皆さんは危険物取扱者と聞くと、どんな職業を思い浮かべますか。
分かりやすい例でいうと、ガソリンスタンドが当てはまりますね。
ガソリンや軽油は消防法で定められた危険物(引火性液体)に入りますから、当然ガソリンスタンドにはこの資格を持っている人が必須なわけだし、セルフ式のガソリンスタンドでは、危険物取扱者資格のスタッフが常駐して立ち会う形になっています。
そんな身近な職業につながる「危険物取扱者」という資格を今回見ていきます。
Contents
適用する仕事
危険物取扱者は立派な国家資格です。
どんな仕事に役立つのでしょうか。
ガソリンスタンドの従業員
冒頭にも出たガソリンスタンドの従業員です。
ガソリンスタンドではガソリンや灯油、軽油など引火性の液体を扱うため、そういった物の専門的知識の人が必要なのです。
セルフ式のガソリンスタンドでも、有資格者のスタッフが無資格者である客に対して立ち会う形で運営しています。
化学薬品を扱う職場
化学工場や化学薬品を取り扱う会社は危険物を取り扱う、もしくは保管する業種といえます。
例えば、化粧品工場や製薬会社、半導体や金属メッキの工場、印刷や染色の工場でも危険物を取り扱う可能性があるため、こういった施設で技術者や責任者として働く場合は危険物取扱者の資格が要ります。
タンクローリーのドライバーまたは同乗者
タンクローリーはガソリンなどの危険物を輸送するため、タンクローリーを運転する際にはドライバーか同乗者が危険物取扱者を持っている必要があります。
そうなると、企業はタンクローリーが運転できる危険物取扱者の資格保有者を求めます。
危険物取扱者の資格に加え大型免許も所有していれば、タンクローリーのドライバーとして重宝されるでしょう。
消防士
消防士の場合は、必ず危険物取扱者の資格が必要なわけではありません。
ですが、多くの火災の現場に出動する中で、火災の原因が危険物という場合もあります。
それに危険物の取り扱いを誤ってしまうと、火災が大きくなってしまいます。
危険物取扱者の資格があると仕事をやるうえで役立つという意味で、適用する仕事なのです。
仕事の幅はレベルによる
危険物取扱者は甲種・乙種・丙種の3段階に分けられます。
しかし、持っているレベルによって任せられる範囲は違ってきます。
甲種
甲種危険物取扱者は全ての危険物を扱えます。
ですので、定期点検や無資格者への立ち会いも可能です。
ガソリンスタンド以外にも、上記に挙げた職業どれもが適うでしょう。
乙種
危険物取扱者の中では、危険物は1類から6類といった分け方をしています。
第1類 | 酸化性固体 | 塩素酸塩類、過塩素酸塩類、無機過酸化物、亜塩素酸塩類等 |
第2類 | 可燃性固体 | 硫化リン、赤りん、硫黄、鉄粉、金属粉、マグネシウム等 |
第3類 | 自然発火性物質及び禁水性物質 | カリウム、アルキルアルミニウム、黄りん等 |
第4類 | 引火性液体 | ガソリン、アルコール類、灯油、軽油、重油、動植物油類等 |
第5類 | 自己反応性物質 | 有機過酸化物、硝酸エステル類、ニトロ化合物等 |
第6類 | 酸化性液体 | 過塩素酸、過酸化水素、硝酸等 |
乙種はその6種類の中で試験に合格し免状を得た部分にだけ、危険物の取り扱いや定期点検、無資格者への立ち会いが可能です。
例えば、乙種4類だけの免状を持っていたら、4類に含まれている物質(ガソリンや軽油などの引火性液体)については取り扱いや監督が可能です。
丙種
丙種の危険物取扱者では乙種4類のうち、限られた危険物の取り扱いや定期点検が可能です。
限られた危険物というのは、ガソリン、灯油、軽油、重油です。
しかし、丙種の資格だけでは無資格者への立ち会い業務はできません。
ただし、第4類を扱う工場であれば問題ありません。
おおよその年収とキャリアパス
例えば乙種4種の危険物取扱者で見ていくと、平均年収は300万~500万円以上です。
なぜこんなにバラつきがあるのかというと、入社した会社によるからです。
大手の化学メーカーや石油メーカーなどでは、500万円近い年収を得ている人もいる一方、タンクローリードライバーの場合は350万円台の人もいます。
ただドライバーの場合は、運転する距離や運搬する危険物の種類、残業や資格手当があるかどうかで年収は変わってきます。
危険物取扱者(特に乙種4類)の資格があれば、危険物を使用する現場で即戦力になれます。
もちろん就職活動でアピールできます。
また、昇進する決め手にもなるでしょう。
甲種では実務経験が6ヶ月以上になると、危険物保安監督者になることもできます。
危険物保安監督者とは、政令で指定された製造所などで配置するよう義務付けられている職種です。
危険物保安監督者に選任されればそれに伴う責任も増しますが、収入面も期待できます。
キャリアパスを考えると、上位のレベルに挑戦した方が良いでしょう。
認可団体
危険物取扱者試験を行なっている団体は、「一般財団法人 消防試験研究センター」というところです。
本部について
〒100-0013
東京都千代田区霞が関1-4-2 大同生命霞が関ビル19階
TEL:03-3597-0220
FAX:03-5511-2751
起源:財団法人消防試験研究センター(1984年~2013年)
現団体設立:2013年4月1日
主な事業
- 試験事業
- 免状事業(危険物取扱者免状、消防設備士免状)
- 調査研究事業(危険物保管設備・消防設備の調査研究)
- 消防防災公益基金事業
受験条件
乙種と丙種はどなたでも受験できます。
甲種は受験条件があります。
- 大学などにおいて化学に関する学科などを修めて卒業した者
- 大学などにおいて化学に関する授業科目を15単位以上修得した者
- 乙種の危険物取扱者免状の交付を受けた後、危険物取扱いの実務経験を2年以上積んだ者
- 次の4種類以上の乙種の危険物取扱者免状の交付を受けている者
(第1類または第6類、第2類または第4類、第3類、第5類) - 科学に関する事項を専攻し、修士や博士の学位を授与された者
合格率
合格率は受験するレベルによって違います。
甲種
2020年 42.5%
2019年 39.5%
2018年 39.8%
乙種
乙種の合格率は第1類~第6類までの危険物ごとに出されます。
第4類のみ30%前後で、他は60~70%程度です。
なぜ第4類だけ低いというと、他の類より受験者数が多いためです。
それに、他の類も第4類を先に合格させた場合に2科目が免除されるため合格率が高くなるのです。
丙種
2020年 54.0%
2019年 50.4%
2018年 51.2%
1年当たりの試験実施回数
試験回数は都道府県ごとに異なります。
全国一律の日程で試験を実施しないので、お住まいの地域で試験日程や回数を確認してください。
試験科目
等級によって異なります。
甲種
1.危険物に関する法令(15問)
2.物理学および化学(10問)
3.危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法(20問)
乙種
1.危険物に関する法令(15問)
2.基礎的な物理学および基礎的な化学(10問)
3.危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法(10問)
丙種
1.危険物に関する法令(10問)
2.燃焼および消火に関する基礎知識(5問)
3.危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法(10問)
免除について
乙種では、細かいですが免除が適用される場合があります。
一部免除-乙種の場合-(いずれも免状のコピーが必要) | ||
免除資格者 | 免除種類 | 免除の範囲 |
乙種危険物取扱者免状を有する者 | 全類 | 1と2全部免除 |
火薬類免状を有する者 | 1類、5類 | 2と3一部免除 |
乙種危険物取扱者免状を有し、かつ火薬類免状を有する科目免除申請者 | 1類、5類 | 1と2全部免除、3は一部免除 |
また、丙種では5年以上消防団員として勤務し、かつ消防学校の教育訓練のうち基礎教育または専科教育の警防科を修了した者であれば「燃焼及び消火に関する基礎知識」の科目が全部免除になります。
ただし「5年以上消防団員として勤務したことを証明する書類」および「消防学校での基礎教育又は専科教育の警防科を修了したことを証明する書類」の両方が必要です。
採点方式と合格基準
甲種と乙種は五肢択一式で、丙種は四肢択一式です。
合格基準は3つの受験科目のうち、それぞれ60%以上の正解で合格です。
取得に必要な勉強などの費用
勉強におすすめな参考書がたくさん販売されています。
各レベルにおすすめな参考書をご紹介します。
わかりやすい!甲種危険物取扱者試験
出版社名:弘文社
商品名:わかりやすい!甲種危険物取扱者試験
価格:¥3,080(税込)
甲種の危険物取扱者試験対策が、これ1冊で合格できるよう作られています。
試験によく出る問題を徹底解説!
豊富なイラストや図解、語呂合わせなど効率的に学べる工夫がたくさん入っています。
10日で受かる!乙種第4類危険物取扱者 すい~っと合格(増補改訂版)
出版社名:オーム社
商品名:10日で受かる!乙種第4類危険物取扱者 すい~っと合格(増補改訂版)
価格:¥1,760(税込)
工業高校で乙種第4類の受験指導にあたる著者が、試験問題の傾向を徹底分析して導き出した1冊です。
切り取って携帯できる暗記ノートも付いています。
初学者にも分かりやすく工夫しました。
本気で合格したい人のための丙種危険物取扱者試験 279問収録
出版社名:公論出版
商品名:本気で合格したい人のための丙種危険物取扱者試験 279問収録
価格:¥1,528(税込)
約20回分の試験問題から出題頻度の高いものを中心に、項目ごとに見やすくまとめてあるテキストです。
重要なポイントがまとまっているので、覚えやすいですよ。
受験料
甲種 6,600円
乙種 4,600円
丙種 3,700円
受験申込方法
まず、受検地のセンターまたは支部から願書を取り寄せます。
願書に必要事項を記入したら、受付期間内に申請します。
必要な書類
- 受験願書
- 甲種危険物取扱者試験を受験する者は、受験資格を証明する書類(卒業証書、免状等のコピー[縮小したものも可])、卒業証明書、単位修得証明書等)
- 乙種危険物取扱者試験で火薬類免状による科目免除を受ける者は「火薬類免状」のコピー
- 丙種危険物取扱者試験で科目免除を受ける者は、消防団長、消防学校長が証明する書類
- 既に「危険物取扱者免状」を取得している者は、既得免状のコピー
- 「郵便振替払込受付証明書(受験願書添付用)」(受験願書と一緒に配布される)
願書に試験手数料支払証明書を貼付して、下記のセンターに持参または送付します。
申請窓口
- 各道府県:一般財団法人 消防試験研究センター各道府県支部
- 東京都:一般財団法人 消防試験研究センター中央試験センター
書面申請の他に電子申請もできますが、これは公式サイトで電子申請案内などを確認して手順に従って申し込みをしてください。
まとめ
今回は「危険物取扱者」について見てきました。
もう持っているよという人もいるでしょう。
「危険物取扱者」は国家資格なので就職に有利というメリットはあります。
この資格のニーズは化学工場や消防士だけでなく、発電所やビルメンテナンスの現場でもあります。
ぜひ危険物を扱うような現場で働きたいという人は、この資格を勉強してみて下さい。
あらゆる方面で役立ちますよ!
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