助産師はその名のとおり、助産行為(女性の妊娠や出産のサポートをすること)の専門職です。
昔は「産婆」と呼ばれていましたが、1948年の「保健婦助産婦看護婦法」の公布により「助産婦」と称され、やがて2002年に法律が改訂されて「助産師」へと名称が変わりました。
皆さんの中には助産師さんにお世話になったという方もいるでしょう。
助産師は産婦人科医と違って、医療行為を行うことはできません。
ではどういったことができるのか。
詳しくお伝えしていきます。
Contents
適用する仕事
助産師試験に合格して、適用する仕事は助産師です。
助産師の仕事を一言でいうと、出産に立ち会い、赤ちゃんを取り上げることです。
ですが、仕事はそれだけにとどまりません。
妊婦の健康管理、食事や運動の指導、出産後の体調管理、母乳指導、乳児指導といった妊娠から出産、育児にいたるまでの母子の健康を守るのが助産師の務めです。
また、正常分娩であれば医師の指示を受けることなく、自身の判断によって助産介助ができるのが助産師の特徴です。
妊婦には出産時において、妊娠期、分娩期、産褥期の3つの時期があります。
妊娠期
ここでの助産師の役割は、妊婦や父親への保健指導や相談です。
出産前の妊婦の精神的・肉体的負担をサポートします。
- 食事の選び方や運動指導
- 体重のコントロール
- 不安や悩みに対する相談
- 母子手帳の受け取り方、今後の妊婦検診の説明
- 陣痛が来たときの対応方法、出産に向けた心構えの指導
- 妊娠中や出産時、出産後の母子の経過や心身の変化に対する指導
分娩期
正常分娩の場合、分娩介助の中心的役割を担うのが助産師の役割です。
- 分娩前や分娩中の母子健康状態の観察
- 分娩の進行具合の状況判断
- 異常分娩時の医師の補助
また、産婦の精神状態のコントロールやサポート、マッサージなども行います。
産褥期
産褥期と呼ばれるのは出産から6~8週間後、すなわち産後2ヶ月までの期間を指します。
この期間の助産師の仕事は出産後の女性が母親として自立できるよう、身体的・心理的・社会的なサポートを行うことです。
母体に異常がないか経過観察しながら、おむつの替え方や沐浴の方法、授乳や乳房ケアの方法、赤ちゃんの観察ポイント、産後の運動方法などを指導します。
また、赤ちゃん側の産後ケアも担当します。
正常な呼吸ができているか、体温調整ができているかなど胎外活動への適応具合を観察します。
もし何か異常が出たら、必要に応じて医師と連携しながら適切な処置をします。
退院後は、産院での「1カ月健診」の際に母子に再会し、出産後の経過が良好か、育児で困っていることはないかを確認します。
これら妊婦に対しての仕事以外にも、妊娠・出産に関する知識を普及させたり、女性の「性に関する悩み」の相談役にもなったりします。
助産師ができないこと
助産師ができることとできないことがあります。
助産師が分娩介助できるのは、妊婦と赤ちゃんの健康状態に問題がない正常分娩のみです。
ですが、妊婦や出産にはいろいろなケースがあります。
次のケースでは、助産師は対応することができません。
医療行為 |
|
ハイリスクな妊娠 |
など |
おおよその年収とキャリアパス
2021年の助産師の平均年収は約554万円でした。
ちなみに、パート・アルバイト勤務ですと、2,018円の時給のようです。
数値だけ見ると、助産師の平均年収は高いです。
看護師は499万円、保健師が481万円の年収です。
ですが、助産師の年収が高いのは理由があるからです。
助産師になるには
助産師になるには助産師の国家試験に合格することが必須ですが、その助産師の試験は看護師資格を取得していないと受けられないのです。
看護師の資格を得てから、短大や専門学校、大学の助産師課程を学び、臨地実習で実践的な技術を身につけないと助産師の試験は受けられません。
(もちろん、1つの学校で看護師課程と助産師課程の両方を学んで、ダブル受験する方法もあります)
このように、2段階で国家資格を突破しないといけないため、難易度の観点から年収が高く設定してあります。
助産師からのキャリアパス
助産師の年収が高い理由として、キャリアパスが挙げられます。
助産師試験に合格して資格を取得できたら、総合病院・大学病院、診療所、助産院などで活躍できます。
しかし、助産師が活躍するのは主に産科です。
産科は今や、だんだん軒数が減ってきているので、ポジションに入り込むのは容易ではありません。
なおかつ、さらにそこから昇進していくには、役職の種類も限られていることから、さらに難しいことかもしれません。
もし、看護師では助産師にこだわる場合は、勤務先によってポジション自体が存在していないために、昇進機会に恵まれない可能性もあります。
このような理由から、もともとの助産師の年収が高いのが分かります。
では、助産院を開業して独立するとどうでしょうか。
助産師には開業権があるため、独立することができます。
自分で助産院を開業すると、軌道次第で高額な収入になるかもしれません。
ただ、開業する以上、分娩や妊婦健診における責任者は自分自身になります。
助産師は正常分娩でしか対応できませんし、母子の命や健康を任されるという重責やリスクのある業務となります。
精神力・体力や臨機応変な対応力も求められるでしょう。
開業以外で年収やキャリアアップを狙いたいなら、メディカルコールセンターや治験コーディネータなどといった助産師資格が活かせる一般企業へ転職する道もあります。
認可団体
厚生労働省
受験条件
受験資格を得るには、まず看護師国家試験受験資格を取得することです。
そして、保健師助産師看護師法によって助産師に必要な学科を、1年以上修めることです。
合格率
2022年 99.4%
2021年 99.6%
これは専門学校や養成施設などで助産師に必要な学科を、学んでいるため合格率も高いのです。
1年当たりの試験実施回数
年に1回です。毎年2月に実施されます。
試験科目
基礎助産学、助産診断・技術学、地域母子保健、助産管理
採点方式と合格基準
問題は一般問題と状況設定問題の2種類があります。
一般問題は1問1点(75点満点)、状況設定問題は1問2点(70点満点)の配点です。
合格基準点は145点満点のうち、87点以上です。
おおよそ60%の得点で合格になるでしょう。
確実な合格を目指すなら、70%を狙いましょう。
取得に必要な勉強などの費用
助産師になるためには、看護師としての勉強と助産師へ向けての勉強と2つの資格の準備が必要になります。
看護師としての費用
看護師資格を得るには、看護学校で学ばなければなりません。
看護系学校で学ぶ方法は複数あります。
もし、大学の中に助産師課程があれば、助産師学校へ行かずに済みますね。
学校の種類 | 学費 | |
看護大学 | 国公立で4年間約240万円 | 私立で450万~700万円ほど |
看護短期大学 | 国公立で3年間約250万円 | 私立で約400万円 |
看護専門学校 | 公立では3年間約130万円 | 私立で約250万円 |
さらに、看護師試験に合格しなければなりません。
受験料は5,400円です。
助産師としての費用
助産師課程のない学校で学んでいたり、すでに看護師の資格を持っていたりでプラスαとして助産師資格が必要とした場合の学費です。
看護師の資格を取得したら、助産師としての勉強での学費が必要になります。
助産師学校の多くは、1年制のため学費は100万~250万円ほどです。
受験料
5,400円
受験申込方法
以下の書類を用意します。
書類は助産師国家試験運営本部事務所に郵送します。
受験願書
保健師助産師看護師法施行規則により、作成します。
受験願書に記載する氏名は、戸籍に記載されている文字を使用して下さい。
写真
写真は出願前6ヶ月以内の正面から撮影した縦6cm、横4cmのものを用意しましょう。
そして、その裏面に撮影年月日及び氏名を記載し、厚生労働省または助産師国家試験運営本部事務所、もしくは助産師国家試験運営臨時事務所において交付する受験写真用台紙に貼り付けたうえ、同台紙に所定の事項を記載して提出して下さい。
返信用封筒
縦23.5cm、横12cmのものを用意します。
そして、表面に郵便番号、宛先、宛名を記載します。
529円(定形郵便94円+一般書留435円)の郵便切手を貼り付け、書留の表示をしましょう。
看護師関係の書類
該当する方によりますが、次のうちいずかの書類の提出が必要になります。
・看護師国家試験の合格証書の写し(助産師国家試験運営本部事務所、または助産師国家試験運営臨時事務所に合格証書の原本を提示し、原本照合を受けたもの)または合格証明書
・看護師免許証の写し
・文部科学大臣の指定した看護師学校の修業証明書、もしくは3年以上看護師になるのに必要な学科を修めたと判定されたことを証する書面
・看護師国家試験受験資格認定書の写し
助産師課程を修めた書類
次のいずれかの書類を提出して下さい。
- 指定学校の修業証明書
- 1年以上助産に関する学科を修めたと判定されたことを証する書面
- 修業見込証明書または指定養成所の卒業証明書
- 卒業できると判定されたことを証する書面
- 卒業見込証明書
まとめ
以上、助産師についてお伝えしてきました。
助産師になるには、意外と大変です。
助産師として国家資格を受けるには、看護師資格を取得していなくてはいけません。
その分学費もかかります。
ただ、大学の段階で助産師課程を設けているところもありますし、すでに看護師資格を持っている人は助産師学校の費用だけで済みます。
日本では、助産師は女性だけの資格ですので、妊娠や出産、育児で不安な時に心強かったという方もいるでしょう。
だんだん産科も減ってきていますので、もし助産院を開くなら重宝されるかもしれません。
ただ、助産師のできることは正常分娩のみだけですので、それ以外のケースだと病院とのパイプを持つことも必要でしょう。
看護師とセットになる資格ですので、産科関係で活躍したい人は一つの選択肢として受験してみてはいかがでしょうか。
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