土止め支保工作業主任者は「どどめしほうこう・さぎょうしゅにんしゃ」と読みます。
労働安全衛生法に定められた作業主任者の1つであり、国家資格です。
土止め支保工の切りばりや腹おこしの取付け、または取りはずしの作業を担う資格です。
土木の資格はたくさんありますよね。
なじみのない単語ばかりだと思うので、土木の仕事内容と併せてこの資格を詳しくみていきます。
Contents
適用する仕事
土止め支保工作業主任者は、建設・土木業界や砂利採取業界の企業で活躍できます。
土止め支保工とは
資格名になっている「土止め支保工」とは、地下構造物などの築造に伴う掘削作業の際に、土砂の崩落を防ぐために設けるものです。
施工にあたっては、掘削の深さや土質、地下の水位、作用する土圧などを十分に検討して、必要に応じて土圧計などの計測機器の設置を含めて、土止めや支保工の安全管理計画を立てます。
部材の取り付けには細かいルールがあります。
- 支保工に使用する部材は、著しい損傷や腐食、変形などがある場合は使用してはいけない
- 腹起し(土止め工事において、親杭や矢板に作用する土圧や水圧を支持するために設置される横架材)や切りばり(山止めを施工したとき、土が崩れないように土圧を抑えるために矢板などを支える水平部材)は崩壊しないように固く矢板や杭に取り付ける
- 中間支柱を用いる支保工では、中間支柱にしっかりと切りばりを取り付ける
- 切りばり、火打ちの接続部や、切りばりと切りばりの結合部は変位、脱落等が生じないように、緊結金具などできつく固定または溶接などで接合する
などあります。
このときに土止めの安全対策や指導などを行うのが、土止め支保工作業主任者の役割です。
土止め支保工作業主任者の仕事内容
土止め支保工作業主任者の仕事内容は、作業の方法を決定し、作業の直接指揮や器具・工具を点検し、安全対策や指導、管理などを行うことです。
現場の安全対策が主な仕事であり、大きく5つに分けることができます。
- 作業を行う前の打ち合わせや確認
- 作業を開始するにあたっての指示や確認
- 作業中での指揮や作業員への指導
- 作業方法を変更しなければならない場合のときの指示や措置
- 作業が終了した後の措置
おおよその年収とキャリアパス
勤務先の規模や経営状況によって大きく異なりますが、平均年収は350万~600万円くらいです。
求人例を見ても、入社3年目の20歳で年収382万円や入社5年の25歳で年収560万円などと、給与モデル体系が示されているところもあります。
事務所ごとに土止め支保工作業主任者を配置しなければならないため、建設・土木業界、砂利採取業界で広く活躍できます。
そうした企業に入社すると、土止め支保工作業主任者の資格を支援している場合もあり、資格取得時には資格取得祝い金が支給されるところもあります。
この資格は独立を前提としたものではありませんが、土木をやるうえで重宝される資格です。
それにとび職のキャリアパスにも影響を及ぼします。
2020年から国土交通省より「とび技能者能力評価基準」というのが設定されました。
特に上記のレベル2やレベル3においては、キャリア基準として「土止め支保工作業主任者」の保有が記載されています。
つまり、とび職のキャリアを考えるうえで、この資格は十分取得する意義があるということです。
それに加えて、土止めを使った作業は、日本中で常に行われているため、安全対策や指導する立場として、今後も安定して需要が見込まれるでしょう。
認可団体
認可団体は厚生労働省です。
しかし、土止め支保工作業主任者の資格を管理し、講習を開催している主要な機関は「建設業労働災害防止協会」です。
〒108-0014
東京都港区芝5-35-2 安全衛生総合会館7階
電話:03-3453-8201(代表)
受験条件
講習を受けるには、満18歳に達している方で、経験年数が下記の1もしくは2に該当する方が条件です。
- 地山の掘削作業、もしくは土止め支保工の切りばりや腹起こしの取付、取り外しに関する作業を3年以上従事した経験がある者
- 学校教育法による大学、高等専門学校、高等学校または中等教育学校において、土木または建築に関する学科を専攻して卒業した者でその後2年以上、地山の掘削の作業、もしくは土止め支保工の切りばりや腹起こしの取付、取り外しに関する作業に従事した経験を有する方
合格率
この資格は講習と修了考査を受ければ取得できます。
そのため、全受験者数に対する合格率は出ていません。
1年当たりの試験実施回数
講習機関は全国にありますので、回数は都道府県ごとによって異なります。
開催地支部にてご確認ください。
試験科目
こちらは受講科目です。
- 作業の方法に関する知識
- 工事用設備、機械、器具、作業環境などに関する知識
- 作業者に対する教育などに関する知識
- 関係法令
これらの後に修了試験が行われます。
採点方式と合格基準
修了試験は全科目を通じ、1時間で解答する筆記試験です。
問題は講習の科目の範囲全般について、受講者が講習内容の知識を十分に知得しているか否かを判定することができる程度で作られています。
合格基準は以下の2点です。
- 各科目の得点が満点中40%以上の得点率
- 全科目の合計得点が満点中60%以上の得点率
取得に必要な勉強などの費用
土止め支保工作業主任者の資格は講習を聞いていれば、修了試験もクリアできます。
ですので、受講料のみの費用で済みます。
受講料は次の項目でお伝えします。
講習は3日間です。
ですが、覚えておかなければならないポイントは、講師がマーキングなどの指示を出してくれるでしょう。
受験料
受講料をご紹介します。
こちらでは、関東地方の支部を例に記載します。
東京都支部 | 19,450円(受講料16,500円、テキスト代2,950円) |
埼玉県支部 | 19,162円(受講料16,500円、テキスト代2,662円) |
神奈川県支部 | 19,732円(受講料17,070円、テキスト代2,662円) |
千葉県支部 | 18,359円(受講料15,400円、テキスト代2,959円) |
群馬県支部 | 19,712円(受講料17,050円、テキスト代2,662円) |
栃木県支部 | 18,400円(受講料15,800円、テキスト代2,600円) |
茨城県支部 | 18,500円(受講料15,838円、テキスト代2,662円) |
受験申込方法
受講したい地域の「建設業労働災害防止協会」支部の「土止め支保工作業主任者」講習のページに、申込書のボタンが掲載されていますので、そこから申し込んでください。
なお、講習の表示は「地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習」となっているところが多いですから、気をつけて申し込みましょう。
まとめ
今回は土止め支保工の切りばりや腹おこしの取付け、または取りはずしの作業を担う資格である「土止め支保工作業主任者」を取り上げました。
こちらの土木の資格はこうした作業の際に、作業方法を決定し、作業の直接指揮や器具・工具を点検、そして安全対策や指導、管理などを行うのに重要です。
仕事をする際に、事業所ごとにこの資格の保有者を配置しなければいけないので、該当する人は重宝されます。
建設・土木業界や砂利採取業界の企業で活躍できます。
この資格を取得するには、建設業労働災害防止協会で開催されている「土止め支保工作業主任者」の技能講習を受けなければなりません。
講習と修了試験のみで取得できますから、難易度は易しいです。
しかし、受講条件には土止め支保工についての実務経験が必要になりますので、まずは関連業界に就いてから資格を目指しましょう。
工事や建設の依頼はこれからもありますので、この資格も需要があります。
ぜひ、コツコツ実務経験を積みながら頑張ってくださいね。
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