原子炉主任技術者について

原子炉主任技術者について

原子炉主任技術者とは、原子炉の運転に関する保安や監督を担う技術者のことです。

この資格は「核原料物質、核燃料物質および原子炉の規制に関する法律」に基づいた国家資格です。

今回はこの原子炉主任技術者について見ていきましょう。

適用する仕事

原子炉は扱い方によっては恐ろしい災害を引き起こすものです。この原子炉を安全に運用するために配置されるのが原子炉主任技術者です。

原子炉主任技術者の役割は、原子炉の安全性を保ち核燃料によるエネルギー供給を存続させること、そしてメルトダウンなどの事故を防ぎ、環境・人命を守ることです。

原子炉を設置する際は、この原子炉主任技術者を選任して原子炉の監督を行わせることが法律で決められています。

具体的な仕事内容は以下の通りです。

原子炉主任技術者の仕事内容
  1. 運転計画の立案
    原子炉を運転するにあたり、事前に出力、運転条件などを定めた運転計画を立て、原子炉主任技術者が保安の観点からその運転計画が妥当であるかどうかの判断を行います。
  2. 運転炉心の新設・変更
    運転炉心を新たに構成する場合や運転炉心の変更を行う場合も、燃料の配置や燃料移動の手順が妥当かどうか原子炉主任技術者が判断し、承認するかどうかの権限を担います。
  3. 原子炉の監視・点検・保守
    日常的に原子炉を巡視、点検し、原子炉の保守や修理などについても絶えず記録などを確認し、原子炉の保全が確実にされているかどうかの最終的な確認を行います。
  4. 緊急時対応
    原子炉の運転中に警報が発せられるなどの異常が起こった場合は、原子炉主任技術者は原子炉運転の責任者などに指示を出します。

おおよその年収とキャリアパス

お金原子炉主任技術者の主な就職先は、原子炉を扱う電力会社や原子力発電の研究所です。

電力会社で発電に携わる社員の平均年収は624万円です。

また、日本原子力研究開発機構が求人に掲載しているロールモデルの年収は3年目職員で450万円、8年目職員で600万円、13年目職員で725万円です。

さらに、原子炉主任技術者は国家資格ですから、資格保有者には資格手当が支給されます。

国家資格が求められる高い専門性、そして背負う責任の大きさが年収に反映されていると考えていいでしょう。

日本は原子力発電の占める割合が先進国の中でも高い国です。

原子力発電所は、稼働を停止することはあっても点検・保守は絶えず実施する必要があります。

大災害が起きたときの被害の規模は計り知れないものがありますので、日頃の原子炉の安全確保は欠かせません。

認可団体

原子力規制委員会原子炉主任技術者資格試験は「原子力規制委員会」が実施しています。

2011年3月11日に発生した東京電力福島原子力発電所事故を教訓に、二度とこのような事故を起こさないためにと設置されたそうです。

原子力規制組織に対する国内外の信頼回復を図り、国民の安全を最優先に、原子力の安全管理を立て直すことを目標としています。

設置日:2012年9月19日

所在地
〒106-8450
東京都港区六本木1丁目9番9号
TEL:03-3581-3352(代表)

受験条件

試験は筆記試験と口答試験があります。

筆記試験は年齢、学歴などの制限なく誰でも受験できます。
口答試験は、筆記試験の合格者で、かつ次のいずれかに該当する人が受けられます。

口頭試験の受験条件
  • 原子炉の運転に関する業務に6ヶ月以上従事した者
  • 経済産業大臣および文部科学大臣が指定した講習機関などで原子炉の運転に関する課程を修了した者

合格率

合格率は以下のとおりです。

年度 筆記試験 口答試験
2021年度 10.6% 31.4%
2020年度 12.4% 28.7%
2019年度 14.4% 19.1%

1年当たりの試験実施回数

年1回実施されます。

試験科目

筆記試験は以下の内容が問われます。

  • 原子炉理論
  • 原子炉の設計
  • 原子炉の運転制御
  • 原子炉燃料および原子炉材料
  • 放射線測定および放射線障害の防止
  • 原子炉に関する法令

口答試験では原子炉の運転を行うために必要な実務的知識を問われます。

免除について
原子力専門職大学院の修了者は筆記試験において、法令を除く科目が免除になります。
また、口答試験では受験資格要件(実務経験6ヵ月以上)を得ることができます。

採点方式と合格基準

ボーダーライン筆記試験は多肢選択式と記述式の出題形式で、各科目100点満点です。
そのうえで下記1から5までの事項全て、または6が満たされていれば合格です。

  1. 平均点が60点以上であること
  2. 「原子炉に関する法令」および「放射線測定及び放射線障害の防止」が60点以上であること
  3. 「その他の課目」で60点未満が2課目までであること
  4. 「その他の課目」で50点未満が1課目までであること
  5. 40点未満がないこと
  6. 筆記試験の一部免除を受けた者は「原子炉に関する法令」が60点以上であること

口答試験も100点満点です。
そのうえで60点以上の者を合格とします。

取得に必要な勉強などの費用

原子力人材育成センターで試験対策講座を開かれています。期間は10日間、講座料金は59,400円です。

それ以外の勉強方法としては、認可団体の過去問を参照する、それぞれの法令や理論などの参考書を個々購入するといった方法が考えられます。

伝熱工学資料 改訂第5版

伝熱工学資料 改訂第5版
created by Rinker
出版社名:日本機械学会
商品名:伝熱工学資料 改訂第5版
価格:¥14,300(税込)

熱伝導・熱伝達および流体力学に関する書籍です。

原子力ハンドブック

原子力ハンドブック出版社名:オーム社
商品名:原子力ハンドブック
価格:¥33,000(税込)

原子力に関わる最新の技術と研究成果を集積させたハンドブックです。
放射線やRIといった関連知識についてもトピックスとともに掲載しています。幅広く活用できる内容です。

受験料

52,100円

受験申込方法

願書

受験申込書

原子力規制委員会公式サイトからダウンロードし、白黒・A4サイズで倍率・用紙の向きを変更せずに印刷してください。

履歴書

これも原子力規制委員会公式サイトからダウンロードし、白黒・A4サイズで倍率・用紙の向きを変更せずに印刷します。

現在の職業については、会社等の部課名までを電話番号も併せて記入します。賞罰欄は該当がない場合は必ず「なし」と記入しましょう。

本籍(国籍)を確認することができる地方公共団体の機関が発行した書類

戸籍抄本、本籍の記載のある住民票の写し(外国籍の方は国籍の記載のあるもの)、戸籍謄本の写し等を提出してください。
ただし、コピーでの提出はできません

写真

写真の裏面に撮影年月日および氏名を記入し、裏面全体にのりづけして写真貼付欄に貼付してください。

写真の条件
  • 受験申込み前1年以内に撮影したものであること
  • 脱帽して正面からの撮影であること
  • 縦4.5cm、横3.5cmのもの

郵便はがき1枚

受験票用です。
63円の通常はがきを提出してください。はがきの裏面には何も記入しないでください(受験番号等を印刷して受験票とするため)。

そのほか、以下を必要に応じて準備しましょう。

  • 受験科目の免除対象者…
    修了(見込)証明書および修得単位(見込)証明書
  • 身体障害のある方…
    特別措置に関する申請書、障害者手帳の写し、または医師の診断書など障害の程度を証明する書類

まとめ

以上、原子炉主任技術者という資格について紹介しました。原子炉主任技術者は原子炉を作動させるうえでなくてはならない存在です。

筆記試験は誰でも受けられますが、口答試験は受験条件があります。
原子炉の運転に関する業務に携わっている方、専門の講習機関で課程を修了した方が対象となります。

この資格試験は資料が限られているため、独学は骨の折れることでしょう。原子力人材育成センターが実施する試験対策講座が最適です。

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