「アンビュランス」ハリウッドの破壊王マイケル・ベイ監督が次に選んだ暴走車は”救急車” 

「アンビュランス」ハリウッドの破壊王マイケル・ベイ監督が次に選んだ暴走車は”救急車” 

今回ご紹介する「アンビュランス」は、「トランスフォーマー」シリーズのマイケル・ベイ監督がジェイク・ギレンホールを主演に迎え、強盗を働いた元軍人の主人公が、瀕死の警官を乗せた救急車で逃走劇を繰り広げる姿を描いたノンストップアクションです。

アフガニスタンからの帰還兵ウィルは、出産直後の妻が病に侵され、その治療には莫大な費用がかかるが保険金も降りず、役所に問い合わせてもたらい回しにされるだけでした。

なんとかして妻の治療費を工面しようと、血のつながらない兄のダニーに助けを求めるウィル。ダニーが提案したのは、3200万円ドルもの大金を強奪する銀行強盗でした。

計画通りならば、誰も傷つけることなく大金だけを手にするはずだったのですが、狂いが生じて2人は警察に追われる事態になります。

やむを得ず逃走用に救急車に乗り込んだ2人でしたが、その救急車はウィルに撃たれて瀕死となった警官を乗せていたのです。

乗り合わせた救命士キャムも巻き込み、ダニーとウィルはロサンゼルス中を猛スピードで爆走することになります。

ダニー役をギレンホールが演じるほか、ウィル役をヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、キャム役をエイザ・ゴンザレスがそれぞれ演じています。

この映画は、2005年製作のデンマーク映画「25ミニッツ」のリメイク作品です。
それでは、ご紹介していきます。

あらすじ(ネタバレあり)

アメリカ・ロサンゼルス。退役軍人のウィリアム・シャープは新たな仕事も見つからず、傷病保険も降りずにいました。

しかもウィリアムは妻・エイミーの癌の手術費用として23万1千ドルという大金を必要としていました。そこでウィリアムが頼ったのは、血の繋がりのない義兄弟のダニーでした。

ウィリアムはダニーの亡き父と養子縁組をしていたのですが、ダニーは父と共に銀行強盗などの犯罪に手を染めており、ウィリアムはダニーとは距離を置いていたのです。

それでもウィリアムはエイミーの反対を押し切ってダニーと再会、銀行から3200万ドルを強奪する計画に参加することになりました。

ウィル・ダニー

その頃、救急救命士のキャム・トンプソンは交通事故に遭った少女リンジーを無事に病院へ搬送していました。

キャムは患者を搬送中に絶対に死なせないことをモットーとしているのですが、自分が搬送した患者がその後どうなったのかは一切感心を示さず、同僚たちからは薄情な人間とみなされていました。

ダニーとウィリアムは仲間たちと共に銀行を襲撃し、現金3200万ドルを強奪しました。

ダニーらはたまたま居合わせたロサンゼルス市警の警察官ザックを人質にとって逃走しようとしましたが、外で待っていたザックの相棒マークがロス市警の特別捜査課(SIS)に通報、ダニー一味はたちまち駆け付けたSIS隊員の銃撃を受けました。

仲間たちや逃走用の車を失ったダニーとウィリアムは反撃を試みたザックに発砲、マークはただちに救急車を呼びました。

現場にはキャムの乗った救急車が到着しましたが、ダニーとウィリアムは救急車から運転手を降ろさせるとキャムとザックを乗せたまま逃走を開始しました。

ダニーは警察官であるザックが万が一死んだ場合は捜査が苛烈になることを熟知しており、出血多量で瀕死の状態のザックの救命措置をキャムに命じました。

キャムはウィリアムの血を輸血することで何とかザックの延命を図りましたが、ザックはキャムの知らない傷口からも出血しており予断を許さない状況でした。

一方、ロス市警はダニーらの乗った救急車を特定し、大掛かりな追跡を開始しました。

キャスト

ダニー・シャープ(ジェイク・ギレンホール)

指名手配中の銀行強盗犯。

演:ジェイク・ギレンホール
1991年の「シティ・スリッカーズ」で主演ビリー・クリスタルの息子役で映画デビュー。

99年の青春ドラマ「遠い空の向こうに」の主演で脚光を浴び、「ドニー・ダーコ」(01)や「デイ・アフター・トゥモロー」(04)で注目度が高まります。

カウボーイ同士の愛を描いた「ブロークバック・マウンテン」(05)でアカデミー助演男優賞にノミネート。

以降、「ゾディアック」(07)、「ミッション:8ミニッツ」(11)、「複製された男」(13)などで演技派俳優として活躍します。

映像専門パパラッチを演じた「ナイトクローラー」(14)では14キロ減量、ボクサーを演じた「サウスポー」(15)では21キロ増量するなど、徹底した役づくりにも定評があります。

その後の出演作に「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」(15)、「ノクターナル・アニマルズ」(16)、「ライフ」(17)などがあります。

ウィリアム・シャープ(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世)

ダニーの弟。シャープ家の養子。
演:ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世

カリフォルニア大学バークレー校在学中、吃音の改善のために演技のクラスを受講。

一度はサンフランシスコで都市計画の仕事に就きますが、その後イェール大学で演劇を学んで美術学修士号(MFA)を取得、舞台俳優として活動を始めます。

バズ・ラーマン原案のミュージカルドラマ「ゲットダウン」(16〜17)で注目を集め、「シドニー・ホールの失踪」(17)で映画デビュー。

「グレイテスト・ショーマン」(17)などを経て、DCコミックス原作のアクション大作「アクアマン」(18)で悪役のひとり、ブラックマンタを演じて注目を集めます。

その他の出演作にTVシリーズ版「ウォッチメン」(19)、映画「アス」(19)、「シカゴ7裁判」(20)などに出演。

21年には、カルトホラーをリメイクした「キャンディマン」で主人公アンソニー役を、SF大作「マトリックス レザレクションズ」でモーフィアス役を演じています。

キャム・トンプソン(エイサ・ゴンサレス)

救急医療隊員。

キャム

演:エイサ・ゴンサレス
2003年からメキシコシティの演劇学校とエンタテインメント教育機関に通い、アルゼンチン発人気ティーンドラマのメキシコ版「Lola: Erase una vez」(07)の主演に抜てきされ現地を中心にブレイク。

メキシコのTVドラマに続々と出演する傍ら、09年には歌手デビューも果たします。メキシコ発ロマコメ「Casi treinta」(14)でスクリーンデビュー。

ロバート・ロドリゲス監督が自らのホラーアクション映画をTVシリーズ化した「フロム・ダスク・ティル・ドーン ザ・シリーズ」(14〜16)で英語作品に初参加。

青春ガールズムービー「ジェム&ホログラムス」(15)を経て、「ベイビー・ドライバー」(17)で世界的な知名度を得ました。

以降の出演作に「アリータ バトル・エンジェル」(19)、「ゴジラVSコング」(21)などがあります。

モンロー警部(ギャレット・ディラハント)

現場の指揮官。

演:ギャレット・ディラハント
カリフォルニア州生まれ、ワシントン州育ち。ワシントン大学でジャーナリズムを学んだ後、ニューヨーク大学で美術の修士号を取得します。

その後、舞台俳優としてキャリアをスタートし、90年代前半からTVドラマにも出演するようになり、「NYPD BLUE ニューヨーク市警15分署」(96)や「X-ファイル」(98)にゲスト出演。

99年に「Last Call(原題)」でスクリーンデビューしたが、TVの世界に戻り「4400 未知からの生還者」や「ER 緊急救命室」(ともに05~06)に参加。

映画「ジェシー・ジェームズの暗殺」「ノー・カントリー」に出演した07年ごろからスクリーンの仕事も増え、以降、「ウィンターズ・ボーン」(10)、「LOOPER ルーパー」(12)などに参加しました。

数々の映画祭で観客賞を受賞し、日本でもヒットした「チョコレートドーナツ」(12)ではゲイの弁護士役を演じ話題になりました。

エイミー・シャープ(モーゼス・イングラム)

ウィリアムの妻。

演:モーゼス・イングラム
10歳のころから演技を始め、地元の劇場などで活動。2016年、奨学生としてイェール大学演劇大学院に入学し、2018年にプリンセス・グレース・アワードを受賞します。

2020年、Netflixドラマ『クイーンズ・ギャンビット』にジョリーン役で準レギュラー出演して注目され、エミー賞助演女優賞にノミネートされました。

2021年、ジョエル・コーエン監督、デンゼル・ワシントン主演の歴史スリラー映画『マクベス』に出演。

2022年は映画『アンビュランス』やドラマ『オビ=ワン・ケノービ』に出演するなど、活躍中です。

基本情報

基本情報

監督      マイケル・ベイ
脚本      クリス・フェダック
原作      ラウリッツ・ムンク=ピーターセン(英語版)『25ミニッツ(英語版)』

製作      マイケル・ベイ ブラッドリー・J・フィッシャー(英語版)ジェームズ・ヴァンダービルト
製作総指揮  マイケル・ケイス マーク・モラン

出演者      ジェイク・ギレンホール ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世 エイザ・ゴンザレス

音楽       ローン・バルフ
撮影       ロベルト・デ・アンジェリス
編集      ピエトロ・スカリア

製作会社      ニュー・リパブリック・ピクチャーズ(英語版) エンデヴァー・コンテンツ(英語版)

配給     〔アメリカ〕 ユニバーサル・ピクチャーズ 〔日本〕 東宝東和

公開     〔日本〕 2022年3月25日 〔アメリカ〕 2022年4月8日
上映時間    137分
製作国     アメリカ合衆国
言語      英語
興行収入   〔世界〕 $51,706,081

「25ミニッツ」とは?

「アンビュランス」のリメイク元作品である「25ミニッツ」を簡単にご紹介します。

8年間刑務所にいた兄と弟がガンの母親の手術費を稼ぐため銀行強盗を起こす。銃は撃たない、誰も殺さないって誓った弟が銃を使ってしまう。

当然が警察出動。焦った兄弟、近くにあった救急車を盗んで逃亡。その中には新人救命士と心臓発作を起こした年配の男性がいた。

弟に頼んだ盗難車が盗難されていて救急車を乗り捨てることができない。何度振り切っても追いかけてくるパトカー。

兄「そうか!救急車にはGPSが付いているんだ」弟「さすが兄ちゃん頭いい!」と、GPSを捨て森に逃げる。

しかし、そこで救命士と男性を置き去りに。さすがに兄のその行動にキレた弟が逆上して仲間割れ。

その後、ふたりを救急車に戻し病院へ。そこで兄が父親がバイクで死んだのは自分が運転していたからと告白。そして警官に射殺される兄。弟は助かる。救命士、男性も無事。

邦題の『25ミニッツ』はその心臓発作起こした男性の残りの酸素時間だと思われます。

逃走車両はアンビュランス=救急車!

『トランスフォーマー』(07)やストリーミングの『6アンダーグラウンド』(19)等、このコーナーでもご紹介してきたマイケル・ベイ監督。

救急車

ハリウッド屈指のカークション監督と言ってもいい彼の5年ぶりになる劇場用新作『アンビュランス』。もちろんというか、やっぱりというか、これもまたカーアクション映画です。

とはいっても、いつものように高級車を走らせ、破壊しまくるのではなく、タイトル通り主人公のひとつはロサンゼルスを走るアンビュランス(救急車)

ドラマはこの狭いアンビュランスのなかでわずか半日ほどの出来事として展開します。

これまでのベイのカーアクションは、猛スピードで走る車、ぶつかり合う車、空を舞う車が印象的でしたが、本作の場合の視点はその救急車の中。

限られた空間、限られた時間をフルに使い、警官の命を巡る兄弟の駆け引きを不安とスリルいっぱいに描いています。

ただし、ベイ作品のトレードマークである激しく動き回るカメラワークは本作もそれは健在です。というよりさらにスケールアップした感があります。

手持ちカメラを振り回す従来のスタイルに加え、固定、空撮、ドローン撮影などの技巧を駆使しながら、アクションの世界へ引き込みます。

これらの手法でとらえられたカーチェイスは、とにかく臨場感満点。もちろん、ビル破壊やカークラッシュ、爆破などのスペクタルも随所に炸裂します。

ジェイクに注目!

『ブロークバック・マウンテン』(2005)で演技派アクターとして認められて以来、積極的に複雑な役に挑み、好評を得てきたジェイク・ギレンホール。

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)などで〝悪いヤツ〞にふんした際の演技は、そのカリスマ的な存在感も手伝い、とりわけ目を引きます。

本作で演じたダニーもまた、銀行強盗犯という悪党です。これまで一度も逮捕されることなく、何度も計画を遂行しては大金をせしめてきた切れ者。

本業の高級車販売業も順調で、表向きはやり手のリッチなビジネスマンといった雰囲気。金に困っている弟ウィルとは対照的です。

しかし、ウィルとの兄弟の絆は堅く、人を殺してまで犯罪に走らない主義。犯罪者なりに、生き方に筋が通っているというところでしょうか。

そんなキャラクターに、血肉を通わせるのがジェイクの演技力。ウィルを強盗に引き入れようと説得する際に見せます。

ジェイク

強引さと人懐っこさ。初登場のこのシーンだけで、ダニーが憎めない男であることがわかります。

複雑な人間関係

弟のウィル(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)は病気の妻の治療費を手に入れるために、疎遠になっていた兄のダニー(ジェイク・ギレンホール)を頼ります。

ウィルは養子で、ダニーとは血の繋がらない兄弟。そしてダニーは、治療費を捻出するために銀行強盗の計画をウィルに持ち掛けます。

この2人は一緒に銀行強盗をするほどの兄弟なのですが、衝撃的なバックグラウンドを持っており、それが2人の関係を複雑にしています。

マイケル・ベイ監督は、「当初、兄弟は白人の予定でした。でもスタジオ側からヤーヤという俳優がいると紹介され、僕は彼が将来ムービースターになると確信しました」

「映画では、悪い環境の中で育った兄弟というバックストーリーがあります。銀行強盗の家族が、黒人の少年を養子にとるのです。2人は、親友として、兄弟として育った。それがストーリーをより複雑に面白くしていると思います」

ジェイク「は、兄弟がハイジャックした救急車に偶然乗り合わせたキャム(エイザ・ゴンザレス)のことにも触れて、「映画の魅力は、3人のメインキャラクターの人間関係だと思います」

「全員に異なるリスク、異なる課題があるのです。ヤーヤと僕のキャラクター同士の、兄弟の関係も見どころです」

「この兄弟の関係はストーリーにものすごい複雑さを生み出しています。とくにこの映画の2人は、ものすごい苦難を経験していますから」とコメントしています。

ヤーヤもそんなジェイクの言葉に同調し、「この映画が描く、兄弟愛、家族愛、友情と、そういった関係に伴うチャレンジに惹かれました」

作品の評価

Rotten Tomatoesによれば、243件の評論のうち高評価は68%にあたる166件で、平均点は10点満点中5.8点。

批評家の一致した見解は「トップスピードでサイレンを鳴り響かせながら、『アンビュランス』はマイケル・ベイのアクション・スリルが不足している緊急事態に直面中の観客のために救助に駆けつける」となっています。

Metacriticによれば、55件の評論のうち、高評価は27件、賛否混在は21件、低評価は7件で、平均点は100点満点中55点となっています。

レビュー

スタイリッシュな映像
一言でいうと、良い意味で「攻めた映像満載のアクション・クライム映画」でした。カット割りなどが成功し、凝ったカッコいい映像は、ここぞというシーンで使うものですが、本作では「全編がクライマックス」と言わんばかりに、とにかくスタイリッシュな映像ばかりです。物語の面白さも加わって、終始面白いと感じられます。
引き込まれます
感動しました。本作のポスターを改めてよく見ると、ビルが立ち並ぶところで、ヘリやパトカーが救急車を追っている。本作の舞台は現代のロサンゼルス。しかも、銀行強盗を決行するという信じ難い展開です。しかし、犯行に至るまでの理由と状況が具体的に示されているため、ストーリーに引き込まれていきます。
無駄なシーンが多い
「ヒート」を彷彿させる街中での銃撃戦、救急車での逃走劇、逃走中の緊急手術など見せ場はてんこ盛りだが、いかんせん長すぎる。90分くらいにまとめてくれれば勢いを失わずに最後まで見られたと思うが、相変わらずトランスフォーマーシリーズ同様無駄な会話や無駄なシーンが多すぎて途中で飽きてしまう。
お馴染みの爆発あり
DVDでもドキドキできたので劇場ならもっと良かったかも。まず、マイケル・ベイの映画は基本好きなので評価高めです。お馴染みの爆発が随所にありました。自作のザ ロックをネタにしたのもマル。クセがありそうな登場人物が今回も健在。救急車という狭い空間を舞台にしているが終始スリルがあり飽きませんでした。

まとめ

「アンビュランス」をご紹介しました。いかがでしたでしょうか?

『アンビュランス』の物語はいたって単純です。「妻の手術代を稼ぐため銀行強盗をするが、失敗して逃げる」というもの。そして、その過程にカーチェイス、銃撃戦、爆発、炎上が次々と起こります。

猛スピードでロサンゼルスをかっ飛ばすのに、車内でも会話や雰囲気はとても120キロ出しているとは思えません。

おまけに怪我人の手術までしちゃいます。このあたりがマイケル・ベイ監督ならではといえるでしょう。

圧倒的なカーチェイス、銃撃、爆発、火災、炎上などが熱狂的に支持され、『アルマゲドン』『パール・ハーバー』『トランスフォーマー 』など1億ドルを超えるヒット作品を持っているマイケル・ベイ監督はもはや、何をやっても許される域に達しているようです。

時折、手ぶれカメラでカーアクションを捉えるのですが、軽く“画面酔い”するのもお約束です。拳銃の弾もいい加減「タマ切れじゃないの?」なんて愚問です。気にしてはいけません。

登場する男たちもタフネスです。不死身です。アメリカの男は強いのだと主張しているようです。

賛否が分かれている映画ですが、ド派手なカーアクションだけでなく、しっかりとした人間ドラマも描かれていて面白い作品でした。 ただ、逃走シーンが長すぎ?。