皆さんは中小企業をご存知でしょうか。
言葉なら知っている、または日本の大部分が中小企業というところまでは分かっている人もいるでしょう。
今回ご紹介する記事は、中小企業の組合(事業協同組合、企業組合、商工組合やこれらの組合の連合会)の事務局で働いている職員の方が職務を遂行するうえで必要な知識があるか判断する試験についてです。
その試験の合格者から一定の実務経験を持つ方に、中小企業組合士の称号が与えられます。
今回はこの試験や資格の詳細をお伝えしていきましょう。
Contents
適用する仕事
そもそも中小企業とは、昭和38年の中小企業基本法によると、資本金3億円以下または従業員300人以下の法人企業や従業員300人以下の個人企業と定義しています。
(ただし、卸売業の場合は資本金1億円以下または従業員100人以下、サービス業の場合は資本金5,000万円以下または従業員100人以下、小売り業では資本金5,000万円以下または従業員50人以下を基準としている)
そうした企業が組合を作っています。
いま、中小企業組合には、ガバナンス(公正な判断や運営がなされるよう、監視・統制する仕組み)の充実が求められており、なおかつ広く社会の信頼を高めて、社会的責任を果たすためには、組合運営の経験と専門知識を備えた人材が必要と考えられています。
中小企業組合士はそのような目的で配置された職業で、令和4年6月1日において全国で2,846名が登録しています。
中央企業組合士の制度は、事業協同組合などの連携組織をサポートする唯一の資格制度なのです。
組合士の活動は、さまざまなところで展開しています。
事業協同組合や商工組合、信用組合、火災共済協同組合、企業組合、協業組合、商工組合中央金庫、中小企業団体中央会などで活躍しているのです。
中小企業の組合はそれぞれ法律によって設立されており、いくつかの種類があります。
その主なものは次のとおりです。
事業協同組合 | 中小企業の経営の合理化と取引条件の改善などを図るために最も利用され、普及している組合 |
商工組合 | 業界全体の改善発達を図る組合 |
信用組合 | 中小企業者、勤労者、地域住民が相互扶助の精神に基づき、協同して預金の預け入れや資金の貸付などの信用事業を行う組合 |
火災共済協同組合 | 中小企業者が、火災等によりその財産に生ずる損害を填補することを目的とした組合 |
企業組合 | 個人事業者や勤労者など個人が経営規模の適正化を図るためや、自らの働く場を確保するための組合 |
協業組合 | 参加する中小企業の事業を統合する組合 |
こうした組合のなかで中小企業組合士は専門性を活かして、中小企業の連携組織を通じて企業活動をサポートしたり、産学官連携や組合間連携などさまざまなコーディネート活動をしていたりします。
おおよその年収とキャリアパス
中小企業組合士は組合の中核的人材として活躍できますから、そうしたところに就職して力を発揮します。
となると、年収も比較的高いでしょう。
残念ながら、詳しい年収情報は不明ですが、ある都道府県の中小企業団体中央会では420万円の年収の口コミがありました。(ただし2017年頃)
中小企業組合士の需要はこれからもあるでしょう。
その理由は中小企業は規模が小さい企業なので経営上いろいろな制約があり、企業が独自に解決できない問題も出てきます。
企業組合制度はこうした問題に対応するために必要な制度ですので、今後も組合制度がなくなることは考えられないでしょう。
次はキャリアパスとして、中小企業組合士が誕生するまでの流れをお伝えします。
中小企業組合試験に合格し、かつ組合などで3年以上の実務経験のある方に、全国中小企業団体中央会から組合士認定申請について連絡が来ます。
毎年6月1日付けで認定証書、組合士章、組合士証が交付されます。
ただし、この資格は有効期間が5年間です。
その後は更新しなければなりません。
認可団体
中央企業組合士の試験を主催しているところは「全国中小企業団体中央会」です。
昭和30年9月に、中小企業等協同組合法の改正により「中小企業等協同組合中央会」として誕生しました。
その後昭和33年4月、中小企業団体の組織に関する法律の施行に伴い「中小企業団体中央会」と名称を変更して、現在に至っています。
所在地
〒104-0033
東京都中央区新川1-26-19 全中・全味ビル
事業概要
- 都道府県中央会に対する事業(運営や事業の指導連絡、組合等指導資料の作成や普及など)
- 組合等に対する事業(実地指導と講師の派遣・斡旋、組合青年部や女性部の育成など)
- 中小企業の組織化事業(組合制度の普及、小企業者組合化指導の推進など)
- 中小企業の振興事業(経営革新や創業の促進、事業承継の促進など)
- 調査研究情報提供事業(中小企業政策や中小企業連携組織政策の調査研究、中央会情報システムの構築やネットワーク化の推進など)
- 国際関係
- 全国大会の開催
など
受験条件
特になし。
ただし、組合士として認定されるには組合などでの3年以上の実務経験が必要です。
合格率
令和2年度の試験では、合格率45.3%となっています。
(受験者数439名、合格者数199名)
1年当たりの試験実施回数
試験は毎年年1回、12月の第1日曜日に実施されます。
試験科目
組合会計、組合制度、組合運営の3科目です。
1科目でも合格すれば、その後3年間はその科目の受験が免除されます。
組合会計は120分、組合制度と組合運営は80分の試験時間です。
組合会計
- 簿記
- 会計
- 税務
組合制度
- 中小企業組織論
- 中小企業基本法
- 中小企業等協同組合法
- 中小企業団体組織の法律
- 商店街振興組合法
組合運営
- 組合運営通論
- 共同事業運営論
- 中小企業関係諸施策
- 労務管理と労働法通論
採点方式と合格基準
採点方式はわかりません。
合格基準はそれぞれの科目で、60%以上の得点で合格するようです。
取得に必要な勉強などの費用
認可団体では、中小企業組合検定試験参考図書が販売されています。
- 発行元:全国中小企業団体中央会
- 商品名:中小企業組合検定試験(組合会計・組合制度・組合運営)問題と解答 平成28~令和元年度版
- 価格:1,500円(税込)
タイトルからもわかるとおり、平成28年度から令和元年度までの4年間に中小企業組合試験に出題された問題と解答を収録しています。
1冊で3科目分掲載されています。
受験料
6,600円
※一部科目免除者については、二科目受験で5,500円、一科目受験で4,400円で受けられます。
受験申込方法
受験を申し込むには願書が必要です。
願書は都道府県ごとに所在する最寄りの中小企業団体中央会で、受け取れます。
願書に受験料を添えて、最寄りの中小企業団体中央会へお申し込みください。
ご不明な点は最寄りの中小企業団体中央会か、全国中小企業団体中央会まで問い合わせてみてください。
「全国中小企業団体中央会」の電話番号:03-3523-4907
まとめ
今回は、中小企業組合に従事する職員の資質の向上を図るための専門的な知識を持つ者を認定する資格である「中小企業組合試験」を取り上げました。
受験条件はないですが、正式な中小企業組合士になるには、上記の現場で3年間実務経験を重ねないといけません。
まずは、こうしたところに就職してから資格を考えると良いでしょう。
こちらの試験科目は3つだけです。
認可団体におすすめテキストがありますから、そちらを購入して勉強しましょう。
中小企業組合士という職業は、中小企業がなくならないかぎり需要はこれからもあると思います。
もし、こうした職場に勤めたいという人は、同時に「中小企業組合試験」にも挑戦してみてはいかがでしょうか。
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