私たちは卵や牛乳、肉類など数々の動物から栄養をもらっています。
タンパク質は動物性のものを摂ることも多いですよね。
タンパク質を提供してくれる家禽・家畜・養殖魚介類に与える安全性・生産性の高い飼料・餌料は、畜産業に欠かせません。
安全な飼料を製造するために、製造現場では国家資格である飼料製造管理者を保有している方を配置するよう義務付けられています。
飼料製造管理者の資格を持っていると、動物の飼料を介した感染リスクを減らせたり、食肉の安定供給に役立つことに貢献できます。
どういった資格なのか、詳細をお伝えしていきましょう。
Contents
適用する仕事
冒頭でもお伝えしましたとおり、畜産に安全な飼料を製造するために、製造現場では国家資格である飼料製造管理者を保有している方を配置するよう義務付けられています。
飼料製造管理者の資格が活かされるのは、飼料添加物製造工場や抗菌性物質を配合する飼料工場、自家配合農家などです。
そもそもなぜこのような資格が必要になったのかというと、日本が肉食生活になったからです。
元来、日本は魚と穀物中心の食生活を送っていました。
しかしながら、現代では牛、豚、鶏などの肉食生活が広まっています。
しかも、日本は国土が小さいですから食用動物も狭い空間で飼育しなければなりません。
そうなると、狭い空間で大量に飼育をするのですから、感染症が心配になります。
実際、豚熱(CSF)や鳥インフルエンザのニュースも聞きますね。
ですので、感染症が蔓延しないように、食肉の安全を確保するうえで飼料に抗菌剤を混ぜて家畜に与えるようにしています。
しかし、飼料の中に有害な添加物が混入していると、生産される畜産物にも有害になるリスクがあるし、肉を食する私たち人間にも被害が及んでしまいます。
このようなリスクを回避するために、飼料や飼料添加物の製造や保存などについて管理と指導を行う資格を持つ専門家が必要なのです。
それが今回の「飼料製造管理者」という資格です。
飼料工場では、以下のような工程で業務が行われています。
おおよその年収とキャリアパス
飼料製造管理者は飼料添加物製造工場で働くことが多いので、分野では製造業に位置します。
ですので、製造業の年収をお伝えします。
製造業の平均年収
製造業の平均年収は20代で300万~400万円、30代で400万~500万円、40代で500万~600万円の金額となっています。
年代によって差があるのは、経験や昇格が反映しているからです。
日本全体の平均年収が433万円ですので、決して製造業の年収が低いわけではありません。
飼料製造管理者の資格があることで、企業によっては特別手当が支給されるところもあります。
資格を持っていると飼料製造業の企業から重宝されますし、転職の際にも有利になるでしょう。
製造業のキャリアパス
製造業のキャリアは年功序列になるものも多いです。
勤続年数や年齢が高くなると、上のポジションに昇進していくのが一般的です。
入社したての頃は、新人や若手社員として扱われ、担当として業務にあたるでしょう。
それが入社5~10年目になると、後輩社員の指導役やチームリーダーなど、徐々にマネジメントの経験を積んでいきます。
さらに経験を重ねていくと、主任や係長、課長などの管理職にシフトすることもあります。
ただし、上のポジションは就く席が限られていくため、全員が昇進の道を辿れるわけではありません。
過去の実績や技術力、マネジメント力などといった、さまざまな面の評価が必要になります。
認可団体
農林水産省
ただし、飼料製造管理者の講習会を実施しているのは、独立行政法人 農林水産消費安全技術センター(FAMIC)です。
こちらのセンターは科学的手法による検査や分析をすることにより、技術で食の安全と消費者の信頼の確保に貢献しています。
埼玉県さいたま市中央区新都心2-1 さいたま新都心合同庁舎検査棟
電話:050-3797-1830(本部代表)
受験条件
こちらの資格は次の条件を満たしている人であれば、農林水産大臣に「飼料製造管理者届」を届け出て飼料製造管理者の資格を取得することができます。
1.獣医師または薬剤師
2.大学などにおいて薬学、獣医学、畜産学、水産学、農芸化学の課程を修めて卒業した者
それ以外の方は5日間の講習会を受講すると得られます。
- 飼料製造管理者による製造管理が義務付けられている飼料などの製造実務経験が3年以上ある方
- 飼料製造管理者による製造管理が義務付けられている飼料などの製造実務経験が3年には満たないものの、先に講習会を受けて、実務経験が3年を超えた段階で飼料製造管理者になる予定の方
合格率
合格率はほぼ100%といわれています。
というのは、講習を受けると取得できるからです。
難易度は易しいです。
1年当たりの試験実施回数
講習は不定期で年1~2回あります。
場所は【認可団体】の欄に記載した埼玉県の会場で行われます。
試験科目
こちらは講習科目です。
各科目4時間ずつ行われます。
1.飼料および飼料添加物概論
2.飼料および飼料添加物の安全対策
3.飼料の安全性の確保および品質の改善に関する法令
4.家畜衛生および食品衛生に関する法令
5.飼料および飼料添加物の製造管理
6.飼料および飼料添加物の分析および鑑定
7.家畜栄養学
8.家畜衛生学
9.飼料および飼料添加物の分析実習
採点方式と合格基準
講習内容を修得した者には、修了証書が交付されます。
取得に必要な勉強などの費用
この資格は講習会を受ければ取得できそうなので、受講料が勉強への費用と言っても良いでしょう。
ただし、受講料とは別にサブテキストの代金が必要になります。
詳細は受講申請書を受理した後、受講許可通知時にお知らせするとのことです。
受験料
こちらは受講料です。
50,000円(消費税込み)かかります。
受験申込方法
講習を申し込むには「飼料製造管理者講習会受講申請書」が必須です。
記入したら「独立行政法人農林水産消費安全技術センター 本部 肥飼料安全検査部 飼料管理課」に提出してください。
提出方法は来所または郵送です。
受験申請書の様式は独立行政法人農林水産消費安全技術センターの公式サイトで、「飼料→各種申請・届出・報告手続→飼料製造管理者講習会受講手続」の順でクリックすると、入手できます。
様式には、飼料製造管理者による製造管理が義務付けられている「飼料等の製造実務経験のみ」を記入します。
申請者がかつて勤務した事業場などの証明書でも可能です。
自家配農家も含みます。
なお、申し込む際には、受験票に要する写真も用意してください。
サイズは縦3cm×横2.4cm(提出前6ヶ月以内に撮影した脱帽正面上半身のもの)で、2枚用意して同封してください。
受講申請書を提出したら、受講許可通知書および受講票が送付されます。
まとめ
今回は家畜の飼料に関する資格である「飼料製造管理者」について、みてきました。
この資格は講習会を受ければ取得できます。
獣医師や薬剤師、あるいは薬学、獣医学、畜産学、水産学などの課程を修めて卒業した者は届出だけで取得できます。
この資格が活躍する場所としては、下記の4つです。
- 抗菌性物質を含む飼料の製造事業場
- インド産落花生油カス(特定飼料)を含む飼料の製造事業場
- 尿素やジウレイドイソブタンを含む飼料の製造事業場
- 飼料添加物の製造事業場
こうしたところに勤めている人は「飼料製造管理者」の講習を受けてみましょう。
仕事をするうえで役立ちますよ。
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このような工程を辿って、飼料が家畜のエサとなっているのです。