建築関係の仕事は危険な面があるため、いろいろな資格が設けられています。
今回は「足場の組み立て等作業主任者」という資格で、これは足場の組み立てや解体、変更の作業に関わる業務に役立ちます。
この資格は高いところでの作業も多い建築業で、足場からの転落や墜落による労働災害を防ぐためにあります。
この資格は技能講習を受講し、修了試験に合格すれば得られます。
建築関係に勤めている人は、ぜひ参考になさってください。
Contents
適用する仕事
足場の組み立て等作業主任者とは、労働安全衛生法に定められた作業主任者の1つである国家資格です。
労働安全衛生法とは、労働者の安全と衛生についての基準をさだめた日本の法律です。
仕事内容として、建築や解体工事、屋外広告の設置、イベントの会場の設営といったところで作業員が安全に作業するために欠かせない仮設の足場の組み立て、解体または変更に際して、労働災害の防止などを行う現場の指揮・責任を務めることです。
現場には高さ5m以上の構造の足場が設置しているところもあるため、そうした指揮をとる人が必要なのです。
足場の組み立て等作業主任者技能講習を修了した者の中から、事業者により選任されます。
足場の組み立て等作業主任者を選任しなかったり、受講していないにも関わらず足場の組み立てなどの作業を行なったりした場合は違法行為となります。
そしてその状態で、万が一災害が起こってしまっても、法令違反のため労働災害保険が適用されてない可能性もありますし、作業者・使用者・現場責任者なども書類送検されてしまうことも考えられます。
このようなルールになっていますので、足場の組み立てや解体などを行う際は資格保有者が必要なのです。
しかも、足場にはいろいろなタイプがあります。
ですので、それぞれの現場の状況を見て、目的に応じた最適な足場を組み立てねばなりません。
参考までですが、このような種類の足場があります。
- ビティ足場(枠組み足場)
- 吊り足場
- 移動式足場
- くさび式足場
- 脚立足場
- 単管足場
- 張出し足場
- 先行足場
それ以外の仕事もあります。
作業に用いる器具や工具の点検指示、さらには作業帽の着用チェックなども行わなければなりません。
このように、足場の組み立て等作業主任者は労働者の安全に対して重い責任を負う立場なのです。
おおよその年収とキャリアパス
足場の組み立て等作業主任者は、この資格は建設会社や工務店での就職・転職の際に有利になります。
特に足場とびには必須の資格です。
そもそもとび職の年収には幅があります。
正社員の採用だけでなく、日雇いでの契約も多いためです。
しかし、あえて正社員としての契約のなかで考えるとすると、10代では年収300万円程度、ある程度経験を積んだ20代では350万円程度の収入でしょう。
30代、40代になって、親方までステップアップすると、ようやく400万円の年収まで乗ることが多いです。
2019年の情報では、全体の平均年収は393万円だそうです。
もし足場の組み立て等作業主任者の資格を取得すれば、給与や職場での待遇が良くなるでしょう。
頼りがいのある人材として、現場監督や施主からも信頼されやすくなります。
とび職は人手も不足しているので、資格を保有していると待遇も良いでしょう。
前項目でも述べたように、足場を使う作業現場では、事業者はこの資格保有者を配置しなくてはいけないため、今後も需要は安定でしょう。
認可団体
厚生労働省
受験条件
1.満21歳以上で、足場作業に3年以上従事した経験がある者
2.満20歳以上で、大学、高専、高校、中学で土木や建築、または造船に関する学科を専攻しており、なおかつその後2年以上足場作業に従事した経験がある者
合格率
技能講習を行う各団体によって異なるそうですが、講習を受けるスタイルなのでおおむね100%でしょう。
1年当たりの試験実施回数
講習機関によって異なります。
年に数回のところもありますし、毎月2回ずつ行なっているところもあります。
講習は2日間にかけて行われます。
試験科目
こちらは講習科目です。
標準モデル
講習機関ではAコースと呼ばれている基本のコースです。
- 作業の方法に関する知識
- 工事用設備、機械、器具、作業環境などに関する知識
- 作業者に対する教育などに関する知識
- 関係法令
これらを学んだ後、修了試験に入ります。
免除が認められる場合
Aコースの他に、免除が受けられるBコースとCコースもあります。
Bコース
どちらか1つ該当すればBコースです。
1.満20歳以上で指定された訓練を修了し、足場作業に2年以上従事した経験がある者
2.Aコースのいずれかに該当する者で、職業能力開発促進法施工令別表第1に掲げる、とび1級、2級の技能検定に合格した者
該当すれば「作業の方法に関する知識」と「工事用設備、機械、器具、作業環境などに関する知識」は免除されます。
Cコース
次の項目に該当すれば免除となります。
「Aコースのいずれかに該当する者で、職業能力開発促進法第28条第1項に規定する職業能力開発促進法施行規則別表第11の免許職種の欄に掲げる、とび科の職種に係る職業訓練指導員免許を受けた者」
該当すれば「作業の方法に関する知識」と「工事用設備、機械、器具、作業環境などに関する知識」に加えて、「作業者に対する教育などに関する知識」も免除となります。
採点方式と合格基準
学科講習終了後、学科試験(1時間)を実施します。
採点方式はわかりません。
合格基準は修了試験の全科目合計で60点以上、かつ各科目で40%以上の正解率を取ることです。
合格者には修了証が交付されます。
取得に必要な勉強などの費用
取得に向けては必ず学科講習を受けなければなりません。
学科講習では、基本的にテキストが配られてそれに沿って説明がされます。
ですので、勉強の費用は受講料だけで良さそうです。
テキスト代もそこに含まれています。
受験料
こちらは受講料の費用を記しています。
講習機関によって費用は異なります。
建設業労働災害防止協会を例に受講料を紹介します。
支部 | 合計 | 内訳 |
東京支部 | 13,970円 | (受講料12,100円、テキスト代1,870円) |
埼玉支部 | 11,580円 | (受講料9,900円、テキスト代1,680円) |
神奈川支部 | 13,210円 | (受講料11,530円、テキスト代1,680円) |
千葉支部 | 11,770円 | (受講料9,900円、テキスト代1,870円) |
群馬支部 | 14,330円 | (受講料+消費税+テキスト代・税込) |
栃木支部 | 12,900円 | (受講料11,200円、テキスト代1,700円) |
茨城支部 | 11,600円 | (受講料9,920円、テキスト代1,680円) |
受験申込方法
各講習機関によって、申し込み方はさまざまだと思います。
講習機関のホームページをご覧いただくと「申し込みフォーム」が設定されていますので、そちらから申し込むものが多いです。
まとめ
今回は建設現場で作業員が安全に作業するために欠かせない仮設の足場の組み立て、解体または変更に際して、労働災害の防止などを行うための責任者「足場の組み立て等作業主任者」を解説しました。
この資格はとび職には必須の資格です。
資格を取得するには、各実施機関で開かれている専門の講習を受けなければなりません。
しかし、学ぶのは学科だけで、実技はないようです。
講習だけでテキスト代や勉強の費用はまかなえます。
建設関係に勤めている人は、受講条件に該当すれば受けてみてはいかがでしょうか。
建設の仕事があるかぎり、需要も安定していますよ。
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