社会福祉士試験について

社会福祉士試験について

社会には、身体や精神の障害をもつ人や、高齢、貧困といった理由から日常生活を送るのが困難な人たちがいます。
そういった人たちに、福祉面から問題解決を支援するのが社会福祉士です。
ソーシャルワーカーとも呼ばれます。

適用する仕事

具体的な仕事内容には、次のようなものがあります。

相談業務

社会福祉士の主な仕事ともいえます。
相談によって、相手が抱えている問題を分析し、必要な支援内容を検討します。
介護保険や補助金制度、福祉施設への入居の仕方、介護サービスの利用方法といった、相手に合った支援サービスや福祉施設の提案をします。

福祉サービスを説明する保健士

支援サービスの提供・管理

利用している人が支援サービスを利用しやすいように、手続きを行なったり環境を整備したりするのも社会福祉士の仕事です。
サービス提供の後も、相談内容の記録であったり、サービスの管理、福祉関係の法律への対応といったことを行います。

関係機関との連携・サービスの見直しや調整

行政や医療の機関と連携を図って、利用者が十分な支援サービスを受けられるようにするのも社会福祉士の仕事です。
提供している支援サービスが、利用者にとって最も合ったものであるとは限りません。
利用者の状況を見て、サービスの見直しや調整も行います。

介護業務

介護施設などに勤務しているとき、社会福祉士が介護スタッフを兼任する場合もあります。
食事や入浴といった日常生活の介護や、掃除や洗濯などを担当することもあります。

おおよその年収とキャリアパス

厚生労働省の調査によると、社会福祉士の平均年収は正規職員の場合、男性が454万円で女性が380万円です。
年代で分けると、次のように推定されています。

20代:270万円から338万円
30代:371万円から423万円
40代:476万円から533万円

また、初任給は年収で大卒で270万円から310万円程、短大卒や専門学校卒の場合は、年収で230万円から280万円程です。

OKマーク

社会福祉法人のキャリアパスの一例です。

  1. 初任者・介助院:1年から5年。専門性、社会性を養う基礎的な研修です。
  2. 初任者・介護士:1年から3年。こちらも、専門性や社会性を養う基礎的な研修です。
  3. 現任者・サブリーダー:3年から5年。研修が発展的なものになります。
  4. リーダー:5年から10年。専門的な研修です。
  5. 管理者・主任:マネジメントに関する研修です。
  6. 管理職・課長:運営管理研修、部下指導教育研修です。
  7. 施設長:施設経営に関する研修です。

認可団体

厚生労働省

社会福祉士は国家資格です。
認定団体は厚生労働省です。

受験条件

社会福祉士試験は、第1号から第12号までのいずれかの条件を満たした者でなければ受験出来ません。
細かい条件は、「社会福祉振興・試験センター」のホームページをご覧ください。

合格率

第34回(令和3年度):合格率 31.1%
第33回(令和2年度):合格率 29.3%
第32回(令和元年度):合格率 29.3%
ここ10年ほどの、第25回から第34回の合格率は、18.8%~31.1%です。

1年あたりの試験実施回数

年に1回です。
毎年2月の第1日曜日に実施されています。

試験科目

試験は19科目の構成です。
出題は五肢択一が基本となる多肢選択形式で、出題は150問、試験時間は240分です。

<共通科目>

  1. 人体の構造と機能及び疾病:7問
  2. 心理学理論と心理的支援:7問
  3. 社会理論と社会システム:7問
  4. 現代社会と福祉:10問
  5. 地域福祉の理論と方法:10問
  6. 福祉行財政と福祉計画:7問
  7. 社会保障:7問
  8. 障害者に対する支援と障害者自立支援制度:7問
  9. 低所得者に対する支援と生活保護制度:7問
  10. 保健医療サービス:7問
  11. 権利擁護と成年後見制度:7問

<専門科目>

  1. 社会調査の基礎:7問
  2. 相談援助の基盤と専門職:7問
  3. 相談援助の理論と方法:21問
  4. 福祉サービスの組織と経営:7問
  5. 高齢者に対する支援と介護保険制度:10問
  6. 児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度:7問
  7. 就労支援サービス:4問
  8. 更生保護制度:4問

共通科目

まずは、共通科目をみてみましょう。

1.人体の構造と機能及び疾病

体調や疾病などの、健康に関することを扱っている科目です。
人の身体について基本的な理解が必要です。
他の科目と重複する部分があります。
人体構造や疾病に関しては覚えなければならないことが多く、身に付けるには時間がかかるところです。

2.心理学理論と心理的支援

近年問題にもなっている、ストレス症状に関わる科目です。ストレス症状はうつ症状などです。
相談者の心理をできる限り正確に把握して、適切な支援をする必要があります。
心理学の基本的理解から、実戦での心理的支援方法が問われます。
心理学用語の暗記が必要で、人間の行動から考える問題などもあって、単語だけではなくその意味を理解する必要があります。
範囲が広く、難しいところです。

3.社会理論と社会システム

福祉の変化してきた過程を知り、相談から利用する福祉サービスを探すときに関わる科目です。
統計に関する出題もあって、苦手な人も多い科目かと思います。

4.現代社会と福祉

福祉サービスは時代と共に変化しています。
生活を改善するには、福祉サービスも最新のものを知ることが必要です。
社会福祉の歴史から、社会福祉制度の現状などが出題されます。
日本だけではなくて、諸外国の福祉制度を問われる問題も出題されます。
出題数が多いので、高い正答率を狙いたいところです。
日頃から福祉に関する報道などに目を通すことを習慣にしておくと、得点に繋がります。範囲が広くて難しい所です。

5.地域福祉の理論と方法

現在の福祉は、地域で協働して創り上げていく制度となってきています。
住んでいる地域の機能やサービスを知るうえで必要な科目です。
個別支援という地域住民の要望を知ってサービスの調整、地域支援という住民を主体とした地域組織化活動の知識が求められます。
災害時の支援などの出題もあります。
現代の地域福祉の抱えている問題や、どういった歴史があって地域福祉の基本的な考え方ができたかなど、出題は広範囲です。
10問出題される科目です。

6.福祉行財政と福祉計画

サービスのお金の流れを知って、税金から補助が受けられるもの、実費が必要なものを知るときなどの金銭面で必要となる科目です。
福祉における財政に関する科目です。
行政、財政、計画の3つのポイントを押さえて対策に取り組むことが必要です。
社会福祉の多々あるサービスの財源などの知識が求められます。
他の科目と横断的に関係していて、他の科目と結びつけて学ぶことで効率的に学べます。

7.社会保障

ここでは、年金、医療、介護、労災、雇用についての知識が問われます。
社会保障は、複数の制度が関わるところがあって、年金、医療、介護、労災、雇用の保障を活用するときや、それぞれの関連性を知りたいときに必要になる科目です。

8.障害者に対する支援と障害者自立支援制度

ここでは、障がいを持たれている方やそのご家族に関わりのある科目です。
障害者総合支援法を基本に障害に関する出題がされ、障がい全般の知識が必要です。
各障害者法の対象者、障がい者手帳については頻出です。
事例問題も出題される傾向です。

9.低所得者に対する支援と生活保護制度

ここは、低所得者に関する科目です。
生活保護制度や、低所得者向けのサービスの知識などの科目です。
生活保護法の概要などの知識が必要です。自立に向けた取り組みの理解などが要点です。

10.保健医療サービス

様々な医療サービスを活用する際の知識です。特に病院を使うときに必要な知識が中心です。
出題範囲が限定的です。過去問を確認することで、出題傾向が見えやすい科目です。保健医療に関する最新のデータも問われることがあります。
事例問題も出題されます。用語の暗記だけでなく、どの場面で該当するかの知識もおさえておきましょう。

11.権利擁護と成年後見制度

人権や財産などのいろんな権利が関わる相談や、成年後見制度に関する知識が必要となる科目です。
高齢者や障がい者にとって、生活上重要な権利に関わる全般の知識が問われます。
憲法、民法、行政法の基本的な知識や、成年後見制度などの知識が求められます。
事例問題も出題されます。実際の援助場面における、法律の解釈を具体的に知っておくことが必要です。

専門科目

次は専門科目をみてみましょう。

1.社会調査の基礎

福祉においても、調査というものは重要です。
調査や統計に関する、専門の人以外には耳慣れない言葉が出てきます。
基礎項目をしっかり学習すると、他と比べると得点を狙いやすい科目です。
量的・質量調査の方法や分析方法関する問題がよく出題されるので、過去問を中心におさえておきましょう。

2.相談援助の基盤と専門職

社会福祉士を規定する基本となる法律や、ソーシャルワークの定義、倫理などが問われます。
社会福祉士の基礎となる知識です。難易度はやや低めです。
事例問題も出題されています。言葉の暗記だけではなくて、意味まで押さえておきましょう。

3.相談援助の理論と方法

ここは、社会福祉士に最も必要な知識といわれています。
出題数も21問と最も多いところなので、重要な科目であることがわかります。
相談者の不安を把握して、支援していくときに役立ちます。
範囲は広くて、援助の展開、援助関係、援助技術などが出題されています。事例問題も多いところです。

4.福祉サービスの組織と経営

社会福祉法人や、NPOなどの福祉組織に関する知識が必要な科目です。
高齢、障がい、児童などの福祉サービスは利用されている方も多いです。
福祉サービスを利用する際に必要なことを扱った科目です。
社会福祉法人に関する制度や組織、運営に関する問題が出題されます。
労働環境の整備に関することも出題されるので、取り組みにくいところではあります。

5.高齢者に対する支援と介護保険制度

高齢者に関する介護保険制度などの知識が問われます。
10問出題され、設問の多くは介護保険制度に関することです。
高齢者の生活実態や、老人福祉法を含む歴史に関することも問題に出ます。

6.児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度

ここは、児童全般に関わる科目です。
近年問題になっている虐待や、児童の権利などが問われます。
児童に関しては、関係法令が多くて対策が難しい科目です。
児童の定義や、児童福祉法といった児童全般に関わる知識が問われます。
時事的な問題としては児童虐待などの出題もあって、最新の児童関係の流れを理解しておくことが重要です。

7.就労支援サービス

ここでは主に、障がい者と低所得者就労に関わることが問われます。

8.更生保護制度

保護観察などが必要とされる方についての科目です。

採点方法と合格基準

・採点方式
試験の問題は全て選択式問題です。

・合格基準
総得点の6割以上を基準として、問題の難易度で補正された点数以上の得点で合格です。
ただし、合格は全科目で得点があった者です。1科目でも0点があると不合格になります。

取得に必要な勉強などの費用

参考書は最新のものを購入した方がいいです。
制度改正やその年の傾向によって、試験内容が毎年変わるからです。
ちなみに、社会福祉士試験の過去問は、公式ホームページで数年分公開されています。

何点か参考書をご紹介いたします。

見て覚える!社会福祉士国試ナビ2023

見て覚える!社会福祉士国試ナビ2023
created by Rinker

出版社名:中央法規出版
商品名:見て覚える!社会福祉士国試ナビ2023
価格:¥3,300(税込)

文章だけではわかり辛い内容を、オールカラーで図式やイラストを使って理解しやすく整理されています。
見やすい・わかりやすい・覚えやすいがモットーの本です。

社会福祉士国家試験のためのレビューブック 2023

社会福祉士国家試験のためのレビューブック 2023
created by Rinker

出版社名:メディックメディア
商品名:社会福祉士国家試験のためのレビューブック 2023
価格:¥5,280(税込)

専門科目と共通科目が1冊にまとまっています。
イラストと図表が豊富なので、イメージに残りやすいです。
最新の法改正や統計数値に対応しています。
福祉職の公務員試験にも活用できます。

受験料

受験料:19370円
登録手数料:4050円
登録免許税:15000円
合格時に登録した場合の合計:38420円

登録に費用が掛かってしまいますが、登録しないと社会福祉士を名乗ることが出来ません。
しかし、登録期限はないので、合格していればいつでも登録できます。

受験申込方法

受験の申込に必要な書類を「ホームページで請求する」か、「郵便はがきで請求する」のいずれかで請求します。
初めて社会福祉士の試験を受けるには、受験の手引の取り寄せが必要です。

ホームページで請求する場合

「公益財団法人 社会福祉振興・試験センター」のホームページを開きます。
第○○回社会福祉士国家試験のページを開きます。
「ホームページで請求する」のところにある『受験の手引』請求窓口をクリックして、初めて受験される方は『第○○回(今回試験)が初めての受験申し込みの方』をクリックして必要な情報を入力します。それで請求ができます。

郵便はがきで請求する場合(ホームページで請求できない場合)

はがきの裏面に「郵便番号」「住所」「氏名」「電話番号」「必要人数(ex.社会福祉士受験の手引1人分」と、必要数等を記入して『社会福祉振興・試験センター』に郵送します。

まとめ

明るい笑顔の女性

理由があって日常生活を送るのが困難な人たちをサポートする、社会福祉士という国家資格についてでした。
試験科目が多いので、勉強には時間がかかる資格だと思います。
それぞれの科目についても、簡単にまとめさせていただきました。
どうぞ、ご参考にしてみて下さいね。

 

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