今回はファッションビジネスに必携の資格をご紹介します。
「繊維製品品質管理士」とは、消費者に供給される繊維製品の品質や性能の向上を図ったり、繊維製品の品質について消費者からクレームが出ないようにするために、それらの製品の製造や販売を行う企業のなかで活躍したりするスペシャリストのことです。
品質管理の担当だけでなく、企画・開発・営業などの他部門においても取得するのが奨励されている資格のようです。
その知識やスキルはアパレル業界での実際の業務に活かすことができます。
ファッション業界を希望している人は、ぜひご覧ください。
Contents
適用する仕事
繊維製品品質管理士の取得者に適している仕事といえば、やはりアパレル業界でしょう。
商品企画、営業、品質管理、生産管理が受験者数のなかでも多い職種です。
現在アパレル企業は、衣類の製造や販売をまとめて行なっている場合が多いため、品質や性能の向上を目標としています。
そのような事情があるため、繊維製品品質管理士の資格を持っている人は、品質や性能の向上に取り組んだり、消費者の保護を行なったりする能力があるとみなされ、最終的には企業の信頼性につなげられます。
繊維製品品質管理士は繊維製品を扱う業界の必携の資格として、毎年2,000人を超える受験者がいるそうです。
資格取得者で最も多い業界はアパレルですが、その他の分野でも活躍しています。
通信販売
通信販売においても、アパレル商品は盛んに販売されています。
ところが、通販では消費者がカタログやインターネットなどを見て購入を決めるので、消費者が商品の実物を見たり、触ったりすることができません。
となると、ひとたび品質上の問題が起きると消費者の信頼を損ねてしまうことにもつながります。
したがって、通販業界では、品質においてはとりわけ神経をとがらせているので、マーケティング部門や品質保証部門では「品質」の位置づけが高いです。
よって、繊維製品品質管理士は重宝されます。
通販業界での繊維製品品質管理士は、マーチャンダイジング、品質保証、企画、営業の部門で活躍しています。
商社や卸
商業の機能を果たす商社においても、海外生産が増えてきたことから、生産に係わる知識が必要になってきました。
この業界では、上記が繊維製品品質管理士を受験する動機のようです。
染色整理業やテキスタイル
染色整理業とは、染色加工、および仕上げ加工を行う業種のことで、用途に適した製品に仕上げるための整理をすることです。
テキスタイルとは、テキスタイルメーカーのことで、ファッション・アパレル商品に使われる織物やニットなどの生地(テキスタイル)の企画・生産を行う業種です。
そうした業界の企業では、繊維製品品質管理士を取得して、対等での得意先との品質問題のやりとりや商談を円滑に進めているそうです。
このような取引のうえにて、繊維製品品質管理士の取得の必要性が高まっています。
素材メーカーや紡績
素材メーカーや紡績業界でも繊維製品品質管理士の需要があります。
こちらの業界では、繊維の専門知識や周辺の幅広い知識を身に付けるために、営業職の方に繊維製品品質管理士の取得を奨励しているところもあります。
繊維製品品質管理士の制度が素材メーカーの繊維事業を支えるのに、大いに役に立つからです。
クリーニング
衣料品は生産され、購入してもらい、購入者に消費されてからクリーニングに出されます。
となると、クリーニングの段階で消費性能上の問題が出てくる可能性もあります。
その際、たとえ衣料品の製造工程に問題があった商品でも、クリーニング業者は品質トラブルに巻き込まれる場合もあります。
もし、クリーニング業界に繊維製品品質管理士保有者がいたら、繊維製品品質管理士の協会メンバーに入って繊維業界の関係者と相談して品質トラブルを解決するキーパーソンとなり得るでしょう。
このように繊維製品品質管理士はいろいろな分野で、活躍できます。
おおよその年収とキャリアパス
繊維製品品質管理士の年収は、勤務先の企業、役職、雇用形態、あるいは季節によっても差が出ますが、400万~800万円であるといわれています。
社員に繊維製品品質管理士の資格取得を推奨している企業もあるといわれています。
また、この資格は資格手当や昇格などの人事制度に採用することがあるともいわれ、資格保有者を高く評価しています。
繊維製品品質管理士の資格に合格すれば、品質管理や販売だけでなく、製造や商品開発、服に関するクレームの対応など、ファッションビジネスにおいて幅広く活躍できます。
繊維のプロとも言われるだけの資格だと思いますので、独立も難しくないでしょう。
素材や縫製、流通方法の選択、消費者への注意喚起の方法など繊維に対する知識があるなら、誠実なブランド経営ができると思います。
認可団体
繊維製品品質管理士の資格を主催している団体は「一般社団法人 日本衣料管理協会」というところです。
昭和46年12月に協会が設立されました。
そして、平成23年4月に一般社団法人へ移行されました。
所在地
〒105-0011
東京都港区芝公園2-11-13-205
電話:03-3437-6416
FAX:03-3437-3194
E-mail:jasta@mtb.biglobe.ne.jp
活動内容
- 資格認定(衣料管理士、繊維製品品質管理士)
- 調査や研究(衣料の使用実態調査など)
- テキスト刊行
- 研修
- 情報収集や提供
受験条件
学歴や年齢を問わずに、どなたでも受験することができます。
合格率
2021年:16.7%
2020年:19.8%
2019年:23.4%
1年当たりの試験実施回数
試験は年に1回、7月の中旬に行われます。
試験会場は年度によって異なりますが、東京、名古屋(愛知)、京都、福井、倉敷(岡山)、福岡の大学などで実施されます。
試験科目
試験科目は短答式試験(基礎知識を問う)と記述式試験(応用能力を問う)の2分野出題されます。
短答式試験
繊維に関する一般知識
1.繊維の種類と性質
2.糸、布地などの種類・製造・性質
3.染色・加工
家庭用繊維製品の製造と品質に関する知識
1.衣料品などの企画・設計、製造
2.衣料品などの要求項目と消費性能および試験法
3.品質管理と品質保証
家庭用繊維製品の流通、消費と消費者問題に関する知識
1.消費者行動とその調査方法
2.消費者問題と消費者政策
3.経済の変化と衣料の流通・消費
4.衣料品などの消費と消費者苦情、環境問題
記述式試験
事例
事例の試験とは、繊維製品の品質や性能に関する消費者の苦情の発生を未然に防止するための製品企画や品質管理に関する応用能力を問う
論文
社会や繊維産業の現状を理解したうえで、繊維製品品質管理士として必要な見識を問う
採点方式と合格基準
「事例」の評価は、苦情発生原因の究明、再発防止など問題解決の的確性に主眼をおきます。
「論文」の評価は、論点の的確性や内容の深さ、および論旨が一貫しているかをみます。
合格基準は短答式・記述式それぞれ、100点満点中60点です。
つまり、1回の試験で5科目一気に合格できなくても、段階的に科目を合格させることができます。
しかし、この制度は科目が合格した次の年から数えて、3年間は有効という期限つきです。
取得に必要な勉強などの費用
協会から試験対策に適したテキストが販売されています。
短答式試験の受験テキスト
『新訂4版 繊維製品の基礎知識シリーズ』 5,610円
記述式試験(事例)の受験テキスト
『繊維製品の品質問題究明ガイド-消費者苦情の原因究明・再発防止策-』 4,180円
TES(繊維製品品質管理士)試験の試験問題集
『過去3年間のTES試験問題(解答例付)2019年~2021年度分収録 1,980円
受験料
初受験の人:14,300円
継続受験の人:11,000円
免除判定申請料:6,600円(「繊維に関する一般知識」科目の免除判定を希望する人のみ)
合格者のみ、繊維製品品質管理士の登録も行います。
登録時の経費は12,100円です。
受験申込方法
まずは、繊維製品品質管理士の公式サイトを開きましょう。
繊維製品品質管理士(TES)試験の実施要項のページ下に、「資料のお申込みはこちらから」というボタンがあります。
そこから願書を申し込みます。
あとは受付期間内に願書を提出します。
詳細は繊維製品品質管理士のサイトを確認するか、認可団体へお尋ねください。
まとめ
今回はファッションビジネスに関する資格である「繊維製品品質管理士」をお伝えしました。
繊維製品を専門に、その品質を維持・向上に責任を果たせる人物であることを証明する資格です。
資格保有者はアパレル業界のみだけでなく、商社や素材メーカー、クリーニングなどさまざまな場所で活躍しています。
こちらの試験は受験条件はないですが、記述式試験があるため合格率は低めです。
しかし、公式サイトからテキストが販売されていますので、それらを入手して対策しましょう。
こちらの資格は仕事の幅が広げられ、就職や転職、人事評価でも有利になるといわれています。
アパレル業界で働きたいなら、こちらの資格も検討してみてはいかがでしょうか。
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