火薬類(製造・取扱)保安責任者について

火薬類(製造・取扱)保安責任者について

「火薬類(製造・取扱)保安責任者」とは、火薬類の製造および取り扱いの作業で保安を行う火薬のスペシャリストのことです。

火薬は現代ではロケット・大砲・銃などの点火や花火などの他に、土木・建設工事や鉱物資源の採掘などの場で用いられます。

今回はそれらを扱う仕事に就くにあたって必要不可欠な「火薬類(製造・取扱)保安責任者」について解説します。

適用する仕事

火薬類(製造・取扱)保安責任者は、火薬類の製造および取り扱いが適切であるかどうかを管理・監督する役割を持ちます。

具体的な仕事内容
  • 火薬類の保管や製造に関する安全性の確保
  • 火薬取り扱いの指揮・監督
  • 火薬の消費量の確認 など

火薬類を扱う事業者の火薬庫群には必ず資格所有者を置かなければなりません。

火薬類は取り扱いを間違えると大事故が起きてしまいますから、保安責任者を配置することが法律で決められているのです。

火薬類(製造・取扱)保安責任者の資格を取得すると、火薬を扱う企業や職種への就職の際に有利です。

例えば、次のような業界で資格が活かされるでしょう。

資格を活かすことができる業界
  • 建設土木業界
  • トンネル工事
  • 砕石や採石場
  • 鉄工所
  • 花火工場、花火師
  • その他の火薬の製造工場
  • 警察や消防 など

トンネル工事

火薬類は建設現場や発掘作業の現場などで用いられます。その他、火薬を製造する工場や鉄工所もありますね。

それぞれの現場にこの「火薬類(製造・取扱)保安責任者」の資格保有者がいることで、安全を確保し、従業員を火薬の危険から守ることができます。

おおよその年収とキャリアパス

火薬類保安責任者の年収はおよそ400万~500万円程度でしょう。

務める企業の規模や年齢、実務経験によって変動します。

建設土木業界

建設業のスキルは一朝一夕で身につくものではありません。土木工事では日々の業務にどれだけ真摯に取り組み、技術をものにするかが重要です。

現場経験を積んでからは監督する立場に就いたり、マネジメント業務にあたったりすることもあるでしょう。

その際は建設施工管理技士を取得するのもよいかもしれません。

花火師

花火師になるには、煙火店に就職する必要があります。

一人前の花火師として自分がつくった花火を打ち上げるまでには5年、10年と修行しなければなりません。

花火の技術を身につける間に火薬類保安責任者の資格を取得しておくことで、見習いであっても活躍できるようになる可能性はあります。

観衆を魅了する花火を打ち上げるためにもっとも大切なことは観客と花火師双方の安全です。そういった意味で、花火師を目指す方がこの資格を取得することは重要だといえます。

認可団体

火薬類(製造・取扱)保安責任者の資格を主催している団体は「公益社団法人 全国火薬類保安協会」です。

〒104-0032
東京都中央区八丁堀4-13-5 幸ビル8階
TEL:03-3553-8762
FAX:03-3553-8763

【沿革】

昭和46年1月 任意団体として設立
昭和47年1月 通商産業省(現在の経済産業省)の許可により社団法人となる
昭和62年4月 指定試験機関となる
平成25年4月 公益認定を取得し「公益社団法人全国火薬類保安協会」となる
主な事業内容
  1. 火薬類の保安に関する調査研究(事故防止対策事業、国際化対策事業、技術基準検討事業)
  2. 火薬類の保安に関する講習及びその支援(保安手帳事業、従事者手帳事業、講師研修会事業)
  3. 火薬類の保安に関する教育及びその支援(火薬学セミナーなど)
  4. 火薬類の保安に関する広報(火薬と保安など)
  5. 火薬類の保安に関する行政施策の実施に対する協力(火薬類取扱保安責任者試験実施事業、火薬類製造保安責任者試験実施事業)

受験条件

条件はありません。誰でも受験することができます

合格率

火薬類(製造・取扱)保安責任者は「製造」「取扱」で分かれます。さらにそれぞれレベルがあります。

製造の場合

【2021年の合格率】
甲種 30.1%
乙種 18.5%
丙種 63.6%

取扱の場合

【2021年の合格率】
甲種 57.2%
乙種 55.8%

1年当たりの試験実施回数

年1回実施しています。

試験科目

試験、テスト

これも製造と取扱で異なります。

製造

甲種・乙種

1日目
  • 火薬類取締に関する法令
  • 火薬類製造工場保安管理技術
  • 火薬類製造方法
2日目
  • 火薬類性能試験方法
  • 火薬類製造工場に必要な機械工学および電気工学大要
  • 一般教養科目

丙種

  • 火薬類取締に関する法令
  • 信号・焔管、信号火せんまたは煙火(原料用火薬類および爆薬を含む)製造工場保安管理技術
  • 信号・焔管、信号火せんまたは煙火(原料用火薬類および爆薬を含む)製造方法
  • 火薬類性能試験方法
  • 一般教養科目

免除科目

高等学校以上の学校の卒業者は一般教養科目を免除されます。

また、以下の3つのいずれかに該当する方は「火薬類製造方法」「火薬類取性能試験方法」「火薬類製造工場に必要な機械工学および電気工学大腰」「一般教養科目」が免除されます。

4科目免除該当者
  • 火薬学に関し「工学博士の学位」を取得した者
  • 大学の工業化学に関する学科で火薬学を専修して卒業した者
  • 専門学校の工業化学に関する学科で火薬学を専修して卒業した者

以下の2つのいずれかに該当する方は「火薬類製造工場に必要な機械工学および電気工学大腰」「一般教養科目」が免除されます。

2科目免除該当者
  • 大学、高等専門学校、高等学校もしくは専修学校の工業化学に関する学科を物理化学、有機化学、無機化学、分折化学、化学工学の5科目すべてを履修して卒業した者
  • 大学、高等専門学校、高等学校もしくは専修学校を卒業し、機械工学および電気工学を修得した者

取扱

甲種・乙種の「火薬類製造保安責任者」の資格がある人は以下の科目が免除されます。

  • 火薬類取締に関する法令
  • 一般火薬学

さらには、一般火薬学が免除される場合があります。

一般火薬学が免除される条件
  • 大学の工業化学に関する学科において火薬学を専修して卒業した者
  • 大学、高等専門学校、高校もしくは専修学校を卒業し、火薬学を修得した者
  • 鉱山保安規則に定める火薬係員試験に合格した者

採点方式と合格基準

ボーダーライン

製造
甲種・乙種は記述式(一般教養科目は四肢択一式)、丙種は多肢択一式です。
合格基準は各科目とも60点以上、一般教養科目では50点以上です。
取扱
試験は多肢択一式です。
合格基準は各科目とも60点以上です。

取得に必要な勉強などの費用

協会から過去問が販売されています。それを購入して勉強するのが近道でしょう。

  • 令和3(2021)年度版「過去問の解答と解説」¥3,370(税・送料込)
  • 煙火の製造と保安  ¥3,840(税・送料込)
  • 煙火の安全な取扱い ¥1,210(税・送料込)
  • 火薬類取締法令の要点¥1,550(税・送料込)

また、自治体で受験対策講座を実施しているところもあります。2万円前後の受講料がかかるようです。

受験料

受験料は製造と取扱で受験料が異なります。

製造:25,900円(ただし丙種は18,000円)
取扱:18,000円

受験申込方法

受験を申し込むには受験願書が必要です。受験願書は受験地の試験事務所に出向いて請求します。

郵送希望の場合は受験地の試験事務所に確認してみましょう。なお、ここでも製造・取扱で提出書類が分かれます。

製造

  1. 受験願書
  2. 受験票(郵便ハガキ)および受験票控(63円切手と縦4.5cm×横3.5cmの写真が必要)
  3. 住民票
  4. 試験結果通知用封筒(「親展」封筒)
  5. 試験科目免除理由を証明する文書(試験科目免除申請者のみ)

取扱

  1. 受験願書(裏面に受験手数料振込証明書[振替振込受付証明書]を貼付)
  2. 受験票(郵便ハガキ)および受験票控(縦4.5cm×横3.5cmの写真が必要)
  3. 住民票
  4. 試験科目の免除を希望する人は免除申請に関する書類

どちらも受験地の「公益社団法人 全国火薬類保安協会」都道府県試験事務所(都道府県火薬類保安協会内)に申し込んでください。

まとめ

今回は火薬を扱うスペシャリストである「火薬類(製造・取扱)保安責任者」についてお伝えしました。

火薬を取り扱う事業者ではこの資格保有者の配置が必要になりますので、土木関連や煙火店などに勤めたい方はこの資格に挑戦してみてはいかがでしょうか。

ものづくりの現場で必ず活かされるでしょう。