今回は建築関係の資格についてお伝えします。
「建築積算士」というのは、建築物の工事費について数量算出から工事費算定までを行う専門家のことです。
面積・高さ・材料・工期などさまざまな要素から綿密に計算するスペシャリストといって良いでしょう。
建築数量積算基準などを活用して的確な工事費を算定します。
そんな専門的なことをする建築積算士という資格を今回見ていきます。
Contents
適用する仕事
建築積算士の適用する仕事は資格名にもなっている積算業務です。
積算業務とは建設工事にかかる費用を事前に算出するのが仕事です。
建築工事では大きなお金(数千万から億単位)が動きますから、あらかじめ建物の工事にかかる費用を精度よく導き出さなければなりません。
積算してコストを管理しないと発注者の予算をオーバーしたり、必要な利益を確保できなかったなどといったトラブルも発生しかねません。
建築工事では公共工事と民間工事の2つがあります。
公共工事
公共工事では積算基準に沿った入札するための積算を行います。
公共工事というのは税金が使われるので、公平かつ公正に工事業者が選ばれる必要があります。
そのため少額の工事や緊急性の高い工事など以外は、複数の候補者の提示価格を競わせる「競争入札」で業者が決められます。
この仕組みをやるうえで、企業が戦略的に提示価格を決めて工事を受注するのに正確な積算が必要になるわけです。
民間工事
民間工事にも入札があります。
民間の事業者が建築工事を計画する場合でも建設会社を比較するため、最適な工事価格や期間内の工事を積算します。
民間工事の入札には公共工事のような厳しいルールはなく、どの業者に依頼するかは発注者が自由に決められます。
とはいえ、受注者と発注者の間で金額の合意がなければ工事は行えませんので、的確な積算が必要です。
金額を決める基盤は建築図に基づく設計図や仕様書から使用される材料やデザインまであり、それらに合わせて必要な数量を算出していきます。
建築物の床面積、建物の高さ、建築構造の種類などから大まかな工事費を計算できるので、工程に合わせた適正な建築工事費用を算出していくのです。
費用の積算ミスや予算と見積りが合わないなど、小さなミスが大きな金額のズレにつながるという責任の重さがありますが、難しい業務をやり遂げることになるので喜びも大きいでしょう。
建築積算士はこんな人にお薦め
建築積算士の資格はこんな人にお薦めです。
おおよその年収とキャリアパス
建築積算士という資格を取得すると、新卒や未経験の方だと200~300万円程度ですが、年齢が上がってきて経験者になってくると400~500万円の年収になります。
実際に積算業務を行いながら地道に根気よく覚えていくのが年収アップへの近道です。
勤続年数が多いとやれることが多くなりますので、給与が上がるわけです。
さらに、資格を取得するメリットは会社によって資格手当を支給してくれることです。
資格手当の金額は1~2万円程度に設定しているところが多いです。
建築積算士の資格を取得したら建設業で重宝されます。
建築積算がまったく初めての人でも、図面を読む力や資材を知識などがあれば務めることができます。
そして私たちの生活がある限り、建築積算の仕事がなくなることはないでしょう。
これからの建築現場では建物の省エネ・省CO2化への対応やニーズの多様化により、工事の難易度は上がってきます。
さらには建築資材価格の高騰も重なっているので、求められるクオリティとコストとのバランスに向けて建築積算の仕事がより重要になってきます。
もし、もっとスキルを上げたいなら、建築積算士の上位資格である「建築コスト管理士」という資格を取ることをおすすめします。
これは建築プロジェクトのコストに関するプロです。
上位の資格を取得することで、活躍のフィールドや業務の裁量を広げることができます。
認可団体
建築積算士という資格を運営・管理している団体は、「公益社団法人 日本建築積算協会」というところです。
所在地
公益社団法人 日本建築積算協会
The Building Surveyor’s Institute of Japan(BSIJ)
〒105-0014
東京都港区芝3-16-12 サンライズ三田ビル3階
電話:03-3453-9591
FAX:03-3453-9597
事業内容
- 人材育成・認定事業(学校教育、社会人教育、e-ラーニングなど)
- 調査研究・情報発信事業(建築コスト関係)
- 評価・認定・相談事業
受験条件
受験年度の4月2日現在、満17歳以上の者
なお、一定の条件に該当する者は一次試験を免除できる
- 建築コスト管理士、建築積算士補
- 一級建築士、二級建築士、木造建築士
- 一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士
- 認可団体協会の積算学校の卒業生
- 過去の一次試験に合格した者
合格率
2021年 | 67.6% |
2020年 | 52.9% |
2019年 | 56.5% |
1年当たりの試験実施回数
毎年度1回
一次試験は10月頃、二次試験は1月頃に実施
試験科目
出題範囲は一次、二次とも『建築積算士ガイドブック』の中からです。
採点方式と合格基準
試験は通常なら一次試験と二次試験があります。
一次免除者は【受験条件】に書いてあります。
一次試験
試験時間 | 3時間 |
問題数 | 50問 |
問題形式 | 4肢択一 |
二次試験
短文記述試験 | |
試験時間 | 1時間 |
問題数 | 2問 |
問題形式 | 問題に対する解答を短文(200字以内)で記述 |
実技試験 | |
試験時間 | 4時間30分 |
問題数 | 躯体(コンクリート、型枠、鉄筋)、鉄骨、仕上、内訳明細作成・工事費算出の4分野 |
問題形式 | 図面に基づき、数量を計測・計算して内訳明細を作成する |
合格基準は満点中60%以上の正解率で合格です。
取得に必要な勉強などの費用
出題範囲が『建築積算士ガイドブック』の中から出されるので必要になります。
- 発行元:日本建築積算協会
- 商品名:建築積算士ガイドブック
- 価格:¥5,200(税込)
また、建築積算が学べる講習会もあります。
例えば、協会では建築数量積算基準に基づく数量積算が確実にできる「建築積算学校」をWeb上で開いています。
受講料は89,100円(税込)です。
受験料
一次、二次ともに27,500円(税込)
受験申込方法
申込方法は、一次試験用と二次試験用それぞれあります。
一次試験
協会のホームページに掲載する申込フォームに必要事項を入力して送信します。
その申し込みを受けて、仮受付書と受験料払込用紙を住所宛てに送られてくるので受験料を払い込みます。
二次試験
協会のホームページに掲載する申込フォームに必要事項を入力します。
そして、送信するときにその確認画面(受験申込フォーム)をプリントアウトして、一次試験免除の必要書類の写し(該当者)とともに協会本部まで郵送します。
あとは一次試験の時と同じように、仮受付書と受験料払込用紙を住所宛てに送られてくるので受験料を払い込みましょう。
まとめ
今回は建築工事に必要な建築積算士という資格について取り上げました。
建築工事には莫大なお金が動くので積算をしっかりしなければなりません。
建築の基礎知識がある人、数字の扱いが得意な人、コミュニケーションに問題ない人には建築積算士向きです。
こちらの資格は建築関係の資格を保有していると、一次試験が免除になったり、試験の難易度も変わってきます。
今、建築関係に勤めている人は、この積算の資格を検討してみてはいかがでしょうか。
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