アクチュアリー試験とは、その名の通り、アクチュアリー正会員になるための資格を得る試験です。
アクチュアリーは非常に高度な技術を持つ専門職であるため、この資格を取得したうえで行う業務は他の誰かに任せるといったようなことはできず、アクチュアリー正会員となった本人にしかできない業務ばかりのため、多忙を極めることもしばしばあります。
しかし、裏を返せば、それだけ重宝される資格でもあるということです。
今回は、アクチュアリー正会員になるための資格である「アクチュアリー試験」について解説いたします。
Contents
適用する仕事
そもそもアクチュアリーとは何かというと、人間の将来や未来は常に不確定要素で溢れています。
事故に遭う、病気に罹患する、いつ死亡するかわからない、地震などの天災が起こる・・・などがもっともな例です。
これらの出来事により、人々は経済的、そして精神的に負担を負います。
そういった出来事の発生する確率を評価し、不慮の事故などの発生する確率を減らすように知識を生かし、仮に悲劇が起こってしまったとしても、その悲劇を軽減する方法を提案するのがアクチュアリーの仕事です。
要するに、統計学や確率論を用いて、リスク管理や不確実性を、第三者にも正確なパーセンテージなどの理解できる形で提示することで、生命保険事業や損害保険事業、年金事業、共済事業、企業の資産運用のコンサルタントなど、大規模な金融に携わる仕事をするのがアクチュアリーという人々なのです。
アクチュアリー試験の資格を取得すると、以下のような分野の職で活躍をすることができます。
生命保険分野
生命保険分野では、生命に関わるさまざまなリスクに備え、将来的な保障を提供する分野です。
会社の経営企画やリスク管理などの業務で活躍しています。
損害保険分野
損害保険分野では、これから起きるであろう不慮の事故や災害などのリスクから経済的損失を予測し、負担を少なくするサービスです。
この分野で提供する商品として、自動車保険や火災保険、傷害保険などの業務が該当します。
年金分野
年金分野では、企業年金制度という企業が従業員を対象として実施する年金制度を主に取り扱っていきます。
企業年金制度は企業の財務や経済的な影響を大きく及ぼすということと、運営や見直しに関しては重要な経営課題の一つとして扱われる重要な分野です。
リスクマネジメント分野
企業に関係するリスクはインターネットなどの普及や、社会情勢の変化などから、増加、多様化をしています。
そういった環境の変化から、近年はリスクマネジメントの重要性が急速に重視されています。
そのリスクマネジメント分野では、企業が業務を行う上での全てのリスクを予測し、組織そのものの視点からデータを統合的かつ戦略的に把握、評価し、企業の価値を引き上げるアプローチを行う分野です。
その他の分野
アクチュアリーの持つ数学を駆使した判断力や分析力は、これまで紹介した分野以外でも、社会的にさまざまな状況や場面の中で必要なものです。
特に、企業を立ち上げたり、組織として運用していく上でなくてはならないものなので、外部コンサルタントや保険会社の経営管理、商品開発に関するコンサルティングなどといった分野で活躍するアクチュアリーも増加しています。
おおよその年収とキャリアパス
アクチュアリーには前述の通り、正会員、準会員、研究員の3つのランクが存在しています。
のちほど説明しますが、アクチュアリーになるための試験は1次試験と2次試験が存在します。
1次試験では5つの科目、2次試験では3つの科目が用意されています。
- 1次試験で5つの科目のうち、1科目でも合格すれば研究員となり、1次試験で5科目全てに合格すれば準会員となります。
- 1次試験の5科目全てに合格したうえで受験可能となる2次試験では、3つの科目のうち1科目でも合格すれば正会員となります。
ランク別の年収は、正会員で1200万円程度、準会員で1000万円程度、研究員で600万円程度の年収となっています。
ランク、年収共に最高なのは正会員ですが、準会員も研究員も、会社に勤務しながら勉強をすることにより、正会員を目指す方も多く見受けられます。
アクチュアリーは専門的な資格の中でも、特に実務経験などの実力や、会得した知識が重視される傾向にある職業のため、資格を取得しただけでは安定するとは言い難い面も持ちます。
重要なのは資格を取得した後、就職をしてからでも実務経験を積んだうえで、スキルを磨いていくことこそが、キャリアアップを図るうえで大切なポイントです。
認可団体
アクチュアリー試験を主催している協会・団体は、日本アクチュアリー会です。
正式名称は「公益社団法人 日本アクチュアリー会」です。
この団体は1899年(明治32年)に設立され、100年を超える歴史を持つ団体でもあります。
受験条件
アクチュアリー試験を受験するにあたって必要な資格は、大学を卒業した者であるということ、もしくは試験委員会が大学を卒業したと同等の資格試験の受験に必要な基礎的な学力を有すると判断されたという証明です。
アクチュアリー試験には、基礎科目をテストする第1次試験と専門科目をテストする第2次試験の2つが存在します。
- 第1次試験の受験資格は大学を卒業した者、もしくは大学を卒業と同等の基礎的な学力を習得した者が条件
- 第2次試験は第1次試験の全ての科目に合格した者のみが受験可能
つまり、最低でも最初の1次試験を受けるためには、大学を卒業したという証明をする必要があるということです。
合格率
アクチュアリー試験の合格率は、各科目10%~20%であるとされており、難関資格であると言えます。
1年当たりの試験実施回数
アクチュアリー試験の試験実施回数は、年に1回、12月に3日間の日程で行われます。
施行地は東京都と大阪府の2つです。
試験科目
アクチュアリー試験は第1次試験と第2次試験に分かれており、まずはじめに第1次試験を受験し、そこで全ての科目に合格してはじめて第2次試験を受験することができます。
試験方法はいずれも筆記試験です。
第1次試験は、以下の基礎科目である5科目より構成されています。
- 数学
- 生保数理
- 損保数理
- 年金数理
- 会計・経済・投資理論
第1次試験をクリアした後に受験する第2次試験では、以下の3つのコースのうち、どれか一つを選択して受験をします。
生保コース | 生保1、生保2 |
損保コース | 損保1、損保2 |
年金コース | 年金1、年金2 |
第2次試験はいずれのコースも専門科目2科目から構成されており、どのコースを選択して合格した場合でも、会員の資格として差が出たりするといったことはありません。
採点方式と合格基準
- 第1次試験は、全ての各科目は60%を基準とし、試験委員会が相当と定めた得点以上の得点を取得した者を合格
- 第2次試験は各科目全て、60%を基準として試験委員会が相当と定めた得点以上の得点を取得した者を合格
ただし、第一部、第二部のいずれかでも合格点のラインである、第一部は60%以上、第二部は40%以上獲得していない場合は、不合格となります。
取得に必要な勉強などの費用
アクチュアリー試験は、教科書の問題の読解や問題演習で独学によって、勉強をするのが基本的な勉強方法となっております。
日本アクチュアリー会の公式サイトにて、参考書籍の紹介がされており、数学、生保数理、損保数理・・・といった形でそれぞれ対応する参考書が複数存在します。
※以下の問題集は、全て日本アクチュアリー会の公式サイトにて直接購入をすることができます。
数学(確率・統計・モデリング)
- 出版社名:日本アクチュアリー会
- 商品名:モデリング
- 価格:¥1,500(税込)
- 出版社名:日本アクチュアリー会
- 商品名:確率・統計・モデリング問題集
- 価格:¥1,500(税込)
生保数理
- 出版社名:日本アクチュアリー会
- 商品名:二見隆:生命保険数学
- 価格:上巻¥2,500(税込)/下巻¥2,500(税込)
損保数理
- 出版社名:日本アクチュアリー会
- 商品名:損保数理
- 価格:¥2,000(税込)
年金数理
- 出版社名:日本アクチュアリー会
- 商品名:年金数理
- 価格:¥2,000(税込)
正会員を目指すためにこれらの参考書を全て購入すると、およそ13,500円程度の値段となります。
また、アクチュアリー試験に関する試験講座を開いている予備校なども存在します。
月謝は安いもので5万円から、標準のもので13万円で、平均価格は9万円ほどとなっています。
全ての参考書を購入し、予備校などにも通うとなれば、最低でも10万円以上は費用が掛かるという計算になります。
やはり高度な資格である以上、費用は多くかかります。
受験料
アクチュアリー試験の受験料は、会員で受ける場合は1科目7000円、会員でない場合は1科目10000円です。
受験申込方法
申し込み方法は、法人会員の連絡担当者経由で申し込む方、それ以外の個人会員の方、個人で受験を申し込む場合でそれぞれ細かい処理は異なってきますが、どれも受験申込フォームをインターネットで入力・送信するという過程を終えたのちに受験票が届きます。
その受験票を持って試験に臨むという受験形式となっています。
受験申し込みの締め切り日は、おおよそ毎年9月下旬あたりとなっています。
まとめ
以上がアクチュアリー試験の情報になります。
高度な数学の分野である統計学や確率論などを用いた計算を行う資格であるため、合格率も低い難関資格です。
試験勉強を行うには、公式サイトから紹介されている参考書を使って勉強を行うのが最も着実な方法ですから、その仕方で取得資格を目指しましょう!