環境マネジメントシステム審査員とは、ISO14000シリーズ(環境マネジメントシステムに関する国際規格群)に沿って企業の環境保護対策の適合性を審査する専門家のことです。
ISO 14001審査員とも呼ばれます。
環境マネジメントシステム審査員は、環境マネジメントシステムに関する知識・経験、監査対象となる業務に関する知見はもちろんのこと、監査における独立性・公平性・客観性も求められます。
今回はこの「環境マネジメントシステム審査員」について見ていきます。
Contents
適用する仕事
環境マネジメントシステム審査員は、ISO 14000の認証取得を目指す企業や団体の組織に対して事前調査、書類審査、現場審査を行うことを主な仕事としています。
ISO規格が要求する基準を満たす企業であるかを審査すると同時に、方針の決定や業務改善、書類やマニュアルの整備などもサポートします。
認証を受けた事業者は、その業務システムについて内部監査を行うことが義務付けられています。
環境マネジメントシステム審査員は、こういった内部監査要員として環境部門の窓口となったり、時には責任者となったりすることもあります。
決められた基準を満たす企業であるか、満たしていないのならどういった対策で達成できそうかを考え、アドバイスする仕事であることから、正確性と柔軟性の両方が求められる仕事といえます。
おおよその年収とキャリアパス
年収は400万円ほどから650万円ほどでしょう。安定した収入が見込まれます。また、待遇・福利厚生も手厚い傾向にあり、休日も120日以上の求人が目立ちます。
環境マネジメントシステム審査員として働くには、一般的に「マネジメントシステム(MS)認証機関」への所属が必要です。
マネジメントシステム認証機関とは、企業から依頼を受けてISO認証審査を行う機関です。
日本国内には数多くのマネジメントシステム認証機関が存在し、求人も一定数出ています。
環境マネジメントシステム審査員は、取得後も継続的な学習が求められます。1年ごとに学習の記録を証明することで資格が維持されます。
また、3年ごとに登録更新(再認証)をする必要があります。
社会の動向を注視し、能力向上のための自己研鑽を欠かさない人だけが資格を保持することができる仕組みが採用されているのです。
最初は審査員補という立場からスタートし、次は審査員、さらにその次は主任審査員とステップアップを目指すのが一般的です。
ステップアップするごとに、資格維持のための学習時間はより多く求められます。
認可団体
認可団体は「一般財団法人 日本要員認証協会(JRCA)」です。
〒108-0073
東京都港区三田3-13-12 三田MTビル
電話:050-1742-6446
FAX:03-4231-8685
1996年6月 財団法人日本規格協会内に品質システム審査員評価登録センター(JRCA)設置
2018年10月 一般財団法人 日本要因認証協会(JRCA)設立
- マネジメントシステム審査員評価登録センター(JRCA)
- 翻訳者評価登録センター(RCCT)
- 標準化人材登録センター(RCES)
受験条件
まずは「審査員補」からのスタートになります。審査員補を目指すにあたって、次の条件をすべて満たしている必要があります。
- 7年以上の常勤による実務経験(技術的、管理的または専門的立場での業務経験)を有していること。
ただし訓練期間は含まない。なお、高等学校以上を卒業している場合は必要な常勤年数は4年以上とする。 - 申請前10年間で2年以上の環境マネジメント分野における実務経験を有していること。
- JRCAが承認した環境マネジメントシステム審査員研修コースを5年以内に修了し、筆記試験に合格すること。
- JRCAが定める「審査員倫理綱領」を順守すること。
合格率
環境マネジメントシステム審査員の合格率は公開されていません。
1年当たりの試験実施回数
環境マネジメントシステム審査員になるには、「環境マネジメントシステム審査員研修コース」を修了することが必須です。
研修機関はそれぞれ異なります。ある研修機関では、年7回ほど研修が実施されています。
試験科目
5日間の講義を受講します。講義の最終日に筆記試験が行われます。
4者択一式問題
大きく分けて一般・規格・監査の3つの分野から出題されます。
<一般分野>
環境問題、環境関連法規、用語など
<規格分野>
ISO 14001の要求事項や監査登録システムなど
<監査分野>
ISO 19001の監査プロセスや責任、監査の計画、実施、報告書および監査慣行や行動規範など
記述式問題
監査場面設定による不適合抽出問題
採点方式と合格基準
試験方式は4者択一式と記述式です。
択一式32題(160点満点)、記述式2題(40点満点)が出題されます。
試験の際、事前の講義で使用したテキストや資料、規格(JIS Q 14001、JIS Q 19011)は使用することができますが、参考書やノート類は使用できません。
- 以下のいずれもを満たせば合格となります。
- 4者択一式試験と記述式試験の合計点が200点満点の70%以上であること。
- 記述式試験問題の点数が40点満点の40%以上であること。
不合格者には再試験の機会が与えられます。ただし、修了日から12ヶ月以内・1回のみという条件が付与されます。
取得に必要な勉強などの費用
研修機関では審査員資格取得に向けた合格サポート体制が設けられていますので、講座以外の勉強の費用をかける必要はないと思われます。
ただし、講座は初めてISOに触れる人向けの構成ではありません。ある程度の知識と経験があることが前提です。
受験料
この資格は「環境マネジメントシステム審査員研修コース」を受講することが前提となっていますので、受講料についてお伝えします。
受講料:22万円(テキスト代、修了証書発行代、昼食代含む)
筆記試験の再試験代:6,000円
なお、審査員として働き続けるためには資格の維持および更新が不可欠です。
【審査員補の場合】
申請時 新規申請料13,200円(税込)
登録後すぐ 年間登録料12,100円(税込)
登録1年後・2年後・3年後 それぞれ12,100円(税込)ずつ
受験申込方法
まず、環境マネジメントシステムの審査員研修コースの講座を開講しているところを調べましょう。検索するといくつか出てきます。
サイト内で案内されているスケジュールのうち、都合のよい日程を選択して申し込みましょう。
まとめ
今回は「環境マネジメントシステム審査員」という資格についてお伝えしました。
この資格は環境マネジメントシステム関係規格であるISO14000シリーズに沿って企業を審査し、適切なアドバイスをする専門家のことです。
この資格を取得するには指定された実務経験が必要です。技術的、管理的または専門的立場での業務経験を持っている人なら、研修コースを受けることができるでしょう。
環境ISOを導入することは、企業のイメージアップや環境法規制の対応力強化にもつながります。これから環境ISOを導入する企業が増えていく中、それを審査する人材の需要も高まっていくことでしょう。
受験条件に当てはまる実務経験をお持ちの方は受けてみてはいかがでしょうか。
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