酸素欠乏危険主任者とは、酸欠の恐れがある現場で指揮や監視ができるようになる国家資格です。
そのような現場では、事業者からこの資格保有者を選任するよう決められています。
この「酸素欠乏危険作業主任者」は酸欠の危険がある現場で適用されます。
似たような資格に「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者」がありますが、これは「酸欠+硫化水素」の恐れがある現場で適用される資格です。
今回は、酸欠のみの現場で指揮や監視をする酸素欠乏危険作業主任者のみに焦点を当てていきます。
「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者」のことも後に出てきますので、どうぞ最後までお読み下さい。
Contents
適用する仕事
酸欠作業主任者の役目は、職場で酸素欠乏症を起こさないようにすることです。
酸欠と仕事
建設業や製造業では、酸素欠乏危険場所と呼ばれる場所での作業が多いです。
なぜなのかは、マスクが関係してきます。
酸素欠乏症とはいわゆる酸欠と呼ばれる症状のことです。
閉鎖された空間などで空気中の酸素濃度が18%未満に低下し、その空気を吸うことによって症状が認められる状態のことです。
製造業では衛生上、マスクをつけることも多いです。
マスクはウイルスや粉塵から守ってくれる効果がありますが、呼吸にとってはマイナスな面もあります。
マスク着用時は自分が吐いた空気を吸うことになりますので、二酸化炭素を多く含んだ空気を取り込むことになります。
また、マスクをしていると無意識に口呼吸していることもあり、呼吸も浅くなります。
こうした理由からマスク酸欠やかくれ酸欠に陥り、慢性的な片頭痛、イライラ、集中力の低下、肩コリなどの症状が起きやすくなります。
製造業だけでなく、建設業でもマスクをしていた場合、同様のことが起きます。
衛生管理や汚染防止のために行なっているマスク着用が、健康に思わぬ被害をもたらすことがあるのです。
こうした健康被害が起きないように、職場の空気を測定したり、指揮したりする管理者が必要なのです。
酸素欠乏危険作業主任者の仕事内容
酸欠の危険がある作業のことを第一種酸素欠乏危険作業ともいいます。
第一種酸素欠乏危険作業に係る酸素欠乏危険作業主任者の主な仕事内容は、次のとおりです。
- 作業に従事する労働者が酸素欠乏の空気を吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮する
- その日の作業を開始する前や、作業に従事するすべての労働者が作業を行う場所を離れた後再び開始する前、そして労働者の身体や換気装置などに異常があったときは、作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を測定する
- 測定器具、換気装置、空気呼吸器など、労働者が酸素欠乏症にかかることを防止するための器具または設備を点検する
- 空気呼吸器などの使用状況を監視する
このように、酸素欠乏危険作業主任者は自分自身の命や健康を含めて、最優先に判断して行動することが求められる仕事なのです。
それに、資格名に「~作業主任者」と掲げていることから、事業者は労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令の定めるものについては、免許を受けた者または技能講習を修了した者のうちから作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮を行わせなければなりません。
これは労働安全衛生法という法律で求められています。
労働安全衛生法とは、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的としています。
資格を保有する管理者がいないと、現場がストップすることもあり得るのです。
おおよその年収とキャリアパス
年収は請け負っている会社によって異なります。
トンネル工事や下水道などでの作業が中心でしたら年収は500万~600万円ほどですし、それ以外の建設業や企業でしたら300万~400万円台後半です。
それに加えて、有資格者は資格手当が支給される場合が多いです。
特殊なエリアの作業にもなるため、危険手当も支給されるかもしれません。
そうした手当てが年収に反映していきます。
酸素欠乏危険作業主任者は、建設業や製造業(酒やしょうゆなどの食品を発酵させる場所など)、下水道のメンテナンス業などで需要があります。
有資格者は安全対策や作業指揮などを行う責任者として、活躍できます。
資格がないと作業自体がストップしてしまう現場もありますので、資格保有者は優遇されるでしょう。
認可団体
厚生労働省
受験条件
酸素欠乏危険作業主任者の資格は、講習会に参加することで得られます。
満18歳以上の方であれば、どなたでも受講できます。
合格率
合格率はほぼ100%といわれています。
試験といっても講習で学んだことでの確認テストのようなものなので、真面目に講習を聞いていれば合格できるということです。
1年当たりの試験実施回数
講習会を実施している機関にもよりますが、1ヶ月に1回のペースで行われているところが多いです。
受講日程は3日間です。
講習の実施場所は、都道府県の労働局長登録教習機関です。
試験科目
講習会は学科と実技があります。
学科講習
- 酸素欠乏症と救急蘇生に関する知識
- 酸素欠乏症の発生の原因と防止措置に関する知識
- 保護具に関する知識
- 関係法令
- 修了試験
実技講習
- 救急蘇生の方法
- 酸素の濃度の測定方法
- 修了試験
採点方式と合格基準
講習会では修了試験が行われますが、あくまで知識が定着しているかを確認するためのものであって、資格取得希望者を振り落とすためではありません。
真面目に講習を受けて試験に臨めば、ほぼ問題なくクリアできるでしょう。
講習中、重要事項はアンダーラインを引くといったポイントを言ってくれますので、聞き逃さないようにしましょう。
取得に必要な勉強などの費用
勉強は講習会のみでも良さそうですが、おすすめのテキストがありますのでご紹介します。
- 発行元:中央労働災害防止協会
- 商品名:酸素欠乏危険作業主任者テキスト 改訂第5版
- 価 格:¥2,310(税込)
こちらのテキストは酸素欠乏症等の防止に関する最新の知見を集め、酸素欠乏危険作業主任者として必要な知識を網羅しています。
酸素欠乏および硫化水素の発生・原因のほか、保護具などについても詳しく解説しています。
改訂第5版では、統計数値を最新のものに更新してあります。
受験料
こちらは受講料や教材費を明記します。
これらは教習機関により、異なります。
なお、実際の教習機関は「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習」として、実施されているところが多いのでそちらを受けて下さい。
講座内容は「酸素欠乏危険作業主任者」と同じです。
関東の受講料 | |||
地域 | 合計 | 受講料 | テキスト代 |
埼玉県 | 23,210円 | 20,900円 | 2,310円 |
東京都 | 23,210円 | 20,900円 | 2,310円 |
神奈川県 | 19,130円 | 16,820円 | 2,310円 |
千葉県 | 19,910円 | 17,600円 | 2,310円 |
茨城県 | 17,710円 | 15,400円 | 2,310円 |
群馬県 | 21,010円 | 18,700円 | 2,310円 |
栃木県 | 20,460円 | 18,150円 | 2,310円 |
受験申込方法
受講の申込方法も各教習機関によって異なります。
受講したい教習機関を調べて、申し込みましょう。
まとめ
今回は酸素が欠乏しやすい危険箇所で作業する時に配置される「酸素欠乏危険作業主任者」について、お伝えしてきました。
建設業や製造業などではマスクによる酸欠が起きやすいです。
そうしたマスクによる酸欠からくる健康被害を防ぐために配置されるのが「酸素欠乏危険作業主任者」です。
自分自身を含めて命と健康を最優先にして、空気を測定して労働環境を整えていくのが務めです。
資格を得るには、講習を受ける必要があります。
しかし、内容は易しく、修了試験も資格希望者を落とすためのものではありません。
注意していただきたいのは、「酸素欠乏危険作業主任者」のみの講習会はあまり無いということです。
その場合は「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者」の技能講習を受講しましょう。
講座内容はほぼ同じです。
上記のような職場で働いている人は「酸素欠乏危険作業主任者」を取得してみましょう!
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