『グリーンランド -地球最後の2日間-』は、突如現れた彗星による世界崩壊までの48時間を、普通の一家の目線で描いたディザスタームービーです。
突如現れた彗星の破片が隕石となり地球に衝突。さらなる巨大隕石による世界崩壊まで残り48時間に迫る中、政府に選ばれた人々の避難が始まります。
建築技師の能力を見込まれたジョン・ギャリティ、そして妻のアリソンと息子のネイサンも避難所を目指して輸送機に駆けつけます。
しかし、ネイサンの持病により受け入れを拒否され、家族は離れ離れになってしまいます。
人々がパニックに陥り、無法地帯と化していく中、生き残る道を探すギャリティ一家が目にしたのは、非常事態下での人間の本性。
「エンド・オブ・ホワイトハウス」シリーズのヘラルド・バトラー、「デッドプール」シリーズのモリーナ・バッカリン、「ドクター・スリープ」のロジャー・デイル・フロイドがギャリティ一家を演じています。
監督は「エンド・オブ・ステイツ」でバトラーとタッグを組んだリック・ローマン・ウォーです。
今回は「グリーンランド -地球最後の2日間-」のあらすじ、見どころ、レビュー等のご紹介です。
Contents
あらすじ(ネタバレあり)
アメリカのアトランタ。建築技師のジョン・ギャリティは、妻アリソンと息子ネイサンと暮らしています。
ジョンが自宅に戻りますが、アリソンとはあまり仲が良くない様子。ネイサンは小児糖尿病を患い、体には医療器具をつけています。
テレビでは彗星クラークが地球に接近しているとのニュースが流れています。
クラークが地球に近づいていたある日、大気圏で消滅するため危険はないとされていたクラークの欠片が地球へと落下し、各地で被害が出始めます。
そんな中、高層ビルの建築士であるジョン・ギャリティは、息子ネイサンとの買い出し中にシェルターへの避難民に選ばれたと国土安全保障省から連絡を受け、自宅へ戻るなり荷物をまとめて妻アリソンとネイサンを連れて軍の飛行場へと向かいました。
しかし、飛行機に乗る直前に車にインスリンを忘れたことに気が付きます。
ジョンがインスリンを取りに行っている間に飛行機へと搭乗しようとしたアリソンでしたが、ネイサンの持病が理由で拒否されてしまったため、インスリンを持って戻ったジョンはアリソンたちを見つけることができませんでした。
輸送機にはパニックになった群衆が殺到し、軍が発砲したことで輸送機は爆発します。アリソンとネイサンはジョンに連絡を取ろうとしますが、携帯が繋がりません。
2人はジョンの車に「自分たちはケンタッキー州のレキシントンの父デイルの家に行く」という置手紙を残します。
医薬品店でインスリンを手に入れたアリソンは、ヒッチハイクで実家のあるケンタッキー州に向かいますが、乗せてくれた夫婦に事情を話したがためにネイサンを誘拐されてしまいます。
夫婦は空港でギャリティ一家を装い飛行機に乗ろうとしますが、ネイサンが助けを求めたため夫婦は逮捕され、なんとか空港に辿り着いたアリソンと再会します。
看護師がケンタッキー州に向かうバスを手配してくれたお陰で実家の近くまで辿り着きました。
ジョンはカナダへ向かうという集団のトラックに乗り込みます。ジョンはその集団のメンバーから、アメリカ軍はグリーンランドにある避難施設に選ばれた人たちを集める計画であるということを聞きます。
そのグループはカナダから飛行機に乗ってグリーンランドへ行くと言います。
しかし、ジョンが避難組のリストバンドを持っていることがわかると、その集団のメンバーはジョンからリストバンドを奪おうとします。ジョンは集団と格闘し逃げだします。
ラルフたちが空軍基地に着きました。2人はネイサンを息子だといい、輸送機に乗せろと言います。
しかし、ネイサンはラルフたちが両親でないと言います。そして、ネイサンは軍関係者に保護されました。アリソンが基地につき、ネイサンと再会します。
アリソンはネイサンを連れて軍のバスに乗り、レキシントンを目指します。
夜が明け、ジョンはレキシントンを目指している途中で民家に入り込んでテレビを見ます。ニュースでは明日にも人類は滅亡すると報じています。
キャスト
ジョン・ギャリティ(ジェラルド・バトラー)
本作の主人公。建築技師をしています。
演:ジェラルド・バトラー
舞台で経験を積んだのち、1997年のジュディ・デンチ主演作「Queen Victoria 至上の恋」で映画デビュー。
その後は小品数作でタイトル・ロールを演じ、「トゥームレイダー2」などの大作にも出演。
2004年、主人公ファントム役に抜擢されたジョエル・シューマカー監督作「オペラ座の怪人」のヒットにより、広く知られるようになります。
「300 <スリーハンドレッド>」では、ハードトレーニングで鍛え上げられた筋骨隆々たる体を張って迫力のアクションを披露。
2011年の映画『コリオラヌス』では軍の指導者トゥッラス・アウフィディウスを演じ、シェイクスピアの同名の悲劇を現代風に翻案し、2011年のアクション伝記映画『マシンガン・プリーチャー』でサム・チャイルダーズを演じています。
アリソン・ギャリティ(モリーナ・バッカリン)
ジョンの妻。今は別居中です。
演:モリーナ・バッカリン
即興ファッション界のコメディ『Perfume』(2001年)で初の映画出演を果たします。その後、『ウェイ・オフ・ブロードウェイ』(2001年)で主役を演じています。
2009年5月、テレサ・レベックのテレビ風刺映画『Our House』でニューヨークの劇作家ホライズンズでオフ・ブロードウェイ・デビュー。
その後、ABCの2009年から2011年にかけてのシリーズVでエイリアン・ビジターズのリーダーであるアンナの主役を演じています。
また、2011年から2013年まで、人気ドラマシリーズ『HOMELAND』にて主人公ニコラス・ブロディの妻ジェシカを演じ、プライムタイム・エミー賞の助演女優賞にノミネートされています。
ネイサン・ギャリティ(ロジャー・デイル・フロイド)
ジョンとアリソンの息子。糖尿病を患っています。
演:ロジャー・デイル・フロイド
ジョンの息子役を演じたロジャー・デイル・フロイドは、これまでも、「ウォーキング・デッド」のスピンオフ「ウォーキング・デッド:ワールド・ビヨンド」で主役級の役を演じています。
また、話題作『シャイニング』の続編である『ドクター・スリープ』にも出演しています。
監督リック・ローマン・ウォーは、「厳しい病気を抱えながらも強さを発揮する、一筋縄ではいかない役を演じている」とコメント。
父役のジェラルドも、「ロジャーは将来絶対スターになる。驚くほどの才能がある俳優で、この映画に全身全霊を打ち込んでくれた」と絶賛しています。
ラルフ・ヴェント(デヴィッド・デンマン)
アリソンとネイサンに同情して車に乗せます。
演:デヴィッド・デンマン
1997年に医療ドラマ『ER緊急救命室』と『シカゴ・ホープ』それぞれに出演して役者デビュー。
しばらくはテレビを中心に出演が続き、2000年にジーン・ハックマン、キアヌ・リーブス出演のフットボール映画『リプレイスメント』で映画デビューを果たします。
デビュー以来、テレビ・映画・舞台と様々な分野で活躍。2003年にはティム・バートンが監督の『ビッグ・フィッシュ』では、ユアン・マクレガー演じる主人公に嫉妬心を燃やす恋敵を演じています。
2008年に落合正幸がハリウッドデビューを飾った『シャッター』へも出演。同作品では同じくハリウッドデビューを果たした奥菜恵とも共演し、東京ロケにも参加しています。
デイル(スコット・グレン)
アリソンの父親です。
演:スコット・グレン
TVのソープ・オペラに出演後、LAに渡って70年に「受胎の契約/ベビー・メーカー」で映画デビュー。
80年の「アーバン・カウボーイ」で強烈な印象を残して注目されます。
その後、83年の「ザ・キープ」を経ての同年、「ライトスタッフ」でシェパード宇宙飛行士を演じたあたりから性格俳優としての地位を確立し始め、多数の作品に出演。
「レッド・オクトーバーを追え!」での潜水艦艦長、「羊たちの沈黙」でのFBIの上司、「バックドラフト」の消防士と、一作ごとに存在感を増す演技で好演しています。
ブリーン少佐(メリン・ダンジー)
ロビンズ空軍基地の軍人です。
演:メリン・ダンジー
1999年から2007年まで主演したCBSのテレビシリーズ「キング・オブ・クイーンズ」でケリー・パーマーの繰り返しの役割を演じました。
また、FOXのシットコムマルコム・イン・ザ・ミドルでスティーヴィーの母親キティ・ケナーバン役を演じています。
2014年にはABCの『ワンス・アポン・ア・タイム』でウルスラ役を、『ブルックリン・ナインナイン』でシャロン・ジェフォード役を演じています。
2017年9月、医療ドラマ『レジデント』のクレア・ソープ役で出演しています。
基本情報
撮影 ダナ・ゴンザレス
編集 ガブリエル・フレミング
製作会社 サンダー・ロード・フィルムズ G-ベース アントン
公開 〔アメリカ〕 2020年12月18日(配信) 〔日本〕 2021年6月4日
上映時間 119分
製作国 アメリカ合衆国
言語 英語
興行収入 〔世界〕$52,300,000 〔日本〕8500万円
次作 Greenland 2
ディザスタームービー
ディザスタームービー(英: disaster film)は、災害や大惨事など突然の異常事態に立ち向かう人々を描く映画のジャンルです。
天災の脅威をリアルに別次元でエンターテインメントとして体感できるディザスタームービーは、最も映画らしいジャンルです。
様々な人間の行動を描くためにグランド・ホテル形式が多く用いられます。また、異常事態を描くために大掛かりな特撮(SFX・VFX)が使われます。
歴史は古く「映画の父」とも呼ばれるD・W・グリフィスが1916年に制作した『イントレランス』には、すでにディザスタームービーの要素が見られます。
1930年代の作品においても『桑港』(1936、W・S・ヴァン・ダイク監督)の地震や『シカゴ』(1938年、ヘンリー・キング監督)の火災のようにディザスタームービーの要素を持つものがあります。
1950年代から1960年代初頭のSF映画には『地球最後の日』のように大惨事を描くものが多くなります。
1970年の『大空港』の成功により、1970年代はディザスタームービーが流行。しかし、1970年代中頃にはディザスタームービーというジャンルは消耗し尽されていきます。
それから10数年後の1990年代中頃、特撮技術の進歩によって迫力のあるスペクタクルシーンの製作が可能となり、ディザスタームービーは復活。
2000年代後半以降、CGの技術が著しく向上し、これらシーンの制作が容易になっていることもジャンルの隆盛に一役買っています。
今回の作品『グリーンランド』が一般人にフォーカスしたのは、彗星が地球に衝突するという、とても現実的なテーマだからではないでしょうか。
本作を作るにあたり、ウォー監督はリサーチをたくさんしたそうです。そして、「彗星の速度や、別の太陽系からいきなりやってきて数時間で地球のレーダーに感知されたエピソードなどを知った」と言っています。
「グリーンランド」の見どころ
平和な日常が突然の隕石の落下によって一変、世界崩壊まで48時間というタイムリミットが迫る中、ジワジワと広がっていく恐怖と無秩序、人間の善悪が描かれていきます。
TV画面の「大統領警告です。ただちに避難してください」の直後、ジェラルド・バトラー演じるごく普通の父親が決死の覚悟で絞りだした「逃げるぞ!」から、立ちはだかる困難を次々と乗り越える家族の姿が描かれます。
ある家族が地獄を潜り抜けていく物語。申し分のない生活が一瞬にして消え、全人類がその影響を受けます。
数々の壮観なアクションシーンやスペクタクルに加え、あらゆる倫理的な問題もはらんでいます。
仲良くしていた近所の人たちとの突然の別れ、逃げ惑う人々でパニックになる空港、ついさっきまで親切だった人が突然敵意をむき出しにする恐怖。
また、自分は生き残れなくともバトラーら家族を救うために動いてくれる医療従事者、軍人など、善と悪が交差する極限状態の人間ドラマが展開します。
エメリッヒ仕込みのド派手なVFX
猛烈なスピードで地球を目指す彗星群や、空を覆う禍々しい雲、地上に衝突した時の爆風と衝撃、地獄の業火に焼かれるように消滅する都市。
原型を止めることがやっとなほどに破壊された観光名所の数々は、エメリッヒ監督作品を彷彿させる派手さです。
主役が一般人ということで、彗星衝突の規模とのコントラストが強調され、余計に絶望的に感じます。
ローランド・エメリッヒ監督の『デイ・アフター・トゥモロー』(2004年)や『2012』(2009年)を彷彿させます。
VFXを担当したのは、PXOMONDO。『2012』のVFXを一任され、2012年に『ヒューゴの不思議な発明』でアカデミー視覚効果賞を受賞したスタジオです。
『2012』以降、「破壊王」の異名を持つローランド・エメリッヒ監督からの信頼が熱く『インデペンデンス・デイ: リサージェンス 』(2016年)や、ミッドウェイ海戦を描いた『ミッドウェイ』、新作『Moonfall』のビジュアルも担当している、いわば、エメリッヒ監督仕込みの破壊マスターと言えるでしょう。
「グリーンランド」レビュー
作品の評価
Rotten Tomatoesによれば、批評家の一致した見解は、「グリーンランドの彗星にご用心。ジェラルド・バトラーは地球を守るため、そして観客にありえないほど楽しい時間を見せてくれるためにやってきた。」とあります。
147件の評論のうち高評価は78%にあたる115件で、平均点は10点満点中6.4点となっています。
Metacriticによれば、25件の評論のうち、高評価は18件、賛否混在は6件、低評価は1件で、平均点は100点満点中64点となっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は「グリーンランド -地球最後の2日間-」をご紹介しました。
地震、台風、竜巻、隕石落下、その他の自然災害に見舞われて右往左往する人間心理を描写する映画であり、自身を当事者に置き換えて鑑賞するととても灌漑深い気持ちになります。
戦争などによって引き起こされたパニックではなく、自然災害によって、パニックになる様子はとてもリアルに感じます。
『グリーンランド』の物語の舞台はアメリカです。アメリカからグリーンランドの地下シェルターへ避難するまでを描いています。
この作品の最大の見どころは何といっても、無数の隕石が地球に飛来して、落下、そして爆発するCG映像です。
『アルマゲドン』の時代と違って、もうCGと実写の区別がほとんどつきません。それに慣れてしまっているので、逆に現実味が失われてしまうデメリットもある気もします。
そして、こういったディザスター映画には大抵「家族愛」が描かれます。離れ離れになった家族を探し出し、生き残りをかけるのです。
そして、その家族の多くに「離婚の危機」「親子の不仲」あるいは「子どもの病気」などの設定が盛り込まれています。
「グリーンランド -地球最後の2日間-」でも「離婚の危機」と「子どもの病気」がしっかりと埋め込まれていました。
隕石の衝突という未曾有の災害の中で、バトラー扮する主人公が超人的な活躍するのではなく、その過程で人間の醜い本性もさらけ出しながら、懸命に家族を守る普通の父親の強さを感じさせてくれる映画です。
脚本 クリス・スパーリング(英語版)
製作 ジェラルド・バトラー ベイジル・イヴァニク(英語版) セバスティアン・レイボー
製作総指揮 ニック・バウアー アラステア・バーリンガム ジョナサン・ファーマン 他