宅地建物取引士(宅建)試験について

宅地建物取引士(宅建)試験について

皆さんは宅建という資格をご存知でしょうか。
もう持っているよという人もいるかもしれません。

宅建の正式名称は「宅地建物取引士」で、“宅建士”とも呼ばれています。
不動産取引における専門家を指す国家資格で、毎年20万人前後の受験者がいます。
たくさん受験者がいますが、合格率は低めです。

就職や転職に有利な資格として耳にしますが、具体的にはどんなことができるのでしょうか。
仕事内容と併せて解説していきます。
どうぞご覧ください。

適用する仕事

宅地建物取引士とは、不動産に関する知識や売買経験が少ないお客様に対して、高額な不動産取引の場面で不当な契約を結ばないようにサポートするのが仕事です。

宅地建物取引士は、資格を持っていなければできない独占業務が3つあります。

1.重要事項説明書面の内容説明

こちらの仕事は不動産の取引を行うほぼ全ての場合に、必要とされる業務です。

例えば、お客様が購入しようとしている不動産の登記名義人は誰かといったことや、建築できる建物の容積率などはどのような建築制限があるか、飲用水・電気・ガス等の供給施設・排水施設の整備状況といったことを説明します。

しかし、不動産取引は高額になることが多くても、お客様側は必ずしも不動産に関する法律知識に詳しいわけではありません。
そうしたわからないことを契約前に説明します。
説明することで、お客様は不動産の内容について詳しく知ることができます。

書類のイメージ図

2.重要事項説明書面の記名と押印

前項目で説明業務を述べましたが、不動産業者は口頭の説明だけでなく、重要事項が記載された書面をお客様に交付しなければなりません。
この書面を「重要事項説明書面」といい、宅地建物取引士による記名押印が必要になります。

口頭で重要事項を説明しただけでは、後日紛争が生じた場合に本当に説明したのか「言った・言わない」のトラブルになります。
あるいは、お客様がきちんと説明内容を理解できたのかはっきりしないということも起こり得ます。
ですので、書面が必要なのです。

重要事項説明書をお客様に交付し、宅地建物取引士が記名押印することで説明を行なったと証明することができますし、お客様の理解も促進できます。
こうしたやりとりを行うことで、適正に不動産取引が行われたことを証明することができます。

3.契約書面の記名と押印

契約に関するトラブルを防ぐために、重要な部分の説明を記載した契約書を作成します。
そして、このとき宅地建物取引士の記名と押印が必要になります。

この契約書は「37条書面」とも呼ばれていますが、この書面の記名や押印の権利があるのは宅地建物取引士のみです。
宅地建物取引士が記名・押印することで、契約当事者が納得して契約したこと、そして適正な不動産取引がされたことが証明できるのです。

このように、宅地建物取引士は独占業務があり、不動産業界から需要が高いです。
それに宅建業を営む会社では、5人に1人の割合で宅地建物取引士を配置する義務があるため、この資格を持っている方は不動産業界はもちろん、建設業界や金融業界でも重宝されるでしょう。

宅建業と不動産業

厳密にいうと、宅建業(宅地建物取引業)と不動産業は仕事内容が異なります。

  • 宅建業…アパートやマンションの売買取引や仲介業務を専門とする
  • 不動産業…物件売買の仲介業務に加えて、マンション管理や入居者対応、マンション管理業者の監督に関する事務など、不動産に関わる業務を広く取り扱っている

おおよその年収とキャリアパス

キャリアアップ

宅地建物取引士の平均年収はいろいろな角度から分析することができます。
まず、大企業に勤務する宅地建物取引士は年収600万円程度、中規模の企業ではおおよそ500万円程度、小規模の企業ですと470万円のようです。

実績が認められて企業内での階級が上がれば、役職手当がつくので年収アップが期待できます。
主任クラスなら460万円程度、係長(570万円)→課長(760万円)→部長(840万円)とこのようなキャリアパスと年収が描けます。

もちろん、年齢によっても年収は変わってきます。
20代では300万~380万円程度ですが、50代になると600万~650万円にもなります。

他にも宅地建物取引士の資格を取得していれば、不動産業界では「資格手当」がもらえます。
宅地建物取引士の資格手当は5,000円~30,000円といわれています。
資格手当は一律で支給されるそうです。

また、宅地建物取引士は独立開業ができる職種です。
独立した場合は経費もかかるため、企業に勤務した場合のように平均的な年収を算出するのは難しいです。
必ず一定の収入が保証されるわけではありませんが、実力を持った人なら高収入を得ることも可能です。
サラリーマンでは獲得できなかった1,000万円の年収を超えることも夢ではありません。

認可団体

国土交通省

認可団体は国土交通省です。

受験条件

日本国内にお住まいの方なら、年齢、学歴などに関係なく、誰でも受験できます。

合格率

近年の合格率を掲載します。
令和2年度と3年度は年2回実施されました。

令和3年度(12月):15.6%
令和3年度(10月):17.9%
令和2年度(12月):13.1%
令和2年度(10月):17.6%
令和元年度:17.0%

1年当たりの試験実施回数

宅地建物取引士の試験は基本的に年1回実施されます。
例年10月の第3日曜日に全国の都道府県で行われます。

数字の1

試験科目

試験科目は大きく分けて4科目です。

  • 宅建業法:20問
  • 権利関係(民法など):14問
  • 法令上の制限:8問
  • 税やその他:8問

採点方式と合格基準

宅地建物取引士試験は2時間で50問を解きます。
しかし、四肢択一式による筆記試験のみで、記述式はありません。
解答はマークシート方式です。

合格基準は50問中、約70%以上の正答率が合格ラインになります。
その年によって、合格基準点は異なりますが、おおむね34~38点程度の傾向です。

また、宅地建物取引士は試験に合格すれば終わりではありません。
試験に合格しただけでは、「宅地建物取引士合格者」どまりです。
合格した後は、資格登録をして「宅地建物取引士証の交付」を受けなければなりません。
そこまで手続きをして、正式に宅地建物取引士として働くことができる状態になります。

取得に必要な勉強などの費用

宅地建物取引士試験の勉強方法は、独学でも通信教育でもできます。

独学の場合

費用を抑えたい場合ですと独学が良いでしょう。
ただし、意志が弱いと挫折しやすいですし、専門講師に質問できないというデメリットもあります。

ちなみに、独学での勉強の費用は合計12,000円で済むという体験談が出ています。
その内訳はテキスト1冊3,000円程度、過去問題集1冊3,000円程度、そして予想問題集3冊計6,000円です。
これだけそろえて、テキストを読み、過去問題集を1冊5周くらい解き、なおかつ予想問題集3冊を1~3周解いたら、けっこうな時間がかかります。

ですから、費用が抑えられるのです。

通信教育の場合

一方、通信教育の場合は分からないところは、講師に質問できるというメリットがあります。
宅地建物取引士の通信講座の料金相場は、2万~19万円といわれています。

さらに、通学講座を加えると、その費用はもっと増えます。
スクールにもよりますが、10万~20万円が相場のようです。

資格の勉強

受験料

8,200円

受験申込方法

受験申込の流れについては、まず「一般財団法人 不動産適正取引推進機構」のホームページに試験案内が掲載されますので、そちらをチェックします。
また、試験案内は各都道府県ごとに指定の場所で配布していますので、入手しましょう。

受験申込はインターネットでも郵送でもできます。
インターネットではPCかスマートフォン(iPhone含む)での可能です。
そして、予め規定に沿った顔写真のデータ(jpeg形式)を用意する必要があります。
受験料はクレジットカードまたはコンビニ決済で支払ってください。

郵送での申し込みは、都道府県で配布されている願書の記載にしたがって行います。
申込みに際して、規定に沿った顔写真を用意しなくてはなりません。

まとめ

今回は宅建とも宅建士とも呼ばれる「宅地建物取引士」の試験について、詳細にみていきました。
宅地建物取引士は独占業務がいくつかあるので、この資格を持っていると不動産業界や建設業界、金融業界でも重宝されます。

この試験は年間20万人もの人が受験しています。
解答はマークシート方式ですが、合格率は低めです。

勉強方法として、独学でも通信教育でも可能ですから、ご自身に合った方法で知識をつけましょう。
ただし、合格だけを目標とするだけでなく、その後の資格登録、そして宅地建物取引士証の交付を受けないと、正式に宅地建物取引士として働くことができません。
宅地建物取引士を目指したい人はそこまで頑張ってみてくださいね。

宅地建物取引士(宅建)試験

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