こちらは医療ではなく“医業”経営コンサルタントという名称の資格です。
医業経営コンサルタントというのは医業の経営に必要となる専門的な知識を有し、医療・介護・福祉関係の施設などから依頼を受けて現状分析や改善提案などの業務を行う専門家のことです。
医業経営の健全化・安全化に貢献し、国民医療の向上に寄与することを目的にしている資格試験なのだそうです。
医業経営のコンサルタントというと難しそうな資格に見えますが、一体どのような資格なのでしょうか。
詳しく見てみましょう。
Contents
適用する仕事
病院や介護施設、福祉施設などに経営のアドバイスをするのが医業経営コンサルタントの仕事です。
病院や介護施設、福祉施設なども赤字経営では、いくら医療や福祉サービスが良くても潰れてしまいます。
実際、経営状態が悪化してしまっている病院や施設はあります。
ですので、医療の現場でも経営のプロが必要になるのです。
なぜ医療系のコンサルタントとして分ける必要があるのかというと、医療業界というのはその他の業界と比べて独自性があり、それゆえに法による規制や縛りが多いのです。
ですので、それらの法規や世界を十分に理解している専門家(コンサルタント)に必要になるわけです。
医業経営コンサルタントの業務内容をざっと挙げると、以下のとおりにまとめることができます。
経営診断業務
- 経営概況調査
- 診療圏分析
- 財務診断
- 経営プロセス診断
- 人材組織活性化診断
など
医療、介護、福祉の場面でも財務診断は必要です。
クライアントにあたる施設を収益性、安全性、生産性、成長性の4つの角度から診断していきます。
経営戦略支援業務
- 経営環境分析
- 事業領域の確立
- 事業戦略案の策定や選択
- 事業計画の策定
など
医療の世界といえども、経営環境分析は重要視されます。
分析の方法では「PEST分析」や「3C分析」が使われます。
Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の頭文字を取ったもの
- 顧客のニーズはどこにあるのか
- 競合施設との差は何なのか
- 自分たちの立ち位置はどのようなものになっているのか
経営管理支援業務支援業務
など
職員の人員不足を解消し、患者という顧客を定着させるのも医業経営コンサルタントの仕事です。
人員不足から現在いる職員に無理な働き方を強いてしまうと、職員離れの恐れがあります。
介護サービス事業展開
- 介護サービス事業開設支援
- 介護サービス事業運営支援
個別経営課題支援業務
- 開業支援業務
- PFI支援業務
- 増改築計画の支援業務
- 保健、医療、福祉関連施設への支援業務
など
おおよその年収とキャリアパス
医業経営コンサルタントの年収には2種類あります。
医療機関向け
こちらは医療機関や介護事業者向けに特化した医業経営コンサルタントになり、平均年収は400~2,000万円以上です。
国内コンサルティングファームが多いことや医療機関や介護事業者の経営利益が小さいため、このような給与水準になっています。
医薬品・医療機器メーカー向け
こちらは医薬品や医療機器メーカー向けの医業経営コンサルタントで平均年収は500~3,000万円以上です。
これは外資系企業が多いため医療機関向けの年収より多いのです。
また、こちらは利益額の大きさが違うのも一つの理由です。
医業経営コンサルタントのキャリアパス
医業経営コンサルタントになるためには、ヘルスケアのコンサルファームに入社するのが分かりやすい道です。
一例にはなりますが、新入社員ははじめに約半年の研修期間を通じて、基本スキルやさまざまな経営のイロハについて広く学びます。
そして、半年後分析担当として予算が与えられるので、上司のサポートをする形式で現場に配属されてそれぞれ専門分野を深めます。
3~4年目になると前線に立って、経営者と討論するなど責任の大きな仕事を任されるようになります。
その後はさらに高度な仕事に挑戦するといったキャリアパスになります。
コンサルタントではなく営業に注力する人もいるし、ビッグデータ分析のスペシャリストとしての道を選ぶ人もいます。
マネジャークラスに昇格する人もいます。
医業経営コンサルタントに向いている人とは
どのような人が向いてるのでしょうか。
どういう人が向いているという決まったタイプはいないと思います。
いくらかステレオタイプではありますが、所感を述べてみます。
根気強く忍耐力がある人
コンサルティングの業務はたとえ医療関係といえども、結果が出るまでに時間がかかります。
開業支援以外は中長期ベースで、数ヶ月単位もの時間が必要になる問題もあります。
1人のコンサルタントが複数のクライアント掛け持ちするケースも多く忍耐力は求められるでしょう。
移動するのが苦にならないこと
医業経営のコンサルティングというのは地方であることが多いです。
地方の方が人口が少ないため、競争が激しくなるのかもしれません。
ですので、地方に行くという移動が苦にならない人が向いているでしょう。
認可団体
医業経営コンサルタントの資格を主催している団体は「公益社団法人 日本医業経営コンサルタント協会」というところです。
〒102-0075
東京都千代田区三番町9-15 ホスピタルプラザビル5階
TEL:03-5275-6996
FAX:03-5275-6991
平成2年11月1日社団法人として設立許可
平成24年4月1日公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会に移行
- 医業経営コンサルタントの資格の認定と資質の維持向上に関する事業
- 医業経営に関する調査研究を行い、医療・保健・介護・福祉界の経営力を支える事業
- 医業経営の教育研修事業を行い、医業経営コンサルタントの資質の涵養(かんよう)および職務能力の向上を図る事業
- 医業経営に関する普及啓発・支援活動を通じて、社会に提言する事業
- 本協会活動に関係する諸官庁および医療関連団体との連携を図る事業
など
受験条件
この資格は指定講座の受講、一次試験の合格、さらには二次試験(論文の審査)という段階を経て認定されます。
指定講座の受講資格
- 成年被後見人(精神上の障害により、事理を弁識する能力を「欠く」常況にある者)でない方
- 被保佐人(精神上の障害により、事理を弁識する能力が「著しく不十分」である者)でない方
一次試験の受験資格
指定講座を受講していること
合格率
年度 | 合格率 |
令和3年度 令和2年度 令和元年度 |
80.7% 87.2% 75.2% |
1年当たりの試験実施回数
一次試験は年1回(毎年9月頃)
二次試験は年2回(1月と7月)
試験科目
一次試験と二次試験の中身を確認してみましょう。
一次試験の試験内容
- わが国の医療・介護の概要と課題
- 医療機関の経営
- 施設の計画と建設
- 医業会計・税務の基礎
- 医業経営診断
- 医業経営戦略と事業計画
- 医業経営管理
- 医療の質管理
- 医療情報システム
- 施設の活用と維持管理
- 介護サービス事業運営論
二次試験
問題に挙げられた複数の論文テーマの中から1つを選んで、医業経営コンサルタントを目指すものの立場から副題のテーマを見つけて、その副題について論述する問題です。
採点方式と合格基準
一次試験と二次試験分けてお伝えします。
一次試験
試験Ⅰが小論文で試験Ⅱと試験Ⅲはマークシート方式です。
小論文は1,000文字以上1,200文字以内にまとめます。
合格点は100点換算で60点以上です。
<条件つきの合格者>
- 科目1~11(試験ⅡおよびⅢ)において、1科目につき40%に満たない科目のある場合、条件付の合格とする。この場合、その科目に関する内容で1,800字以上2,000字以内(A4版)のレポートを提出することが一次試験合格の条件とする。
- 小論文(試験Ⅰ)が40%に満たない場合は、再度、同一のテーマで1,000文字以上1,200 字以内の論文を提出するものとする。レポートの内容はその科目を再度学習したことを示すものとするが、期日までに該当する科目のレポートを全て提出しない限りは二次試験の受験資格は認められない。
二次試験
問題意識 | 論題(テーマ)を選択した理由が問題点の提示とともに明らかにされているか |
多面的理解 | 論題(テーマ)に対し、他の制度、基準・方法等と比較するなど幅広い立場で医業の特殊性について理解が示されているか |
筆者の見解 | 論題(テーマ)に対し、筆者の見解(批評・主張等)を示し、医業経営コンサルタントとしての高い見識が貫かれているか |
実用性 | 論旨が医業経営の現場に適用またはその実用性に触れているか |
整合性 | 文書構成上「はじめ」「中心となる内容」および「結び」の論旨が一貫して整合しているか |
文献 | 引用文献ならびに参考文献が正しく記載されているか |
明瞭性 | 論文は明瞭にわかりやすく、誤字がなく記載されているか |
取得に必要な勉強などの費用
試験を受けるためには指定講座を受けなければならないので、受講料が勉強の費用と思って良いでしょう。
受講料は50,000円です。(テキスト・DVD代込み)
また、一次試験対策に関しては協会から精選問題集が販売されています。
出版社名:篠原出版新社
商品名:医業経営コンサルタント一次試験 精選過去問題集
価格:¥2,200(税込)
受験料
一次試験 10,000円
二次試験 15,000円(論文審査料)
受験申込方法
医業経営コンサルタント試験の公式サイトにアクセスしていただき、「医業経営コンサルタントについて」→「指定講座・一次試験」の欄をクリックします。
「願書作成」のボタンがありますので、そこから必要な書類をダウンロードしてください。
まとめ
医業経営コンサルタント試験の内容をお伝えしてまいりました。
やはりコンサルタントというお仕事なので、資格を取得するまでの道のりは遠いです。
合格するためには、論文審査を通過できるように力をつけましょう。
医業経営コンサルタントの仕事はこれから高齢化社会の問題で病院、介護施設、福祉施設が重要になっていくので需要はあるでしょう。
将来コンサルタントを志す人にはこうした職業も考えてみてはいかがでしょうか。
資格がないとクライアントからの依頼を得るのは困難ですので、まずは資格の勉強をしてみてくださいね!
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