今回ご紹介する映画は、「ゴジラVSコング」です。ゴジラとキングコングという日米の2大怪獣が激突します。
ハリウッド版「ゴジラ」シリーズの「GODZILLA ゴジラ」(2014)、「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」(19)と、「キングコング:髑髏島の巨神」(17)をクロスオーバーして描く「モンスターバース」シリーズの第4作です。
モンスターの戦いで壊滅的な被害を受けた地球。人類は各地で再建を計り、特務機関モナークは未知の土地で危険な任務にあたりながら、巨大怪獣のルーツの手がかりを掴もうとしていました。
そんな中、ゴジラが深海の暗闇から再び姿を現し、世界を危機へ陥れます。人類は対抗措置として、コングを髑髏島(スカルアイランド)から連れ出します。
人類の生き残りをかけた戦いは、やがてゴジラ対コングという未曽有の対決を引き起こします。
監督は「サプライズ」やNetflix実写版「Death Note デスノート」などを手がけたアダム・ウィンガードです。
出演はアレクサンダー・スカルスガルド、レベッカ・ホール、「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」から引き続き登場するミリー・ボビー・ブラウン、カイル・チャンドラーなど。
また、「GODZILLA ゴジラ」「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」で渡辺謙が演じた芹沢猪四郎博士の息子・芹沢蓮役で小栗旬が出演し、ハリウッドデビューを飾っています。
今回は「ゴジラVSコング」のあらすじやキャスト、見どころなどをご紹介します。
Contents
あらすじ(ネタバレあり)
ゴジラが怪獣の王として君臨してから5年後の2024年、コングとゴジラに古くから因縁があることが判明します。
怪獣の調査を行っている研究機関「モナーク」は髑髏島に第236前哨基地を設置し、ゴジラから守る名目でコングを収容します。
しかし、既に基地内では収容できないレベルに巨大化したコングにとっては、ただ苛立ちを募らせるだけでした。
同じころ、陰謀論者のバーニー・ヘイズは、巨大テクノロジー企業「エイペックス・サイバネティクス」が何かを企んでいることを突き止め、5年前から技師としてペンサコーラにある本社に潜入し調査を行っていました。
そこに突如としてゴジラが襲撃、命からがら生還したバーニーは、破壊し尽くされた社内で謎の装置を発見します。
その後、エイペックスのCEOのウォルター・シモンズと、5年前に亡くなったモナークの生物学者・芹沢猪四郎博士の息子である芹沢蓮は、かつてモナークに所属していたネイサン・リンドのもとへ訪れます。
2人はゴジラを倒す新兵器製作のため、怪獣たちの故郷であり彼らの力の源がある地底に存在する空洞を目指していました。
それを承諾したネイサンは、かつての同僚であるアイリーン・アンドリューズの協力を経て、コングの帰巣本能を利用して地下空洞世界を探索しようと決めます。
調査隊にはネイサンとアイリーンに加え、ウォルターの娘マイア、コングと共に育った少女ジアが加わり、一行は大艦隊でコングを髑髏島から南極へ移送します。
南極まであと少しとなったタスマン海にて、コングが島から出てきたことを察知したゴジラが襲撃、両者の激しい戦いが幕を開けます。
キャスト
ネイサン・リンド(アレクサンダー・スカルスガルド)
巨大モンスターを監視する秘密機関・モナークの地質学者で地底世界の研究者。
演: アレクサンダー・スカルスガルド
2009年、米ドラマ『トゥルーブラッド』で、スクリーム賞の最優秀悪役賞を受賞。同年、レディー・ガガが歌う「パパラッチ」のミュージックビデオに出演しています。
2011年、米ドラマ『トゥルーブラッド』で、ススクリーム賞のホラー男優賞を2年連続で受賞しました。 同年、映画『メランコリア』で、ハンプトン国際映画祭のBreakthrough Performerを受賞。
2012年、「カルバン・クライン」新作メンズ香水のイメージモデルに選ばれます。 同年、英「グラマー」誌が毎年発表する「セクシーな男性トップ50」で第14位にランクイン。
2017年、米ドラマ『ビッグ・リトル・ライズ』で、第69回プライムタイム・エミー賞の助演男優賞、第75回ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞しています。
マディソン・ラッセル(ミリー・ボビー・ブラウン)
モナークの科学者・マーク・ラッセルの娘です。
演:ミリー・ボビー・ブラウン
2016年にネットフリックス配信のSFドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の大ヒットによって一躍スターダムにのし上がります。
全米映画俳優組合賞女優賞にノミネートされ、全米映画俳優組合賞アンサンブル賞を共演者と一緒に受賞。
2016年11月にシグマやバーディーのシングル「Find Me」のミュージックビデオに出演します。2016年11月以降、シティグループの商業広告にも登場しています。
2017年1月にカルバン・クラインの「バイ・アポイントメント」キャンペーンに起用され、モデルデビュー。
2019年に『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』で映画デビューします。
アイリーン・アンドリューズ(レベッカ・ホール)
モナークでコングの研究をしている女性言語人類学者。
演:レベッカ・ホール
2002年にジョージ・バーナード・ショーの『ウォレン夫人の職業』で舞台デビュー。2006年にデイヴィッド・ニコルズ原作の『Starter for Ten』に初出演します。
ウディ・アレンの『それでも恋するバルセロナ』のヒロイン、ヴィッキー役に抜擢され、スカーレット・ヨハンソン、ペネロペ・クルスと共に一躍脚光を浴び、ゴールデングローブ賞 主演女優賞 にノミネートされます。
以来、次々と国内外の注目作の役を得、2012年はフォード・マドックス・フォード原作『パレーズ・エンド』での好演で英国放送記者組合賞の最優秀女優賞を受賞。
2021年公開予定の映画『PASSING -白い黒人-』で監督デビューを果たしています。
バーニー・ヘイズ(ブライアン・タイリー・ヘンリー)
ハイテク企業・エイペックス・サイバネティックスの元技術者で、現在は同社の陰謀を暴くポッドキャストのホストです。
演:ブライアン・タイリー・ヘンリー
人気TVシリーズ「LAW&ORDER」(09)、「グッド・ワイフ」(10)などのゲスト出演を経て、コメディ「プエルトリカン・イン・パリ」(15)で映画デビュー。
2018年、「ロスト・マネー 偽りの報酬」と「ビール・ストリートの恋人たち」でメインキャストのひとりを務め、注目を集めます。
以降は「スパイダーマン スパイダーバース」(18)、「ジョーカー」(19)、「ゴジラvsコング」(21)などの話題作で幅広く活躍。
TVシリーズ「アトランタ」(16~21)では主人公の従兄弟アルフレッド・マイルズ役を演じ、プライムタイム・エミー賞にノミネートされています。
ウォルター・シモンズ(デミアン・ビチル)
エイペックス・サイバネティックスの創業者社長。
演:デミアン・ビチル
「’Til Death」(94)でメキシコのアカデミー賞にあたるアリエル賞の主演男優賞を受賞し、「Sex, Shame and Tears」(99)がヒットするなど、メキシコでスターの地位を築きます。
スティーブン・ソダーバーグ監督作「チェ」2部作(08)でキューバ革命の指導者フィデル・カストロ役を演じています。
クリス・ワイツ監督作「明日を継ぐために」(11)では、アカデミー主演男優賞にノミネートされます。
以降は、「野蛮なやつら SAVAGES」(12)、「ヘイトフル・エイト」(15)、「死霊館のシスター」(18)、「ゴジラvsコング」(21)となどハリウッドの話題作で活躍しています。
芹沢蓮(小栗旬)
モナークの科学者・セリザワ・イシローの息子でエイペックスの技術者です。
演:小栗旬
阿部勉監督作「しあわせ家族計画」(99)で映画デビュー。花堂純次監督作「羊のうた」(02)で映画初主演を務めた後、「あずみ」(03)、「キサラギ」(07)などに出演します。
ラブコメドラマ「花より男子」(05)で人気が急上昇し、同作続編や映画版「花より男子ファイナル」(08)にも出演。
映画では「クローズZERO」シリーズ(07、09)に主演する傍ら、10年には構想から9年かけて完成した「シュアリー・サムデイ」で映画監督デビューをも果たします。
以降の映画主演作に「岳 ガク」(11)、「宇宙兄弟」(12)、「信長協奏曲(ノブナガコンツェルト)」(16)、「銀魂」(17)などがあります。
ジョシュ・ヴァレンタイン(ジュリアン・デニソン)
マジソンの友人。ゴジラがエイペックスの研究所を攻撃した理由を探ります。
演:ジュリアン・デニソン
11歳のときに映画「Shopping」(13)で子役デビューし、ニュージーランド映画賞の最優秀助演男優賞を受賞。
ニュージーランド映画として史上最高興収を記録したタイカ・ワイティティ監督作「ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル」では最優秀主演男優賞を受賞しています。
米俳優ライアン・レイノルズから、ヒーロー映画「デッドプール2」(18)の出演オファーを受け、物語の鍵を握るミュータントのファイヤーフィスト役を演じてハリウッドデビューを果たします。
基本情報
製作 トーマス・タル ジョン・ジャシュニ(英語版) ブライアン・ロジャーズ 他
製作総指揮 ジェイ・アッシェンフルター ハーバート・W・ゲインズ 他
出演者 アレクサンダー・スカルスガルド ミリー・ボビー・ブラウン レベッカ・ホール
音楽 ジャンキーXL
主題歌 〔日本〕 MAN WITH A MISSION 「INTO THE DEEP」
撮影 ベン・セレシン
編集 ジョシュ・シェーファー
製作会社 ワーナー・ブラザース レジェンダリー・ピクチャーズ 東宝
配給 〔世界〕 ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ 〔日本〕 東宝
公開 〔アメリカ〕 2021年3月31日 〔日本〕 2021年7月2日
上映時間 113分
製作国 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $160,000,000 – 200,000,000
興行収入 〔アメリカ〕 $100,916,094 〔日本〕 19億円
ゴジラの歴史
ゴジラは1954年の『ゴジラ』でスクリーンに初登場すると、以降断続的に映画が作られ続け2016年の『シン・ゴジラ』までで29作品が制作されています。
これにアニメ映画3部作、今はなかったことにされている1998年のハリウッドリメイク『GODZILLA』。
そして、今回の『ゴジラvsコング』を含むモンスターバース作品(2014年『GODZILLAゴジラ』、2019年『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』)などなど様々な形で映像化されています。
現在Netflixでは初のアニメシリーズ「ゴジラS.P<シンギュラポイント>」が放映されています。
対するキングコングは1936年に最初の映画が作られていて、ゴジラより20年近く先輩にあたります。
『モンスターバース』とは?
『モンスターバース』は、日本の映画会社東宝が生み出した世界的キャラクター「怪獣王ゴジラ」を、アメリカのレジェンダリー・エンターテインメント社がフランチャイズ契約して製作されたハリウッド版怪獣映画シリーズです。
2014年公開の第1作『GODZILLA ゴジラ』が当時の興行収入1位を記録したことを皮切りに、世界的に人気と評価を集めた作品であり、当初の発表においては本作が最終作となる予定でした。
そのためファンの期待は高く、グッズ展開なども盛んに行われていたものの、COVID-19の世界的蔓延によりアメリカ、ヨーロッパ、台湾以外の地域では3か月ほど公開が遅れることになりました。
公開後はファンを中心に高い評価を集め、「シリーズ最高傑作」との声も多く寄せられています。
北米において有名な映画指標であるシネマスコアでは、『モンスターバース』シリーズで初のA評価を受けています。
『モンスターバース』への高い人気を受け、レジェンダリー・エンターテインメント社は同シリーズの新作の製作を発表。この作品の売り上げ次第では、さらなる続編の展開もありうるとしています。
「ゴジラvsコング」用語解説
モナーク
「モンスターバース」シリーズ1作目から登場する国際的な秘密機関です。
トップクラスの科学者がタイタンと呼ばれるさまざまな巨大モンスターを常時監視しているばかりでなく、万一に備えて軍隊並みの強力な兵器も準備しています。
本作では新たな任務を担っています。
エイペックス・サイバネティックス
ハイテク関連の大企業です。創業者社長・ウォルター・シモンズは人類に革命をもたらす地底世界にある新しいエネルギー源を探しています。
一方、裏では怪しげな研究をしているようで、元社員のバーニー・ヘイズが同社の陰謀を暴こうとしています。
本作も含めて「モンスターバース」は、地球の内部は空洞で地底にはもう一つの世界が存在するという「地球空洞説」を前提にしています。
地球空洞説はヒューストン・ブルックス博士(『キングコング:髑髏島の巨神』が提唱したものです。
彼は地球上の至る所に、世界の端から端まで簡単にアクセスできる空洞の導管が存在すると考えていました。
それは、地球そのものを貫く近道であり、その中には文明や生物が気づかれずに存在できるポケットがあるというものです。髑髏島は地上に出られる場所のひとつです。
『ゴジラvsコング』では、地球空洞説の専門家であるネイサン・リンド博士が、イーロン・マスク・ウォルター・シモンズとエイペックス・サイバネティクス社の地球のコアへの旅を支援しています。
ゴジラとコングの頂上対決!
当初、突然地上に姿を現したゴジラは、コングに対して地上の覇権をかけて戦いを仕掛けているように見えました。
ゴジラ自身も、コングをある程度の脅威と感じていたのかもしれません。最終的にはゴジラはメカゴジラの存在を察知していたことがわかりましたが、やはりコングとの激闘が本作の最大の見どころです。
最初の海上の戦いでは、コングは麻酔を打たれていたためか、はたまたゴジラのようには泳げないためか、ゴジラの圧勝。リンド博士の機転によって、辛くも窮地を脱した形になりました。
ゴジラとコングが再び激突した夜の香港の戦いでは、地下空洞から先祖が残した斧を使ってコングがゴジラの熱放射を跳ね返し、コングの勝利。しかしその後、復活したゴジラはコングを瀕死にまで追い詰める反撃を見せます。
そしてリンド博士によって蘇生されたコングは、ゴジラとともにメカゴジラを撃破。
ゴジラとコングの頂上決戦としては、2勝1敗でゴジラに軍配が上がりました。しかし最後には力を合わせてメカゴジラを倒したので、両方が勝者になったともいえます。
メカゴジラ登場
エイペックス社では、キングギドラの頭部を解剖しメカゴジラをテレパシーで動かす研究をしていました。
メカゴジラは対ゴジラのために作られたロボット怪獣です。
作中では実験段階にあったメカゴジラを誤作動させてしまいます。メカゴジラは地上で破壊活動を始めました。
口から放つ赤い熱線は、消耗した状態だったとはいえゴジラの放射熱線に正面から打ち勝つほどの威力を持っています。
トドメを刺す寸前までゴジラを追い詰めますが、ここでコングが乱入。2大怪獣を相手に1歩も引かず、逆にコングを仕留めにかかります。
ジョシュの機転でエイペックスの制御コンピュータが損傷。わずかな隙にゴジラが放射熱線を浴びせたコングの斧の連続攻撃を食らって機体を引き裂かれ、最後は頭部を引き千切られて機能停止します。
1962年版『キングコング対ゴジラ』
1962版のリメイクではない
ゴジラとコングが対決する映画といえば、1962年に日本で製作された『キングコング対ゴジラ』があります。
しかし、プロデューサーのアレックス・ガルシアによれば、本作はそのリメイクではないと断言しており、実際まったく新たなストーリーが生み出されています。
また本作を手がけるアダム・ウィンガード監督は、「ゴジラとコングのいずれかが勝利する展開にしたい」と語っています。
1962年の映画では両者は相打ちとなったかのような描写がなされ、どちらが勝ったのかははっきりとは描かれませんでした。
『キングコング対ゴジラ』でも登場したヘリコプター輸送
本作の前半で、モナーク一行はコングを南極に輸送する途中でゴジラから襲撃を受けたため、海上の移動は危険だと判断。ヘリコプターでコングを宙づりにして南極へ向かいます。
これは『キングコング対ゴジラ』で、国会議事堂で眠ってしまったコングを気球で運んだ「キングコング空輸作戦」のオマージュといえます。
『キングコング対ゴジラ』同様に引き抜いた木を押し込む
香港での戦いで、コングは斧の柄をゴジラの口に押し込みます。
これもやはり『キングコング対ゴジラ』へのオマージュで、同作ではコングは地面から引き抜いた木をゴジラの口に刺し込みました。これは、ゴジラの熱放射を封じるためと思われます。
実際コングは戦いの間、執拗にゴジラの口を狙っていました。
まとめ
「ゴジラvsコング」のご紹介でした。いかがでしたか?
賛否はありますが、特に、日本のゴジラに思い入れのある人からの評価は低いです。
確かにストーリー的にいろいろと詰め込み過ぎて、設定に無理がある部分もいくつかあります。
しかし、ハリウッド映画だからこそ、世界を巻き込んだ怪獣たちのスケールに見合う映像が撮れているとも思います。
前半の海上戦も良いですが、やはり後半の香港夜戦、そして、メカゴジラとの共闘も見応え十分です。CGだからこその臨場感があります。
日本は『シン・ゴジラ』のような人間重視のリアル路線、ハリウッドはCG満載のアトラクション路線、どちらも棲み分けがあってよいのでは?と感じました。
ただ、今回がハリウッドデビューだった小栗旬の扱いがあまりにもかわいそうで同情しました。
脚本 エリック・ピアソン マックス・ボレンスタイン(英語版)
原案 テリー・ロッシオ マイケル・ドハティ ザック・シールズ