今日は情報系の1つである「情報処理安全確保支援士」を取り上げます。
この資格はサイバーセキュリティ分野の国家資格で、サイバーセキュリティに関する専門的な知識や技能を活用して、企業や組織における安全な情報システムの企画・設計・開発・運用を支援していくための資格です。
情報処理技術者試験のなかでも最高難易度の試験にあたります。
そのような難易度のある情報系の国家資格はどのような場面で役立つのでしょうか。
では、情報処理安全確保支援士の内容と取得の仕方をみていきましょう。
Contents
適用する仕事
情報処理安全確保支援士は情報系の分野で唯一の士業です。
士業とは、専門的な資格が必要な職業の俗称で、弁護士や司法書士などどちらかというと法律関係に多いです。
しかし、情報系の分野ではこちらしか該当しません。
そうした専門的な資格である情報処理安全確保支援士は、サイバーセキュリティの専門家です。
企業の情報システムがスムーズになるように支援したり、サイバーセキィリティ対策を分析・評価したり、あるいはそれに伴う指導・助言を行なったりするのが仕事です。
具体的には次の業務が挙げられます。
- 情報システムの脆弱性やデメリットを分析・評価し、これらを適切に回避したり、防止したりするセキュリティ機能を企画・要件定義・開発を推進したり支援したりする
- 情報システムやセキュリティ機能の開発プロジェクトの中で、情報システムの危険な面を分析し、プロジェクト管理を適切に支援する
- セキュリティ侵犯への対処やセキュリティパッチの適用作業など、情報システム運用プロセスにおけるセキュリティ管理作業を技術的な側面から支援する
- 情報セキュリティポリシーを作成したり、利用者教育などに関して情報セキュリティ管理部門を支援したりする
サイバー攻撃が年々増加しているため、注目度が高い資格です。
情報処理安全確保支援士の資格が活かされる仕事は、プログラマーやシステムエンジニア、社内SE、セキュリティコンサルタントなどです。
そうした職業を目指す人に最適な資格といえるでしょう。
しかし、資格を維持していくのは大変なことです。
その理由は毎年講習を受けなければなりません。
さらに、厄介なことに情報処理安全確保支援士になると、関連法規や施行規則などの法的な義務を負います。(「信用失墜行為の禁止」や「秘密保持義務」など)
そうした窮屈な面を背負って資格を維持しなければならないのは、デメリットの1つともいえます。
おおよその年収とキャリアパス
情報処理安全確保支援士は登録制の士業です。
資格取得には、試験合格後の登録があって職務に活かされます。
年収は?
資格を保有しているのみの人の年収は400万~1,000万円と開きがあります。
これは試験に合格しても情報処理安全確保支援士として申請していない方が含まれていること、そして、中小企業でも情報処理安全確保支援士への需要が高まっているからです。
中小企業ですとセキュリティに力を入れたい反面、専門職にあまりお金をかけられないというのが現実のようです。
前者の理由の“申請していない方”は、登録することで年収がアップします。
申請している情報処理安全確保支援士の平均年収は、600万~1,300万円にもなるそうです。
企業側としては、試験に合格しているではなく、情報処理安全確保支援士として「登録」していることを条件としているところもあります。
しかし、登録や情報処理安全確保支援士を継続させるには費用がかかります。
登録手数料として19,700円が必要になりますし、さらに3年後の更新までに追加で14万円の講習費用が発生します。
この費用を所属企業が負担するケースも増えています。
このような費用や負担が生じるうえでの、高い平均年収なのだと思います。
キャリアパスは?
情報処理安全確保支援士の前身は情報セキュリティスペシャリスト資格でしたので、後継になってまだ新しいです。
しかし、具体的には次の仕事が適しています。
- セキュリティコンサルタント(各企業のIT環境における課題を抽出し、セキュリティレベルの改善とトラブルを未然に防ぐ仕組み作りを考え、企業に提言していく仕事)
- セキュリティアナリスト(サイバー攻撃を受けた際に、攻撃手法の分析を行う仕事)
- セキュリティアーキテクト(企業や組織の情報セキュリティ方針を立案し、情報セキュリティ方針を元にセキュリティシステムの構築を主導する仕事)
現在では大企業だけでなく、中小企業もさまざまなセキュリティ対策を施している状況です。
そのような社会の中でセキュリティ人材に対して需要が高まっています。
またそれと同じくらい、セキュリティを専門に扱うエンジニアも必要とされています。
しかし、それでも人材は不足しているといわれています。
セキュリティ人材は2万~3万人が必要とされているのに対して、実際の情報処理安全確保支援士の登録者数は1万人にも満たないようです。
サイバー攻撃が年々増加しているため、情報処理安全確保支援士の求人や案件は安定的にあるでしょう。
認可団体
認可団体は経済産業省です。
しかし、資格を運営している団体は「独立行政法人・情報処理推進機構」です。
こちらは経済産業省が所管する政策実施機関です。
受験条件
条件はありません。
学歴や年齢を問わず誰でも挑戦できます。
合格率
2022年春期:19.2%
2021年秋期:20.1%
2021年春期:21.2%
1年当たりの試験実施回数
試験は年2回、春期(4月)と秋期(10月)に実施されます。
試験科目
試験は午前Ⅰ、午前Ⅱ、午後Ⅰ、午後Ⅱの4つの構成で出題されます。
午前Ⅰ
- マネジメント系:5問
- テクノロジ系:17問
- ストラテジ系:8問
午前Ⅱ
- セキュリティ
- ネットワーク
- データベース
- システム開発技術
- サービスマネジメント
- システム監査
- ソフトウェア開発技術
午後試験
午後Ⅰと午後Ⅱの試験は、以下の範囲から出題されます。
- 情報セキュリティマネジメントの推進、または支援に関すること
- 情報システムの企画・設計・開発・運用におけるセキュリティ確保の推進、または支援に関すること
- 情報や情報システムの利用におけるセキュリティ対策の適用の推進、または支援に関すること
- 情報セキュリティインシデント管理の推進、または支援に関すること
採点方式と合格基準
各試験の出題形式はそれぞれ異なります。
午前Ⅰ 多肢選択式(四肢択一)30問
午前Ⅱ 多肢選択式(四肢択一)25問
午後Ⅰ 記述式、3問中2問解答
午後Ⅱ 記述式、2問中1問解答
合格基準はすべての時間区分で100点満点中、60点以上をとることです。
取得に必要な勉強などの費用
勉強の費用として、参考書やテキストは必須です。
それと場合によっては、通信講座を利用する方法もあります。
おすすめテキスト
徹底攻略 情報処理安全確保支援士教科書 令和5年版
出版社名:インプレス
商品名:徹底攻略 情報処理安全確保支援士教科書 令和5年版
価格:¥3,168(税込)
ネットワークや情報セキュリティで必ず押さえておくべきポイントから、サイバー攻撃の種類、マルウェア対策、開発時のセキュリティ対策まで、情報処理安全確保支援士に必要な知識がしっかり網羅されている1冊です。
2023年度版 ALL IN ONE パーフェクトマスター情報処理安全確保支援士
出版社名:TAC株式会社
商品名:2023年度版 ALL IN ONE パーフェクトマスター情報処理安全確保支援士
価格:¥3,080(税込)
こちらは午前Ⅱ試験、午後Ⅰ試験、午後Ⅱ試験の3つの試験すべての対策ができるテキスト&問題集です。
力を入れているのは午後Ⅰ・Ⅱ試験対策で、問題文・図表(事例)を知識を駆使して読み解きながら学習していきます。
通信講座の費用
講座のコース | 費用 |
TACの情報処理安全確保支援士 本科生通信講座 | ●WEB通信講座:90,000円(税込)
●DVD通信講座:100,000円(税込) |
資格の大原の情報処理安全確保支援士総合本コース | 71,200円(税込) |
iTECの情報処理安全確保支援士スタンダードコース | 45,100円(税込) |
受験料
7,500円(非課税)
受験申込方法
定められた申し込み期間内に『IPA 情報処理推進機構』の公式サイトより、インターネット経由で申し込みできます。
その他願書を郵送する方法もあります。
願書はIPAの本部と各支部、それに全国の主な書店に置いてあります。
ですが、インターネット経由の方が便利でしょう。
ご不明の点は公式サイトの右側のバナーに、問い合わせ先が載っていますのでそちらで確認して下さい。
まとめ
今回は情報系の士業ともいわれる「情報処理安全確保支援士」を取り上げました。
独占士業として認められている資格ですから、取得して登録すると幅広い場面で高度な情報技術者としてアピールすることができます。
それに、企業からの信頼を得られるでしょう。
ですが、登録手数料や資格の維持費が高い点がデメリットです。
こうしたメリット・デメリットを十分に理解したうえで、受験をして下さい。
費用はかかってしまいますが、企業が肩代わりしてくれるケースもあります。
今やセキュリティ分野の人材は需要が高まっています。
そうした分野に力を入れたい人は、最高難易度の資格であるこちらを勉強してみてはいかがでしょうか。
今や企業がとても欲している人材ですよ!
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