自家用操縦士(滑空機・飛行船)について

自家用操縦士(滑空機・飛行船)について

自家用操縦士(滑空機・飛行船)は国土交通省が管轄する航空従事者国家資格の一つです。
資格の正式名称は自家用操縦士技能証明といいます。
商用の飛行はできないため、無報酬・無償の運行を行う航空機の操縦に限られています。
具体的には自家用の軽飛行機、滑空機(グライダー)などがこれに当たります。
自家用操縦士は主に飛行機、回転翼航空機(ヘリコプター)、滑空機(グライダー)、飛行船の4種類があり、さらに滑空機は動力滑空機(モーターグライダー)と上級滑空機に区分されています。
おおまかに言うと、動力滑空機とはエンジンを備えたグライダー、上級滑空機とはエンジンを備えていないグライダーのことです。
今回はそのうちの滑空機(グライダー)と飛行船について見ていきます。

適用する仕事

冒頭でも触れましたが、自家用とあって商用ではありません。
個人での趣味や移動手段として使うことのできる免許です。
とはいえ、自家用滑空機の技能証明は日本でもスポーツとして広まっており、趣味で取得する方が多いです。

快晴の空に映える白い飛行船

おおよその年収とキャリアパス

飛行機やヘリコプターのプロの操縦士を希望する方は自家用操縦士の技能証明取得後、次のステップとして事業用操縦士に挑戦します。
それと同様に自家用飛行船においても、事業用操縦士の最初のステップとして取得する方が多いです。
飛行船の事業用操縦士の技能証明を取得すれば、宣伝広告などのために飛行船を飛ばすことができるようになります。
ただし、現在の日本では飛行船はめったに運航していないのが実状です。

また、滑空機、飛行船共に求人検索をしてみましたが、求人は見当たりませんでした。
取得しても職業に結びつけるのは難しいようです。
特に、滑空機はあくまで趣味で取得すると割り切ってしまってもいいのかもしれません。

認可団体

国土交通省主催する団体は「国土交通省航空局安全部運航安全課」です。
〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3
電話:03-5253-8111

受験条件

受験条件は種類により異なります。

受験条件
  • 滑空機(動力):16歳以上。出発地点から120km以上の野外飛行(中間で1回以上の生地着陸などを含む飛行)の経験など
  • 滑空機(上級):16歳以上。えい航による30回以上の滑空および、3時間以上の単独滑空経験など
  • 飛行船:17歳以上。飛行経験50時間以上(10回以上の離陸を含む5時間以上の単独飛行)など

筆記試験の合格者のみが実地試験を受験できます。

さらに試験に合格しても、実際に飛行を行うためには身体的条件もあります。
国によって異なりますが、日本では視力が各眼0.7以上(レンズによる矯正可)必要です。

身体検査には有効期間が設けられているため、その都度更新を行わなければなりません。

身体検査の有効期間
  • 40歳未満 :5年又は42歳の誕生日の前日までの期間のうちいずれか短い期間
  • 40歳以上50歳未満:2年又は51歳の誕生日の前日までの期間のうちいずれか短い期間
  • 50歳以上:1年間

合格率

合格率は公開されていませんが、難関試験であることは確かです。

1年あたりの試験実施回数

筆記試験は7月、11月、3月の年3回実施されます。
会場は7月及び3月が千歳、岩沼、東京、名古屋、大阪、福岡、宮崎、那覇の8か所、11月が東京、大阪の2か所です。

実地試験日は学科合格通知日から2年以内で、受験資格保有者の希望を考慮して決められます。

試験科目

快晴の空に飛んでいる滑空機試験は学科試験と実地試験があります。

学科試験

滑空機(動力)

①航空工学、②航空気象、③空中航法、④航空法規(国内)、⑤航空通信

滑空機(上級)

①航空工学、②航空気象、③空中航法、④航空法規(国内)

飛行船

①航空工学、②航空気象、③空中航法、④航空法規(国内・国際)、⑤航空通信

実地試験

滑空機(動力)

①運航に必要な知識、②飛行前作業、③空港等及び場周経路における運航、④各種離陸及び着陸並びに着陸復行、⑤曳航による飛行(曳航装置付きのみ)、⑥外部視認目標を利用した飛行を含む空中操作、⑦ソアリング、⑧野外飛行(曳航装置なしのみ)、⑨異常時及び緊急時の操作、⑩航空交通管制機関等との連絡、⑪総合能力

滑空機(上級)

①運航に必要な知識、②飛行前作業、③空港等及び場周経路における運航、④各種離陸及び着陸並びに着陸復行、⑤曳航による飛行、⑥外部視認目標を利用した飛行を含む空中操作、⑦ソアリング、⑧異常時及び緊急時の操作、⑨総合能力

飛行船

①運航に必要な知識、②飛行前作業、③空港等及び場周経路における運航、④各種離陸及び着陸並びに着陸復行及び離陸中止、⑤基本的な計器による飛行、⑥外部視認目標を利用した飛行を含む空中操作及び型式の特性に応じた飛行、⑦野外飛行、⑧飛行全般にわたる通常時の操作、⑨異常時及び緊急時の操作、⑩航空交通管制機関等との連絡、⑪総合能力

採点方法と合格基準

合格基準は、学科試験が100点満点中70点以上です。
実地試験では、試験官が受験者と同乗して受験者の技量を確認します。

取得に必要な勉強などの費用

国土交通省のWebサイトから過去問を見つけました。解答は掲載されていませんが、参考にしてみると良いでしょう。
学科試験用にテキストもあります。まずはテキストで勉強しましょう。

また、実地試験もありますから、技術を磨く練習も必要となります。
そのためにはスクールに通うという手段がありますが、取得までに滑空機の場合、おおよその平均で100万円程度かかると言われています。
また、期間も2年程度要します。

実はここに費用と期間を抑える裏技があるようです。
それは海外で資格を取得するという方法です。

海外を目指す飛行機
特にアメリカにはたくさんのスクールがあり、日本人教官がいるところもあるそうです。
スクールによりますが、滑空機では日本円にして50万円程度から、期間は最短1か月でライセンス取得を目指せると言われています。
アメリカで実技訓練を行い、ライセンス取得後に帰国します。

その際、日本の学科試験に合格する必要があるものの、日本のライセンスに書き換えることができるのです。
場合によりますが、日本で取得するより費用が約2~3分の1に、期間も大幅に短くなります。
実際海外でライセンスを取得する方は多いようです。

受験料

各試験の受験料は以下の通りです。
・滑空機(動力)…学科試験:5,600円、実地試験:40,100円、登録免許税:3,000円
・滑空機(上級)…学科試験:5,600円、実地試験:22,800円、登録免許税:3,000円
・飛行船…学科試験:5,600円、実地試験:46,400円、登録免許税:3,000円

受験申込方法

学科試験と実地試験では、受験する地域によって提出先が異なります。

学科試験

申請に必要な書類を揃えて航空局へ郵送します。

提出先は千歳、岩沼、東京で受験する場合は東京航空局です。
東京航空局保安部運用課検査乗員係
〒102-0074 千代田区九段南1-1-15 九段第二合同庁舎

名古屋、大阪、福岡、宮崎、那覇では大阪航空局です。
大阪航空局保安部運用課検査乗員係
〒540-8559 大阪市中央区大手前4-1- 76

実地試験

学科試験の場合と同様、申請に必要な書類を揃えて航空局へ郵送します。

提出先は北海道、東北、関東および新潟県、静岡県、山梨県、長野県は東京航空局です。
愛知県、岐阜県、富山県、石川県、福井県および関西、中国、四国、九州、沖縄は大阪航空局です。

まとめ

飛行機雲を見て指をさしている男の子空を飛ぶということはかつての「憧れ」から、現在は「実現」になってきています。
とはいえ、これは自動車運転免許にも言えることですが、自分で操作するということから全て自己責任となります。
飛行中にトラブルが起きた場合には、その場の状況に応じて冷静な判断をしなければなりません。
つまり、瞬時に対処する決断力や実行力が求められるのです。

現実として飛行船では事故の数はほとんどありませんが、残念ながら滑空機では他の機種同様毎年のように事故が起きています。
事故は最悪生命にかかわることすらあります。
そうなれば、技能証明の取得が難関になるのは当然と言えます。

将来的に滑空機の数は増えると予想されます。
スポーツとして楽しむのは良いことですが、その分細心の注意をもって事故のないよう操縦をしてもらえることを願うばかりです。

 

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