業能力開発協会での受験となります。各都道府県職業能力開発協会のホームページを閲覧してみてくださいね。
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