消防設備点検資格者とは、火災用設備を適正に維持管理するのに必要な資格のことです。
消防用設備はビルなどの建物には火災発生時のために備えつけられています。
そうした設備に異常がないか確認するため、専門的な知識がある技術者が必要なのです。
消防設備を点検した結果は消防機関に報告しなくてはなりません。
火災が発生したときに、消防用設備に不備があると大変なことになりますよね。
今回は消防設備業界で必須の「消防設備点検資格者」という資格について、みていきます。
Contents
適用する仕事
消防設備点検資格者の主な仕事は、消防用設備の点検と報告です。
消防設備とは、消火栓やスプリンクラーなどを指します。
消防用設備が正しく作動しないと、いざ火災が発生したときに人命を守ることはできません。
建物の多くは消防設備の点検と報告が義務付けられています。
消防設備の点検を行い、点検の報告書を作成して消防署へ報告します。
もし、点検の時点で整備や修理の必要があれば、消防整備士に依頼します。
こうした一連の点検は、消防設備点検資格者の資格を持った者でしか行えません。
報告までを含む点検作業は基本的に専任業務として任されています。
消防設備の点検を任されるのですから、人命を守ったり、災害発生時のリスクを未然に防いだりするだけでなく、消防設備の変更や関連法の改正がされたときも柔軟に対応しなければなりません。
あるいは、消防設備を販売する会社に就職した場合でも、この資格は活かされます。
例えば、商談を行うときに自分が消防設備に関する知識があれば、商談をスムーズに行うことができるので取引相手からの信用も得ることもできるでしょう。
似たような資格に「消防設備士」というものもあります。
今回取り上げる消防設備点検資格者は、消防用設備等の点検のみを行うことができる国家資格です。
それに対して、「消防設備士」とは消防用設備などの点検はもちろん、工事や整備までもを行うことができる国家資格です。
ならば、消防設備士の方がメリットがあるのではないかと思うかもしれませんが、消防設備点検資格者のみを保有している方でも会社にとっては重宝されます。
なぜならこの資格を持っていると、消防設備の点検を外部の業者に依頼する必要がなくなるからです。
自分たちの社員が消火設備を点検してくれることになるため、会社側としては業者に依頼する分の費用が削減できます。
ですので、消防設備点検資格者のみの保有者であっても、会社側にとってはありがたい存在なのです。
おおよその年収とキャリアパス
消防設備点検資格者の平均年収は、働く企業によって異なるそうです。
例えば、ある消防設備店建資格者を必要とする企業の平均年収は450万円くらいでした。
おそらく、平均年収も400万~500万円だろうと思います。
それに加えて1,000円くらいは資格手当が支給されます。
消防設備点検資格者を取得すると、ビル管理会社、消防設備業界、消防設備製品を取り扱う商社といったところへの就職が見込めます。
キャリアの描き方もその職場ごとに異なってきます。
ある消防設備の点検スタッフの求人では、エアコンやエレベーター、ポンプなど消防設備以外の経験を積むことができるうえ、また、施工管理や店舗の維持管理といった別のキャリアや統括管理マネージャーなどのマネジメント職にも挑戦ができると掲載されていました。
それに前項目で挙げたように、消防設備士という上位の資格へ挑戦する道もあります。
消防設備点検資格者だけでは点検はできても、修理や整備はできません。
工事業務まで担当するためには、消防設備士とセットで取得すると業務をやるうえでかなり強みになるでしょう。
認可団体
消防設備点検資格者は講習を受けて取得します。
講習を運営・管理している団体は「一般財団法人 日本消防設備安全センター」というところです。
昭和50年8月1日に自治大臣の許可を得て設立しました。
受験条件
こちらは受講資格です。
この中からいずれかに該当している方が受講できます。
- 甲種または乙種の消防設備士
- 第1種または第2種電気工事士
- 1級または2級の管工事施工管理技士
- 水道布設工事監督者の資格を有する者
- 建築物調査員、建築設備等検査員(建築設備検査員・昇降機等検査員・防火設備検査員)
- 1級または2級の建築士
- 技術士の第2次試験の合格者(機械部門・電気と電子部門・化学部門・水道部門または衛生工学部門にかかわるもの)
- 第1種・第2種または第3種の電気主任技術者
- 1級・2級または3級の海技士(機関)
- 建築基準適合判定資格者検定の合格者
- 消防用設備等または特殊消防用設備等の工事や整備について5年以上の実務の経験を有する者(実務の経験とは、消防用設備等または特殊消防用設備等の工事や整備の補助業務をいう)
- 消防行政関連の事務のうち、消防用設備等に関わる事務経験1年以上の者(国もしくは都道府県の消防行政担当課または市町村の消防機関の予防業務等に係るもの)
- 建築物の構造や建築設備にかかわる事務に関した事務経験2年以上の者(建築行政に係る事務とは、国、都道府県または市町村の建築事務に係るもの)
- 学校教育法による大学や高等専門学校などで機械・電気・工業化学・土木または建築関連の学科を修めた卒業者で、消防設備等や特殊消防用設備等の工事または設備に関わる実務経験を1年以上おこなった者
- 学校教育法による高等学校・中等教育学校などで機械・電気・工業化学・土木または建築に関する学科を修めた卒業者で、消防用設備等や特殊消防用設備等の工事または整備の実務経験を2年以上おこなった者
合格率
消防設備点検資格者には、第1種(主として機械系統の設備)、第2種(主として電気系統の設備)、特種(特殊消防用設備等)の3枠があります。
第1種
2021年:95.9%
2020年:94.6%
2019年:94.3%
第2種
2021年:97.3%
2020年:96.3%
2019年:94.9%
特種
2021年:92.6%
2020年:76.9%
2019年:93.3%
1年当たりの試験実施回数
年に数回は講習を実施しています。
実施場所も数ヶ所あります。
試験科目
第1種、第2種、特種それぞれ、以下の講習を3日間に分けて行います。
講習の最後に修了試験を行います。
第1種
- 火災予防概論
- 消防法規
- 消防用設備等や特殊消防用設備等の点検制度
- 建築基準法規
- 消火器具の技術基準、点検要領
- 非常電源・配線の技術基準、点検要領
- 屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・水噴霧消火設備・泡消火設備・屋外消火栓設備・連結散水設備・連結送水管・パッケージ型消火設備・パッケージ型自動消火設備の技術基準と点検要領
- 不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備・動力消防ポンプ設備・消防用水・総合操作盤の技術基準と点検要領
第2種
- 火災予防概論
- 消防法規
- 消防用設備等や特殊消防用設備等の点検制度
- 建築基準法規
- 避難器具・排煙設備の技術基準、点検要項
- 非常電源・配線の技術基準、点検要領
- 漏電火災警報機、誘導灯、誘導標識、非常コンセント設備、無線通信補助設備の技術基準、点検要領
- 自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関通報設備、非常警報器具、非常警報設備、総合操作盤の技術基準、点検要領
特種
- 火災予防概論
- 消防法規
- 消防用設備等や特殊消防用設備等の点検制度
- 建築基準法規
- 消防用設備等概論
- 必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等
- 特殊消防用設備等概論
- 設備等設置維持計画
- 電子工学に関する基礎的知識
- 電気通信に関する基礎的知識
採点方式と合格基準
修了考査は32問出題されます。
各分類ごとに50%以上、かつ全体の問題数の70%以上の正答率で合格となります。
修了考査で不合格になった場合は、受けた日から1年以内に1回のみ修了考査を受け直すことが可能です。
取得に必要な勉強などの費用
講習がありますので、その受講料以外の費用は発生しないと思います。
受講料は次の項目でお伝えします。
受験料
こちらは受講料です。
科目免除なし:32,300円
科目免除あり:30,300円
再考査:3,450円
また、受講料とは別に、合否判定結果通知郵送料(84円)もかかります。
受験申込方法
認可団体である「一般財団法人 日本消防設備安全センター」の公式サイトにて、消防設備点検資格者の欄をクリックすると申込方法が掲載されています。
受講申請に必要な書類は以下の5つです。
- 受講申請書(所定の用紙)
- 受講資格に応じた証明書類
- 免状写真票、整理票、受講票、テキスト引換券
- 返信用封筒1通(受講資格判定結果通知用)
- 写真2枚(免状写真票及び整理票貼付用)
- 1.受講申請書と3の書類はダウンロードすることもできます。
- 封筒は申請者の宛名を明記し、84円切手を貼った定形(長形3号縦23.5cm×横12cm)のものが必要です。
- 写真は6ヶ月以内に撮影したもので、枠なし縦4cm、横3cmの大きさのものを用意して下さい。
なお、封筒も写真も、第1種と第2種を同時に申請する場合は、それぞれ1通ずつ計2通必要になります。
まとめ
ここまで消防用設備の点検を担う「消防設備点検資格者」について、取り上げました。
この資格は消防用設備の点検のみを行うことができます。
修理や整備することはできませんが、会社側としては外部に依頼するだけの費用が削減できるというメリットがあります。
それに「消防設備の点検スタッフ」を募集している求人には有利になります。
「消防設備点検資格者」は講習を受けて取得します。
受講資格が細かく設定されています。
該当する資格を持っていれば受講しやすいですし、そうでない場合は1~5年程度の実務経験を積めば受講できます。
「消防設備点検資格者」が活躍する場所はビル管理会社や消防設備業界です。
こうしたところに就職した際は、ぜひ「消防設備点検資格者」を目指してみて下さい。
そして、点検だけでなく、消防用設備を修理・整備できる「消防設備士」も併せて取れば、さらに重宝されますのでそちらも励んでみて下さいね!
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(いずれも業務部講習課)