職業訓練指導員とは求職者や在職者、あるいは障がいを持つ方などを対象に、就職またはスキルアップに必要となる技能や技術の指導、就職支援などを行う専門職です。
機械、金属、電気、電子、建築、設備といったいわゆる「ものづくり」のためのノウハウ、現場で役立つスキルなどを教えます。国家資格であり、平成29(2017)年に「テクノインストラクター」という愛称が決まりました。
それでは、「この職業がどのような仕事なのか」、「どのようにしてなれるのか」と共にこの資格について見ていきましょう。
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適用する仕事
全国の公共職業能力開発施設や認定職業訓練施設が主な活躍の場となります。
公共職業能力開発施設とは国や都道府県、市町村が設置した公共職業訓練や認定職業訓練を行うために設置する施設のことで、以下の5種類があります。
- 職業能力開発校
- 職業能力開発短期大学校(ポリテクカレッジ)
- 職業能力開発大学校(PTU)
- 職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)
- 障害者職業能力開発校
地方公務員として働くことになりますので、労働条件は各都道府県や法人の規定に基づきます。
一方、認定職業訓練施設は、事業主や事業主の団体等が職業能力開発促進法に定める基準に従って従業員の職業訓練を行う制度で、申請に基づき都道府県知事の認定を受けた訓練施設です。
基本的に一般企業の社員や職業訓練法人の職員として働くため、労働条件は施設によって異なります。
仕事内容とは
仕事内容は、大きく分けると次の4点です。
- 技術指導・・・専門科目の講義や技術指導を行います。
- キャリアコンサルティング・・・受講者のスキルや個性、経験などに合わせて1人ひとりに合ったキャリア形成の手助けをします。個別面談の他、就職の際に困らないようマナー講習や模擬面接なども行います。
- 人材育成のコーディネート・・・キャリアを形成するには、ただ技術を磨けばよいわけではありません。雇用者側はそれぞれの企業や地域、時代に合った人材を必要としているので、そのための訓練カリキュラムを作成・実施します。
- 訓練カリキュラム開発・・・受講者に雇用の機会を増やすため、人材育成同様、地域や時代の流れなど各ニーズに合わせた訓練カリキュラムを作成します。
向いている人とは
では、どんな人が向いているのでしょうか?
まずは性格面として知的好奇心に富んでいることです。
各専門分野は日進月歩のため、日々変更や修正点を学習しながら指導していくことが求められているからです。
能力面では、幅広い年代に対応できるコミュニケーション能力や指導力が求められます。
指導力とは訓練生1人ひとりに的確なアドバイスができるよう、どのような時でも真摯に向き合い、熱心に指導ができる能力のことです。
また、講義だけでなく実技指導もあるので、体力もそれなりにあった方がよいです。
技術面では専門的知識・技能はもちろんのこと、WordやExcelといった基本のパソコンスキルも必要です。
仕事のやりがい
この仕事にはたくさんのやりがいがあります。
- 受講者のスキルアップから就職活動までのサポートを行うため、受講生から感謝されることが多いです。その感謝の言葉が次へのモチベーションとなります。
- 扱うのは新たな技術!そのため自ら学び、成長を続けることができます。
- 新たな技術者を育てることで、国の発展にも貢献できます。
- 就職面や雇用の点で安定しています。
- 勤務時間と休日が決まっており、規則正しい生活が送れます。
社会貢献と収入の安定の両方を兼ね備えている点から、人気が高いようです。
大変な点は様々な訓練生と向き合わなければいけないことです。中には覚えるのが遅い、訓練についていけない、気性が荒いなどの特性を持つ方もいます。
そこでどうやって接していいのか分からなくなると、教えること自体に嫌気がさしてしまうなど、職業訓練指導員としてやっていくのが難しくなってしまいます。
つまり「どうしたら訓練生にモチベーションを保ってもらえるか」が課題になるでしょう。
おおよその年収とキャリアパス
施設や雇用形態により差がありますが、職業訓練指導員の平均年収は440万円~490万円です。
冒頭でも触れましたが、正規職員であれば地方公務員と同じ待遇です。
とはいえ、競争率が高く、求人は正規職員よりも非正規職員の方が多いのが現状です。非常勤職員や臨時職員がこれに該当します。
臨時職員:160万円~220万円
キャリアパスは指導員としての実務経験と訓練生の就職実績を積み上げ、管理職を目指すという方法があります。
あるいは、技能検定や技能五輪などの大会で検定員や審査委員、競技委員を務めるという方もいます。
認可団体
各都道府県の職業能力開発協会です。
受験条件
職業訓練指導員になるには「職業訓練指導員免許」を取得する必要があります。
その上で、就職には免許取得後に都道府県の職員採用試験に受からなければなりません。
職業訓練指導員免許の条件は以下の通りです。
- 職業能力開発総合大学校指導員養成課程を修了する
- 厚生労働大臣が指定する講習(48時間講習)を修了する
- 都道府県で実施する職業訓練指導員試験に合格する
- 高等学校普通教育免許を取得する
上記の上から2番目と3番目はやや複雑ですので、ここでは2番目の「48時間講習を修了する」ことと、3番目の「職業訓練指導員試験に合格する」について簡単に触れていきたいと思います。
※各都道府県で異なりますので必ずご確認ください。
まずは、受験条件からです。
ケース1:
講習を受けることができるのは、高校、短大、高専、大学卒業者で必要実務経験の年数を満たしている方。
※専修学校や各種学校(専門学校など)は受講条件に該当しないのでご注意ください。
職業能力開発の各課程の普通、または高度訓練修了者で、必要実務経験の年数を満たしている方。
または技能試験1級・単一等級に合格している方。
ケース2:
こちらの受験条件および免除範囲は実務経験や修了過程により、非常に細かく設定されています。事前にご確認ください。
合格率
ケース1:
講習を修了すれば合格となります。ただし講習内での確認試験に合格する必要があります。
ケース2:
東京都の試験の合格率は記載がありませんでした。都道府県全体平均は年度によって30~50%とばらつきがあるようです。
1年当たりの試験実施回数
ケース1:
講習日は土日コースでは年に2回(第1回:6月中旬~7月上旬/第2回:10月中旬~下旬)、平日コースですと年に1回(令和5年2月下旬~3月上旬)開講されます。
いずれも1日8時間×6日間となっています。
ケース2:
試験は毎年1回実施されます。令和5年1月では以下の試験が実施されました。
- 全職種共通 学科試験 指導方法
- 理容科/美容科 学科試験 指導方法
- 理容科/美容科 学科試験 系基礎学科
- 理容科/美容科 学科試験 専攻学科
- 理容科/美容科 実技試験
試験科目
ケース1:
講習の内容は以下の通りです。
- 職業訓練原理
- 訓練実施計画
- 指導の準備
- 指導の進め方
- 労働安全衛生
- 関係法規
- 教材の活用
- 訓練評価
- 事例研究
- 訓練生の心理
- 生活指導
そして、確認試験を含めて合計48時間となります。
ケース2:
理容科・美容科では実技試験及び学科試験(指導方法、系基礎学科、専攻学科)、計4つの試験で構成されています。
その他の免許職種では指導方法のみ、試験を実施しています。
技能試験に合格している方などは、それに応じた試験免除があります。
採点方式と合格基準
ケース1:
合格基準は、講習での修了試験に合格することです。
ケース2:
東京都の採点方式および、合格基準に関する記載はありませんでした。
おおよその国家試験は7割以上を求められることを考慮すると、この試験も同程度とも考えられます。
取得に必要な勉強などの費用
ケース1:
まずは自分の専門職種について改めて勉強しておく必要があります。
また、講習で使用するテキスト「職業訓練における指導の理論と実際」を予習しておくと、講習の内容がわかりやすくなります。
ケース2:
過去問等はないようなので、テキストをよく読んで勉強することが大切です。
また、うまくいけば受験経験がある方のブログ等が見つかることもあるそうです。諦めずに探してみましょう。
受験料
ケース1の場合は、受講料12,500円+テキスト代 3,927 円(税込)が掛かります。
ケース2では受験手数料が掛かります。
実技試験及び学科試験(系基礎学科・専攻学科・指導方法)の4科目受験:18,900円
実技試験のみ:15,800円
学科試験3科目:3,100円です。
※学科試験は1科目のみの受験でも金額は同じです。
理容科・美容科以外の場合は学科試験(指導方法)で3,100円です。
実技試験及び学科試験(指導方法含む)の全てが免除の場合は、資格審査手数料として2,000円掛かります。
受験申込方法
それぞれ見てみましょう。
ケース1の場合
申込の簡単な流れは以下の通りです。
定員は各回35名です。
期間内でも定員になり次第、締め切ってしまうので早めに申し込んでおきましょう。
ケース2の場合
原則、申込申請は郵送と電子の2種類となります。
郵送申請の場合は申請用紙に必要事項を記入し、必要書類を添付して「東京都産業労働局雇用就業部能力開発課技能評価担当」に送付します。
申請用紙は所定のものが決まっています。HPからダウンロードできないのでご注意ください。
申請用紙は郵送もしくは上記開発課の窓口で入手することができます。必ず簡易書留にて送付してください。
電子申請の場合はPCからのみ申請可能です。期間中に電子申請ページから申請してください。
申請書類は色々と指定がありますので要件を確認しながら申請しましょう。
尚、合格発表はインターネットに受験番号が掲載、試験結果通知書が郵送されます。
合格した方には合格証書と免許の交付申請方法が送られてきます。
まとめ
この資格について調べてみて分かったのは、仕事に関する情報はありますが、職業訓練指導員試験の合格率や免許取得のための勉強法といった情報が非常に少ないということです。
また、受験条件や免除範囲から申請手順に至るまで非常に複雑であるとも感じました。
やはり、国家資格でありますから、決して簡単な試験ではないということなのだと理解しました。
この試験に挑戦してみようという方は受験条件を満たすのはもちろんのこと、十分な実務経験と前もった書類の準備、テキストを熟読した上で臨まれることをおすすめします。
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以下
「48時間講習を修了する」を「ケース1」
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と表して取得の仕方をみていきます。