今回は臭気判定士という国家資格についてご紹介します。
臭気判定士とは、人の嗅覚を使った測定方法による測定を管理・統括する責任者のことです。
臭気の濃さを正しい測定や評価することによって、環境保全に貢献します。
においが環境保全につながるのですね。
そんな環境問題にも関連する資格を、今回みていきます。
Contents
適用する仕事
臭気判定士は別名:「臭気測定業務従事者」ともいわれています。
嗅覚測定法を行うための資格であり、パネルの選定、試料の採取、試験の実施や結果の求め方まで全てを統括します。
意外と臭気による苦情はあちらこちらに存在しています。
その数は令和2年では、全国で15,000件にものぼります。
そうした悪臭の苦情を解決するために、工場や事業所からのにおいを測定するのが臭気判定士の仕事なのです。
臭気測定法とは
嗅覚測定法とは、無臭の袋の中に空気と臭気ガスを一定量入れ、袋の中のにおいを嗅ぐという作業です。
さまざまな濃度の臭気ガスを調整し、ひたすら地道に嗅いでいきます。
このときに人がにおいを感じなくなるまで空気を希釈し、臭気の希釈倍数からニオイの強さを計算します。
最終的には、臭気指数や臭気濃度といった数値を求めます。
人の鼻でにおいを嗅ぐことになるので、様々な種類の臭気成分に対応する測定が可能です。
ただし、良いにおいも悪いにおいも平等に数値化されてしまうのが弱点です。
臭気判定士の仕事
1.嗅覚検査の準備
まず、嗅覚検査を行うために、嗅覚に異常がない人をパネル(嗅覚を用いて臭気の有無を判定する者)として選定します。
検査を行うにあたり、6名の被験者を選びます。
被験者というのは、一般的な嗅覚があるかという判断基準で選ばれます。
基準臭(5種類)のにおいを嗅ぎ分けてもらいます。
2.試料採取
においが排出される場所に行き、においが強いときのガスを採取します。
このとき排出口の高さ(下向き・横向きダクトの場合はダクトの下部を排出口の高さとする)や断面積、臭質を確認します。
3.判定試験の実施
判定試験を実施します。
試験はにおいが感じられない室内(会議室及び臭気試験室等)で行います。
手順は嗅覚検査で選んだ6名の被験者に対し、サンプリングの袋と無臭の袋をセットで渡します。
このとき、においがする方の袋を選ばせて、そのにおいが感じられなくなるまで濃度を薄めていきます。
4.臭気指数の算出
判定試験の結果をまとめます。
具体的には、6名の被験者のうち、最大値と最小値を示した2名のデータを除いた4名の数値を平均化します。
それを10倍にして臭気指数を割り出します。
そのようにして、測定値を導き出していきます。
おおよその年収とキャリアパス
臭気判定士は環境計量証明事業所や分析会社などで、働く人が多いです。
そうしたところで働いている場合、年収はおおよそ400万円ほどでしょう。
技術職として長く働いていると、給与も上がっていきます。
また、化粧品メーカーや消臭剤などのメーカーにも、臭気判定士を雇用しているところがあります。
臭気判定士のキャリアには、大きく分けて3つの選択肢があります。
- 事業会社に入って、インハウスのアドバイザーとして分析を行う
- ゼネコンなどの技術研究所に属して、第三者の立場から臭気分析を行う
- 臭気専門会社を立ち上げたり、フリーランスとして活動したりする
個人事務所を立ち上げて独立した人やメディア露出の多いフリーランスなどは、もっと年収が高いかもしれません。
ですが、悪臭苦情はだんだん減少傾向にあります。
個人での依頼も悪臭が改善されればリピートされる可能性も低いので、限りある案件を取り合う形になっているのが実状でしょう。
認可団体
「公益社団法人 におい・かおり環境協会」が臭気判定士の資格を管理しています。
沿革 | |
1969年12月 | 悪臭公害研究会として設立 |
1987年4月 | 社団法人臭気対策研究協会として認可 |
2008年4月 | 公益社団法人におい・かおり環境協会に移行 |
受験条件
試験日に18歳以上の者
そして、厳密にいうと、臭気判定士試験と一緒に実施される嗅覚検査に合格すれば、臭気判定士として認定されます。
合格率
- 2021年 29.0%
- 2020年 30.9%
- 2019年 24.8%
また、臭気判定士試験で行われる嗅覚検査の合格率は、約95%です。
1年当たりの試験実施回数
年1回、11月中旬に行われます。
試験科目
科目と問題数をお知らせします。
試験は全44問の50点満点です。
科目 | 問題数 |
嗅覚概論 | 6問(各1点) |
悪臭防止行政 | 8問(各1点) |
悪臭測定概論 | 8問(各1点) |
分析統計概論 | 8問(各1点) |
臭気指数等の測定実務 | 8問(各1点)/6点(各2点) |
採点方式と合格基準
試験はマークシート方式です。
合格基準は2021年の場合を参考にすると
- 総合得点率70%以上
- 各科目別最低得点率33%以上
ただし「臭気指数等の測定実務」については、問31~38の8題(多肢択一)は33%以上、問39~問44の6題(数値解答)は66%以上が合格基準
取得に必要な勉強などの費用
勉強に必要な情報は公式サイトである「公益社団法人 におい・かおり環境協会」内に、掲載してあります。
試験問題(学会誌抜粋)も840円で購入できます。
参考図書とその価格もご紹介します。
ぜひ、勉強に役立てましょう。
書籍名 | 価格 |
嗅覚概論 | 4,950円 |
ハンドブック悪臭防止法 | 4,950円 |
初心者のための統計学 | 5,500円 |
臭気の嗅覚測定法 | 4,400円 |
嗅覚測定法マニュアル | 3,570円 |
気体排出口における臭気指数規制マニュアル | 2,100円 |
また、講習会も開催されています。
内容は5つのコースに分かれています。
- 嗅覚概論(参考図書:嗅覚概論)
- 悪臭防止行政(参考図書:ハンドブック悪臭防止法)
- 分析統計概論(参考図書:初心者のための統計学)
- 悪臭測定/測定実務(参考図書:嗅覚測定法マニュアル、臭気の嗅覚測定法)
- 模擬演習
受講料 | |
1コース | 23,000円 |
4コース(セット割) | 85,000円 |
5コース(セット割) | 95,000円 |
受験料
- 18,000円(非課税)
- 嗅覚検査は9,000円(非課税)
ちなみに、臭気判定士の免状は交付日から5年間が有効です。
臭気判定士免状の交付申請費用:3,500円(非課税)
免状の更新費用:3,000円(非課税)
受験申込方法
受験を希望する場合は「におい・かおり環境協会」のWebサイトから、受験申請書をダウンロードして下さい。
そちらに受験案内も掲載されています。
受験申請書用紙に所定の事項を記入し、年齢を証明する書類、写真(正面から撮影した縦6cm、横4cmのもの)、受験の手数料払い込みを証する書類を添付して提出します。
まとめ
今回は人の嗅覚を使った測定方法による測定を管理・統括する責任者である「臭気判定士」という資格について、お伝えしてきました。
臭気判定士は環境計量証明事業所や分析会社などで活躍できます。
つまり、そうした分野に就職しないと活かせないということなので、まずは仕事に就くことから始めましょう。
例えば、工場から出るアンモニアや硫化水素などの法律で指定されている悪臭物質に関しては、環境計量士という専門家が調べますが、においに特化した案件になると臭気判定士が活躍します。
においの濃度を測り、においを出している施設に改善の指導をすることによって、環境を良くすることができます。
昨今、環境問題が叫ばれていますので、このような仕事で貢献してみませんか。
一般的な嗅覚の臭気判定士ほど重宝されやすいという意見もありますから、分析力のある人はこういった職業にも目を向けてみて下さいね!
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におい・かおり環境アドバイザーについて
電話:03-6233-9011(代表)
FAX:03-6862-8854