コンクリート診断士について

コンクリート診断士について

コンクリートは今や高層建築や中高層ビルだけでなく、高級注文住宅にも使用されるようになりました。

その品質や施工基準は、建築構造物の耐用年数にも影響を与えますので、セメントの扱いから品質管理まできちんとした専門家が必要になります。

こうしたコンクリートを扱う業務を担うのが「コンクリート診断士」という資格です。どんな資格なのか見ていきましょう。

適用する仕事

ひび割れた壁

コンクリート診断士の主な就職先は建設会社や建設コンサルタントなどです。

竣工済み・施工済み構造物で使用されているコンクリートの評価や劣化状況の点検・診断、補修補強計画の検討などを行います。

コンクリートは時間とともに劣化していきます。そうした劣化の程度を診断するのがコンクリート診断士の仕事です。

診断するにあたって、計画、調査・測定、評価および判定に関する知識が必要とされます。

コンクリート品質規格の変遷や施工条件、立地条件等から現状を判断し、コンクリートの維持管理の提案をするのです。

診断士の判断のもと適切な処置をすることでコンクリートの使用可能な期間を延ばすことができます。

診断という行為には、技術力だけでなく高いモラルも求められます。

2005年に「構造計算書偽造問題」という一技術者の公正を欠いた行動が発覚しました。地震などに対する安全性の計算を記した構造計算書を偽造したのです。

こうした行動は業界からしても社会的な信用問題に発展するため、職業倫理に即した行動が求められます。

コンクリート技士との違いは?
似た資格名で「コンクリート技士」というものがあります。
これは直接的にコンクリートを扱う業務、すなわち製造・施工などに携わる仕事です。

それに対して、本記事の「コンクリート診断士」はすでに施工済みのコンクリートについて評価や劣化診断を行います。

資格名が似ていますが、区別しておきましょう。

おおよその年収とキャリアパス

コンクリート診断士の年収は500万から700万円です。

日本の平均年収は503万円、建設業においては493.9万円ですので、平均給与より上回っていることが分かります。

こちらのコンクリート診断士は民間資格ですが、特殊な資格であることが考慮されるため、企業によっては月収に追加される資格手当が含まれることもあります。

キャリアパスは一般的に、その会社の中で昇進するケースが当てはまります。ある建設コンサルタント会社の例を紹介します。

キャリアパス一例
  1. 入社1~2年:設計補助員
    設計業務の補助作業を行いながら、基礎的な技術力を身につける
  2. 20代:技術員
    設計業務の担当者として活躍し、専門分野の知識を深める
  3. 30代:主任~係長
    設計業務全般のチームリーダーとなり、業務全体の技術的判断、部下の指導を行う。
    専門分野を中心に周辺分野への知識を深め、広い技術的分野のコンサルティングを行う。
  4. 40代:課長~部長
    設計業務全般の責任者として業務管理、技術的判断、部下の指導を行う。
    これまでの経験を活かし、業務全体について広くコンサルティングを行う。
  5. 50代:部長
    部門長として統括的な立場で担当部門の運営を行うとともに、担当部門の業務全体の管理を行う

また、転職先も多くあるでしょう。

高度経済成長期からバブル期にかけて建てられたコンクリート建造物が老朽化してきています。

その劣化具合を診断・補修する「土木構造物の保守管理職」としての仕事や、建設現場で固まる前のコンクリートを検査する「コンクリート試験員」などがあります。

コンクリートについて熟知している方はそれだけ重宝されるということです。

認可団体

主催団体は「日本コンクリート工学会(Japan Concrete Institute, 通称jci)」です。

所在地
〒102-0083 東京都千代田区麹町1-7 相互半蔵門ビル12F
TEL:03-3263-1571
FAX:03-3263-2115

事業の概要
  1. コンクリートに関する調査研究
  2. コンクリートに関する研究成果の普及
  3. コンクリート技術の標準化
  4. 会誌、研究報告および資料の刊行
  5. 講演会、講習会および研究会の開催
  6. 情報の収集、紹介および交換
  7. コンクリートに関する表彰や奨励
  8. コンクリートに関する啓発および広報活動
  9. 国内外のコンクリートに関する組織への参加およびその活動に対する協力
  10. コンクリートに関する技術向上をはかるための資格付与と教育
  11. その他本学会の目的を達成するために必要な事業

受験条件

すべての人に共通する受験条件はコンクリート診断士の講習会を受講していることです。

そのほか、指定された資格を保有・登録していること、あるいは学歴に応じた実務経験があることが条件となります。

必要な資格(1~8は登録していること)
  1. コンクリート主任技士
  2. コンクリート技士
  3. 一級建築士
  4. 技術士(建設部門)
  5. 技術士(農業部門-農業土木)(特別上級・上級・1級)
  6. 土木技術者(土木学会)
  7. RCCM(鋼構造およびコンクリート)(建設コンサルタンツ協会)
  8. コンクリート構造診断士(プレストレストコンクリート工学会)
  9. 1級土木施工管理技士または1級建築施工管理技士(監理技術者資格者証を有すること)
必要な学歴と実務経験
    1. 大学や高等専門学校(専攻科) 実務経験4年以上
    2. 短期大学や高等専門学校    実務経験6年以上
    3. 高等学校           実務経験8年以上

※いずれもコンクリート技術に関する科目を履修した卒業者に限る

合格率

合格

2021年度のコンクリート診断士の試験結果は以下のとおりです。

申込者数:4,935人(全国)
受験者数:3,611人
合格者数:576人
合格率 :16.0%

1年当たりの試験実施回数

年1回の試験です。

試験科目

コンクリート診断士に必要とされる主な知識や技術などは下記のとおりです。

  • 変状の種類と原因
  • 劣化の機構
  • 調査手法
  • 劣化予測、評価および判定基準
  • 対策の種類、補修・補強工法
  • 建築物および土木構造物の診断の考え方や調査項目
  • 技術および基準類の変遷

選考にあたっては、これらに関する一般的知識と理解力などについての筆記試験が行われます。

採点方式と合格基準

試験方法は四肢択一問題と記述式問題の2つです。これらの問題のそれぞれについて、基準点を超えることが合格の要件となります。

取得に必要な勉強などの費用

講習会で配布されるテキストを読んで臨んでください。さらに試験問題集を以下に紹介します。

コンクリート診断士試験完全攻略問題集 2022年版

出版社名:コンクリート新聞社
商品名:コンクリート診断士試験完全攻略問題集 2022年版
価格:¥4,180(税込)

コンクリート診断士試験完全攻略問題集 2022年版
created by Rinker

過去5年間の四肢択一問題の写真や図版がカラーで見やすく、年度別に解答案・解説を掲載しています。

オリジナル演習問題を100題掲載しています。

コンクリート診断士受験対策講座 2022

出版社名:技報堂出版
商品名:コンクリート診断士受験対策講座 2021
価格:¥4,180(税込)

コンクリート診断士受験対策講座 2022
created by Rinker

コンクリート診断士資格取得のための参考書で、出題傾向を考慮した基礎知識や記述式問題の具体的な解法が示されています。
さらに理解を深めるために例題や厳選問題をまとめてあります。

記述式問題のポイント

記述式問題では「1000文字以内で解説する」ことが求められます。
「コンクリート診断能力」を問う内容となっているため、断片的な知識があるだけでは得点できないと思ってください。

受験料

11,000円(税込)

受験申込方法

願書

まず願書を購入しましょう。

1部1,000円(消費税込み・郵送料含む)を郵便局の窓口で振込み、簡易書留郵便にて郵送してください。

  1. 末尾の受験願書請求書に必要事項を記入
  2. 郵便局備え付けの払込取扱票用紙により、必ず窓口にて下記の口座に払い込みしてください。
    口座番号:00160-5-604564
    加入者名:公益社団法人日本コンクリート工学会
  3. 払込取扱票用紙の振替払込請求書兼受領書(原本)を受験願書請求書の所定欄に貼り付けて、必ず簡易書留郵便にて下記住所へ送付してください。
    〒102-0083
    東京都千代田区麹町1-7 相互半蔵門ビル12F
    公益社団法人 日本コンクリート工学会
    コンクリート診断士試験係

まとめ

今回は「コンクリート診断士」についてお伝えしました。

コンクリートや土木に関する資格はたくさんあります。自分の目指す資格はどういうものか知っておく必要がありますね。

こちらの資格は合格率が低いものの、独学でも取得できる道はあります。きちんと対策を練って試験に臨みましょう。

合格すれば多くの企業から重宝されると思いますから、頑張ってくださいね。

 

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