「液化石油ガス設備士」とは、液化石油ガス設備工事の安全を確保する専門家です。
都道府県知事から液化石油ガス設備士免状の交付を受けている人を指します。この免状の交付を受けるためには、試験に合格するか講習のを修了する必要があります。
どのように資格を取得していくのかを見ていきましょう。
Contents
適用する仕事
液化石油ガス設備士のおもな仕事は、液化石油ガスの設備工事・点検です。
液化石油ガスはLPガスとも言い、ブタン・プロパンなどを主成分とする気体燃料のことです。
これらは圧力をかけたり冷やしたりすることで液化して容易に運搬できるようになります。液化したブタンはカセットボンベやライターなどとして販売され、プロパンはボンベに充填のうえ一般家庭、店舗などで使われます。
液化石油ガス設備士がおもに取り扱うのは、後者のプロパンです。
ガスの配管工事に携わるにはこの資格が必要不可欠です。設備工事のうち、とくにガス管の取り付け、寸法取り、ねじ切りなどは液化石油ガス設備士の資格がある人だけができる作業であるためです。
配管工事をする前に、そもそも工事ができる状態かどうかを確認したり、工事の後の定期点検をしたりするのも液化石油ガス設備士の仕事です。
また、設備工事を行う際は液化石油ガス設備士の免状を携帯することも義務付けられています。
おおよその年収とキャリアパス
液化石油ガス設備士の年収はガス関連の資格の中でも比較的高く、平均年収は600万~800万円と見込まれます。
ガスは電気や水道と同様、私たちの生活に欠かせないインフラです。暮らしを支える基盤に関連する仕事は安定していることが多く、ガス関連も同様です。
企業の規模にもよりますが、安定した働き口であるといえるでしょう。
ある求人を見てみると、液化石油ガス設備士の資格を持った人は、将来の管理職候補として採用する旨が記載されています。
パート・アルバイトの求人には正社員登用制度についての記載も目立ちます。それだけ重要な資格だということでしょう。
認可団体
液化石油ガス設備士の検定試験を主催するのは「高圧ガス保安協会」です。
昭和38年12月20日設立
〒105-8447
東京都港区虎ノ門4-3-13 ヒューリック神谷町ビル
TEL:03-3436-6100(代表)
- 技術基準作成(高圧ガスの保安確保のための民間規格の作成)
- 検査・認定など
- 教育活動(30種類もの講習の開催など)
- 国家試験(高圧ガスの保安に関する試験)
- 研究開発
- LPガス消費者保安対策
- 情報の収集・提供、技術交流支援
- マネジメントシステム審査登録
受験条件
受験条件はありません。年齢、経験などにかかわらず誰でも受験可能な資格です。
合格率
2020年:30.1%
2019年:37%
2018年:37.6%
1年当たりの試験実施回数
試験は年1回実施されます。けれども、その他に年4回全国各地で行われる講習を受講し検定試験を受ける方法もあります。
試験科目
筆記試験と技能試験があります。
筆記試験
<法令>
- 供給設備および消費設備の保安に関する法令および関係法令
<配管理論など>
- 液化石油ガスに関する基礎知識
- 液化石油ガス設備工事に必要な機械器具または材料に関する知識
- 配管理論、配管設計および燃焼理論
- 液化石油ガス設備工事の施工方法
- 供給設備および消費設備の検査の方法
技能試験
- 配管用材料および工具の使用
- 硬質管の加工および接続
- 器具などの取り付け
- 気密試験の実施
- 漏えい試験の実施
ただし、申請の際には筆記試験の合格通知書か合格証明書が求められます。
採点方式と合格基準
配管理論など 択一式20問(90分)
手動ねじ切り機を使用した場合は75分の試験時間
筆記(各科目)・技能試験とも、60%程度の得点が求められます。
取得に必要な勉強などの費用
液化石油ガス設備士の筆記試験は、独学で勉強して合格する人も多いようです。
技能試験については、すでに合格した人から教わるなどしながら対策するのがよいでしょう。そうした環境にない場合は、後述する講習会でも技能試験の対策をすることができます。
独学向けテキスト
全国官報販売協同組合の書籍
- 液化石油ガス設備施工マニュアル(第5次改訂版)3,450円(税込)
- 高圧ガス・液化石油ガス法令用語解説(第4次改訂版)3,060円(税込)
図解入門 よくわかる最新配管設備の基本と仕組み
出版社名:秀和システム商品名:図解入門 よくわかる最新配管設備の基本と仕組み
価格:¥1,760(税込)
こちらは図解で配管設備の基礎知識を解説した入門書です。配管施行者だけでなく一般の方々にもわかるように作られています。
配管設備の構成、種類、施工、保全、設計、さらには配管技能者がよく使う専門用語や配管と関連深い機器や装置についても解説しています。
講習会を利用する
前述のとおり、協会が主催する講習会もあります。
実務経験がない、師事する相手がいない場合などはこちらの講習会がよい対策になるでしょう。
技能試験 19,700円
受講するには以下のテキストが必要です。これらのテキスト代は受講料に含まれていません。
- 液化石油ガス設備施工マニュアル ¥3,450(税込)
- 液化石油ガス法規集 ¥3,670(税込)
受験料
20,900円(非課税扱い)
受験申込方法
個人で申し込む方法と法人で申し込む方法があります。会社・学校などで取りまとめて申し込む場合は法人からの申し込みになります。
個人申込
これは受験者本人が申し込む方法です。高圧ガス保安協会公式サイトにリンクされている電子申請サイトから申し込むことができます。
- メールアドレスなどの事前登録
- 事前登録完了の確認メールの通知
- 本申込の入力
- 申込内容の確認メールの通知
法人申込
これは担当者が受験者に代わって一括で申し込む方法です。受検者や合否の通知はその担当者にまとめて発送されます。
申し込むにはWeb入力方式とファイル・アップロード方式とがあります。
多人数の申込に便利です。
「ファイル・アップロード方式用 Excelシート」は高圧ガス保安協会公式サイトからダウンロードできます。
どちらも最初に法人登録(法人ID取得)をしてから入力します。
まとめ
今回は液化石油ガス設備士についてお伝えしました。この資格試験には筆記試験のほかに技能試験があります。もしまったくの未経験であるなら、講習会を受けてから試験に臨むべきでしょう。
液化石油ガス設備士が取り扱うプロパンガスは、特にマンションやアパートなどで暮らす人にとって非常に身近な存在だと思います。日々安全に入浴や調理を楽しむことができるのは、液化石油ガス設備士の活躍あってこそなのですね。
どちらかといえば裏方的ではありますが、暮らしの基盤を支える重要な仕事のひとつでもあります。誇りをもって取り組むことができるのではないでしょうか。
関連する記事はこちら
ガス主任技術者について