「JASA組込みソフトウェア技術者試験」はETECとも呼ばれ、家電や自動車といった製品の動きを制御するプログラムを作る組込み技術者向けの試験制度です。
これはプログラミング能力の有無を認定・判断することを目的としています。
今回はこの検定について見ていきます。
Contents
適用する仕事
この「組込みソフトウェア技術者試験」が適する仕事というのは、組込みエンジニアや組込みソフトウェア開発に携わる方でしょう。
組込みエンジニア
組込みエンジニアとは、ハードウェアにソフトウェアを組み込んでいくエンジニアを指します。
つまり、例えば電化製品の場合、電源が入って機能するためにソフトウェアを組み込む必要になります。
組込みエンジニアは、そうしたソフトウェアを電化製品に組み込んでいくのが主な仕事となります。
電化製品の他にも、自動車のAT車は自動でギアチェンジを行なっていく必要があるため、この自動で行われるギアチェンジもソフトウェアを組み込んでいきます。
このように電化製品や情報機器(電子手帳やカーナビ)、ゲーム機などの娯楽機器、スマートフォンやタブレットなどの通信機器、PC周辺やOA機器など、身近な物がソフトウェアを組み込む対象製品となります。
組込みソフトウェア開発
組込みソフトウェア開発とは、実際に製品を動かすプログラムを作る仕事です。
本来の行程では「機械設計/金型設計/光学設計」、次に「回路設計」によって構造と仕組みを固めて「組込みソフトウェア開発」をする順番でした。
しかし、工数削減のため最初のプロセスから三者共同で設計を進めるようになり、そのケースが増えています。
この仕事でニーズが高いのは画像処理の技術です。
それは液晶が家庭用のカメラや携帯電話だけでなく、自動運転の自動車や医療機器、ロボットなどIoTを取り入れたあらゆる製品に使われるからです。
私たちの身のまわりにあるこうした機器たちは、こうした人たちの努力によって製品として使うことができるのですね。
おおよその年収とキャリアパス
経済産業省の「IT・関連企業における給与水準の実態(平成29年)」のデータを見ると、組込みエンジニアの平均年収は603.9万円のようです。
同様に「組込みソフトウェアの開発」のお仕事の平均年収も同等の603.9万円でした。
ちなみに、日本人の平均年収は国税庁の「平成29年分 民間給与実態統計調査」によると、432万円となっていますので、「組込みエンジニア」という仕事は日本人の平均年収を大きく上回る職業だということが分かります。
組込みエンジニアはその他のITエンジニアと同じく、専門職や管理職などのキャリアパスが存在します。
組込みエンジニアという職種には、次のものが挙げられます。
- プログラマー
- SE(システムエンジニア)
- テスターやデバッガー
- スペシャリスト
- AIエンジニア
認可団体
この「組込みソフトウェア技術者試験」を主催している団体は「一般社団法人 組込みシステム技術協会」というところです。
英語名だと、Japan Embedded Systems Technology Associationなので、略称だと「JASA」と呼ばれています。
昭和61年8月に設立され、平成24年4月から一般社団法人へ移行しました。
この協会では、以下の事業を行なっています。
- 組込みシステム応用技術に関する品質、生産性、信頼性、セキュリティ等に関する技術開発及び標準化の推進
- 組込みシステム技術に関する人材育成、地域振興及び国際交流の推進
- 組込みシステムに係る技術・環境・経営及び貿易・投資に関する調査研究ならびに情報の提供
- 組込みシステム技術などに関する内外関係機関との情報交流及び連携の推進
- 組込みシステム応用技術の普及啓発 など
受験条件
この試験のレベルは「クラス1」と「クラス2」があります。
クラス2はどなたでも受験できます。
クラス1はクラス2で500点以上のスコアを取得した方が対象です。
合格率
JASA組込みソフトウェア技術者試験はクラス1・クラス2ありますが、どちらも合否判定はありません。
したがって、合格率も存在しません。
1年当たりの試験実施回数
試験の実施はETEC運営事務局の委託を受け、プロメトリック社が試験会場を提供してくれ、試験の実施ができます。
試験実施日は毎日あります。
試験会場も全都道府県にありますよ。(全国160ヶ所以上)
試験科目
まず、「クラス2」試験では、このような内容が出題範囲となっています。
- 技術要素
- 開発技術
- 管理技術
- 通信
一方、「クラス1」での出題範囲はこうなっています。
Ⅰ.分析 | 仕様・設計の分析に関する問題 |
Ⅱ.理解・表現 | 仕様・設計ならびに管理の表現、理解に関する問題 |
Ⅲ.知識 | 同上で知識の有無を問う問題 |
採点方式と合格基準
採点方式はグレード、出題分野ごとの正答率です。
上位からグレードA~Cの3段階があります。
出題分野ごとの正答率を評価します。
出題分野の正答率から一定の以上の能力があると判断された場合に、上位からグレードA~Cで評価されます。
取得に必要な勉強などの費用
「組込みソフトウェア技術者試験」には対策の参考書や問題集が販売されていますので、その購入費は掛かりますがおすすめです。
組込みソフトウェア技術者試験クラス2対策ガイド
- 出版社名:CQ出版
- 書籍名:組込みソフトウェア技術者試験クラス2対策ガイド
- 価格:¥2,860(税込)
こちらの書籍は、ETECの「組込みソフトウェア技術者試験 クラス2(エントリレベル)」に対応し、現場の組込み技術者が最低限理解すべき「組込み最重要キーワード」をピックアップし、分類・整理しました。
それぞれの重要キーワードを解説し、図面も多用しているため、受験参考書スタイルの見やすい構成となっています。
すぐわかる!組込み技術教科書
- 出版社名:CQ出版
- 書籍名:すぐわかる!組込み技術教科書
- 価格:¥2,420(税込)
組込みシステム開発をこれから始める方を対象に書かれた書籍です。
見開きページ構成でイラストや図を豊富に使用し、わかりやすい解説で短時間で1項目をマスターできるように作られています。
各章の終わりには演習問題を設け、どこまで理解できたかをチェックするようにしてあります。
組込みソフトウェア技術者試験クラス2対策実践問題集
- 出版社名:日経BP
- 書籍名:組込みソフトウェア技術者試験クラス2対策実践問題集
- 価格:¥3,080(税込)
こちらはJASAが実施する組込みソフトウェア技術者試験クラス2(エントリレベル)向けの初の試験対策問題集です。
出題範囲を網羅する245問を解きながら、基礎知識を習得できるようになっています。
ETECクラス2受験予定の方はもちろん、組込みソフトウェア関連の技術者や組込みソフトウェア関連業界に転職を考えている方にも必携の1冊です。
専門のスクールでは
組込みシステム技術者試験を目指すために、「ETEC資格対策」を設けているスクールもあります。
しかし、この対象者は「組込みシステム開発講座修了者」または同程度の知識を持った方に限られています。
加えて入学金19,800円
教材費6,600円
(費用は各税込)
スクールではこだわりの個別レッスンで学べるメリットはあります。
受験料
組込みソフトウェア技術者試験クラス2(KS-200) | 1試験 16,500円(税込) |
組込みソフトウェア技術者試験クラス1(KS-100) | 1試験 22,000円(税込) |
受験申込方法
まず、初めてETECを受験するときは、「組込みソフトウェア技術者試験」の公式サイトに行き、受験者本人の氏名、住所、連絡先などプロフィールを事前に登録し「ETECアカウント」を作成します。
これはピアソンVUE社(試験会場)で初めてETECを受験するときに必要になります。
そして、ETECアカウントを持って、受験の予約や受験日変更、取り消しなどを行なってください。
公式サイトには、ピアソンVUE社ホームページ ETEC専用サイトの項目があります。
まとめ
「JASA組込みソフトウェア技術者試験」は家電や自動車などのソフトウェアを組み込む「組込みエンジニア」の知識が詰まった試験です。
この試験はETECとも呼ばれますね。
私たちは数々の電化製品に囲まれていて、それらの製品がきちんと使えるようになるまでこうした職業の方々が頑張っているからなのです。
このお仕事はこれからも需要が高まりますので、機械関係のお仕事を目指している方、転職したい方はこのような試験を受けてみてはいかがでしょうか。
たしかに難易度の高いスキルは求められますが、これからAIの技術も参入してくるし、必要な人材になる分野です。
ぜひこのお仕事を認識し、ご興味のある方は目指してみていただきたいと思います。
キャリアパスは一本道ではないので、それぞれの立場での業務経験が別の立場になったときに役立ちます。
また、組込みエンジニアはAIにもさまざまな製品を組み込みます。
それはエッジAIと言い、その開発を行う場合の多くは組込みエンジニアのスキルが求められます。
そのため、AIエンジニアもキャリアパスの1つとして考えていた方が良さそうです。