司書(補)試験について

司書(補)試験について

この資格は図書館法で定められている国家資格です。
司書補という仕事は文字通り司書の業務を補助する仕事ですが、そもそも司書の仕事とはどのようなことをするのでしょうか?
図書館は身近な場所なので普段から頻繁に訪れる方も多く、職員さんたちが作業している姿も目にする機会があるかと思います。
とはいえ、利用者からの目線では貸出や返却、陳列くらいしかわかりません。
ここでは司書の仕事内容にも触れつつ、司書補の仕事内容や資格について見ていきましょう。

適用する仕事

司書補の資格を有する人は、まずはアルバイト等非正規雇用として働く方が圧倒的に多く、働きながら司書の資格取得を目指すという方法が一般的です。
※司書資格取得については【おおよその年収とキャリアパス】の欄でご紹介します。

尚、非正規雇用であれば資格がなくても採用されることは可能ですが、実際の求人情報を見てみると、有資格者の募集が多いように見受けます。

ここでは、非正規雇用として図書館で働く方たちの調査についていくつか触れてみたいと思います。
以下は2019年に日本図書館協会が発表した、神奈川県内に勤める非正規雇用職員への調査です。

調査の内容

司書の資格があるかどうかについて

「司書の資格保有者」は54.7%
「司書補の資格保有者」は2.9%
「資格なし」は41.1%

司書の資格を持っている方が半数以上を占めているとはいえ、資格がない方も多いです。
採用の基準は各自治体および、企業によって異なるようですね。

雇用契約期間と契約更新の有無について

パート・アルバイトの雇用契約書「6か月未満」が13.7%
「1年未満」が7.5%
「1年」が64.0%
「2年」が0.2%
「3年」が2.0%
「5年」が4.6%
「期限なし」が4.8%
「その他」が2.9%

契約更新は「更新あり」が83.9%、「更新なし」が10.4%となっています。
1年未満での契約が大半を占めています。

現在の図書館での勤務年数について

「1年未満」が11.3%
「3年未満」が17.7%
「5年未満」が19.6%
「5年以上10年未満」が23.8%
「10年以上20年未満」が24.5%
「20年以上」が2.0%

リクルートの調査によると、アルバイト・パートの平均的な勤続期間は3年未満が85%を占めているのに対し、図書館ではおよそ50%が5年以上継続して勤務しています。
離職率が低いことがわかります。

職員の年齢について

「20歳未満」が0.0%
「20代」が2.9%
「30代」が6.0%
「40代」が25.2%
「50代」が45.7%
「60代」が19.6%
「70歳以上」が0.4%

平均年齢が他の職と比べて高いことがわかります。これは勤務年数が長いということが要因なのかもしれませんね。
給与関係については司書資格取得についてと同様【おおよその年収とキャリアパス】の欄で、ご紹介します。

仕事内容

きれいに積み上げられた同じ大きさの本次に、仕事内容についてご紹介します。
仕事内容は冒頭で触れたとおり、図書館で司書を補助することです。
司書の補助と聞いてやや簡単な作業を任されるのかと思いがちですが、実際は司書の業務内容とさほど変わりはなく、図書館業務全体を担っています。

さて、司書の業務内容ですが、多岐にわたることがわかりました。大まかな業務内容をご紹介します。

  • 資料の収集
  • 利用者が検索しやすいように、入ってきた資料分類や目録を作成
  • 配架作業
  • 図書館資料の貸出及び返却
  • 書架の整理
  • 「レファレンスサービス」や「読書案内」といった利用者対応
  • 図書普及活動のため、「読み聞かせ」や「特設コーナー」など企画発案と実施
  • 自動車文庫による巡回等の館外活動

など

公共図書館には平均12万冊もの本があるとされています。
こうした資料を貸し出せる状態にするには、様々な過程があるのですね。
本について尋ねられることも多いので、当然本の知識は必要となります。
様々な人と交流するのでコミュニケーションも取れた方が良いでしょう。

業務があまりにも多岐にわたるため、中には苦手な作業もあるかと思いますが、仕事なので対応しなければなりません。

おおよその年収とキャリアパス

司書補の年収は資料が見当りませんでした。
司書補は非正規として働いている方が多いので、引き続き日本図書館協会による非正規職員のデータをご紹介します。

データの結果

給与金額について

電卓とボールペンと一緒に置かれている給与入り封筒「平均時給」が996円、「平均月給」が135,879円、年収に換算すると160~200万円となります。

現在の給与の満足度について

「満足している」が11.0%
「やや満足している」が29.1%
「やや不満」が36.9%
「不満」が21.0%

このような結果でした。
給与にはあまり満足できていないようです。
一人暮らしであればダブルワーク等をしないと生活費が足りないことを考慮すると、どうしても不満を抱いてしまうのかもしれません。

改善または追加してほしい賃金制度について

「給与の増加」が45.9%
「昇給の実施」が41.5%
「ボーナスの支給」が38.2%
「退職金の支給」が24.7%
「交通費の全額支給」が9.3%
「残業代の支給」が9.7%
「その他」が7.9%

こちらでも、とくに給与関係に関して満足できていないようです。
また、残業代の支給も要求されていることから、中には仕事が残っているにも関わらず残業できない、あるいはサービス残業の状態にある現場もあるのかもしれないですね。

ちなみに、司書の年収は200~400万程度です。

司書(補)のキャリアパス

キャリアパスとしては、司書の資格を取得することが最も一般的ではないでしょうか。
司書補として実務経験を積んで司書講習を行い、資格を取得するという流れです。
2年間の司書補実務経験で司書講習の受験資格を得て、その後約3か月間の講習を修了して資格を取得するので、実際にはおよそ3年間実務経験を積む必要があります。

大変な面はありますが、司書の資格を取得すると求人の幅が広がり、非正規として働いても収入アップが予想されます。

認可団体

文部科学省司書補も司書同様、文部科学省の管轄です。
代表電話:03-5253-4111

文部科学省のサイトによると、司書(補)関係の担当局課及び問い合わせ先は、総合教育政策局地域学習推進課社会教育人材研修係(内線3676)とあります。

受験条件

一般的な資格試験のように、会場に出向いて試験を受けるというスタイルではありません。
高校もしくは中等教育学校(中学校から高等学校までの6年間を1つの学校で中高一貫として学ぶ学校)の卒業者、高等専門学校第三学年を修了した者が司書補の講習を修了すると、司書補資格を取得したことになります。

尚、資格取得に関しては年齢制限はありません。そのため20代が多いものの、年代は様々です。

合格率

大学での講習を修了すれば資格が取得できます。

1年あたりの試験実施回数

試験はありません。
大学での講習期間は聖徳大学が8月1日~9月3日、鶴見大学が8月1日~9月10日、愛知学院大学が7月1日~8月27日となっています(令和4年度)。

試験科目

大会場に並べられた机と椅子講習で学ぶ科目は以下の通りです。

  • 生涯学習概論: 1単位
  • 図書館の基礎: 2単位
  • 図書館サービスの基礎: 2単位
  • レファレンスサービス: 1単位
  • レファレンス資料の解題: 1単位
  • 情報検索サービス: 1単位
  • 図書館の資料: 2単位
  • 資料の整理: 2単位
  • 資料の整理演習: 1単位
  • 児童サービスの基礎: 1単位
  • 図書館特講: 1単位

採点方法と合格基準

修了の条件として、司書補の講習において11科目15単位を修得する必要があります。

取得に必要な勉強などの費用

2022年(令和4年)度では聖徳大学、鶴見大学、愛知学院大学で司書補の講習を実施しています。
大学によって異なりますが、申込期間は毎年4~5月です。

試験実施回数欄でも触れましたが、講習期間は聖徳大学が8月1日~9月3日、鶴見大学が8月1日~9月10日、愛知学院大学が7月1日~8月27日となっています(令和4年度)。

通信講座もあるのではと思い調べてみましたが、司書補講習にはないようです。
ちなみに司書講習にはあるそうです。

受験料

試験がないため、大学での受講料となります。
例として2022年(令和4年)度では3つの大学とも同じ受講料です。

受講料
全科目受講代金:100,000円
部分受講(講義科目):1単位11,000円
部分受講(演習科目):1単位22,000円

別途、書類選考料と教科書代が必要です。

受験申込方法

3つの大学とも定員50名と定められているので選考審査があります。審査内容は作文と書類選考です。
申込期限までに選考料の支払いを済ませ、書類を郵送します。
※一部の大学では窓口での提出も可能なようです。詳しくは各大学のWebページをご覧ください。

まとめ

本を探しながらどや顔をしている女子大生司書の仕事は収入が良いわけでもなく、資格を取得したとしても競争率が高いため、必ずしも正規雇用職員として働けるわけではないのが現状です。
ましてや司書補となれば求人は多いとは言えません。

ですが、司書は本が好きな方や知的好奇心旺盛な方、整理整頓が好きな方にとっては、好きなことを仕事にできるという点が非常にうれしいものです。

また、利益を重視しなければならないということはないので、落ち着いて業務をこなすことができます。
さらに、女性の方が男性よりも多く働いていることから、女性も安定して長く働ける職です。

正規雇用職員でなくても構わないという選択肢を持っているのであれば、求人もぐっと広がります。
ご興味ある方は、まずは各大学の資料を集めてみてはいかがでしょうか。

 

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