超実力派キャストが集結した上質クライムサスペンス「リトル・シングス」

超実力派キャストが集結した上質クライムサスペンス「リトル・シングス」

電話今回ご紹介する映画は、「トレーニング デイ」のデンゼル・ワシントン、「ボヘミアン・ラプソディ」のラミ・マレック、「ダラス・バイヤーズクラブ」のジャレッド・レトという3人のオスカー俳優が共演したクライムサスペンスです。

カリフォルニア州カーン郡の保安官代理を務めるディークは、事件の証拠集めのためロサンゼルスへ向かいます。

任務はすぐに終わるはずでしたが、ディークは連続殺人事件の捜査に巻き込まれてしまいます。

捜査の指揮を執るロサンゼルス郡保安局の巡査部長バクスターは、ディークの経験と鋭い勘を認め、彼と組んで容疑者を追い始めます。

しかし、捜査を続けるうちに、ディークの暗い過去と不穏な秘密が浮かび上がってきます。

ジャレッド・レトがゴールデングローブ賞の助演男優賞にノミネート。監督・脚本は「しあわせの隠れ場所」のジョン・リー・ハンコックです。

ちなみに「リトル・シングス(little things)」とは、日本語で「ささいなこと」という意味があり、このタイトルもある種の伏線になっています。

今回は「リトル・シングス」をご紹介します。

 

あらすじ

田舎町の保安官ディーコンは、カール署長から「強盗犯ケンドリックのブーツをロス警察からもってこい、証拠品として必要だ」と言われます。

ディーコンがロス警察署に着くと、担当者から「警部のサインがないと渡せない」と言われます。そこで殺人課に行くと、刑事たちが騒ぎ出します。

ディーコンは5年前まで殺人課の凄腕刑事で伝説の男と呼ばれていたのです。

 

ディーコンは警部のサインをもらえず、「帰れ」と言われます。そんな殺人課では5人の女性連続殺人事件が発生中で、警部以下管理職たちはピリピリしています。

かつての相棒だったサルは、警部お気に入りの若いエリート刑事ジミー・バクスターに使われています。

そんなディーコンを見たバクスターがサルに「あの人は何者だ?」と聞きます。サルは「伝説の男ディーコンだ」と答えます。

バクスターはサルに話をし、ディーコンを5人目の殺人事件現場に連れて行ったのです。現場では若いジュリーという女性が刃物で切られて殺されています。

現場で指示を飛ばすジムの横でディーコンは現場をじっと見渡すと、向いのビルの部屋から現場をずっと見ていました。

犯人の手口が未解決に終わった連続殺人事件は、ディーコン捜査を担当していた事件と酷似していたのです。

翌日、バクスターは現場がある地区を統括する署長から「ディーコンは未解決事件に執着するあまり、家庭生活も自分の健康もボロボロにしてしまった。あいつとこれ以上関わってはいかん」と忠告を受けます。

警官2人

一方のディーコンはバクスターを手伝うべく既に休暇を取得していました。

次の日の夜、警察は橋の下で新たな犠牲者の遺体を発見します。犠牲者はまたしても売春婦で、凶器は刃物だったことから、バクスターは一連の事件と繋がりがあることを確信します。

その頃、ディーコンはいずれの犯行現場にも近い修理店に勤める男、アルバート・スパルマに目を付けていました。

ディーコンは確たる証拠を掴むべくスパルマを尾行しましたが、いつの間にか撒かれてしまいます。

ディーコンはスパルマを署に連行して尋問します。しかし、スパルマから有力な証言を吐かせられないまま釈放せざるを得なくなります。

ほどなくして、バクスターは週内にも捜査がFBIの管轄になると知らされます。それはバクスターやディーコンが捜査に関与できる時間が残り少ないことを意味していました。

そこで、バクスターはスパルマとの直接対決に全てを賭けることにします。

いつの間にか、バクスターは事件の解決に対して並々ならぬ執念を燃やすようになっていましたが、彼は自分がディーコンのようになっていることを自覚していませんでした。

それが思わぬ悲劇を引き起こしてしまいます。

 

キャスト

ジョー・ディーコン(デンゼル・ワシントン)

カリフォルニア州カーン郡の保安官。過去に関わった未解決事件に執着するあまりに家庭生活や精神がボロボロの状態になっています。

ロサンゼルス郡保安官に依頼をされ「売春婦殺害事件」の調査を行っていたところ、犯行の手口が未解決に終わった事件と同じ手口である事を見つけます。

デンセル

演:デンゼル・ワシントン
サンフランシスコの演技学校で学んだのち、ニューヨークで舞台に立ち、オフ・ブロードウェイで注目を集めます。

この頃の舞台は、後に「ソルジャー・ストーリー」や「マルコムX」として映画化され同じ役を演じることになります。

映画デビューは81年の「ハロー、ダディ!」。その後出演作ごとに注目され、87年の「遠い夜明け」でアカデミー助演賞にノミネート。90年、「グローリー」で同賞を受賞。

以降、数多くの話題作に出演。もっともアカデミー主演賞に近い黒人俳優として、その日はいつかと期待されていました。

01年、「トレーニング デイ」でシドニー・ポワチエ以来、2人目の受賞となりました。

ジム・バクスター(ラミ・マレック)

連続殺人事件の捜査をしていますが、捜査は難航。また、事件の管轄がFBIに取られそうな状態にあり、焦っています。

殺人事件の犯人はアルバート・スパルマだと疑っていますが、有力な証言を吐かせられないままです。

演:ラミ・マレック
2005年から2007年まで放送されたFOXのコメディ・ドラマ『家族戦争』における、主人公家族の隣に住むゲイの少年ケニー役で一躍人気をつかみます。

2011年公開、トム・ハンクス主演の映画『幸せの教室』に出演。

2015年スタートのドラマ『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』で主人公エリオット・オルダーソンを演じ、ゴールデングローブ賞2年連続ノミネート、第68回エミー賞主演男優賞(ドラマシリーズ部門)を受賞しました。

2018年公開の伝説のロックバンドクイーンを描いた伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』ではボーカルのフレディ・マーキュリー役で主演。

第91回アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞し、アラブ系の俳優としては初となるオスカー俳優となりました。

アルバート・スパルマ(ジャレッド・レト)

殺人現場に近い職場に勤めている薄気味悪い男。いつも警察達をからかうだけで、彼が犯行をおかした証拠はありません。

彼の言動や態度がジョー保安官やバクスター刑事を苛立たせます。

ジャレッド

演:ジャレッド・レト
1992年にTVシリーズ「Camp Wilder(原題)」のゲスト出演で俳優デビュー。「アンジェラ15歳の日々」のレギュラー出演を経て、「キルトに綴る愛」(95)で映画初出演を果たします。
以降、「シン・レッド・ライン」や「ファイト・クラブ」「17歳のカルテ」など話題作に出演し、「レクイエム・フォー・ドリーム」では麻薬で破滅していく青年を熱演。

その後も「パニック・ルーム」などメジャー系を中心にコンスタントに活躍します。そして、2013年の「ダラス・バイヤーズクラブ」で演じた女装のHIV患者役が称賛を浴び、賞レースではほぼ独占。

アカデミー賞助演男優賞にも輝き、名実共に演技派俳優としての地位を確立しました。

ジェイミー・エストラーダ刑事(ナタリー・モラレス)

ジム・バクスター刑事の部下。

演:ナタリー・モラレス
2006年、テレビシリーズ『CSI:マイアミ』の第5シーズンでデビューします。

『The Middleman』(2008)、『ホワイトカラー』(2009 – 2014)、『Trophy Wife』(2013 – 2014)、『Abby’s』(2019)などのテレビシリーズで主要な役を演じています。

映画では、ウォール・ストリート(2010)、バトル・オブ・ザ・セクシーズ(2017)、STUBER/ストゥーバー(2019)などの出演があります。

2021年、第1作目の監督作品『Plan B』を発表。同年発表の『Language Lessons』では監督のほか、主演と共同脚本を務めています。

サル・リゾリ刑事(クリス・バウアー)

ディーコンのかつての相棒です。

演:クリス・バウアー
ロサンゼルス出身。サンディエゴ大学、アメリカン・アカデミー・オブ・ドラマティック・アーツ、イェール・スクール・オブ・ドラマで演技を学びます。

ロー&オーダー Law & Order (1992-2002)、サード・ウォッチ Third Watch (1999-2004)などテレビドラマに多く出演。

『THE WIRE/ザ・ワイヤー』(2003)のフランク・ソボトカ役、『トゥルーブラッド』(2008-2014)のアンディ・ベルフルーア役などで知られています。

映画では、家族という名の他人 The Myth of Fingerprints (1997)、 クレイドル・ウィル・ロック Cradle Will Rock (1999)、 ハドソン川の奇跡 Sully (2016)などの出演があります。

フロー・ダニガン(マイケル・ハイアット)

鑑識官です。

演:マイケル・ハイアット
映画やテレビで活動する前は、アメリカ合衆国全土の舞台、特にブロードウェイのラグタイムで公演を行っていました。

テレビでは、「アルカディアのジョアン」(2004)、「サンセットストリップのスタジオ60」(2006)、「ビッグバン理論」(2008)、「フォスターボーイ」(2019)などの出演があります。

映画「クレイジーのように」(2011)で、税関代理人役を、2014年の『ナイトクローラー』では探偵フロンティリ役を演じています。

2017年7月以来、FXシリーズSnowfallに、2016年のパイロット版で初めて演じた麻薬密売人フランクリン・セイントの母親シシー・セイントとして主演しています。

 

基本情報

基本情報

監督      ジョン・リー・ハンコック
脚本      ジョン・リー・ハンコック
製作      ジョン・リー・ハンコック マーク・ジョンソン(英語版)
製作総指揮  ケヴィン・マコーミック マイク・ドレイク

出演者      デンゼル・ワシントン ラミ・マレック ジャレッド・レト

音楽      トーマス・ニューマン
撮影      ジョン・シュワルツマン
編集      ロバート・フレイゼン(英語版)

製作会社  グラン・ヴィア・プロダクションズ
配給      〔アメリカ〕ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ
公開      〔アメリカ〕 2021年1月29日
上映時間  128分
製作国      アメリカ合衆国
言語       英語
製作費   $30,000,000
興行収入  〔アメリカ・カナダ〕 $15,244,012 〔世界〕 $29,844,012

 

監督「ジョン・リー・ハンコック」

監督のジョン・リー・ハンコックは、アメリカテキサス州のロングビュー出身です。

ヒューストンの法律事務所で4年間働いた後、脚本を志すと決め、ロサンゼルスに引っ越します。

しかし彼は、カリフォルニア州の司法試験を受けず、演技のクラスを受講して、地元の劇場で働きます。

その後、テキサス州ヒューストンの法律事務所で4年間弁護士をしていましたが、映画に関わるためロサンゼルスに移住。製作コーディネーターや助監督を務める傍ら、脚本を書き続けます。

91年、映画「Hard Time Romance(原題)」で脚本家・監督としてデビュー。

クリント・イーストウッド監督の「パーフェクト・ワールド」(1993年)の脚本で注目され、イーストウッドの「真夜中のサバナ」(97)の脚本も担当しています。

2002年「オールド・ルーキー」で監督デビュー。他の監督作品に「アラモ」(リバイバル版,2004年)、09年の「しあわせの隠れ場所」では主演のサンドラ・ブロックにオスカーをもたらします。

ディズニーの名作「メリー・ポピンズ」の製作秘話を描いた「ウォルト・ディズニーの約束」(13)でもメガホンをとったほか、「スノーホワイト」(12)や、「マレフィセント(原題)」(14)など、おとぎ話を再構築した大作で脚本を手がけています。

 

映画化まで25年

ジョン・リー・ハンコックが本作の脚本の初稿を書き上げたのは1993年。スティーヴン・スピルバーグ監督によって映画化される予定でした。

ところが、脚本を読んだスピルバーグ監督は「ストーリーがダークに過ぎる」という理由で企画から離脱してしまいます。

その後、クリント・イーストウッド、ウォーレン・ベイティ、ダニー・デヴィートらが脚本に関心を示しますが、正式な契約には至りませんでした。

それから四半世紀以上の時が経過した2019年3月、ハンコック自らメガホンを取って本作を映画化することになり、デンゼル・ワシントン、ラミ・マレック、ジャレッド・レトの起用も決まりました。

2019年9月2日、本作の主要撮影がロサンゼルスで始まりました。

 

『リトル・シングス』の見どころ

ジョーは言葉は少ないですが、殺人現場じっくり見て、情報を得ていくタイプです。
また、被害者がビーガンなのに胃には肉が残っていたことから犯人像を突き止めたりと、とても鋭いと男だと感じました。

バクスターは被害者家族にしっかりと話を聞いたり、足を使って情報を集めていく姿が印象深いです。

情報を集めつつも犯人に近づいていく展開は、はミステリー要素十分です。

取り調べ

必死で行われている捜査の中、犯人像が全くつかめずに次々と被害者の報告が上がっていくという模様はハラハラさせられます。

被害者の若い女性たちは全員刺されていて同じ死に方をしており、犯人は彼女たちに噛み跡を残すという不思議な行動をしているのも恐ろしいです。

ジョーやバクスターが調べていくうち、犯人は女性との関係を求めているのではなく、殺し自体に快感を覚えるようだと知ります。

 

そして、犯人は死体を前にしてしばらく眺めていたと思われる証拠は挙がるのに、犯人が全く特定できないというジョーたちの苛立ちは相当なものだったと思われます。

 

「リトル・シングス」の真犯人は?

連続殺人犯の容疑があるアルバートという男性は、話せば話すほど不気味さと狂気を感じさせます。

彼は機転が利いて高速の出口を暗記できるほど賢く、8年前にも事件の犯人だと自白するほどでした。

証拠がなくて捕まらないと分かっていたとしても、警察を相手にして堂々としているのが恐ろしいです。

アルバートとバクスターのラストのシーンでは、家族の構成を言い当てた上で「家族が救えるのか?」とバクスターを煽ります。

加えて埋められた被害者も犯人も見つけられないことに対しては「何にもできない憐れな警察だ」と言い放ちます。

バクスターは言われっぱなしでも従うしかない状況と、穴を彫り続けて体力も限界だという状況下のそうした言葉はとどめに近かったのでしょう。

アルバートを殺してしまうのも無理はないと思いつつ、これがアルバートの狙いだったのかどうかが気になる終わり方でした。

 

「リトル・シングス」の評価・レビュー

評論家の評価

この作品に対する批評家の評価は平凡なものに留まっています。

映画批評集積サイトのRotten Tomatoesには260件のレビューがあり、批評家支持率は45%、平均点は10点満点で5.4点となっています。

サイト側による批評家の見解の要約は、以下のようなものです。

主役3人

「昔ながらのスリラー映画であり、キャストには一流の俳優が揃っている。良くも悪くも『ザ・リトル・シングス』のストーリーは、この手の映画を好む人々にとっては毎度おなじみのものである。」

また、Metacriticには48件のレビューがあり、高評価は20件、賛否混在は24件、低評価は4件で、加重平均値は54/100となっています。なお、本作のCinemaScoreはB-となっています。

本作での演技によって、ジャレッド・レトは第78回ゴールデングローブ賞の助演男優賞や第27回全米映画俳優組合賞(英語版)の助演男優賞にノミネートされています。

レビュー

良質のサスペンス
地味かもしれないけど、特に後半は緊張感があり楽しめました。とにかく怪しく見えるジャレッド・レト良かったし、デンゼル・ワシントンとラミ・マレックの演技は素晴らしく、この3人の共演で期待通りの面白さでした。「あぁぁ…」というラストもけっこう好きな終わり方です。
3大有名俳優が出演

デンゼルとレミがジャレットレトを追い詰める。なんて想像していたが実際は地味な展開、途中までは面白いが、そもそもジャンルが想像していたものと違っていて犯人探しのサスペンスではなかった。なんだか微妙なラストになってしまったが、やはり俳優が豪華だとそれなりに見れてしまう。

よくわからない

刑事物サイコサスペンスの既視感の強い空気のもとでシュールとさえ言える不条理物語が語られる違和感は単に映画の印象を散漫にしている。事件の猟奇性も犯人のミステリアスさも無意味にしか見えない。主演のデンゼル・ワシントンも悪人や卑怯者をやるのはイマイチ下手。

もみ消し?

最初は面白かったのだが…引き込まれたし。でも、あまり捻りがなく、もったいぶった意味ありげなセリフやシーンが多い気がした、いくらなんでも、犯人と思しきやつと、あんな人気のない場所に行くかね?結局、身内の失態をもみ消した、って話になってしまっただけのような。途中まで面白かっただけに、終わり方が残念だった。

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は「リトル・シング」のご紹介でした。

おそらくこの映画を観た多くの方と同じように、私もスッキリはしていません。
最後に事件が解決もしくは解明されるサスペンス映画を観ていたつもりでしたが、そうはなりませんでした。

「犯人は特定できずじまいだったけどこの後犯行が止まった」と知らされるわけでもなく、最後の方でFBIが語っていた犯人像が、一応の答えなのかも知れません。

結局、世の中には「こういうこともある」みたいな話なのでしょうか?

また、この作品は、連続殺人事件の犯人を追い詰める過程で、コンビを組んだ男2人が人間的成長をしながら絆を深めていくようなミステリー刑事ものとも違います。

しかし、実際こういう事件は、謎のまま終わることも多く、被害者が帰ってくる訳でもないので、捜査官も何らかのトラウマを抱えてしまうことはあり得ると思います。

事件が起こった時点で救われる人などいないという教訓の映画と受け取ればいいのかも知れません

しかし、やっぱりそこに至る過程はモヤモヤするシーンも多く、何ともよく分からない地味な作品だったというのが正直な感想です。