水先人は「みずさきにん」と読みます。
水先人とは、船長の助言者という立場で、船舶の操縦を指揮して船や港の安全を守る仕事をする人のことです。
多数の船舶が行き交う港や海峡、内海において船舶を安全にかつ効率的に導く専門家です。
日本では職務を行う区域(水先区)ごとに、水先人の免許が必要になります。
水先人は国家資格です。
どのように取得していくのかを、みていきましょう。
Contents
適用する仕事
港の入出港や航海にはさまざまなルールがあります。
それらを順守することや安全な航行をサポートするのが水先人の仕事です。
船長の要請を受けた水先人が、船長のアドバイザーとしてその船に乗り込み、目的地まで導きます。
水先人は船長から乗船の要請を受けたときは、正当な理由がない限りはそれを断ってはならないという法律が存在しています。
これは水先業務が船舶交通と水域の安全を守るうえで、極めて公共性の高い仕事であることを示しています。
ただし、水先人が操船を指揮して万が一トラブルが発生したとしても、責任を負うのは船長になっています。
次は具体的な業務の流れをお伝えしていきます。
- 水先業務要請の受付(船舶代理店や船舶会社から水先人会の事務所に連絡が入る)
- 要請船に向かう
- 要請船に乗船(パイロットラダー等の乗下船設備を使用して要請船に乗り込む)
- 船長との情報交換(船長から船舶の性能など操船に必要な情報を入手し、船長に対して水域の状況や航行計画を説明する)
- 航行業務(所要の報告や情報入手を行いながら、針路や速力などを船長にアドバイスする)
- 入港・着岸業務(船舶の主機操作や曳舟への押し引きの指示を頻繁に行なって、船舶の前後位置や着岸姿勢の制御に集中する)
着岸後、船舶をつなぎ留めたら業務は終了です。
水先人は航海士のように何日も海上にいるのではありません。
通常のサラリーマンのように、事務所に出社し、事務作業をして、定時に帰宅するのが一般的です。
おおよその年収とキャリアパス
水先人の年収は航海士より高いといわれています。
水先人の年収
水先人の平均年収は900万円程度といわれていて、非常に高水準となっています。
これは水先人が国家資格で非常に難解な職業であるため、他の業界より高めの年収なのです。
ちなみに、航海士の平均年収は600万程度だそうです。
水先人の資格は3級・2級・1級と程度が分かれています。
1級になりますと、年収1,000万~2,000万円の人もいます。
この層は50代のベテランが多いです。
なぜこんなに年収が高いのかは、難易度の高い国家資格であり、仕事内容もハードだからです。
それに独立して個人事業主になる人も多いため、高収入に結びつくからだといわれています。
他の理由として、水先人になるにはTOEICの点数も必要になるため、英語の基礎的な学力もつけなければなりません。
水先人のキャリアパス
3級の水先人を対象にしたキャリアパスが載っていましたので、そちらをご紹介します。
まず、3級の水先人は2年間の業務経歴がついた時点で、法律上は2級の水先人免許の受験資格が得られます。
しかし、3級水先人としての業務範囲を全て独立して行えるようになるのは、だいたい5、6年はかかります。
それでも2級への受験が決まると、約4カ月間の進級のための養成課程を履修したうえで試験に臨みます。(この間は水先業務に就けないため収入はありません)
試験に合格して2級の水先人の免許を取得すると、資格の上では2級水先人となります。
しかし、前述のように3級水先人として業務範囲が無制限になるには5、6年掛かりますので、水先人会の中では引き続き3級水先人としての業務を行いつつ、無制限となったら2級水先人としての業務範囲の習熟に移ります。
2級の水先人から1級へ進級する過程もほぼ同様です。
3級の水先人から1級へ昇進するには、早い者でも12~13年、業務範囲が無制限になるまでには15年程度も必要になります。
かなり時間が経ってしまいますが、健康で大きな事故もなければ、72歳程度まで水先人としての業務は続けられるだろうと考えられています。
認可団体
認可団体は国土交通省です。
受験条件
水先人の資格は3級・2級・1級の3段階あります。
3級
- 3級海技士(航海)または、これより上位の資格免許を取得した方 ※この条件は2級・1級の場合もあてはまります
- 沿海より遠くの乗船履歴で、航海士以上または実習生として総トン数1,000t以上の船舶への1年以上の乗船経験があり、登録先水先人養成施設で三級水先人養成過程(2年6ヶ月)を修了した者
2級
- 3級海技士(航海)または、これより上位の資格免許を取得した方
- 沿海より遠くの乗船履歴で、一等航海士以上として総トン数3,000t以上の船舶への2年以上の乗船経験があり、2級水先人養成過程(1年6ヶ月)を修了した者
- 3級水先人として2年以上実務経験を積んだ上で、登録先水先人養成施設で2級水先人養成過程(6ヶ月)を修了した者
1級
- 3級海技士(航海)または、これより上位の資格免許を取得した方
- 沿海より遠くの乗船履歴で、船長として総トン数3,000t以上の船舶への2年以上の乗船経験がある方
- 2級水先人として、2年以上の実務経験を積んだ方
合格率
近年、正式なデータが公表されていませんので何とも言えませんが、受験者数は毎年100人ほどといわれていて、合格率は80%程度だそうです。
ですが、受験条件のハードルが高いため、簡単な試験ではありません。
1年当たりの試験実施回数
試験は1年に1回実施されます。
一次試験と二次試験があります。
一次試験は5月中旬~6月上旬ごろの2日間に、東京都で行われます。
二次試験は11月から翌年1月までの指定された日に、地方運輸局所在地で行われます。
試験科目
試験は一次試験に身体検査と筆記試験、二次試験に口述試験があります。
筆記試験
- 海難事例
- 海上衝突予防法
- 港則法
- 港湾知識
- 海上交通安全法
- 水先法
- 操船知識(運用)
- 気象知識
口述試験
- 気象・海象知識
- 水深、距離、障害物、航路標識などの知識
- 操船知識
- 国際通信信号知識(国際信号旗など)
- 条例、規則
- 英会話
- 一次試験範囲の応用問題
採点方式と合格基準
不明
取得に必要な勉強などの費用
水先人への勉強方法は養成課程を履修することです。
その支援事業を一般財団法人「海技振興センター」で行なっています。
養成にかかる具体的な費用は、残念ながらわかりませんが、該当する者にはセンターの規定にさだめられた養成手当をもらうことができます。
3級水先人の養成支援対象者
- 乗船実習中の支援(三等航海士の実歴がない者)乗船実習中は賃金として、月額40万円程度、下船中:月額25万円程度
- 乗船実習期間を除く養成中の支援:月額25万円
2級水先人の養成支援対象者
- 5大水先区希望者:月額25万円
- 中小水先区希望者:月額40万円
1級水先人の養成支援対象者
- 5大水先区希望者:月額25万円
- 中小水先区希望者:月額40万円
ただし、経済的支援を受けるには、「海技振興センター」で実施する水先人養成支援対象者選考試験に合格しなければなりません。
なお、水先人は乗船する船の多くが外国船になることが多いため、英会話の能力も必要です。
面接試験での「英会話」では、3級でTOEICのスコア500点、1級の場合は600~645点程度の能力が必要になります。
TOEICの勉強法に関しては、専用の参考書や問題集が2,000~3,000円程度で販売されています。
受験料
身体検査:3,450円
筆記試験:9,700円
口述試験:11,900円
受験申込方法
身体検査・筆記試験・口述試験を受験し、合格すると3級水先人になることができます。
募集や詳細は「海技振興センター」のWEBページをご確認ください。
なお、申し込むには、提出書類があります。
身体検査と筆記試験
:受験申請書、写真を国土交通省海事局海技資格課水先係に提出
口述試験
:受験申請書、履歴書、戸籍謄本または抄本、海技免状の写しなどを、受験水先区を管轄する地方運輸局海上安全環境部に提出
まとめ
水先人とは、簡単にいうと船舶の車庫入れをする仕事です。
大型船舶の入出港を行う船長のアドバイザーとして、船内で指揮を執り、航行から離着岸までを行います。
日本では職務を行う区域(水先区)ごとに、水先人の免許が必要になります。
2022年では34の水先区に640人の水先人がいます。(1級529人、2級78人、3級33人)
そのうち女性は12人です。
水先人になるには、まずは3級を目指しますが、乗船経験が必要になるので受験資格を得るのに時間がかかります。
また、養成課程にも入り、履修しなければなりません。
さらには、面接試験で英会話が課せられるので、英語力も身に付けなければなりません。
無事に水先人になるには、いくつかの壁を乗り越えなければなりませんが、水先人の魅力は長く働けて、給料も高いことです。
その額は航海士よりも高いといわれています。
水先人は海や船が好きで、仕事としても携わりたい人はもちろん、冷静で注意深い判断力がある人や体力に自信がある人などにおすすめな仕事です。
海や船に関する職業に就きたいと思う人は「水先人」という職業も、選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
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