今回は土地改良換地士という仕事について、お伝えします。
土地改良換地士とは、農業用地の整備や換地計画などを定める際に、専門的な知識や実務経験などを持つ者として、意見することができる立場の人です。
換地とは、以前の宅地を造成・整形化し、その地権者に対し、新たに交付される宅地のことです。
土地改良換地士は農用地化事業の専門家です。
土地改良換地士になるには、土地改良換地士試験という農林水産省が認可する国家資格を受けなければなりません。
この資格の分野としては、不動産や建築だけでなく、自然・環境の部分も関係してきます。
複数の分野にまたがっているこの試験をどのように突破すれば良いのか、勉強の仕方をみていきましょう。
Contents
適用する仕事
この試験の適用する仕事は、名前の通り土地改良換地士です。
土地改良換地士とは、農用地の集団化に関する専門家のことです。
「農用地の集団化」とは、農地の形を整えて農業の生産性の向上を目指すことを意味します。
大雑把な説明になりますが、農地が点在している状況がその地域で大勢いる場合、点在のままでは自分たちの農地がまばらなので、移動が大変などの観点から生産性が落ちてしまう可能性があります。
そうした問題から、点在している農地を整理して、効率よくするために農地を地域ぐるみで交換すると生産性が向上します。
それが「農用地の集団化」の仕組みです。
このように農地の開発や改良をスムーズに行うために、助言や指導などをするのが土地改良換地士の役割です。
この他にも、農地の安全や集団化を円滑に進めたり、生産拡大や農業構造の改良を進めたりするのも仕事で、国土資源の開発に関わってきます。
ちなみに、この仕事には土地改良換地に関する高度な知識と公平性が必要なので、土地改良換地士の資格は業務独占資格です。
土地改良換地士になるには、先ほども述べたように高度な専門知識と、公平に農用地整備をするバランス感覚が必要です。
それに、専門家ですから、さまざまなトラブルに冷静に対処できる力や交渉能力も持っていた方が良いです。
また、法律や法令をコツコツと覚える勤勉さも必要でしょう。
おおよその年収とキャリアパス
土地改良換地士の資格を取得すれば、建設・土木施工管理などのコンサルタント会社や測量会社、地方公共団体などで活躍することができるでしょう。
また、不動産業の仕事に就く場合にも換地処分の業務が関連するので、この資格は大きな武器になるでしょう。
おおよその年収ですが、月収は20万~25万円程度が相場のようです。
そして、キャリアを積んでいくと、30万~40万円程度の月収、年収では500万円以上を目指せるでしょう。
(ただし、こうした収入モデルは会社の条件などによって、幅はあります。)
しかし、単に就職のためではなく、今いる職業からスキルアップするために取得するケースが多いようです。
こちらの資格は独立を前提としたものではありませんが、今後も農地の集団化は起こり得ます。
その際の専門家としてニーズは高いと予想されるでしょう。
将来、この分野の仕事を目指したい方は取っておきたい資格です。
安定的に比較的高い所得も得られる資格だともいわれていますよ。
認可団体
農林水産省
受験条件
年齢や学歴などに関係なく、誰でも受験することができます。
合格率
2022年 | 25.5% |
2021年 | 35.0% |
2020年 | 22.9% |
難易度は普通といわれていますが、合格率はあまり高くありません。
1年当たりの試験実施回数
試験は毎年1回、10月中旬ごろに実施されます。
試験会場は札幌、仙台、さいたま、金沢、名古屋、京都、岡山、熊本、那覇の9都市です。
試験科目
試験は知識試験と実務試験の2種類が行われます。
知識試験
知識試験では、農用地の集団化に関する事業に係る知識が問われます。
試験時間は2時間30分です。
実務試験
実務試験では、農用地の集団化に関する事業に係る実務が問われます。
試験時間は3時間です。
2.従前地各筆調書の作成、戸籍簿等調査、代位登記申請書の作成や測量(求積計算)に関するもの
試験が免除される場合
免除される条件が2種類あります。
- 前回実施された土地改良換地士資格試験において知識試験に合格した者は、次回実施される知識試験に申請することで、免除することができます。
- 換地処分に係る実務(換地計画の認可及び換地計画作成に係る指導事務を含む)を10年以上従事した経験がある者は、実務試験の免除を申請することができます。
経験年数は試験実施の公告の日までに通算して、10年以上です。
なお、換地処分に係る実務とは、換地計画書の作成、代位登記申請及び換地処分登記申請に関する事務のすべてを含むものでなければなりません。
採点方式と合格基準
知識試験は択一式のマークシート方式、実務試験は記述式の筆記試験です。
合格するには、知識試験と実務試験の基準をそれぞれ満たさないといけません。
知識試験のみの基準を満たした者に対しては「知識試験に合格した者」として、前項目の免除の対象になります。
合格基準は、知識試験・実務試験それぞれ、各試験内容ごとに満点の60%以上の成績を得た者が合格です。
取得に必要な勉強などの費用
公式テキストがないので、市販のテキストをうまく選択したり、過去問を使ったりして、コツコツやるのが良いでしょう。
過去問は農林水産省のホームページに掲載されてあります。
それ以外のテキストですが、土地改良法の勉強が主となりますので、法律や法令集を買ってひたすら覚えていくのが一番の近道でしょう。
要説土地改良換地 新訂
- 出版社名:ぎょうせい
- 商品名:要説土地改良換地 新訂
- 価格:¥5,060(税込)
土地改良法による換地処分についての概説書です。
土地改良法による換地処分がどのような法律思想に立って、どのように法律構成されているかを述べています。
この本は勉強するにあたっておすすめできる内容ですが、出版社や書店ではなかなか手に入らないかと思います。
通販ショップでお求めいただくのが良いでしょう。
土地改良と地域資源管理
- 出版社名:筑摩書房
- 商品名:土地改良と地域資源管理
- 価格:¥2,750(税込)
こちらの書籍は、地域資源を活用して、地域環境を整えてきた土地改良の役割を再認識し、さらには地域資源の管理のあり方を検討しています。
Q&A土地改良の理論と登記実務改訂
- 出版社名:日本加除出版
- 商品名:Q&A土地改良の理論と登記実務改訂
- 価格:¥5,830(税込)
土地改良事業に基づく登記の手続きをQ&A形式で、わかりやすく解説しています。
もちろん、換地処分や交換分合などの土地改良事業についても、詳しく紹介しています。
こちらも通販ショップでお求めいただくのが良いでしょう。
受験料
6,500円(収入印紙)
受験申込方法
受験手続きには、受験願書を手に入れることから始まります。
願書は交付場所である、地方農政局や都道府県土地改良事業団体連合会へもらいに行きます。
または、郵便による方法もあります。
請求するには、封筒の表に「土地改良換地士資格試験受験願書用紙等請求」と朱書きをして、返信用封筒(宛先を書いて94円切手を貼る)を同封します。
提出書類は下記のとおりです。
- 受験願書
- 試験免除申請関係(前回実施された知識試験の合格通知書の写しや実務経験証明書)
- 受験料(収入印紙を所定の欄に貼り付ける)
- 戸籍抄本または本籍地が記載された住民票の写し
- 縦6cm×横4.5cmサイズの写真
提出するには、郵送(簡易書留又は一般書留)により、管轄する受験願書等提出先に提出してください。
提出先は受験者の住所地によって異なります。
公式サイトで確認してください。
なお、封筒の表には「受験願書等在中」と朱書きしましょう。
まとめ
今回は農用地の集団化に関する専門家の証である「土地改良換地士」の試験について、ご紹介しました。
この資格は業務独占資格である国家資格です。
就職に有利だからというよりは、今いる職業からのステップアップとして受験される人が多いです。
受験条件は全然ありませんが、難易度はやさしくありません。
専門的な試験内容にも関わらず、市販のテキストでは最新のものがあまりないのです。
法令集を使うのが必要になってきます。
また、実務経験がまったくない方には非常に難しいようです。
そのような人は宅建関係や測量関連の知識や経験を身に付けておくと、勉強しやすくなるでしょう。
土地改良換地士は建設・土木施工管理などのコンサルタント会社や測量会社などで、活躍できます。
こうした企業に属している人や農業・公共事業に携わる仕事に興味のある方は、この職業を目指してみてはいかがでしょうか。
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測量士補試験について
1.土地改良法、民法、不動産登記法、土地改良登記令、戸籍法、農地法、その他換地の事務処理に行うに必要な関係法令に関するもの
2.測量や土地改良法のうち、換地関係規定に関するもの