この操縦士は、簡単に言ってしまえば、路線を定めて運航している飛行機や回転翼(ヘリコプター)の機長となる資格です。
航空系の操縦士の中で最上位の資格です。
もちろん、パイロットとして操縦席に座るのは2名ですが、それでも最も難易度が高い資格です。
他のパイロット資格と比較しても、相当量の飛行履歴が求められます。
どのくらい大変なのか、詳細をみてみましょう。
Contents
適用する仕事
適用する仕事はパイロットです。
多くの人にとって最も身近な航空機は、定期航路を運航する旅客機でしょう。
その旅客機を操縦するのに、機長として必要なのが定期運送操縦士の資格なのです。
定期運送操縦士とは
認可団体である国土交通省の公式サイトを見ると、定期運送操縦士の業務範囲の1つに「事業用操縦士の資格を有する者が行うことができる行為」と掲載されています。
つまり、定期運送操縦士というのは、下位(事業用操縦士や自家用操縦士)の航空系操縦士の業務範囲がすべて含まれているということなのです。
定期運送操縦士の資格があれば、自前やレンタルで借りた飛行機も操縦できるということですね。
機長の仕事内容
機長は航空機の操縦を含めた飛行に対しての全責任を負い、他の乗務員の指揮監督も行います。
飛行機の操縦を主に行うので、高い操縦技術が求められます。
また、それだけでなく、もしフライト中や機内でトラブルが発生した場合には、冷静で的確な指示も求められます。
その他にも、自分が操縦する飛行機の点検や、操縦前のさまざまなチェック、スケジュールの再確認やフライトの打ち合わせなども行います。
これだけの業務を行うのは、乗客を安全に目的の場所まで運ぶことが共通する最大の任務だからです。
機長を務めるパイロットは、機内の最高責任者です。
とても責任が重い仕事ではありますが、最近ではパイロットの負担を少しでも軽減できるよう、設備・条件・環境が配慮されています。
こうした配慮のもとで業務が計画されているので、パイロット側も安心してフライトに臨むことができるでしょう。
おおよその年収とキャリアパス
機長はパイロットとして最も高い地位にある職業なので、年収は2,000万円ほどになると考えられます。
一般的に機長になる年齢は40歳前後です。
年齢が上がるにつれ、平均年収も上昇しますので機長の年収は高いです。
パイロットが高収入の理由
なぜこれだけパイロットが高収入なのかは、次の理由があります。
1つは【適用する仕事】でも書いたように、責任の重さが挙げられます。
パイロットの仕事は人の命を預かることになります。
パイロットの責任は重く、その責任を果たすために高い能力が求められますのでパイロットの年収も高いのです。
それにパイロットは人材不足にもかかわらず、以前よりも航空会社が多くなってきたことも大きな要因です。
1990年代後半以降、航空業界の規制緩和により格安航空会社が参入してきました。
これにより、パイロットは需要が高い職業になりましたが、 日本には飛行訓練を行うための施設が少ないため、なかなかパイロットを増やすことができないのが実情です。
こうした理由により、パイロットの給与が高く提示されているのです。
キャリアパス
機長になるためには「定期運送操縦士免許」の取得を目指します。
そして、10年間ほど経験と訓練を積んで、航空局の機長昇格試験に合格すればなれます。
パイロットは年に1回は必ず身体検査を行なって、厳しい検査項目をクリアしなければなりません。
それをクリアしないと航空機を操縦することができないシステムになっていますので、長く機長を続けるには健康管理が欠かせませんね。
認可団体
国土交通省
受験条件
定期運送操縦士の資格は21歳以上が受験の対象です。
その他の受験条件は、航空機の種類によって分かれます。
飛行機の受験条件
総飛行時間1,500時間以上
- 100時間以上の野外飛行を含む250時間以上の機長としての飛行
- 200時間以上の野外飛行
- 100時間以上の夜間の飛行
- 75時間以上の計器飛行
回転翼航空機の受験条件
総飛行時間1,000時間以上
- 100時間以上の野外飛行を含む250時間以上の機長としての飛行
- 200時間以上の野外飛行
- 50時間以上の夜間の飛行
- 30時間以上の計器飛行
合格率
非公開
1年当たりの試験実施回数
原則として年に6回(5月・7月・9月・11月・翌年1月と3月)、国土交通省の管轄で実施されます。
試験科目
試験は学科試験と実地試験の2つを行います。
学科試験
- 空中航法
- 航空法規
- 航空気象
- 航空工学
- 航空通信
実地試験
- 運航知識
- 点検作業
- 飛行場などの運航
- 離陸・着陸、緊急時の操作・連携
- 連絡
- 総合能力など
※詳細は定期運送用操縦士用の「操縦士実地試験実地細則」に掲載されています。
採点方式と合格基準
学科試験は四肢または五肢択一方式です。
70%以上正解すれば合格です。
なお、学科試験には、科目合格制度が採られていますので、必ずしも1回の試験で全科目を合格しなくても良いです。
合格した科目は、1年以内に行われる試験であれば免除されます。
実地試験は前項目での実技について採点されます。
航空局の試験官が航空機に受験者と同乗して実際に飛行させながら、受験者の技量を見ます。
細かい合格基準は、定期運送用操縦士用の「操縦士実地試験実地細則」をご確認ください。
取得に必要な勉強などの費用
実地試験があるため、独学での合格はできません。
受験条件に書かれてある飛行履歴を身に付けるには、航空大学校に入学して勉強するか、日本航空などの航空従事者養成施設のある航空運送会社にパイロット職で就職してから勉強する方法があります。
ちなみに、航空大学校は2年制で費用は400万円程度かかります。
帯広・仙台・宮崎で学科と操縦演習を行うと、卒業の時点で事業用操縦士(飛行機)の実地試験が免除になります。
順序としては、まず事業用操縦士の資格を取ってから、経験を積んで定期運送操縦士へとチャレンジします。
航空従事者養成施設とは、例をいえば「日本航空株式会社 運航本部運航訓練部」や「全日本空輸株式会社 フライトオペレーションセンター」などがあります。
そこでは定期運送操縦士の技能証明が得られるそうです。
受験料
学科試験:5,600円
実地試験:67,400円
受験申込方法
受験するためには申請書が必要です。
国土交通省航空局の地方機関である、下記の2ヶ所の各運用課検査乗員係で受け付けていますので、詳しいことはそちらでお尋ねください。
電話:06-6949-6211
まとめ
今回は飛行機や回転翼(ヘリコプター)の機長を務めることができる「定期運送操縦士(飛行機・回転翼)」をお伝えしました。
機長は一般的に40歳代以上の方が就ける職業ですが、ここに就くためには長い道のりがあります。
定期運送操縦士(飛行機・回転翼)の受験条件は、多くの飛行履歴が必要です。
それを満たすには、独学ではできません。
航空大学校に入学して勉強するか、日本航空などの航空従事者養成施設のある航空運送会社にパイロット職で就職してから勉強しなければなりません。
航空大学校の場合は、卒業すると事業用操縦士(飛行機)の実地試験が免除になる仕組みなので、事業用操縦士の資格を得てから定期運送操縦士にチャレンジします。
機長を含めてパイロットは、年に1回は必ず身体検査を行なって、厳しい検査項目をクリアしなければなりません。
乗客の命を預かる仕事ですから負担も大きいです。
しかし、航空の仕事に就きたい人は一度はパイロットに憧れたのではないでしょうか?
現状として、パイロットは人手不足です。
航空学校を目指したいなら、事業用操縦士のみならず、航空系の中では最上位の定期運送操縦士も挑戦してみてはいかがでしょうか。
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