精神対話士(メンタルケアスペシャリスト)について

精神対話士(メンタルケアスペシャリスト)について

皆さんは「精神対話士」という職業をご存知でしょうか。
カウンセラーでも臨床心理士でもありませんから、どんな職業なのかと思うでしょう。
精神対話士とは、専門的知識と技術に基づく「真心の対話、応対」で心に寄り添い、心の問題を人間の本質からとらえ、精神的な支援を行う専門職です。
この資格はメンタルケアスペシャリスト養成講座を修了し、精神対話士選考試験に合格すると資格が付与されます。
心理職は他にもありますが、精神対話士はどのようなところで活かせるのか、特徴を見ていきましょう。

適用する仕事

精神対話士の仕事は、心のケアを必要としているクライアントの希望の場所まで赴き、対話を通じて相手が希望を見出せるようにケアサポートを行うことです。

心理職というと、精神科医や臨床心理士が思い浮かびますが、これらの職業は精神疾患を患っている患者に対して、薬物療法や心理療法といった医療行為を行うことで、治療していきます。
これに対して、精神対話士は心理療法を行いません。

孤独感や寂しさ、心の痛みを感じているといった、病気になる前の状態の人に対して、寄り添って温かな会話を通して気持ちを受け入れていきます。
患者さんが人生に生きがいを持って、よりよい生活を送れるように精神的な支援を行います。

治療を目的とせず、あくまで心のケアとして傾聴する役割を担います。

現代では、社会に適応できず挫折感を持っている若者や、孤独な高齢者、介護に疲れている人など、心の励ましを必要としている人がたくさんいます。
こうした人たちを対象に、真心を込めて対話をするのが精神対話士の役割です。
傾聴するのは何も室内だけとは限らず、ときには散歩しながらも行えます。

しかし、傾聴という行為は素人ではなかなか難しいです。
だから、専門の講座を受けてスキルを身に着けなければならないのですね。

対話のイメージ

おおよその年収とキャリアパス

精神対話士の資格を取得したら、メンタルケア協会から精神対話士としてクライアント(対話相手)へ派遣されます。
派遣先は個人宅、病院、学校や高齢者施設被災地などさまざまあります。

原則として週に1回、同じ曜日の同じ時間に訪問し、80分間の対話を行います。
その1回あたりの報酬が6,550円なのです。
派遣先には週1回、同じ曜日・同じ時間帯とシステムが決まっていますので、具体的に収入を試算してみるとこうなります。

試算
クライアント数1ヶ所 1回4,192円×週4回
=16,768円
クライアント数10ヶ所 16,768円10ヶ所分
=167,680円

実際、精神対話士の平均給与は18~20万円だそうです。
精神対話士を単独として活動していきたいなら、高給は望めません。
どれだけクライアントを獲得できるかにかかっています。
精神対話士として就職したいなら、その後のキャリアアップを見越して別のメンタルヘルス関連の取得を目指すのも賢明でしょう。

ちなみに、この精神対話士のスキルや資格は、看護師の職業の方にはメリットになります。
なぜなら、精神対話士の資格を取得することで、看護師の給料に能力給が上乗せされるからです。

それに、実際の職務としても活かせます。
看護師として働く中で不安や悩みを抱える人に寄り添い、治療や手術に臨む患者さんをきめ細かくサポートすることが可能です。
看護師の人にとっては、精神対話士の資格は強みになるでしょう。

認可団体

一般財団法人 メンタルケア協会

精神対話士(メンタルケアスペシャリスト)の資格を主催している団体は「内閣府認可 一般財団法人 メンタルケア協会」というところです。
1993年(平成5年)9月1日に、慶応義塾大学医学部出身の医師たちにより設立しました。

協会の連絡先

団体名:一般財団法人メンタルケア協会
英文表記はMental Csre Association(MCA Japan)

〒150-0001
東京都渋谷区神宮前2-5-8 カーデ青山201

電話:03-3405-7270(代表)
資料請求専用電話:03-3405-7282

FAX:03-3405-8580
E-mail:mca@mental-care.jp

事業内容

  • 心の問題に関する調査や研究
  • 心の問題に関する講習会の開催
  • 精神対話士の認定やその派遣
  • 心の問題に関する書籍の出版
  • 日本精神対話学会の支援

など

受験条件

年齢・学歴・職歴不問です。
会社員、医療・介護従事者、教員、主婦、学生など、どなたでも受講可能です。

だれでも

合格率

資格を取得するには、まずメンタルケア・スペシャリスト養成講座の基礎課程と実践課程を受講します。
これらの課程はレポートを提出して修了になります。
その合格率は平均で約80%です。

しかし、精神対話士の資格を取得するには、そこから精神対話士選考試験に臨まなけばなりません。
選考試験での合格率は約15%と低いです。

理由は10名前後で行う集団面接と、個人面接に合格しなければならないからです。
どのような内容の面接を行なっているのかは不明ですが、依頼者の心のケアを行う対話の技術は、誰でも簡単に実践できるものではないという意見もあります。
それが試験の合格を難しくしている要因とも考えられます。

1年当たりの試験実施回数

会場によって、回数が異なります。

札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡は年2回(春期・秋期)開催です。
新潟、金沢、広島は随時(原則として年1回)開催です。

開催日はすべて土・日・祝です。

試験科目

それぞれの受講内容や試験内容を見てみましょう。

基礎課程

人間の生(生きる)の問題を、以下の3つの視点からとらえた構成になっています。

  1. 医から見る人間探求(人間の心と体はどうなっているのかを学ぶ)
  2. 宗教から見る人間探求(仏教やキリスト教の「死生論」に学ぶ)
  3. メンタルケアに関する対処論(生命倫理と看護と介護などより学ぶ)

幸のイメージ

実践課程

心のケアの支援者として活動するために、こちらの課程では実際にクライアントとのやりとりをロールプレイを通して学びます。
メンタルケアの手法についてや、実際に活動している精神対話士の体験を聞くなどといった講義もあります。

精神対話士選考試験

試験内容は集団面接個人面接です。

採点方式と合格基準

こちらもそれぞれあります。

基礎課程

  • 基礎課程全15回のうち、10回(3分の2)以上出席すること
  • 試験委員によるレポート採点で合格と判定されること。ただし、レポート作成には、受講終了時から1週間ほどの余裕を設けています。

実践課程

  • 実践課程全7回のうち、5回以上出席すること
  • 試験委員によるレポート採点で合格と判定されること

精神対話士選考試験

試験の合否は、2回の面接(集団面接と個人面接)の他に「基礎課程」と「実践課程」の修了レポートの評価も判定の材料になります。

取得に必要な勉強などの費用

「精神対話士」や「メンタルケア」についての参考書が、公式サイトにて出版しております。
「内閣府認可 一般財団法人 メンタルケア協会」の「書籍・CD」の欄から購入できます。

書籍名 出版社名 価格(税込)
精神対話士ハンドブック 慶応義塾大学出版会 2,750円
メンタルケア論 慶応義塾大学出版会 2,520円
メンタルケア論2 慶応義塾大学出版会 2,520円
精神対話論 慶応義塾大学出版会 2,720円
いのちを癒す「心のとまり木」 KKベストセラーズ出版 1,470円
精神対話士という生き方 TAC出版 1,540円
精神対話士の人の話を「聴く」技術 宝島社 810円
精神対話士の「ほめる」言葉 宝島社 1,250円
精神対話士の人の気持ちがわかる技術 宝島社 1,430円

受験料

基礎課程:136,200円(税込・シラバスとテキスト代含む)
実践課程:62,800円(税込・シラバスとテキスト代含む)
精神対話士選考試験:無料

再受験を希望する場合は、実践課程の再受講が必要となります。

お金の写真

受験申込方法

申込方法は公式サイトの「受講ガイド」の欄に記載されています。

1.資料請求

まずは、電話もしくは協会ホームページから資料請求を申し込みます。
講座案内パンフレットや申込用紙が郵送されます。

2.受講申込み

受講の申込方法はオンライン、FAX、郵送の3通りあります。

オンラインで申し込む

お問い合わせ・お申込みフォームより、申し込みます。

FAXで申し込む

申込用紙に所定項目を記載し、FAXにてメンタルケア協会まで送信します。

FAX番号:03-3405-8580

郵送で申し込む

こちらも申込用紙に所定項目を記載し、メンタルケア協会まで郵送します。

郵送先
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前2-5-8 カーデ青山201
一般財団法人メンタルケア協会宛

※封筒の表に「基礎課程受講申込書在中」または「実践課程受講申込書在中」と記載

3.受講料の入金

受講料は銀行振込、またはクレジットカード決済のどちらかが選べます。
クレジットカードはVISA、MASTER、JCB、AMEX、ダイナースが使用できます。

銀行振込先
三菱UFJ銀行 表参道支店 普通預金 口座番号2105026
名義 一般財団法人メンタルケア協会

まとめ

福祉士の写真

今回は対話と傾聴を重視した「精神対話士」という心理職について、お伝えしてきました。
お読みいただいて、あまり高収入は見込めないとがっかりしたかもしれません。

けれども、需要はあります。
自然災害の増加や社会環境の変化により、精神的問題を抱えた人は今後増えていくと予想されます。
それに看護師の人数が不足している場合も、傾聴のスキルがあるこの資格は役に立つでしょう。

しかし、資格を取得するには、受講料も時間もかかります。
精神対話士として地位を確立し、生計を立てようと思っている人は、他の心理系資格を取得して知識の幅を広げるのも方法の1つです。
もちろん看護師として働いている人にとっては、プラスαになります。

このような活かし方で「精神対話士」を受講してみてはいかがでしょうか。

 

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