近年ニュースでは、空き家が増加していることが問題となって報道されていますよね。
空き家はいずれ解体されるのが望ましいですが、やむなく解体された民家に使われていたさまざまな素材を「資財」として使えれば、地球環境にも良いし最高ですよね。
そうした資財の使い道を考える能力を持っている人が「伝統資財施工士」なのです。
古民家などの建物から算出された木材を建築分野において、再活用するための専門的な知識や技術を用いて、そうした資財の使い道を考えます。
こちらは民間資格ですが、伝統資財施工士になるためには、財団法人職業技能振興会が主催する「伝統資財施工士認定試験」に合格しなければなりません。
どのような試験なのか、またどうすれば取得できるのかをぜひご覧ください。
Contents
適用する仕事
適用する仕事は建築関係でしょう。
伝統資財施工士で学んだことは、古民家に使われている再利用可能な自然素材(伝統資財)を活用した住宅はもちろん、将来古民家となり得る新築住宅(新民家)の建築にもつながります。
新民家に伝統資財を有効に活用すれば、日本の伝統や歴史を感じられる風合いをお客様に提供することもができます。
また、知識を持つ技術者として、地球環境にも配慮した住宅づくりの支援をすることにもつながります。
例えば、和風建築には必ずと言っても良いほど「欄間」が使われてきました。
欄間とは、天井と鴨居の間に設けられる開口部材のことで、装飾の他に、採光、通風といった目的のために作られました。
欄間の中には平安時代の格子組みのものから彫刻を施したものまで多彩なデザインがありますが、この欄間も解体ともあれば、廃棄される運命にあります。
しかし、これをなんとか活かせないかと知恵を絞るのが伝統資財施工士の発揮どころです。
こちらの例では欠けているところは手を加えて修理をして、見事に新しい今の家に欄間をよみがえらせました。
このように廃棄される運命だった欄間が伝統資財として、息を吹き返すことができます。
古いから捨てるのではなく、アイディアを出して活かせるように提案するのが伝統資財施工士の腕の見せ所だと思います。
おおよその年収とキャリアパス
じつは似たような資格に「古民家鑑定士」という資格があります。
古民家鑑定士は古民家を評価することを目的に創設された資格ですが、伝統資財施工士は古民家鑑定士1級の上位資格にあたります。
古民家鑑定士の収入は300~400万円くらいです
あるサイトいわく、伝統資財施工士の年収は300~500万円くらいだそうです。
伝統資財施工士の資格は、古民家や伝統資財を扱う住宅関係の企業で活かせるでしょう。
また、公式サイトでは、古民家を取り扱うグループとして拡大している「古民家ネットワーク」や未来の古民家である「新民家」を中心とした全国ネットワークがあるそうなので、そういったところの一員になるのも良いでしょう。
伝統資財施工士は古民家鑑定士の上位資格として、充分レベルの高い資格ですが、さらにスキルアップするための資格があります。
それは「伝統耐震診断士」という資格です。
伝統耐震診断士とは、交通機関や機械的振動などの社会的活動を原因とする地盤の小さな震動、それに起因する建物の振動特性値を実測したり、耐震の性能評価を実施したりします。
そうした耐震性能評価から条件を満たす改修方法を明確に提示できる能力を有すると認定された者が、伝統耐震診断士と呼ばれる人なのです。
この資格を目指すには、伝統資財施工士の方なら建築士(一級・二級・木造のいずれか)とセットで資格取得している方のみ受験できます。
伝統耐震診断士の資格を取得すると、伝統建築診断の結果に基づいて、建築物の耐震改修や保存処理、維持管理の計画の立案、さらには計画に関する助言を与えることもできるようになります。
伝統耐震診断士の受験条件が厳しいゆえ、伝統資財施工士と建築士のダブルで資格を持っている人には大きなステップアップになるでしょう。
認可団体
伝統資財施工士の資格は「一般財団法人職業技能振興会」で運営・管理しています。
〒151-0051
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-16-6 パレ・ジュノ3階
電話:03-3353-9181
FAX:03-3353-9182
受験条件
満20歳以上の方
※業務との関連性や知識の習得が重なるため、公式サイトでは一般財団法人職業技能振興会の「古民家鑑定士1級」を取得される事をお薦めしています。
合格率
不明、非公開
1年当たりの試験実施回数
公式サイトには、講習・試験日についてのスケジュール欄がありますが、詳細は未定です。
試験科目
試験内容は公式テキストから出題されます。
試験時間は60分です。(テキスト持ち込み可能)
採点方式と合格基準
問題数は80問で、マークシート方式をとっています。
一定基準以上をもって合格となります。
取得に必要な勉強などの費用
試験内容は公式テキストから出題されるということで、そのテキストの購入費用が掛かります。
公式テキストとは
出版社名:出版文化社
商品名:古民家の調査と再築
価格:9,000円(消費税・送料込)
古民家の歴史や種類、古民家を構築する部位、古民家を鑑定するポイントなど、540ページにわたって詳しく掲載されている書籍です。
お仕事で古民家に携わる方はもちろん、古民家がお好きな方にもお薦めな1冊です。
講習とは
認定試験の他に資格講習も受けます。
その講習料金は38,000円です。
講習時間は4時間です。
公式テキストを使用して、パースの種類や描き方などを習います。
そして、認定試験に合格した後、スキルアップ講習というものも受けます。
その内容は写真の撮影方法などを学びます。
受験料
受験料は16,000円です。
つまり、前項目の講習料金の38,000円と合わせると、合計54,000円の費用が必要になります。
受験申込方法
受験を申し込むには、伝統資財施工士の公式サイトを検索しましょう。
そのサイトの申込手順に詳細が書かれています。
- 受講・受験願書をダウンロードして、印刷します。
- 受講・受験願書を記載します。1枚目と2枚目は「受講・受験要領」で、3枚目の「受講・受験願書」に記入します。そして、講習・試験会場を各スケジュールから選択しましょう。
- 受講・受験料を支払います。振込明細のコピーを「受講・受験料払込の証明」に、前面のりづけして貼り付けます。インターネットからお支払いした方は、スクリーンショット画像(画面コピー)を貼ります。
- 受講・受験願書を送付します。受験願書と受講・受験料払込の証明(3枚目と4枚目)を「一般財団法人 職業技能振興会」まで郵送します。
口座番号:1040785
口座名義:一般財団法人 職業技能振興会
まとめ
今回は古民家を解体するときに産出される資財を活用できるよう、取り組む専門家「伝統資財施工士」という資格を取り上げました。
この資格は古民家鑑定士の上位資格として、位置づけられています。
特殊なジャンルかとお思いでしょうが、例えば震災で壊れた資財を活用するという場面も出てくることでしょう。
この資格のステップアップとして、こちらでは伝統耐震診断士を挙げましたが、他にも伝統再築士や古材鑑定士といった職業もあります。
古民家がお好きな方や建築関係に携わりたい方は、こうした古民家を扱う仕事はいかがでしょうか。
近年、空き家をリノベーションして活用する動きが多くなってきていますが、残念ながら解体される建物もあります。
ですので、こうした意味でこの資格の仕事も需要あるかと思いますよ。
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その後認定試験を受験し、スキルアップ講習も受けます。
その後合否が発表されます。