アメリカで実際に起こった収賄スキャンダルを豪華キャストで映画化「アメリカン・ハッスル」

アメリカで実際に起こった収賄スキャンダルを豪華キャストで映画化「アメリカン・ハッスル」

今回ご紹介する映画は2014年のアメリカ映画「アメリカン・ハッスル」です。

「世界にひとつのプレイブック」「ザ・ファイター」のデヴィッド・O・ラッセル・O・ラッセル監督が、1970年代アメリカで起こった収賄スキャンダル「アブスキャム事件」を映画化。

詐欺師がFBIに協力し、おとり捜査によって真相を暴いた実話をクリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンスら豪華俳優陣を迎えて描いています。

79年、ラスベガスやマイアミに続くカジノタウンとして開発中のニュージャージー州アトランティックシティ。

詐欺師のローゼンフェルドを逮捕したFBI捜査官のディマーソは、司法取引でローゼンフェルドを捜査に協力させ、偽のアラブの大富豪をエサにした巧妙なおとり捜査によって、カジノの利権に絡んだ大物汚職政治家たちを逮捕していきます。

今回は、「アメリカン・ハッスル」のあらすじ、キャスト、トリビアなどをご紹介します。

あらすじ(ネタバレあり)

詐欺師とおとり捜査

実際にアメリカで起きた話です。1987年に詐欺師であるアーヴィンとシドニーは一緒に詐欺を働くようになりました。

シドニーという女性はイギリスの貴族のような振る舞いをしており、アーヴィンは腹が出ている中年男でした。

そして彼には妻がいますが、愛––––で言えばシドニーのことが好きだったのです。でも妻との間には子供もいるので、その子供を失うことは彼にとって恐怖でもありました。

FBI捜査官であるリッチーは、ローン詐欺事件でアーヴィンとシドニーを逮捕します。しかし、リッチーはアーヴィンに対して、4つの逮捕をしてくれたら釈放するといいます。

それにはシドニーが反対しましたが、彼女がリッチーを操るということで合意をし、彼らは一時間隔を置きます。アーヴィンは友人に対してアラブの富豪を演じさせると、市長と取引をするように仕向けます。

取引

市長の疑惑・テープ録音

その市長はアトランティックシティでギャンブルを開始させるために、巨額の運動をしているみたいなのです。

市長本人としては、地域経済活性化と彼の有権者が付いてくることを気にしているようです。リッチーは市長を囮捜査に使うことを決定します。

そして、シドニーは200万ドルの電信送金でFBI秘書を操ることをリッチーに言われ、行います。

カジノに行くと、マフィアのボスがアーヴィンに会いたいというので、彼は驚いてしまいます。そしてマフィアは、ビジネスにはアラブの族長が必要であるといいます。

マフィアもアーヴィンの罠に引っかかってしまいました。

そんな中、アーヴィングの妻が乱入して、彼らの捜査を混乱させます。アーヴィンに妻は離婚話をします。

アーヴィンとリッチーは、友人の協力により賄賂を受領している議員をテープビデオに録画することに成功します。

そしてアーヴィンは市長と彼の友人宅を尋ねると、詐欺を認めるなら助けるといいます。しかし、友人は頑固に彼の要求を聞かず、追い出してしまいます。

アーヴィンの200万ドルはいつの間にかに消えていました。彼らはアーヴィンとシドニーの減刑を受けたのです。そしてリッチーはアーヴィンを訴えます。

ついに捜査が終了し、彼らの詐欺の罪もなくなったところで、アーヴィンは子供の親権を取ります。そしてシドニーと今度は合法的なギャラリーを作ったのです。

キャスト

アーヴィン・ローゼンフェルド(クリスチャン・ベール)

本編の主人公。モデルはメル・ワインバーグという実在の詐欺師。

演:クリスチャン・ベール
1987年にスピルバーグ監督作品「太陽の帝国」のオーディションで4000人の難関を突破し、映画デビュー。

両親と生き別れになり、強制収容所に送られた少年の成長を見事に演じて高評価を得ます。その後も堅実にキャリアを重ね、「アメリカン・サイコ」や「リベリオン」など話題作に主演。

「バットマン ビギンズ」ではブルース・ウェイン役、「ターミネーター4」ではジョン・コナー役に抜擢され、2010年には「ザ・ファイター」で見事アカデミー賞助演男優賞に輝きました。

役作りにストイックな俳優として知られ、「マシニスト」や「ザ・ファイター」では極端な痩身で役に入り込み、「ターミネーター4」では本番撮影中にスタッフが彼の視界に入ったことで大激怒したといわれています。

リッチー・ディマーソ(ブラッドリー・クーパー)

FBI捜査官。逮捕したアーヴィンとシドニーに司法取引で、おとり捜査の協力を持ちかけます。

クーパー

演:ブラッドリー・クーパー

大学卒業後アクターズ・スタジオに学び、「SEX AND THE CITY」のゲスト出演で本格的に俳優デビュー。

TVを中心にキャリアを重ね、レギュラー出演した「エイリアス」、主人公に抜擢された「キッチン・コンフィデンシャル」などでその名を知られることとなります。

その他「タッチング・イーブル ~闇を追う捜査官~」や「NIP/TUCK ハリウッド整形外科医」にもゲスト出演。

映画も次々と話題作にキャスティングされ、賞レースも賑わせた大穴ヒット・コメディ「ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」で大ブレイクを果たします。

その後もオールスター競演の「バレンタインデー」やリーアム・ニーソン共演の「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」など注目作品に出演。一躍人気俳優のひとりとなりました。

カーマイン・ポリート(ジェレミー・レナー)

ニュージャージー州の市長。おとり捜査の標的。モデルはアンジェロ・エリチェッティ市長です。

演:ジェレミー・レナー
1995年の「ナショナル・ランプーン/ホワイトハウスを乗っ取れ!」で映画デビュー。

インディーズ系作品やTVシリーズのゲスト出演ののち、02年の「ジェフリー・ダーマー」でインディペンデント・スピリット賞主演男優賞にノミネート。「S.W.A.T.」でメジャー作品に進出します。

「Neo Ned(原題)」ではパーム・ビーチ国際映画祭男優賞を受賞。以降、「スタンドアップ」や「ジェシー・ジェームズの暗殺」、「28週後…」など様々なジャンルの作品に出演し、それぞれ脇役ながら強い印象を残します。そして09年の「ハート・ロッカー」で全米批評家協会賞主演男優賞に輝き、さらにはオスカー主演男優賞初ノミネートも果たしています。

シドニー・プロッサー/レディ・イーディス(エイミー・アダムス)

アーヴィンのビジネス・パートナーで愛人です。

演:エイミー・アダムス
18歳までウェイトレスをしたあと移住したミネソタでダンスを学び、やがて演技に目覚め、99年の「わたしが美しくなった100の秘密」でスクリーン・デビュー。

「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」の出演は、数多くの候補者の中からスピルバーグが見せた彼女のテープがディカプリオの目に留まったことがきっかけといわれています。

そして、2006年の「ジューンバッグ(原題)」で放送映画批評家協会賞の助演女優賞を獲得し、アカデミー賞助演女優賞にもノミネートされました。

ロザリン・ローゼンフェルド(ジェニファー・ローレンス)

アーヴィンの妻です。

演:ジェニファー・ローレンス
TVシリーズ「名探偵モンク」「ミディアム」のゲスト出演や、シットコム「The Bill Engvall Show(原題)」でレギュラー出演します。

そして、貧しい寒村で家族を守りながら危険を顧みず行方不明の父を探す長女を熱演した「ウィンターズ・ボーン」はサンダンス受賞など賞レースを席巻。

オスカー主演女優賞ノミネートをはじめ数多くの映画賞で受賞・ノミネートされ、一躍スターダムにのし上がります。

その後も「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」、「ハンガー・ゲーム」と大ヒットを連発。そして、エキセントリックなヒロインを快演した「世界にひとつのプレイブック」(12)でアカデミー賞主演女優賞を獲得します。

パコ・ヘルナンデス/シーク(マイケル・ペーニャ)

FBI捜査官です。

演:マイケル・ペーニャ
94年に映画「ランニング・フリー アフリカの風になる」(日本劇場未公開)で俳優デビューします。
その後、拠点をロサンゼルスに移し、人気TVシリーズ「フェリシティの青春」(99~00)や「ER 緊急救命室」(03)などに出演。

映画でも、ニコラス・ケイジ主演の「60セカンズ」(00)や、「ミリオンダラー・ベイビー」(04)、ブラッド・ピット出演の「バベル」(06)といった話題作に多数出演しています。

近年では、「エンド・オブ・ウォッチ」(12)や、「フューリー」(14)で存在感を発揮。メキシコのスター俳優ディエゴ・ルナがメガホンをとった伝記映画「セザール・チャベス」(14)では、タイトルロールの人権活動家を演じています。

基本情報

基本情報

監督     デヴィッド・O・ラッセル
脚本     デヴィッド・O・ラッセル エリック・ウォーレン・シンガー

製作     チャールズ・ローヴェン ミーガン・エリソンリチャード・サックル ジョナサン・ゴードン

製作総指揮  マシュー・バドマン ブラッドリー・クーパー ジョージ・パーラ 他

出演者    クリスチャン・ベール ブラッドリー・クーパー エイミー・アダムスジェレミー・レナー

音楽     ダニー・エルフマン
撮影     リヌス・サンドグレン
編集     アラン・ボームガーテン ジェイ・キャシディ 他

製作会社   アンナプルナ・ピクチャーズ
配給     〔アメリカ〕 コロンビア ピクチャーズ 〔日本〕 ファントム・フィルム

公開     〔アメリカ〕2013年12月13日(限定公開) 2013年12月20日 〔日本〕 2014年1月31日
上映時間   138分

製作国    アメリカ合衆国
言語     英語
製作費    $40,000,000
興行収入   $251,171,807

受賞歴

受賞歴

第71回 ゴールデングローブ賞(2014年)

最優秀作品賞(コメディ/ミュージカル)
最優秀主演女優賞(コメディ/ミュージカル) エイミー・アダムス
最優秀助演女優賞             ジェニファー・ローレンス

アブスキャム事件とは?

「アメリカン・ハッスル」のネタ元は、1979年に起きた「アブスキャム事件」です。

FBIニューヨーク支局が“アラブの大富豪がカジノに投資したがっている”という架空の投資話をでっちあげ、詐欺師を使って19人の政治家を贈賄罪で辞職に追い込んだという政治スキャンダルです。

そして、主人公アーヴィンのモデルとなったのが、天才とまで呼ばれた実在の詐欺師メル・ワインバーグです。

メルによると、オトリ捜査に協力したのは愛人イヴリンのためだったようです。「彼女に迷惑を掛けちまった。だから、俺はFBIに協力することを決めたんだよ」と語っています。

彼女をモデルにした劇中のシドニー(エイミー・アダムス)は詐欺の心強い相棒だが、当の本人は実は詐欺について何も知らなかったのだといいます。

また、実際のオトリ捜査は劇中で描かれる以上に過酷なものだったようで、目の前で捜査官がマフィアに殺されかけ、メルの説得で命拾いをしたこともあったそうです。

また、彼自身もマフィアによって窓につるし上げられ、ベッドに銃弾を撃ち込まれるという絶体絶命の危機を経験しています。

「捜査のプレッシャーは相当なものだった」と語る彼によれば、当時の捜査官の多くが離婚してしまったそうです。
「アブスキャム事件」後は詐欺から足を洗い、高級ブランドのルイ・ヴィトンで偽物を見分ける仕事に携わっていたと答えています。

『アメリカン・ハッスル』でアーヴィンを演じるクリスチャン・ベールは、自宅に彼を招いて3日間一緒に過ごし、身振りや話し方、一九分けの髪型から体型(体重を20キロ近く増やした)まで完璧にコピー。役づくりをしたと明らかにしています。

主演クリスチャン・ベール

ギリギリで間に合ったベール

映画が企画された当初からメインキャラクターの役に決まっていたクリスチャン・ベールでしたが、スケジュール調整の関係で泣く泣く断念することとなりました。

代わりにブラッドリー・クーパーがベールの役に決まり、彼の役を代わりにジェレミー・レナーが演じることで落ち着きました。

クリスチャン・ベールのスケジュール調整がつき再度キャスティングされた際には、ベールがもともと演じる予定だった役が彼のもとに戻ってきて、同様にクーパーもオリジナルの役を演じることになります。

そしてジェレミー・レナーにはラッセル監督がアトランタ市長であるカーマインを急遽つくり、彼が演じることとなりました。

ベールの肉体改造

クリスチャン・ベールが驚異的な肉体改造を行うのは今回で4回目、デヴィッド・O・ラッセル作品では2回目となります。

1回目は『マシニスト』(2004年)(この作品で彼は63キロの減量に成功し、極端にやせ細りました)。

その後、『戦場からの脱出』(2006年)(55ポンド減量)、『ザ・ファイター』(2010年)(30ポンド減量)。

役柄の身体的特徴を実現するために、体重を40キロ以上増やし、櫛形にして姿勢を崩し、その過程で椎間板を2つヘルニアにすることになったそうです。

気づかなかったロバート・デ・ニーロ

デヴィッド・O・ラッセル監督はロバート・デ・ニーロが彼らが挨拶を交わした後にもかかわらず、クリスチャン・ベールがセットにいた事に気付いていなかったといいます。

デニーロ はラッセル監督を呼び出し、ベールを指差し彼は誰だと聞きました。
最初デニーロはそれがベールだと信じませんでしたが、ラッセル監督が彼を確信させるとデニーロは「あまりに見た目が違う」と言い、頷いたといいます。

「アメリカン・ハッスル」トリビア

喧嘩シーンはアドリブ

クリスチャン・ベールとジェニファー・ローレンスのベッドルームで繰り広げられる喧嘩シーンは完全にアドリブです。

台本には別のやりとりが書かれていましたが、2人はそれを繋げるのに苦労していたため、最終的にはデヴィッド・O・ラッセル監督が二人の言いたいことを言わせてあげることにしたとのことです。

アブスキャム

この映画は、1970年代後半から1980年代前半にかけて起きたアブスキャム(アブドゥル・スキャムの略)スキャンダルをフィクションとして伝えています。

アブスキャムは、盗品売買の捜査として始まったFBIの作戦ですが、後に政治腐敗にまで拡大されることになりました。

意外と多い特殊効果

『アメリカン・ハッスル』の撮影には、200以上の特殊効果が使用されています。

コメディ・クライム映画にしては意外と多いかもしれませんが、映画の舞台が1970年代という設定なため、このうちのほとんどは現代風の建物や車などを画面から消すために使用されていたのだそうです。

多くのシーンが即興?

クリスチャン・ベールによれば、映画の多くのシーンは即興だったといいます。そのため彼は映画の撮影中に作家で監督のデヴィッド・O・ラッセルに、「これで筋が今後大きく変わるだろう」と言います。

ラッセルは答えます「クリスチャン、私は筋が嫌いだ。私には役が全て、それだけだ。」

「アメリカン・ハッスル」評価・評論

批評家のレビュー集積批評サイトRotten Tomatoesには、249件のレビューがあり支持率は93%、平均点は10点満点中8.2点となっています。

監督の演出から美術・音楽・演技・脚本に至るまで惜しみない賞賛を受けていますが、特に、ジェニファー・ローレンスの演技は高く評価されています。

『ローリング・ストーン』のピーター・トラヴァースは4つ星のうち3つ星半を与え、「本作は2013年のベスト映画の一つである。スピード感がある一方で、心に強く響いてくる。」と評しています。

主要キャスト4人がオスカー主演&助演候補になったように、キャストのアンサンブルがすごい。入り組んだストーリー展開は、観る者を釘付けにする。

ファッションも言動もやり過ぎな70年代が舞台だけに、デヴィッド・O・ラッセル版『ブギーナイツ』としても楽しめる。

現実では悲劇に終わったジェニファー・ローレンス演じるビッチ妻に、あのエンディングを用意した監督の優しさにも泣けてくる。

愛おしき70年代アメリカ。ビミョーな風俗やアブナイ生き様が発散する空気は、60年代より重くて80年代より濃い。そんな時代を体現する頭髪と体型がダサすぎる詐欺師クリスチャン・ベール。

万華鏡のように多面的な相棒エイミー・アダムス。そして、2人を囮捜査に巻き込むクレイジーな捜査官ブラッドリー・クーパー。の妻役ジェニファー・ローレンスのキレまくる言動が周囲を掻き回している。

まとめ

今回は「アメリカン・ハッスル」のご紹介をさせていただきました。
いかがでしたでしょうか?

この映画は1970年代にアメリカで実際に起きた事件をベースにクリスチャン・ベール、ブラットリー・クーパー、ジェレミー・レナー、エイミー・アダムス、ジェニファー・ローレンスの豪華キャストにより映画化された作品です。

ただ、どこまでが実話でどこからがフィクションなのかは分からないので、実話をベースにした映画は、大幅な脚色は難しいのかもしれません。

濃いキャラクターが嘘やエゴをぶつけ合中で、ストーリーが展開していくのはなかなか見応えがあります。

ただ、ストーリー全般に渡って騒々しいイメージがあり、特に印象に残る見せ場があったかというとそうでもない気がします。

ちょっと油断すると、個々の気持ちはどこを向いているのか、何のための行動なのか、よくわからなくなることがあります。そして、ひたすら長く感じます。

キャストは豪華だし、ストーリーもキャラクターも悪くありませんでしたが、私としてはいまひとつ消化不良でした。

ただ、これほどまでにだらしない体のクリスチャン・ベールが見られるのはこの作品だけでしょう。そして、ノークレジットで出演するロバート・デ・ニーロ存在感。やはり凄いです。