タイトルは特定化学物質等に対する作業主任者になっていますが、この資格を取得するには特定化学物質と四アルキル鉛の講習を統合した形式の「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を受けなければなりません。
以前は特定化学物質と四アルキル鉛はそれぞれの技能講習で済みましたが、平成18年4月1日から免許・技能講習制度の改定で2つを統合した講習になりました。
特定化学物質と四アルキル鉛の分野の一方、または両方に選任される資格を得るにはこの技能講習を受けなければなりません。
よって、現在での正式資格名は「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者」です。
具体的にどんな仕事に役立つ資格なのかを調べてみました。
Contents
適用する仕事
「特定化学物質等作業主任者」は厚生労働省管轄の国家資格で、ガンなどを発症させるおそれのある特定化学物質から作業員の健康を守るのが仕事です。
特定化学物質を取り扱う現場では、必ずこの資格保有者を配置することが義務付けられています
特定化学物質とは
資格名にもなっている特定化学物質とは、労働安全衛生法によって労働者に健康被害を発生させる可能性が高い物質として定められた化学物質のことです。
特定化学物質には第1類から第3類まで分けられています。
第1類 :特に有害性が高い化学物質 |
ジクロルベンジジン塩素化ビフェニルジアニシジンベリリウム、アルフア-ナフチルアミンなど |
第2類 :第1類ほどではないが、有害性が高い化学物質 |
アクリルアミド、アクリロニトリル、アルキル水銀化合物(アルキル基がメチル基またはエチル基であるものに限る)、インジウム化合物、エチルベンゼン、塩化ビニル、塩素など |
第3類 :大量に漏れると急性中毒を起こす化学物質 |
アンモニア、一酸化炭素、塩化水素、硝酸、二酸化硫黄、フエノール、ホスゲン、硫酸を含有する製剤など |
なかでも第1類に分類されている物質は特に有害性が高いため、厚生労働省の許可がないと製造できないくらいです。
仕事内容
特定化学物質等作業主任者の仕事内容は、主に3つあります。
- 特定化学物質を扱っている工場や現場などにおいて、作業員へ作業方法や指導を行うこと
- 仕事で使用する安全保護具の使用状況を監視すること
- 作業員を健康被害から守るために使用する「予防装置」(局所排気装置、プッシュプル型換気装置、排ガス処理装置)を、1ヶ月を超えない期間ごとに点検すること
おおよその年収とキャリアパス
特定化学物質作業主任者の資格を取得すると、特定化学物質を製造したり、取り扱ったりする工場や化学メーカーなどの職場で活躍できます。
募集企業の事業内容や職種によっては、特定化学物質作業主任者が必要不可欠なところもあります。
実際、特定化学物質等作業主任者の資格を持っていると、工場や製造オペレーターなどの求人で歓迎されます。
そうした求人での年収は、ある一例にはなるものの320~600万円程度と幅があります。
経験者であれば、510~790万円もの高収入が見込まれる求人もあります。
たしかに、この資格を持っていれば転職の際に有利にはなります。
しかし、採用の決め手になるほどの難関資格ではありません。
講習を受けて資格を取得するので、企業内で一斉に受講させるところもあるでしょう。
それに、工場や化学メーカーは特定化学物質以外にも有機溶剤や危険物、毒物などといった数多くの化学物質を取り扱います。
このため、キャリアパスを考えるなら、特定化学物質等作業主任者と併せて、有機溶剤作業主任者や危険物取扱者の資格を取得しておくと、さらに仕事に役立ちますよ。
認可団体
厚生労働省
受験条件
こちらの資格は講習を受けて取得するので「受講条件」です。
受講条件は特にありません。
実務経験も不要です。
ただし、実際の作業に就けるのは18歳以上からです。
そして、テキストや講義および修了試験は漢字を含む日本語で行われます。
合格率
90%以上。修了考査はありますが、ほぼ100%で合格できます。
1年当たりの試験実施回数
各指定講習機関により異なります。詳しくは受講する実施先までお問い合わせください。
ちなみに、「公益社団法人 日本作業環境測定協会」で行われている講習では、年5~6回実施されます。
試験科目
「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」は2日間にかけて講習を受けます。
1.健康障害およびその予防措置に関する知識
特定化学物質による健康障害および四アルキル鉛中毒の病理、症状、予防方法および応急措置
2.保護具に関する知識
特定化学物質の製造または取扱いおよび四アルキル鉛など業務に係る保護具の種類、性能、使用方法および管理
3.作業環境の改善方法に関する知識
- 特定化学物質および四アルキル鉛の性質
- 特定化学物質の製造または取扱いおよび四アルキル鉛など業務に係る器具、その他の設備の管理
- 作業環境の評価および改善の方法
4.関係法令
- 労働安全衛生法
- 労働安全衛生法施行および労働安全衛生規則中の関係条項
- 特定化学物質障害予防規則
- 四アルキル鉛中毒予防規則
採点方式と合格基準
2日目の講習終了後に、修了試験(筆記試験)が行われます。
合格基準は全講習科目の所定時間を修了しているのが条件です。
そして、修了試験では各科目40%以上、かつ全科目の合計得点が60%以上の得点の方が合格です。
取得に必要な勉強などの費用
「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」は、講義をしっかり聴いていれば合格できます。
受講料の費用だけで充分ですので、あえて市販のテキストを購入する必要はありません。
受講料は次の項目でお伝えします。
受験料
こちらは受講料です。
受講料は各指定講習機関により異なります。
料金は税込価格です。
一例ですが、関東地方の講習機関の料金を調べました。
公益社団法人 日本作業環境測定協会 | 受講料13,200円、テキスト代1,980円 |
埼玉労働基準協会連合会 | 受講料13,200円、テキスト代1,980円 |
東京労働基準協会連合会 | 受講料13,200円、テキスト代1,980円 |
神奈川労務安全衛生協会 | 受講料11,470円、テキスト代1,980円 |
千葉県労働基準協会連合会 | 受講料12,100円、テキスト代1,980円 |
栃木県労働基準協会連合会 | 受講料12,100円、テキスト代1,980円 |
群馬労働基準協会連合会 | 受講料13,200円、テキスト代2,255円 |
茨城労働基準協会連合会 | 受講料11,000円、テキスト代1,980円 |
受験申込方法
申込方法も各指定講習機関によって異なります。
受講する機関にお問い合わせください。
まとめ
「特定化学物質等作業主任者」は、工場や化学メーカーなど特定化学物質を取り扱う現場で、作業者が特定化学物質に汚染されないようにするための資格です。
具体的には、作業方法を指導したり、仕事で使用する安全保護具の使用状況を監視したり、あるいは「予防装置」を定期的に点検したりすることです。
この資格を取得するには、特定化学物質と四アルキル鉛の講習を統合した「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を受講しなければなりません。
これは平成18年4月から改定されました。
講習や修了考査のレベルは易しいです。
しかし、実際の職業で活かすには、それに併せて他の資格も必要になるかもしれません。
この資格は主に製造業で活かされます。
その企業ごとに何の知識が必要になるか、関連する職場で働いている人は資格を併せ持ちながらステップアップをしていきましょう。
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