海上特殊無線技士は国家資格です。
第一級、第二級、第三級、レーダー級の4種にわかれています。
ここでは第一級海上特殊無線技士のことを一海特と略します。第二級、第三級も同様です。
海上での遭難事故を防ぐためには、船舶と陸上間の通信手段を維持することが必要です。
そこで活きてくるのが海上特殊無線技士という国家資格です。
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適用する仕事
この資格を使う職業は様々です。何点か例を以下に示します。
曳舟(タグボート甲板職員)船員、携帯電話基地局関連工事、整備士(要自動車整備士3級)、航海士、特別国家公務員(自衛官候補生)、無線技士(無線通信士)、漁業現場スタッフ、機関士、まぐろ漁師、漁船乗組員、貨物船(内航船)二等航海士、貨物船(内航船)船長、重機オペレーター(重機の操縦及び管理)、板金・塗装業務、施設・設備管理、技能工、運輸・物流系。
この資格を級ごとに分けると、それぞれの級でできることは以下の通りです。
第一級海上特殊無線技士
無線電話で国際通信ができます。
諸外国の200海里水域において、漁船の沿岸国への出入国や漁獲量といったことの報告、国際航海に従事する船舶の業務通信設定、通信、船用レーダーの操作をします。
第二級海上特殊無線技士
第二級では、日本沿岸や近海の海域で、無線電話やファクシミリの使用や国内通信、船舶のレーダーを取り扱えます。
空中線電力10W以下の無線設備では、1606.5キロヘルツから4000キロヘルツまでの周波数の電波を使用するもの、空中線電力50W以下の無線設備では、25010キロヘルツ以上の周波数の電波を使用するものを操作できます。
第三級海上特殊無線技士
第二級と同じように、日本沿岸や近海の海域において無線電話やファクシミリの使用、国内通信や船舶のレーダーを取り扱える資格です。
船舶に施設する空中線電力5W以下の無線電話で、25010キロヘルツ以上の周波数の電波を使用するものの通信操作ができます。
レーダー級海上特殊無線技士
海岸局、船舶局及び船舶のための無線航行局のレーダーの外部の転換装置で、電波の質に影響を及ぼさないものの技術操作ができます。
おおよその年収とキャリアパス
船の仕事の年収は、おおまかですが250万円から780万円ほどです。
船長などになると、当然かもしれませんがそのときに給与が上がるところが多いです。
無線技士は、180万円から360万円のところが見られます。
携帯電話基地局関連工事などは、年収325万円から634万円のところがみられました。
認可団体
認定の団体は総務省です。国家資格となります。
受験条件
この資格を取得するには、次のうちのいずれかが必要です。
- 国家試験に合格する
- 養成課程か、長期型養成課程を修了する
- 無線通信に関する科目を学校で履修し、卒業する(二海特、三海特に限る)
国家試験に合格する点ですが、試験を受ける際に特に制限はありません。
年齢や学歴などによらず、誰でも受験することができます。
合格率
各級それぞれの合格率を見てみましょう
第一級
2020年 合格率:73.2%
2019年 合格率:59.0%
2018年 合格率:55.8%
第二級
2020年 合格率:82.4%
2019年 合格率:80.1%
2018年 合格率:81.2%
第三級
2020年 合格率:100%
2019年 合格率:95.0%
2018年 合格率:87.5%
レーダー級
2020年 合格率:96.6%
2019年 合格率:81.0%
2018年 合格率:91.7%
1年当たりの試験実施回数
国家試験は、2022年の時点では日本無線協会が6月、10月、2月の年3回実施しています。
この他にも、学校等からの依頼により実施することができます。
試験科目
無線従事者規則の第3条にある試験の方法は次の通りです。
電気通信術は実地、その他は筆記かCBT方式によること。
さらに、第5条に試験科目が規定されています。
一海特
無線工学 | 無線設備の取扱方法(空中線系及び無線機器の機能の概念を含む) |
法規 | 電波法及びこれに基づく命令(船舶安全法及び電気通信事業法並びにこれに基づく命令の関係規定を含む)の簡略な概要 国際電気通信連合憲章、国際電気通信連合条約、国際電気通信連合憲章に規定する無線通信規則(海上における人命又は財産の保護のための無線通信業務及び無線測位業務に関する規定に限る)、国際電気通信連合憲章に規定する電気通信規則並びに船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約(電波に関する規定に限る)の簡略な概要。 |
英語 | 口頭により適当に意思を表明するに足りる英会話。文法は比較的難しい使い方はされませんが、海上通信特有の出題があり、受験体験談によると、それが試験合否のポイントになっているそうです。 |
電気通信術 | 電話1分50字速度の欧文による約2分間の送話及び受話。ここで欧文とは、ヨーロッパ諸国で使われる言語による文章です。 |
二海特
無線工学 | 無線設備の取扱方法(空中線系及び無線機器の機能の概念を含む) |
法規 | 電波法及びこれに基づく命令(電気通信事業法及びこれに基づく命令の関係規定を含む)の簡略な概要 |
三海特
無線工学 | 無線設備の取扱方法 |
法規 | 電波法及びこれに基づく命令 |
レーダー級
無線工学 | レーダーの取扱方法(レーダーの機能概念を含む) |
法規 | 電波法及びこれに基づく命令の簡略な概要 |
採点方式と合格基準
これも種目によって違います。
一海特
無線工学 | 全12問。問題形式は多肢選択式。満点が60点。合格点は40点。時間は60分。但し、無線工学の免除者は30分。 |
法規 | 全12問。問題形式は多肢選択式。満点が60点。合格点は40点。時間は60分。但し、無線工学の免除者は30分。 |
英語 | 問題形式は多岐選択式。満点が100点。合格点は60点。時間は30分以内。 |
電気通信術 | こちらは実地試験なので問題数はありません。満点が100点。合格点は80点。時間も明確には決まっていません。 |
二海特
無線工学 | 全12問。問題形式は多肢選択式。満点が60点。合格点は40点。時間は60分。但し、無線工学の免除者は30分。 |
法規 | 問題形式は多肢選択式。満点が60点。合格点は40点。時間は60分。但し、無線工学の免除者は30分。 |
三海特
無線工学 | 全10問。問題形式は正誤式。満点が50点。合格点は30点。時間は60分。但し、無線工学の免除者は40分。 |
法規 | 全20問。問題形式は正誤式。満点が60点。合格点は40点。時間は60分。但し、無線工学の免除者は40分。 |
レーダー級
無線工学 | 全12問。問題形式は多肢選択式。満点が60点。合格点は40点。時間は60分。 |
法規 | 全12問。問題形式は多肢選択式。満点が60点。合格点は40点。時間は60分。 |
取得に必要な勉強などの費用
資格試験のための勉強の参考書の価格を載せさせて頂きます。
第一級・第二級海上特殊無線技士 無線工学
発行元:情報通信振興会
商品名:第一級・第二級海上特殊無線技士 無線工学
価格:¥1,540(税込)
電波法第41条第2項第2号に基づく無線従事者規則第21条第1項第10号の規定により、標準教科書として告示された無線従事者の養成課程用教科書です。
第一級海上特殊無線技士 英語
発行元:情報通信振興会
商品名:第一級海上特殊無線技士 英語
価格:¥1,386(税込)
無線従事者養成課程用の標準教科書になる英語のテキストです。
第一級海上特殊無線技士用です。
やさしく学ぶ 第二級海上特殊無線技士試験
出版社名:オーム社
商品名:やさしく学ぶ 第二級海上特殊無線技士試験
価格:¥2,860(税込)
試験科目に合わせて法規と無線工学の構成になっています。
法規は試験に出る法令の要点が解説されています。
無線工学は試験に出るポイントに絞って、図を用いた解説がされています。
受験料
試験手数料は以下の通りです。
2020年4月1日以降、一海特が7,500円、二海特、三海特、レーダー級が5,600円です。
2022年1月試験のときに少し変更がありました。
それまでは受験票が郵送だったので、受験票送付用郵送料を合算しての納付でしたが、2022年1月試験のときに受験票がオンライン発行になったので、郵送料などが合算されることがなくなりました。
受験申込方法
受験の申込方法は以下の通りです。
まず申請の受付期間は、試験期日の2ヶ月前の月の1日(午前0時)から20日(23時59分)までです。
申請時に、必要事項を全て入力・登録しなければなりません。
申請方法の概要
受付期間中に、インターネットの試験申請用画面から必要事項を入力、登録しなければなりません。
申請のときに、受験者の顔写真を電子的に登録します。事前に適正な顔写真の準備が必要です。
試験手数料はコンビニで支払うかペイジーでの支払いになります。
ペイジーとは、インターネットバンキングやATMなどの手段を用いて電子的に支払いを行うものです。
科目の免除を希望する場合には、その旨を入力しなければなりません。
免除の理由によっては、証明書類を郵送する必要がある場合があります。
申請が完了したあとに、写真や証明書の審査を経て受験票が発行されます。
ここで、身体に障害があったり、その他理由でインターネットによる申請が困難な場合には個別に相談できるようです。
顔写真の登録
申請画面から試験申請用の顔写真を電子的に登録します。写真はそのまま免許証に転写されます。
顔写真のサイズは30mm×24mmで、頭頂から写真の上端が約2mmくらい空いているものが良いです。
まとめ
海上特殊無線技士の資格試験についてでした。
こちらは国家資格です。
海上での遭難事故を防ぐためには、船舶と陸上間の通信手段を維持することが必要です。
船に乗る仕事の人には必要な資格といえるでしょう。
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