石油学会溶接士技量検定について

石油学会溶接士技量検定について

今回ご紹介する「石油学会溶接士技量検定」は、石油関連の工業装置などに関する知識を有しているかを測る資格試験です。
溶接の資格試験はいろいろありますよね。
石油工業関連、そして溶接の分野であるこちらの資格試験は、どんな特徴があり、どのように取得するのでしょうか。
調べましたので、どうぞご覧ください。

適用する仕事

石油学会溶接士技量検定は民間資格です。
こちらの資格を取得すれば、石油関係の一般構造物、圧力容器、貯槽、配管などの溶接、そしてガス事業の溶接も行うことができます。
石油工業関連の仕事に就いている人に向いているでしょう。

石油工業関連ですと、石油の輸入や販売を手掛ける会社があてはまります。
しかし、石油会社は単に石油を販売するだけが仕事ではありません。

石油業界に属する会社には種類があります。

  • 石油元売り会社(原油や石油製品の輸入、精製、販売を行う)
  • 石油開発会社(原油の開発と生産を行う)
  • 石油精製会社(石油製品の製造を行う)
  • 石油輸送会社(石油製品の輸送を行う)
  • 石油販売会社(石油製品の小売りを行う)

さらに、その中で働く人の仕事内容を大きく分けると、技術系販売・管理系の2つがあります。

灯油を販売している赤いトラック技術系とは、石油精製や製造のエンジニアや技術営業、研究職が該当します。
技術営業は自動車や機械メーカーなどの顧客に対して、最適な潤滑油の提案やアフターサポートを行います。
研究職は次世代向け製品に役立てるため、最先端での技術の研究を行います。
また、燃料や潤滑油の研究開発をはじめとする、社会が抱える燃料・エネルギー・環境に関する課題についての対策提言も行います。

販売・管理系とは、営業(石油製品の卸営業や提案、販売促進の検討、店舗の運営アドバイスなど)人事経理や財務情報システム法務などが該当します。
今回の資格とは直接関係ないかもしれませんが、こうした職種の方も会社では必要な人材です。
企業の中には、効率化のためにDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みに力を入れている動きもあります。
こちらの職種では、そうした変化に対応するための知識や柔軟な思考も求められています。

おおよその年収とキャリアパス

残念ながら、石油学会溶接士技量検定に合格したら、どのように年収が変わるのかはわかりません。

そもそも石油会社の平均年収はわりと高めです。
大手の石油会社では、800万円~900万円前後の平均年収です。
大手では高い年収に加えて、諸手当や福利厚生も充実しているようです。
中小企業では大手企業より数百万円程度も低い年収かもしれませんが、他の業種や業界と比べると高いでしょう。

石油学会溶接士技量検定は実務で作業を行なったことのある人にとっては、あくまでも技術を確認してより確実なものにするための認定試験です。
落とす試験ではなく、日常生活の中で配管を行うのに大切な溶接という技術をしっかりと身に付けるための試験ですので、年収への直接の影響は小さいと思われます。

今後、二酸化炭素と水素が合成燃料となり、石油に代わるとなる話も聞きます。
しかし、石油の使い道は乗り物のガソリンや暖房器具などの熱源だけでなく、洗剤やプラスチック製品、合成繊維などの原料にも使われます。
つまり、石油の需要はあり、石油学会溶接士技量検定も役立つ専門性の高い資格だといえるでしょう。

認可団体

厳密にいえば、石油学会溶接士技量検定は「公益社団法人 石油学会」が認可団体です。

公益社団法人 石油学会のロゴマーク

しかし、公式サイトによると、石油や関連設備に従事する有能、良質な溶接技能者の確保と育成を図り、関連設備や操業の安全に寄与することを目的として、検定業務を「一般社団法人日本溶接協会」を委託しているそうです。

「公益社団法人 石油学会」の連絡先はこちらです。

所在地
〒101-0041 東京都千代田区神田須田町1-8-4 陽友神田ビル4階
TEL:03-6206-4301
FAX:03-6206-4302

受験条件

技量資格により、受験条件が設定されています。
下記は実技試験を受ける際の受験条件です。

資格の種類 受験資格(以下の資格を現有しており、その有効期間の残存期間が2ヶ月以上あること)
E種・F種 手溶接「A-2F, A-3F, N-2F, N-3F, C-2F, C-3F」のいずれか
FT種 手溶接「T-1F, C-2F, C-3F」のいずれか、またはステンレス鋼溶接「TN-F, CN-PM」のいずれか
FC種 手溶接「A-2F, A-3F, N-2F, N-3F, C-2F, C-3F, T-1F」のいずれか、またはステンレス鋼溶接「TN-F,CN-PM」のいずれか

合格率

合格率は約84%となっています。
難易度は易しいといえるでしょう。

1年当たりの試験実施回数

毎年ではなく、毎月1~2回行われています。

試験科目

試験の内容は溶接方法によって異なります。
その他の試験のルールについては「公益社団法人 石油学会」のサイトをご覧ください。

被覆アーク溶接

種別 試験材料の種類 試験片の試験の種類
A種 炭素鋼(板)厚さ9mm 表曲げ試験、裏曲げ試験
B種 炭素鋼(板)厚さ19mm 側曲げ試験、裏曲げ試験
C種 炭素鋼(管)150A Sch80 表曲げ試験、裏曲げ試験
D種 炭素鋼(管)200Aまたは250A 側曲げ試験、裏曲げ試験
厚さ20mm以上
E種 規格最小引張強さ570~610N/mm2
または780N/mm2以上の高張力鋼(板)
側曲げ試験、破面試験
厚さ19mm以上
F種 2.25Cr-1Mo鋼(管)150A Sch80 表曲げ試験、裏曲げ試験
G種 オーステナイト系ステンレス鋼(板) 表曲げ試験、裏曲げ試験
厚さ 9mm
H種 オーステナイト系ステンレス鋼(管) 表曲げ試験、裏曲げ試験
150A Sch80

ティグ溶接

種別 試験材料の種類 試験片の試験の種類
CT種 炭素鋼(管)100A Sch20 裏曲げ試験
FT種 2.25Cr-1Mo鋼(管)50A Sch40 裏曲げ試験
または外径63.5×厚さ4.0mm
HT種 オーステナイト系ステンレス鋼(管) 表曲げ試験、裏曲げ試験
100A Sch10S

組合せ手溶接

種別 試験材料の種類 試験片の試験の種類
CC種 炭素鋼(管)150A Sch80 表曲げ試験、裏曲げ試験
DC種 炭素鋼(管)200Aまたは250A 側面曲げ試験、裏曲げ試験
厚さ20mm以上
FC種 2.25Cr-1Mo鋼(管) 表曲げ試験、裏曲げ試験
150A Sch80
HC種 オーステナイト系ステンレス鋼(管) 表曲げ試験、裏曲げ試験
150A Sch80

組合せ半自動溶接

種別 試験材料の種類 試験片の試験の種類
CS種 炭素鋼(管)150A Sch80 表曲げ試験、裏曲げ試験
DS種 炭素鋼(管)200Aまたは250A 側曲げ試験、裏曲げ試験
厚さ20mm以上
FS種 2.25Cr-1Mo鋼(管) 表曲げ試験、裏曲げ試験
150A Sch80
HS種 オーステナイト系ステンレス鋼(管) 表曲げ試験、裏曲げ試験
150A Sch80

※ただし、1997年に導入された組合せ半自動溶接に係わる技量資格であるFS種、HS種につきましては、2007年10月1日をもって新規受験、再評価試験を行わないとなったそうです。
すでに取得している方についても、2010年9月30日をもって正式に廃止となりました。

採点方式と合格基準

溶接で使われる面や道具採点は日本溶接協会の技量資格を石油学会の技量資格に読み替えるという方法で審査されます。
上記の種別により異なりますが、採点方式は書類審査または実技試験です。
実技試験が課されるのは、E種、F種、FT種、FC種です。

取得に必要な勉強などの費用

この資格の採点方式が書類審査や実技試験ですので、特別な勉強費用はありません。
実技試験が課される試験の種類では、本業での溶接の仕方を身に付けて試験に臨みましょう。

受験料

受験料は【採点方式と合格基準】の項目で述べた「実技試験」にあてはまる種別のみ、支払います。

種別 受験料
E種 1級は46,230円、2級は35,650円
F種 38,840円
FT種  18,170円
FC種 38,600円

詳しくは日本溶接協会から提示してある「溶接技能者評価試験に係る各料金の一覧」のサイトをご覧ください。

受験申込方法

受験を申し込むには、溶接技能者評価試験申込書が必要です。
お近くの日本溶接協会から取り寄せることができます。

まとめ

今回は石油関連会社に勤めている方に役立つ「石油学会溶接士技量検定」という資格をお伝えしました。
この試験は種別により、細かく分かれています。
こちらでも詳細にお伝えしましたが、ご自身が受験する溶接の種別によって試験方法や受験料が変わってきますので、よく確認して受験しましょう。

 

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