航空運航整備士とは、航空機の離発着の間に日常的に行われる警備業や保守および修理を担う職業のことです。
修理というのは、こちらの資格の場合は軽微なものを指します。
ちなみに、航空整備士になると整備業務全般が任せられると言われています。
航空運航整備士より上位の資格です。
任せられる範囲は小さいかもしれませんが、航空機を整備するのに重要な「航空運航整備士」という資格について今回みていきます。
Contents
適用する仕事
航空運航整備士は国土交通省管轄の航空従事者国家資格のうちの1つで、航空機の運航に関わる保守点検や軽微な修理などを含む整備を担当します。
航空機の整備には航空整備士が思い浮かびますが、航空整備では具体的に5つの資格があります。
- 一等航空整備士
- 一等航空運航整備士
- 二等航空整備士
- 二等航空運航整備士
- 航空工場整備士
一等航空運航整備士
一等航空運航整備士は大型機の整備を担当します。
しかし、一等航空整備士に比べると、比較的軽微な整備に携わる「ライン整備」しか担当できません。
ライン整備とは、飛行前や到着後の機体の点検や整備を行う仕事です。
上記で“ライン整備しか”と述べましたが、それでもフライト前にわずかな時間の中で、ささいな異変も見逃さずに点検や整備を行う仕事ですから、迅速さと正確さを求められます。
しかし、一等航空運航整備士は大型機を整備できるといっても、すべての大型機を扱えるわけではありません。(ただし重量には制限がありません。)
一方、一等航空整備士は格納庫内での保守点検(ドッグ整備)まで行えます。
航空運航整備士の方は日常的な保守点検であるライン整備までしか行えませんので、行える範囲は限定的でしょう。
二等航空運航整備士
二等航空運航整備士は小型機や中型機を扱う整備士です。
小型機や中型機というのは、飛行機なら5.7t、回転翼航空機は3.18t以下の航空機ということです。
ここでも一等航空運航整備士と同じような線引きがあります。
“運航”が付かない「二等航空整備士」ですと、一等航空整備士と同様に格納庫内での保守点検(ドッグ整備)まで担当することができます。
しかし、二等航空運航整備士になると、日常的な保守点検であるライン整備までしか行えません。
おおよその年収とキャリアパス
航空運航整備士の年収は、基本的にはそんなに高いわけではありません。
平均300万~400万円くらいの人が多いようです。
一等の資格を取得すれば資格手当、24時間オープンの空港では夜勤手当が支給されます。
そういった部分が加わると金額もアップするでしょう。
最終的には一等航空整備士までキャリアアップすれば、仕事の幅が広がります。
まずは、二等航空運航整備士か二等航空整備士の資格を取得することから始めましょう。
一般的には高校卒業後に航空専門学校に進学したり、大学で工学系の学科を専攻したりします。
専門学校の中でも航空従事者養成施設に認定されているところでは、学内で実施されている技能検査や審査に合格すると、二等航空運航整備士や二等航空整備士の国家資格を取得することができるとされています。
この航空従事者養成施設というのは、すでに社会人として働いている人でも入学が可能です。
このように、二等航空運航整備士までは進む道が見えていますので、取得した後は一等の航空運航整備士や航空整備士に向けて努力を積み重ねて下さい。
認可団体
認定団体は国土交通省です。
受験条件
一等航空運航整備士には「飛行機」と「回転翼航空機」、二等航空運航整備士には「飛行機」「回転翼航空機」「滑空機」の資格に細かく分けられています。
まず、年齢では、一等航空運航整備士も二等航空運航整備士も18歳以上が受験できます。
あとは資格ごとの実務経験が必要です。
受験する資格の航空機の実務経験を6ヶ月含む、計2年間の整備実務経験が必要です。
資格 | 条件の航空機 |
一等航空運航整備士(飛行機) | 最大離陸重量8.6t以下の飛行機である飛行機C類、または航空運送事業用の飛行機である飛行機T類 |
一等航空運航整備士(回転翼航空機) | 多発の回転翼航空機である回転翼航空機TA、または最大離陸重量9.1t以下のヘリコプターである回転翼航空機TB |
二等航空運航整備士(飛行機) | 飛行機 |
二等航空運航整備士(回転翼航空機) | 回転翼航空機 |
二等航空運航整備士(滑空機) | 滑空機 |
合格率
合格率は非公開となっているので不明です。
ですが、二等航空運航整備士の場合は、養成施設内で技能検査や審査が行われます。
それでしたら、合格率100%のところもあります。
1年当たりの試験実施回数
航空運航整備士の試験は学科試験と実地試験があります。
一等航空運航整備士の学科試験は7月と3月の年2回です。
実地試験は学科試験の合格通知日から2年以内の希望日に行われます。
二等航空運航整備士の学科試験は7月、11月、3月の年3回です。
こちらも実地試験は学科試験の合格通知日から2年以内の希望日に行われます。
試験科目
学科試験と実地試験があります。
実地試験は整備基本技術・検査技術・整備知見と日常点検作業で統一されています。
学科試験の内容が資格によって若干変わってきます。
一等航空運航整備士(飛行機)
- 航空法規
- 機体
- タービン発動機
一等航空運航整備士(回転翼航空機)
- 航空法規
- 機体
- タービン発動機
二等航空運航整備士(飛行機)
- 航空法規
- 機体
- タービン発動機
- ピストン発動機
二等航空運航整備士(回転翼航空機)
- 航空法規
- タービン発動機
二等航空運航整備士(滑空機)
- 航空法規
- 機体
採点方式と合格基準
学科試験の出題形式は四肢または五肢択一式です。
合格基準は科目ごとに、100点満点中70点以上で合格となります。
合格した科目は、1年以内でしたら免除されます。
実地試験では法規関連、基本技術、知見および技術、点検作業を審査します。
Bレベル 修理、交換、調整、作動試験、故障探求が適時技術資料を参照して実施できる
判定基準は実施要目ごとに設定し、実施要目に2つ以上の判定要点がある場合は、それらのうちの一番高いレベルの判定基準が示されます。
実地試験の総合判定においては、知識の定着度、安全への配慮、故障探究能力を確認して判定します。
全科目についての実地試験を終了し、その成績が判定基準に達すれば合格です。
下記の項目のうち、一つでも該当すると不合格です。
- 基本技術などに関して1科目でも判定基準に達しないとき
- 実機に関して1科目でも判定基準に達しないとき
- 専門技術に関して1科目でも判定基準に達しないとき
取得に必要な勉強などの費用
航空運航整備士の試験対策には、いわゆる公式テキストというのは存在しません。
とにかく過去に出題された問題を解くことです。
2022年版 航空整備士学科試験問題集(問題編)
発行元:公益社団法人 日本航空技術協会
商品名:2022年版 航空整備士学科試験問題集(問題編)
価格:¥2,970(税込)
2017年11月から2021年7月までの過去4年分を掲載している問題集です。
2022年版 航空整備士学科試験問題集(解答編)
発行元:公益社団法人 日本航空技術協会
商品名:2022年版 航空整備士学科試験問題集(解答編)
価格:¥4,070(税込)
こちらは上記の問題集の解答編です。
2017年11月から2021年7月までの過去4年分を掲載しています。
航空整備士になる本
出版社名:イカロス出版
商品名:航空整備士になる本
価格:¥1,834(税込)
こちらは現役航空整備士や航空会社の採用担当者、航空整備士を養成する学校の教官などを取材している書籍です。
参考図書としてお使いください。
受験料
学科試験は一等・二等とも5,600円です。
実地試験は一等航空運航整備士が37,200円、二等航空運航整備士が34,600円です。
納付書の様式が国土交通省のホームページに掲載されてあります。
受験申込方法
受験申込書や技能証明申請書などの必要書類を揃えて、下記へ提出します。
千歳・岩沼・東京を受験地とする場合
東京航空局保安部運用課検査乗員係
〒102-0074 東京都千代田区九段南1-1-15 九段第2合同庁舎
名古屋・大阪・福岡・宮崎・那覇を受験地とする場合
大阪航空局保安部運用課検査乗員係
〒540-8559 大阪市中央区大手前4-1-76 大阪合同庁舎第4号館
その他は国土交通省の担当部署にお尋ねください。
〒100−8918 東京都千代田区霞が関2-1-3
TEL:03-5253-8111
まとめ
今回は「航空運航整備士」に焦点を当てて見てきました。
航空整備士の中に航空運航整備士や航空工場整備士が含まれています。
航空運航整備士でも一等と二等に分かれていて、それぞれ取り扱う航空機が異なります。
さらには、その中で一等航空運航整備士には「飛行機」と「回転翼航空機」、二等航空運航整備士には「飛行機」「回転翼航空機」「滑空機」と資格が細かく分かれています。
このように、細かく分類されていますので、自分がどの資格を持ちたいか明確にしなければなりません。
まずは、航空従事者養成施設に入学したり、航空運航会社に就職したりしましょう。
航空運航整備士の受験条件には実務経験も伴いますので、お仕事で知識や技術を勉強しつつ航空整備士へキャリアパスを歩んでみて下さいね。
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