高圧ガス製造保安責任者とは、高圧ガスの第一種製造者などに該当する場所で保安の仕事をするための資格のことです。
高圧ガスや液化石油ガスによる災害を未然に防ぐため、保安上この資格保有者を配置しなければなりません。
高圧ガス製造保安責任者は国家資格です。
どのような資格なのかを解説していきます。
Contents
適用する仕事
まず、高圧ガスについてご説明していきます。
高圧ガスとは、高圧ガス保安法によって定められているガスの総称で、医療や農業など幅広い分野で用いられております。
実を言いますと「高圧ガス」という名前の製品ガスは存在していません。
高圧ガス保安法とは、高圧ガスの作り方や貯蔵・販売方法などについて、規制している法律のことです。
高圧ガスはフィルターで原料空気を吸い込んでから、圧縮機で0.5MPaまで圧縮した後に冷却・分離する方法で作られています(深冷分離)。
この作り方によって高圧ガスは、高い圧力を伴った特殊なガスに変わり、より幅広い分野で活用できるようになるのです。
高圧ガスはさまざまな分野で活用されており、その製造過程には高い圧力をかけて圧縮するという特殊な技法を含みます。
このことによって高圧ガスは高い圧力を伴った特殊なガスに変わり、より幅広い分野で活用できるようになります。
そのような特殊な性質を持った高圧ガスを安全に使うためには、十分な知識と技術がなければなりません。
高圧ガスに関して十分な知識と技術を習得し、安全に取り扱いができることを証明する資格が「高圧ガス製造保安責任者」なのです。
主な就職先はコンビナートや重工業、化学工場、高圧ガスを使って何かを製造している工場や企業が挙げられます。
高圧ガスはいろいろな場所で使われています。
高圧ガスが使われている場所 | |
製鉄所や工場 | ガラス工場や製鉄所、化学工場などでは、たくさんの酸素や窒素が使われている |
建設 | 鉄を切る溶断や鉄と鉄をくっつける溶接現場で使われている |
医療 | 吸入用酸素のほか、内視鏡外科手術ではお腹をふくらませるために炭酸ガスに用いることがある。また、酸素療法では、吸引用酸素が使われている |
環境 | ダイオキシンが発生しないよう高温でゴミを燃やしているゴミ処理場や、微生物を使った排水処理場では、酸素が使われている |
食品や飲料 | 炭酸飲料だけではなく、冷凍品の保冷に欠かさないドライアイスも、炭酸ガスを原料として作られている |
農業 | ビニールハウス内で育てられる野菜や果物の光合成を促すため、炭酸ガスが使われている |
これだけの箇所で使われているのですから、使用されている機材も変わっていきます。
場所や機材によって仕事の仕方が全く異なります。
後ほどお伝えしますが、この資格には9つの種類があるのです。
おおよその年収とキャリアパス
資格を持っている方の多くは年収が400万円以上で、700万円以上を目指すことも可能です。
資格手当が支給される企業もあり、保有する資格や役職、経験年数も加味されます。
管理者として経験を積めば、さらに給与が上がります。
資格取得に現場での実務経験が問われないため、化学系の学部に入っている大学生の方は、ぜひ在学中にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
就職活動にも有利に活用できる資格なので、初任給から同期入社に差をつけることもできるでしょう。
もちろん、就職後も取得できる資格です。
もし、進学前から「高圧ガス製造保安責任者」になりたいと考えている高校生の方がいましたら、ぜひエネルギー、資源工学、農学、電気工事などを学べる専門学校や大学に進学して、高圧ガスを取り扱う企業へ就職することをおすすめします。
高圧ガス製造保安責任者の資格を取得したら、必要に応じて関連する資格や検定(ガス主任技術者、特定高圧ガス取扱主任者、液化石油ガス設備士など)を取得するのも良いでしょう。
認可団体
認可団体は経済産業省です。
受験条件
年齢、学歴などに制限はなく誰でも受験できます。
合格率
高圧ガス製造保安責任者は9種類あります。
- 甲種化学責任者
- 甲種機械責任者
- 乙種化学責任者
- 乙種機械責任者
- 丙種化学(液化石油ガス)責任者
- 丙種化学(特別試験科目)責任者
- 第一種冷凍機械責任者
- 第二種冷凍機械責任者
- 第三種冷凍機械責任者
2021年のそれぞれの合格率をまとめました。
- 甲種化学責任者 67.7%
- 甲種機械責任者 67.1%
- 乙種化学責任者 41.9%
- 乙種機械責任者 38.6%
- 丙種化学(液化石油ガス)責任者 43.4%
- 丙種化学(特別試験科目)責任者 52.7%
- 第一種冷凍機械責任者 56.1%
- 第二種冷凍機械責任者 50.8%
- 第三種冷凍機械責任者 46.8%
ちなみに、2020年の合格率はこれらよりも、もっと低かったようです。
1年当たりの試験実施回数
試験は年1回で、毎年11月の第2日曜日に実施されます。
9つの種類のうち、甲種化学責任者・甲種機械責任者・第一種冷凍機械責任者試験の施行者は経済産業大臣であるため、北海道札幌市、宮城県仙台市、東京都、愛知県名古屋市、大阪府大阪市、広島県広島市、香川県高松市、福岡県福岡市、沖縄県宜野湾市のみで行われています。
一方、乙種化学責任者・乙種機械責任者・丙種化学(液化石油ガス)責任者・丙種化学(特別試験科目)責任者・第二種冷凍機械責任者・第三種冷凍機械責任者試験の施行者は都道府県知事であるため、すべての都道府県で開催されています。
試験科目
9つの種類のうち、どれもが法令、保安管理技術、学識の3科目が出題されます。
ただし、第三種冷凍機械には「学識」科目がありません。
ただし、科目免除が受けられる講習制度があります。
高圧ガス保安協会が行う講習を受講し、その講習に対する技術検定に合格した人は試験の一部が免除されます。
その場合は「法令」科目のみの受験となります。
また、科目免除制度もあります。
9種類のうち、ある種の高圧ガス製造保安責任者試験に合格している方が、新たに別の種類の試験を受けようとする場合には、「法令」科目が免除されます。
合格している試験 新たに受けようとする試験 | |
甲種化学 | 甲種機械または乙種機械 |
甲種機械 | 甲種化学または乙種化学 |
乙種化学 | 乙種機械 |
乙種機械 | 乙種化学 |
採点方式と合格基準
ほとんどの資格の科目は択一式で出題されています。
甲種化学、甲種機械、第一種冷凍機械の学識科目は記述式で解答します。
合格基準は各科目とも、60%程度取れていれば合格となります。
取得に必要な勉強などの費用
勉強などの費用は「高圧ガス保安協会」のホームぺージに掲載されています。
おすすめテキスト
「高圧ガス保安協会」の公式サイトをご覧いただくとわかりますが、高圧ガス製造保安責任者関連のテキストがたくさん紹介されています。
こちらにご紹介しているものは、ほんの一例です。
高圧ガス保安技術(甲種化学・機械講習テキスト) | 6,180円(税込) |
中級 高圧ガス保安技術(乙種化学・機械講習テキスト) | 4,080円(税込) |
初級 高圧ガス保安技術(丙種化学・機械講習テキスト) | 2,720円(税込) |
高圧ガス製造保安責任者 甲種化学・機械 試験問題集 | 3,670円(税込) |
高圧ガス製造保安責任者 乙種化学・機械 試験問題集 | 3,670円(税込) |
よくわかる計算問題の解き方-高圧ガス甲種資格者への近道- | 2,100円(税込) |
よくわかる計算問題の解き方-第一種冷凍機械及び第二種冷凍機械資格取得への近道- | 2,100円(税込) |
講習会
また、講習会も実施されています。
化学系や機械系の費用
種類 | 一般申込 | インターネット申込 |
甲種化学・甲種機械 | 29,600円 | 29,000円 |
乙種化学・乙種機械 | 25,400円 | 24,900円 |
丙種化学(2種) | 25,400円 | 24,900円 |
冷凍系の費用
種類 | 一般申込 | インターネット申込 |
第一種冷凍機械 | 29,600円 | 29,000円 |
第二種冷凍機械 | 25,400円 | 24,900円 |
第三種冷凍機械 | 20,000円 | 19,500円 |
受験料
受験料は種類によって異なります。
また、書面申請と電子申請の2種類があります。
甲種化学、甲種機械、第一種冷凍機械
- 書面申請 17,800円
- 電子申請 17,300円
乙種化学、乙種機械、第二種冷凍機械
- 書面申請 11,000円
- 電子申請 11,600円
丙種化学(液化石油ガス)、丙種化学(特別試験科目)、第三種冷凍機械
- 書面申請 9,800円
- 電子申請 10,300円
受験申込方法
【受験料】の項目でもお伝えしたように、申込方法は書面申請と電子申請の2種類があります。
書面申請
まずは、受験案内書や願書を入手します。
最寄りの試験事務所から郵送されます。
発送先を明記した返信用封筒と必要事項を記入したメモを同封のうえ、最寄りの試験事務所に発送しましょう。
封筒は角2封筒 332㎜×240㎜です。
返信用封筒に貼付する切手は1部140円です。
メモには以下のことを明記しましょう。
- 受験する試験の種類
- 受験案内書、願書の必要部数
- 連絡先電話番号(掲載電話など、日中確実に連絡が取れる電話番号)
電子申請
電子申請するには、まずメールアドレスなどの事前登録を行います。
そうしたら、事前登録完了の確認メールが届きます。
確認メールには個人のユーザIDや本申込のURLなどが記載されていますので、そこから本申込します。
本申込したら、申込内容の確認メールが届きます。
受験手数料付の口座番号が記載されています。
まとめ
以上「高圧ガス製造保安責任者」について、紹介しました。
高圧ガスはいろいろな分野で使われています。
この資格は9種類に分けられています。
ご自身がどの分野の高圧ガス製造保安責任者を受験したいのかを、よく考えながら選んで受験しましょう。
この資格保有者はこれからも需要があります。
取得したい方は「高圧ガス保安協会」の公式サイトを参考に、勉強してみてくださいね。
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