屋外広告士とは、屋外広告物の製作や施工に関する専門的知識・技術を有することを証明する公的資格のことです。
営業所ごとに一定の要件を満たした人を置くことが義務付けられている業務主任者の資格要件の1つです。
これは高さが4mまたは1表示面積が10㎡以上の屋外広告物などについては、有資格者を管理者として置く必要があるということです。
屋外広告士はその管理者に含まれています。
日頃街やビルの屋外広告を目にしますよね。
それを扱う仕事の資格について今回見ていきたいと思います。
Contents
適用する仕事
街やビルに掛けられている屋外広告は景観が悪くなったり、倒壊などの事故が起きないように屋外広告物法でサイズや場所などが定められています。
屋外広告士はこの法律に則り、デザインや施工方法などの設計や施工を行います。
こうしたことを考慮して景観や街の安全を確保します。
屋外広告士が活躍する勤務先は看板製作会社、看板設置会社、テレビ製作関係会社などでしょう。
設置看板に対しての打ち合わせ業務
看板を設置する前に、まず設置する看板の詳細や取り付けに関する打ち合わせを行います。
さきほど述べたように、屋外広告物を設置するには定められた法令に則らなければなりません。
そういった法令の内容などを含めた詳細の打ち合わせをしていきます。
その打ち合わせを経たうえで効果的な看板を提案し、内容を決めていきます。
内容が決まると次の工程に進みます。
このように設置の前に細かい打ち合わせが第一の大事な仕事です。
設置管理
打ち合わせを経た看板の設置管理業務です。
看板の内容が決まったら、次は官公庁に看板設置の申請を行なって設置までの工程を進めていきます。
看板が完成したら設置へ移りますが、設置の際の安全管理も大事な仕事です。
ここでも法律や建築規定など遵守すべきことを確認しながら、安全に行なっていきます。
一度許可が出た看板でも、違反があったら許可が取り消しとなることもあります。
あるいは、許可の期間が満了した時も広告物を取り外さなければなりません。
(詳しくは「屋外広告物条例ガイドライン」参照)
おおよその年収とキャリアパス
屋外広告士の平均年収は400万~500万円でしょう。
大手広告業に就職したり、独立して行なっていけば給料はもっと多いでしょう。
看板製作系の企業では、事業運営のために資格所有者がいないと経営ができません。
屋外広告事業を行なっている会社は、営業所または支店に屋外広告士1名を置くよう屋外広告物法で定められているからです。
資格を持っていると、資格手当がもらえるところもあるでしょう。
屋外広告士を持っていても所属する企業によって、ポジションは変わってくるでしょう。
屋外広告士ですから看板を設置する資格は証明できますが、その看板製作スタッフをきっかけや入り口として入社して、施工管理を任されたり、企画の業務にシフトしたりするのも考えられます。
また、看板屋として独立もあり得ます。
技術力と営業力があれば大手広告代理店から受注することも可能です。
最近ではITの発展で看板業も変わってきており、CADを使用してデザインを行なったり、カッティングシートで大きな写真を分割して張り合わせる業務も増えてきています。
他にもデジタルサイネージという電子による広告が急速に拡大しているため、これからの屋外広告士はデジタル分野の資格も取得しておくと力になるでしょう。
認可団体
屋外広告士の資格試験を主催している団体は「一般社団法人 日本屋外広告事業団体連合会」というところです。
看板、広告板、ネオンサインなどの屋内外広告物の製作提出に携わる企業によって、都道府県ごとに組織された団体を正会員とする一般社団法人です。
東京都墨田区亀沢1-17-14
TEL:03-3626-2231
FAX:03-3626-2255
【沿革】
昭和33年12月9日 全日本看板広告業組合連合会として発足
昭和36年5月17日 全日本広告美術業組合連合会に改称
平成24年4月1日 一般社団法人日本屋外広告業団体連合会に改組・改称、現在に至る
受験条件
18歳以上の実務経験が3年以上ある者
ここでいう実務経験とは広告施工に関連する業務のこと
(これには事業所の証明印が必要)
合格率
2021年 22.1%
2020年 47.6%
1年当たりの試験実施回数
試験は年に1回、10月下旬頃に開催されます。
試験科目
試験は学科と実技があります。
学科試験
学科試験は3つあります。
試験はA→C→Bの順に行われます。
学科試験A(関連法規)
- 屋外広告物法、屋外広告物法基づく条例
- その他関係法令
学科試験B(広告デザイン)
- 屋外広告物に係る色彩、意匠、素材などの構成要素に関する専門的知識
- 都市景観とくに広告景観に関する専門的知識
学科試験C(設計・施工)
屋外広告物の構造設計および設置工事に関する一般的な知識
実技試験
屋外広告物の「設計」またはデザインを選択
屋外広告物の構造設計またはデザインに関する必要な専門的知識
- 1級及び2級建築士有資格者は「学科試験C」と「実技試験」が免除されます。
- 1・2級建築施工管理技士、1・2級土木施工管理技士有資格者は「学科試験C」が免除されます。
採点方式と合格基準
学科試験は多肢選択式のマークシート方式です。
実技試験は記述式です。
学科A、学科B、学科C、実技試験のいずれも原則として60%以上の得点率で合格です。
ただし、1科目でも当該科目の満点の40%の最低基準に満たない場合は、受験した科目の合計が60%以上でも学科試験が不合格となる場合があります。
取得に必要な勉強などの費用
勉強するには公式の参考書3冊が必要です。
屋外広告の知識 デザイン編 第4次改訂版
発行元:屋外広告の知識編集委員会
商品名:屋外広告の知識 デザイン編 第4次改訂版
価格:¥2,096(税込)
屋外広告の法規制、表示方法、設計・施工方法についての基礎知識を収録しています。
こちらは屋外広告のデザインを通して、優れた広告景観を創るのに役立つことを目指して編集されました。
屋外広告の知識 法令編 第五次改訂版
発行元:屋外広告行政研究会
商品名:屋外広告の知識 法令編 第五次改訂版
価格:¥2,970(税込)
- 屋外広告物の規制
- 屋外広告物法
- 屋外広告物条例ガイドライン
- 投影広告物条例ガイドライン
- 関係法令
- 参考資料
屋外広告の知識 設計・施工編 第4次改訂版
発行元:屋外広告の知識編集委員会
商品名:屋外広告の知識 設計・施工編 第4次改訂版
価格:¥2,724(税込)
こちらは広告業に携わる人全般を対象に安全基準、構造力学、材料、設計、施工、安全管理などを取り上げています。
屋外広告関係者必携の1冊です。
屋外広告士試験問題集・令和2年度版 ¥1,760(税込)
講習会
また、屋外広告物講習会というものも開催しています。
これは自治体単位になりますので、受講手数料もそれによって違います。
一例になりますが料金をご紹介します。
東京 4,900円
千葉 3,300円
神奈川 3,000円
受験料
17,824円(税込)
受験申込方法
申し込みは毎年【認可団体】から5月~7月ごろに受験の手引き(受験願書)が販売されますので、それを取り寄せて願書を提出します。
願書の取り寄せには500円掛かります。
以下のものが申し込み時に必要になります。
- 受験申込書
- 写真(縦5.5cm×4cm以内)
- 受験料郵便振替払込の証明書
- 資格証明書の写し(1、2級建築士及び建築施工管理技士・土木施工管理技士に該当する人)
東京都墨田区亀沢1-17-14
一般社団法人 日本屋外広告業団体連合会
まとめ
屋外看板を設置する仕事の資格である「屋外広告士」について見てきました。
看板を設置するには、さまざまな条例や決まり事を把握したうえで行われます。
この資格を受験するには実務経験が必要ですので、まず看板設置を行なっている企業に入社しましょう。
この資格を取得するメリットは、やはり屋外広告物に関する高度な知識と技術の証明ができることです。
屋外広告の製作・施工会社において、屋外広告士の資格を持っている方が必要になります。
そうした業界では資格手当が出されたり、何かと重宝されるので実務経験を持った人はこの資格を目指してみてはいかがでしょうか。
広告のあり方も時代と共に変化してきていますが、広告業自体はこれからも需要はあります。
チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
施工に関する記事はこちら
インテリア設計士試験について
看板を置いてはいけない場所というのも存在します。
また、これら以外にも道路上に設置する、駅構内へ看板を設置するといった場合には許可を得なければ看板設置をすることができません。