皆さんは細胞検査士という職業をご存知でしょうか。
細胞検査士とは、臨床検査技師の仕事の一部といえる医療技術者のことで、人間の身体を作っている細胞を顕微鏡で調べて、ガン細胞を発見する職業です。
細胞検査士になるには、認定試験に合格して資格を取得しなければなりません。
専門色の強いこの資格は、どのようにして取得すれば良いかを今回みていきます。
理系や医療の方面に進みたい人にとって、役立つ記事かもしれませんよ。
Contents
適用する仕事
細胞検査士とは、人体の細胞の一部を顕微鏡で観察し、異常な細胞が無いかどうかを発見する「細胞病理検査(細胞診)」を専門的に担当する職業のことです。
検査作業(標本作成・ガン細胞などのスクリーニング)
細胞検査士が携わるおもな仕事の1つです。
具体的には、細胞診検査で剥離細胞や擦過(さっか)、穿刺(せんし)などで得た材料で標本を作ります。
例えば、喀痰(かくたん)や尿、婦人科の医師が綿棒を使って取った子宮膣部の細胞、乳房のしこりから穿刺吸引した材料などを用いて標本を作って、染色をして顕微鏡で見られるようにします。
完成した標本に対しては、スクリーニングという検査作業がおこなわれ、ここでガン細胞や異型細胞を探します。
剥離細胞を使った検査は、検査材料を簡単に取ることができるため、子宮ガン検診や肺ガン検診など、大勢の人を対象とした検診に広く利用されています。
細胞の観察と報告書の作成
これは標本の隅から隅まで全ての細胞を顕微鏡で観察し、正常では見られない細胞やガン細胞、あるいはガンと疑われる細胞を見つけ出す作業です。
そして、医師に確認をしてもらいます。
確認してもらったら、報告書を作成します。
観察業務は微小な異常も察知するための高い注意力が必要です。
おおよその年収とキャリアパス
細胞検査士の平均年収は約426万~430万円です。
日本人の全体の平均年収が約436万円なので、同じくらいの水準といえます。
年代別に見ると、30代で270~385万円前後、40代で310~490万円前後、50代で400~520万円前後が平均のようです。
細胞検査士が活躍する場は大学病院やがん検診センターなどです。
給与は勤務先によっても差が出ます。
大学病院といった大きな医療機関、または大規模な検査センターであれば比較的高収入が期待できます。
細胞検査士試験に合格し、資格を得ると上記のような職場で採用されて働けます。
ただし、その採用人数はそこまで多いわけではありません。
経験とスキルがあれば即戦力として、採用される可能性はあります。
新卒の場合は大規模ではなくとも、検査センターで採用されれば良いかと思われます。
細胞検査士の多くは、臨床検査技師の国家資格を持ったうえで、さらなるステップアップの一環で細胞検査士の資格を取得している人が多いようです。
臨床検査技師の就職状況も易しくはないですが、そちらの進み方や求人も検討してみてはいかがでしょうか。
認可団体
細胞検査士試験を運営している団体は「公益社団法人 日本臨床細胞学会」というところです。
こちらは臨床細胞学・細胞診断学の学術研究とその成果を実地臨床に応用することを推進する専門学会です。
1957年に設立された日本婦人科細胞診談話会を起源としています。
その後、他科領域の進歩に合わせて、1961年に国際婦人科細胞学会(IAC)がInternational Academy of Cytologyと改称されたのに従って、1962年に日本臨床細胞学会と称するようになりました。
今では、その取り扱う学術内容は、婦人科領域、外科領域、内科領域、病理・病態領域、歯科領域など全ての領域で、特にガンの細胞診断をカバーしています。
受験条件
臨床検査技師や衛生検査技師として、主に細胞診検査の実務に1年以上従事した者。
細胞検査士養成所あるいは養成コースのある大学の卒業、卒業見込みの者。
細胞検査士養成コースのある大学や養成所は「公益社団法人 日本臨床細胞学会」のサイトに掲載されています。
合格率
2021年 64.4%
2020年 60.9%
2019年 53.4%
1年当たりの試験実施回数
試験は第1次試験と第2次試験があり、それぞれ1回ずつの実施です。
第1次試験は大阪、第2次試験は東京で実施されます。
試験科目
試験は以下の諸項目について、筆記および細胞像試験(カラープリント)と実技試験で行われます。
- 細胞診に必要な基礎知識の概略
- 手技試験
- 顕微鏡的検査
一次試験の試験内容
- 筆記試験:120問(総論、技術、婦人科、呼吸器、消化器、体腔液・その他の各20問)
- 細胞画像試験:カラープリントされた細胞画像を見て設問に答える(約60問)
二次試験の試験内容
- スクリーニング試験:婦人科材料、喀痰、尿、体腔液などの細胞診標本を一定時間内に鏡検して、その標本中の異型細胞、悪性細胞をふるい出したり選び出したりして、病変推定する試験
- 同定試験:細胞診標本に示してある細胞を見て、組織型などを推定する試験
- 標本作製実技試験:塗沫や固定などの、標本作製技術のレベルを問う試験
採点方式と合格基準
第1次試験における合格基準は100点満点に換算し、原則70点以上をもって合格です。
ただし、各領域ごとに100点満点に換算し、50点未満の領域が1つでもある場合は不合格です。
もし、第1次試験に合格して第2次試験に不合格であった者は、翌年にかぎり第1次試験の受験は免除になります。
なお、細胞検査士の資格は日本臨床細胞学会、日本臨床検査医学会認定資格ですので5年ごとに更新されます。
更新するには条件があり、実務および学会、セミナー、ワークショップ、研修会に参加して所定の単位を得なければなりません。
ガンの早期発見や正確な判定のための資格なので、常に新しい知見を得て高い細胞判定能力を維持していなくてはならないため、更新制度を設けています。
もし、細胞検査士資格を喪失してしまった場合は、細胞診専門医および所属長の推薦書(証明書)を各1通、計2通(所属長が細胞診専門医である場合は1通でよい)を願書に添えて送れば、1次試験を免除され、2次試験を直接受験できます。
取得に必要な勉強などの費用
細胞検査士の試験を受けるには、養成コースのある大学や細胞検査士養成所で勉強する学費が必要です。
一例をご紹介します。
杏林大学 保健学部 臨床監査技術学科 | 初年度納付金198万8,370円、2年次以降納付金167万円 |
北里大学 医療衛生学部 医療検査学科 | 1年次180万円、2年次以降175万円 |
千葉科学大学 危機管理学部 保健医療学科 | 1年あたり147万円 |
京都橘大学 健康科学部 臨床検査学科 | 1年あたり173万円 |
細胞検査士養成所 | 授業料56万円 |
畿央大学細胞検査士養成課程 | 入学手続き81万6千円 |
受験料
40,000円
受験申込方法
受験を希望する場合は日本臨床細胞学会ホームページの「お知らせ」の「検査士」をクリックして、「細胞検査士資格認定試験 受験者募集」のページから願書をダウンロードします。
出願する際は以下の書類をWebにて申請します。
- 記入済願書(Excel)
- 受験料振り込み控えのコピー
- 証明写真(JPEG 800×800ピクセル)。ただし、半年以内に撮影したもの。無背景、無帽、正面の写真
- 実務経験証明書・身体検査証または養成課程修了証明書・身体検査証(PDFまたはJPEG)
- 臨床検査技師または衛生検査技師の免許コピー
- その他証明書類
まとめ
細胞検査士とは人間の身体を作っている細胞を顕微鏡で調べて、ガン細胞を発見する仕事です。
私たちが人間ドッグや健康診断で検査結果を聞くとき嫌だなと感じがちですが、そうした一人一人の細胞を観察してガン細胞を発見してくれるのが細胞検査士なのです。
細胞検査士になるには、細胞検査士を養成している大学や養成所で勉強して試験を受けなければなりません。
そうしたところに所属するには学費がかかります。
この職業は常に新しい知見を得て高い細胞判定能力を維持していなくてはならないため、5年ごとに更新を受けなければなりません。
そうした専門職はこれからの医療現場にも必要です。
また、社会貢献性も高い職業です。
医療関係に進みたい方は細胞検査士という職業も、視野に入れてみてはいかがでしょうか。
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